●リプレイ本文
「外宇宙、から‥‥、わざわざ、御苦労、さま。でも、ここ、人間の領土。出てって、もらう、よ」
第七艦隊水無月艦搭乗オペレーターの火柴(
gc1000)は、言って、レーダーに目を落とす。
「敵機動要塞から、小型戦闘機多数接近、攻撃至近、来ます」
「提督、大丈夫でしょうか」
次席参謀の水無月 春奈(
gb4000)少佐は、ガルシア提督に声を掛けた。
――直後。
艦橋を閃光が覆った。ヘルメットワームからの集中攻撃を受けたのだ。直撃を受けた艦は激しく震動した。
水無月も吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。どうにか立ち上がると、倒れているガルシア提督に発見する。
「はにゃ! 提督!」
ガルシア提督は口から血を吹いて何かを呟いている。
水無月は艦内に向けて言葉を向けた。
「各員、被害状況の報告を‥‥。あと衛生兵を艦橋へ‥‥。負傷していないものは持ち場に戻り攻撃に備えてください」
衛生兵が到着すると、ガルシア提督が意識を取り戻した。
「提督、大丈夫ですか? ‥‥えと‥‥指揮は誰に‥‥?」
「少佐‥‥君が艦の指揮を取れ」
「ふにゃ、私がですか」
「俺は、用兵家としての君の手腕を信じている‥‥」
ガルシア提督は意識を失った。水無月は気を引き締めると、立ち上がった。艦内に向けて呼び掛ける。
「私は第七艦隊の次席参謀水無月です。敵の攻撃を受け、ガルシア提督が負傷されました。今より、艦の指揮を執ります。僚艦と連携して敵との距離をとります。近隣の味方に救援要請を、彼我の位置、こちらの予想進路を送っておいてください。救援の予想到着時間の報告もお願いしますね」
そこで一呼吸置く。
「KV隊、出撃お願いします。距離を保つために軽くあしらってきてくださいね。大丈夫です、救援が来るまでの辛抱です」
「地球への宇宙人侵略か、熱い熱すぎる、この熱い展開こそが科学者の心に火をつける」
第七艦隊二番艦の副長兼医療主任兼整備主任の科学者、ニコラス・福山(
gc4423)は言って艦長の月読井草(
gc4439)に戦況を報告する。
「一番艦が被弾した模様です。ガルシア提督が負傷されました。次席参謀の水無月さんが指揮を取ります」
「そうですか。では我が艦も援軍が来るまで持ち堪えなければ。それにしてもこんな宇宙のド田舎にまでやって来るなんて、宇宙人にも秘境マニアって居るのね〜」
「斉射三連! 敵を後方へ引きずり出すように後退せよ!」
第七艦隊所属航宙機母艦アドミラルT・ヤマグチ艦載機部隊VF―380ブルードラゴンズ隊長、少佐、伊藤 毅(
ga2610)。ナイトフォーゲルを率いて出撃する。
「ドラゴンリーダーよりドラゴンオール、敵第一波を迎撃する、全員、生きて帰るぞ」
「ラジャー!」
12機のKVが宇宙空間に飛び出していく。
「各機散らばるな、エレメントを維持し、二対一で戦闘を展開」
ブルードラゴンズは鮮やかな操縦桿捌きでアクロバットに飛び交うと、次々とヘルメットワームをビームライフルで撃墜して行く。
「いいいやっほう! 隊長! どこを見渡しても敵だらけだ!」
「バグア人よ! ブルードラゴンズの戦闘力を思い知れ!」
KVはヘルメットワームの戦闘力を大きく上回っていた。数で勝るバグア軍機を圧倒する。
「リーダーよりオール、被害報告‥‥‥離脱機はなしか、その調子だ」
「進路クリア。発進、どうぞ」
火柴は戦況を確認して、出撃するKVをオペレートする。
「出撃する各機、敵機動要塞の、動きにも、注意して」
「火柴、KVネクスト、ヘイルストーム! でるぞ!!」
ヘイル(
gc4085)はテスト機体のKVネクストとともに艦隊に配備されていた。KVネクストの実戦は初めてである。
「テスト機、だから。無茶、しない、ように」
火柴はヘイルにはこの一言を添える。
ブースターを全開にし、最寄の敵集団へ突撃するヘイル。一気に加速すると、レーザーで次々とヘルメットワームを撃ち落としていく。
クイッ○ブーストを起動させて、ヘルメットワームのビーム砲をことごとく回避して行く。高機動で空間をアクロバットに回避して行く。反撃でレーザーを叩き込み接近、変形して機槍で貫く。さらにクイッ○ブーストで離脱。ミサイルをマルチロックし敵を殲滅する。
それでも続々とヘルメットワームが接近してくる。もの凄い数だ。
「ち、埒が明かないな。もっと一気に叩かないと‥‥」
火柴からの通信によって敵密集地帯のデータ取得すると、ヘイルは操縦桿を傾けた。ブーストで加速する。
「有難い。ヘイルより火柴。これより敵陣に突入する。オペレートを頼む」
「ヘイル機。突出しすぎ」
敵のど真ん中へ突っ込むヘイルへ注意。
「多少の無茶は承知の上だ。KVネクストならいけるさ。俺が死んだら涙を流してくれるか」
火柴は無感動に、
「冬瓜(馬鹿な男)」と返した。
「そう言うな。艦を守るために必要なことだ。それよりも代理に主砲の準備を要請しておけ」
クイッ○ブーストを連続使用しアクロバットに弾幕を抜け、コンテナミサイルを全基発射する。敵陣一部に穴を開け突入。
「セリア、弾道予測! こいつらを主砲軸線上に誘導するぞ!」
KVネクストに搭載された専用AIセリア。高機能のAIだ。
「了解。プラ○マル・アーマー整波率43%ですが‥‥いいでしょう。私達の力を証明しなさい」
敵陣突入、全方位からの弾幕の中をクイッ○ブースト、プラ○マル・アーマーを駆使して機動し、反撃も加えながら誘導する。
「まだだ! もっとだ、もっと! もっとこっちへ来い!!」
ヘルメットワームからの連続攻撃を受けてプラ○マル・アーマーの表面が薄緑色に波紋変色する。
「気をつけなさいヘイル。整波率37%にダウンしていますよ」
「了解セリア、ぎりぎりまで行く!」
一番艦――。
「ヘイル機、が、敵を集めて、くれた‥‥みたい。救援、到着前、に、風穴空ける、好機。‥‥艦長代理?」
火柴の言葉に、水無月は頷く。
「主砲発射の用意を。月読艦長に連絡」
「G−2と繋ぎます」
「水無月少佐――何か」
スクリーンの月読は首を傾けた。
「主砲で敵集団を後退させます。協力願えますか」
「了解しました。岩木も主砲に備えます」
「よろしく――火柴さん」
戦艦二隻は主砲発射準備を開始。
「G−1よりG−2および、戦闘中、の‥‥各機へ。これより、G−1とG−2による、主砲での敵一掃を、行い、ます。G−2は、準備を。各機、は、射線から、の撤退を」
「こちらブルードラゴンズ、了解しました」
「KV中隊、了解した」
「エネルギー、充填、開始。各機関、チェック。全力では、撃たないで、ください。後に、響く、から」
火柴は淡々とコンソールを操作していく。
「エネルギー、70%に、到達。仰角、誤差修正。エネルギー充填、ストップ。KVの離脱、確認。G−2も、発射準備、完了。艦長代理、お願い、します」
水無月は手上げた。
「主砲発射――」
暗黒の空間を貫く二本の閃光。ヘルメットワームの集団が主砲で吹き飛ぶ。
「ふう、これで少しは‥‥!?」
「敵の大二波が来ます。もの凄い数です」
戦場後方。救援の連邦艦隊が続々とワープアウトしてくる。
「あれが異星人――緒戦の敗北は許されんな。全艦対空レーザー・主砲展開。戦闘機隊は発進用意を進めよ!」
ノルディア・ヒンメル(
gb4110)提督は、手早く命令を出していくと、巳沢 涼(
gc3648)提督も素早く艦隊を展開させる。
「バグア人め! その遊星を貴様らの墓場にしてやる!」
巳沢提督は戦況を確認して、マイクで全艦に告げる。
「そう長くは持ち堪えられんだろう、急ぐぞ! 各艦、主砲斉射三連後に突撃! 第七艦隊を救え!」
火柴はそれを確認して各艦に告げる。
「救援、到着‥‥しました。第七艦隊、一時、後退、します。所属各機は、一度、帰還して、ください」
「巳沢艦隊は前に出るぞ! 第七艦隊、下がってくれ!」
巳沢提督は鶴翼陣を展開し敵を迎撃。
「‥‥救援が着ましたね。負傷者を後方へ輸送してください。戦闘能力がある以上、ここで下がるわけには行かないです」
水無月は言って、友軍と交信する。
「救援、感謝します。正式な挨拶は敵の排除後に‥‥。それでは、失礼しますね」
海原環(
gc3865)は巳沢艦隊の戦闘機中隊隊長。
「こんな少数で大丈夫かって? 巳沢提督は女性にはモテないけど戦は滅法強いから大丈夫だよ。行くぞ」
海原はKVを率いて出撃して行く。
ヒンメル艦隊からもブロント・アルフォード(
gb5351)らが出撃する。電撃作戦を得意とする切込部隊『サンダー・クロウ隊』の隊長だ。
「全機生きて帰るぞ‥‥誰一人として死ぬことは許さん」
ブロントは自らは先陣を切り第7艦隊の救援に向かう。奮闘するヘイル機の救援に向かう。
「そこのテストパイロット、聞こえるか? こちら『サンダー・クロウ隊』。これより援護する!」
猛烈な勢いで加速するサンダー・クロウ隊。ビームライフルをヘルメットワームに叩きつける。
救援艦隊から出たKVの大部隊がヘルメットワームを撃墜して行く。
「識別はセイバー。『双璧』艦隊のエースか。流石、と言うべきか。敵が崩れ始めた」
ヘイルはブロントと回線を開く。
「こちら第7艦隊所属のヘイル。これより貴隊の援護を行います」
「生きていたか。良く持ちこたえたな」
ブロントは部下とともに加速すると、ビームサーベルでワームを叩き斬り、ファ○ネルで圧倒する。
「切り込むぞ。俺に続け! 全機、クリムゾンを起動しろ。サンダー・クロウの本領発揮だ!」
ハイパー・ブリッツ・モード「クリムゾン」で宙間を駆け抜けるサンダー・クロウ隊。
海原も前進して、敵ワームを叩いて行く。自らの機体はX字状に翼が開くKV−X。
「各機。星々の守りあれ」
「星々の守りを」
海原中隊は凄まじい速さで突進すると、敵機を撃墜して行く。
巳沢は戦況を見やりつつ、KVがヘルメットワームを撃墜して行く様子を確認する。
「KV隊! 艦隊中央に集結せよ! 敵遊星内部への突入作戦を開始するぞ!」
巳沢は艦橋で仁王立ちで全機に命じる。
「敵ワームには三機一組みで当たれよ! 戦力を無駄にするな!」
それから、全艦に突入を命じる。
「余剰エネルギーは全てシールドに回せ! 総員腹ぁ括れよ、機関最大戦速! 突撃開始だ!!」
ノルディア・ヒンメル提督は、これを見て、頷いた。
「――宜しい、本懐である。ヒンメル艦隊全艦に通達、これより我らは前方の敵艦隊を突破。その後敵要塞に肉薄し、巳沢艦隊と共に攻撃部隊の目標突入を支援する。全艦紡錘陣形を取りつつ最大戦速。巳沢艦隊に遅れを取るな!!」
「援護は頼むぞノル」
第七艦隊二番艦――。
ニコラスは月読に自策を力説していた。
「バグア機動遊星は、表面を厚い装甲と無数の砲台で固めています。決定的な打撃を与えるには、遊星内部への直接攻撃をしかけるしかありません」
ディスプレイを操作して、バグア遊星のデータを確認する。
反物質燃料を搭載した機雷をバグア機動遊星内部にワープアウトさせ、核破壊を試みる。
「こんなこともあるかと! 遊星内部を直接攻撃できる新兵器を用意しておいたのだ!」
「でもそれ大丈夫なの? KV隊が突入しようとしているけど」
「私が設計思想から、使っているネジ一本まで考えて作った戦艦です、甘く見てもらっちゃ困ります。大丈夫です」
「じゃ、やっちゃって〜」
しかし、遊星内部へのワープは妨害され策は失敗する。
――遊星内部への開口部付近では、激戦が繰り広げられていた。
「ここが踏ん張り所だ! 必ず無事に送り届けろ!」
巳沢提督は、衝撃に揺れる艦橋で指揮を取り続けていた。
「突入部隊に告ぐ、奴等に目の覚めるモン喰わせてやれ! 諸君らに星々の守りがあらんことを!」(死ぬなよ、環‥‥
突入作戦が始まると、月読は通信装備を出力全開にするように命じる。
「艦長、オンステージです」(冷静なオペ子)
待ってましたとばかりに、アイドルソングや心に訴えかけるバラードを歌い出す月読。バグア人に歌は通じるのか?
「アタシの歌を聞けぇ!」
バグア人の回線に鳴り響く月読の歌。
「みんなー! 頑張ってー! 銀河のー! はじっこでー! I lov you、I lov you、銀河に平和と愛を〜」
歌い続ける月読。
「艦長、バグア軍から応答はありません。歌に反応はなしです」
「イケズな宇宙人だなー。歌の素晴らしさが分からないとはねー」
月読は言って、艦を遊撃の位置に回した。
海原中隊は、友軍各機、ヒンメル艦隊と巳沢艦隊が作り出した間隙を縫って、敵の対空砲火をやり過ごし、バグア遊星内部に侵入する。
「星々の守りあれ」
それから海原は中隊を率いて加速する。
「第一目標核、第二目標核、第三目標核だ! 他には目もくれるな!」
「了解!」
「シールドを前面に集中しろ」
偏向シールドの出力を上げて加速する。
遊星内部、不気味でグロテスクな空間や通路の中を飛ぶ。
「ピー、ポー」
と、補助ロボットが危険を告げると、
「大丈夫だから最大戦速まで上げろ」
海原は言ったが、ロボは「ピポパ」と心配の声を上げた。
「やるしかないよ。おっと‥‥今のは危なかった」
迎撃のレーザーが直撃する。
「隊長! これ以上は持ちません! うわあああ!」
次々と部下達が撃墜されていく。海原は心を殺して、更に加速、そして――。
「核が見えた!」
照準装置を引き出す。しかし、核を狙えるのは僅かな隙間。どうしても当たる気がせず惑う。
『環、星々の声を聞け‥』
どこからともなく声がする。
「師匠?」
「プル、プー」
怪しむロボに、
「大丈夫だ、問題無いよ」
海原は照準装置を外すと、自分の心を信じてプ○トン魚雷を発射した。
魚雷は吸い込まれるように核を捕えた。
「やった! 脱出するよ!」
連鎖爆発を起こす遊星から、離脱する海原。
「突入部隊がやったか――!」
巳沢提督は爆発して行く遊星を見て、頷いた。
「よし、全艦最大戦速で離脱する、ヴァイスローゼは粒子砲の使用を許可する。我々の路を阻む者は、これを実力を以って排除しろ!!」
ノルディアも艦隊を離脱させる。
海原は間一髪飛び出した。
凄まじい閃光と爆炎を上げて消滅するバグア遊星。
ヘルメットワームは散り散りに逃げ散っていく。
巳沢は回線を開いた。
「ノル、大丈夫か!」
「リョウ‥‥旗艦はこれ以上持ちそうにない、後を頼むぞ」
「ノル、脱出しろ!」
「すまない、後を頼むぞ」
ノルディアは傷ついた体でマイクを手に取る。
「――総員、直ちに退艦せよ。ヴァイスローゼはここまでだ。私に付き合う事は許さん。諸君には、これからバグアとの戦いが待っている‥‥」
炎上して轟沈してくヴァイスローゼと、戦友の死を確認した巳沢は、軍帽をかぶり直した。
「全艦後退せよ。KV隊ご苦労だった。だが、休むには早い。1000個のバグア遊星がまだ残っている。我々の戦いは、これから続くのだ‥‥」
――銀河の戦いが始まる。