●リプレイ本文
●福岡南八女郡
「兵装2、3、4、5発射準備完了。PRM『アインス』Aモード起動。マルチロックオン開始、ブースト作動」
ソード(
ga6675)は敵の指揮官機を射程に捕えると、コンソールを操作して行く。
「ロックオン、全て完了! 『レギオンバスター』、――――発射ッ!!」
2100発のミサイル群が、ヘルメットワームの集団に叩きつけられる。
爆裂と轟音がワームを包み込む。レギオンバスターの破壊力はバグア軍にとって悪魔的。
「レギオンバスター‥‥噂の傭兵ソードか。確かに並み外れた性能を持っている」
ソードは首を傾げた。
「高橋‥‥ではないですね。新たな指揮官の方ですか? お名前をお伺いしてもよろしいでしょうかね?」
「私は、洋子。春日のプロジェクトによって生み出された強化人間だ。高橋麗奈も、元々はプロジェクトの被験者だ」
「ふむ‥‥そんな厄介な相手は、早々に撃退させてもらいますよ」
ソードは加速した。
洋子もヘルメットワームを最高速で操ると、ソードの前から逃れる。
ボク? そうだね、こうもダムの思惑通りなっちゃうとね、ボクの存在を刻みたくなったのかな。ソーニャ(
gb5824)はダムの声を聞いた気がした。
「電子戦機へ、陸戦班の援護を願います。制空権を取っても、地上を制圧されたら終わりよ」
地上班が粘れば、優先的に地上へ戦力向けるはず。
功名心や欲に関して、人間もバグア軍も大差ないと知った。ならば、逃げる敵に対して必ず追ってくる。
それにあの見慣れない指揮官機。いかに優秀な指揮官であっても、人心を掌握するには実績がいる。新人の指揮官なら必ず反感ややっかみがある。
ダム‥‥指揮官を育てようと優勢な所へ配置したのかもしれないけど、そこが落とし穴だよ。
「行けーエルシアン!」
マイクロブーストにアリス起動で突撃、G放電、AAEM、レーザーの連射。
洋子は巧みな操縦でソーニャを振り切ると、旋回して背後を取った。
プロトン砲がエルシアンを直撃する。
「強い‥‥何てね」
ソーニャは洋子を引きずり出そうと後退して見せる。
「全機に告げる、UPC軍は精鋭揃いだ。機体に過信することなく、最後まで手綱を緩めるな」
洋子の言葉に、バグア軍は一糸乱れぬ動きを見せる。
「へ〜アンタが洋子か? いい声してるなー。なーアンタ、アンタに勝ったら一つ質問に答えてくれないか?」
世史元 兄(
gc0520)はペインブラッドを操りながら、洋子に呼び掛けた。
「私を挑発しても無駄なことだぞUPC」
「そんなんじゃねえさ。さーてダルは後何人幹部と幹部候補を持っているか? そいつを聞きたい」
「そんなことか。春日では人材は事欠かない。北九州陥落の際に、UPCの軍人を多数確保しているのでな」
「そうか、有難う‥‥なーアンタ、もう一度こっちに付くきはないか?」
「何を言っているのだ。UPCに帰ることなど出来ん」
地上では、ジャック・ジェリア(
gc0672)たちが進軍していた。
「厄介な敵も含めて数も大量と来たもんだ。ま、逆襲は簡単じゃ無さそうだがとりあえずはここで止めないと先も無いな‥‥」
ジャックはゴーストを前進させ、ゴーレムでタートルワームを撃ち抜いて行く。
「ゴーレムを近づけるなよ。頼むぜ」
ジャックは大火力のゴーストの銃撃で、タートルワームを粉砕して行く。
タートルは後退して咆哮するが、ジャックは容赦なく襲いかかった。
――上空では、キューブワームの怪音波が鳴り響き、傭兵たちを苦しめていた。
「痛ぅ――!」
ソードは頭を押さえて、エニセイを撃ち込むが、うまく照準が定まらない。
キューブを確実に組み込んで、洋子は戦列を整えると、反撃に転じる。
「キューブから潰さねえと、当たらねえぞ」
世史元は仲間たちに言いつつ、銃撃をどうにかキューブに当てる。
「確実に落としていけ、いずれUPC軍には限界が来る。それまでに、敵を確実に後退させていくのだ」
洋子は最前線で冷静な采配を振るい、UPC軍を撃破して行く。
「ボクが思っていたよりも敵の士気は高い‥‥か。悔しいけど、やるね」
ソーニャは怪音波の頭痛に眉をしかめながら、機体を操る。
傭兵たちはキューブの攻勢に苦戦しつつも、どうにか態勢を整えるが、持ち堪えるのは厳しいものとなっていく。
●熊本北部
戦闘開始前、藤田あやこ(
ga0204)は戦死した元恋人の遺影に語っていた。彼は最近になって中国で戦死したと知らせがあった。
「貴方の闘志は継ぐから‥‥私を護って」
あやこは立ち上がると、涙をぬぐって、感情を抑えきれずに爆発した。
「唯一無二の人を奪ったウォン! 報復に部下の命を奪ってやる‥‥!」
最後にあやこは、遺影に言葉を投げた。
「例え何度生れ変っても貴方と一緒だよ」
「軍KV各機へ要望」
あやこは味方に矢継ぎ早に言葉を投げ出した。
「各機、正規軍情報網へリンク! 骸龍とウーフーは索敵能力を全開、FRの警戒を」
「イビルは回避の支援を、ハヤブサは遊撃兼物護衛を乞う」
「ラジャー、電子戦機は支援に務める」
あやこはさらに続ける。
「物理特化の機体は前衛で防御面を固めて下さい」
「ロビン等の知覚機は物理機の後衛へ!」
「藤田機はロビンらと組んで接敵の機会を伺います」
「前衛が物理攻撃で畳掛けた後、我々短射程の知覚武装機体で一撃離脱します」
「物理特化機は我々の背後を護って下さい、特にハヤブサは機動性を生かして敵の回り込みを阻止願います」
「了解した――が、藤田、大丈夫か。死に急ぐなよ」
心配した軍属傭兵が言葉を掛けた。
「ありがとう。私は大丈夫です」
「行くぞあやこ。この戦争で多くのものを失ったけど、みな死ぬにはまだ早すぎる」
ユーリ・ヴェルトライゼン(
ga8751)はあやこ機とロッテを組むと前進する。
「ガッハッハ! 行くぞ皆の衆! ゴースト、支援攻撃を頼むぞ!」
陸戦の孫六 兼元(
gb5331)のオウガは先陣を切って突撃して行く。
「まずは亀からだ! 続け!」
「只でさえ熊本北部は敵戦力が多いようですから状況把握は必須ですので宜しくお願いします」
神棟星嵐(
gc1022)は言って、孫六が叩きだしたKVの配置を確認していた。友軍は空陸ともに均等に配置された。
やがて地上にもキューブの怪音波が来る。
「キューブワームは厄介極まりない存在です。やはり優先するべきでしょう。お願いします」
「了解。任せておけ」
星嵐のミカガミは友軍とともに前進する。
敵ゴーレムの大部隊が戦列を組んで姿を現す。
ズキュウウウウウウウン! とタートルワームの大口径プロトン砲が火を吹き、閃光が空を貫く。空戦が始まる。
「行くぞ! 陸戦部隊――敵陣をこじ開けろ!」
孫六はゴーレムと激突した。機刀を振るい、ゴーレムを切り裂く。
「ぬう!」
プロトン砲の直撃を圧縮装甲で受け止めるオウガ。立て直して操縦桿を前に倒す。
「アメノオハバリよ! 敵を切り裂け!」
加速したオウガはゴーレムを両断した。
星嵐も激戦の中へ突入して行く。ゴーレム、タートルワームには自分率いる近接メインのKVで各個撃破。又、タートルワームは「アンジェリカ・スピリットゴースト」にて知覚・火力重視で攻撃。キメラには「ペインブラッド・雷電」で掃討。
「くっ‥‥厳しいところですが」
星嵐は二刀の武器でゴーレムと打ち合う。まだまだ経験の浅い星嵐に、この激戦は実際酷なものがある。
「自分はこんなところでは死ねない、あの人のためにもっ」
星嵐はゴーレムを切り裂いた。爆発轟沈して沈む敵ワーム。
「やった‥‥!?」
乱戦の中、星嵐は赤い機体を目撃する。レーダーに映るマークは、それがティターンだと告げていた。
「あれは、高橋麗奈ですか」
ティターンは向きを変えると、銃撃を弾き返しつつ、星嵐に向かってくる。
「こっちへ! ティターンです!」
星嵐はミカガミとシラヌイ数機で対処に向かう。
「あれがダム・ダルの片腕‥‥決死の覚悟で沈めに行く!!」
「何をほざくか傭兵。私を沈めるだと?」
高橋は笑声を発した。
「撃て! 撃って撃って撃ちまくれ!」
ティターンは盾を構えると、銃撃をことごとく弾き返した。
「速い!」
星嵐は後退しながら武器を構えたが、ティターンの動きについていけない。
「死ね――!」
ティターンの刀がブルーゴッテスを一撃で粉砕した。崩れ落ちるミカガミを、星嵐はどうにか後退させる。
「上空にファームライドが出現しました!」
「来おったか!」
孫六は地上をツインブーストで離脱すると、ファームライドに立ち向かった。
「待っておったぞダム・ダル!」
「聞き覚えのある声だな。確か孫六、か」
「ガッハッハ! 今日こそ決着をつける! ワシの翼刃にて貴様を切る!」
「何を馬鹿な。この状況でか」
孫六は牙を剥いて操縦桿を傾ける。
「行くぞ! 友軍各機、奴の足を止めてくれ!」
「無茶はするなよ孫六」
バルカンをFRのやや前方を狙い、慣性制御で避けるのを予想し「敵の進行方向以外へ、山を張って」斬り込む。その際、僚機に「自分が攻撃した以外の場所」へ攻撃して貰う。つまり敵を直接狙うだけで無く、その周囲を狙いFRを止める。
今回孫六はKVの展開など全体の作戦運営にも欠かせぬ存在となっていた。そのため、戦術面では準備が不足したのは否めない。
ファームライドはアクロバットにオウガの翼刃を回避すると、あっという間に上に回り込み、銃撃を叩き込んだ。
「ぬう――!」
「言ったはずだぞ」
炎上するオウガをどうにか操り、孫六は離脱する。
「ダム・ダルなんてどうでもいい‥‥! ウォンの部下を一人でもやる!」
あやこは激情に燃えていた。
D02ライフルを連射して敵ワームを牽制する。
「編隊は物理特化機で前衛を固め、弾幕と防御力を盾に! 回避高めの機体は奇襲の阻止など遊撃を頼む!」
あやこはロビンと組んで後衛へ回った。
激情に駆られながらも、確実に敵を撃墜する選択を取った。
「SESエンハンサー! 少しでも前へ踏み込んで一斉に撃つ!」
「ダム・ダルが出たか‥‥無視はできないけど。無理も出来ないな」
ユーリはレーダーに目を落としながら、キューブワームが潰されていくのを確認する。
「孫六さんが撃ち落とされました」
「やられたか」
ユーリはファームライドの様子を確認する。レーダーは強力なジャミングで砂嵐に包まれていたが。
「味方は‥‥どうにか思い通りに動いてくれているけど、しかし敵の数は補えないな」
ユーリは言いつつ、トリガーを引いてヘルメットワームを撃墜した。
圧倒的なプロトン砲の閃光が飛び交う中、UPC軍は善戦していたと言って良い。
全体の機体配分は今回孫六がとりまとめ、空戦に関してはユーリが細部を詰めていた。
★空戦の主力と思われるタロス対応に破暁・フェニックス・シュテルン、HW対応にロングボウとディアブロ、CW排除にディスタンとS−01Hを当てる。
★CW排除完了までロビンにはアリスシステムを入れて貰い、ハヤブサと共に高機動遊撃としてタロス対応に各10機、HW対応・CW駆除に各5機サポートに入って貰う。
★電子戦機はタロス班とHW班に骸龍4・ウーフー2・イビルアイズ1、CW班に骸龍2・ウーフー1・イビルアイズ1を付けそれぞれ中和と逆探知・キャンセラーで適宜サポートしつつ簡易情報網と管制を。
★残りのロビン5・ハヤブサ5・骸龍2・ウーフー1・イビルアイズ2はあやこに付いて遊撃として、近接戦と物理防御・電子補助を。
ユーリは空戦の一隊をまとめ上げて、ことに当たっていた。
「どうにか持ち堪えているが、あのFRは止められんぞ」
軍属傭兵の言葉に、ユーリは思案顔。
「今回はとにかく、決定的な戦況を作りださないように、これ以上熊本への侵入を食い止めよう。FRにはまともに行かず、練力切れを誘い出せ」
その頃、あやこは突進して、ドゥオーモを敵エース機に叩きつけた。憎悪を込めて一気に敵エースに叩き込む。
「お前ら彼を奪った劫火を億倍にして叩き返す!」
爆炎と轟音が巻き起こり、エース機は炎に包まれて傾く。
「彼の無念はこんなものじゃないわよ!」
あやこは感情を露わにしていたが、頭の中は冷たかった。敵の死をいつになく平静に見つめていた。
●佐賀方面
「こちらは敵への陽動だが、実際どうなのかね、何か藪蛇になっている気がしないでもない」
ヒューイ・焔(
ga8434)は接近してくるワームのマークに目を落としていた。
「ロングボウ用意は良いか」
「準備はOKだ」
「敵軍射程内に入る――ミサイル攻撃を開始する」
「FOX2」
「FOX2、ミサイル発射」
ロングボウのミサイル誘導システムで、次々とミサイルを撃ち込む。
ヘルメットワームはそのまま突進してくると、ミサイルの直撃を受けながらも圧倒的なプロトン砲を連射してくる。
「各自、ドッグファイトに移行するぜ。タロスには気をつけてな、キューブワームをまずはどうにかしないと」
ヒューイは真っ先にキューブワームに狙いをつける。
キューブの怪音波が激しい頭痛を引き起こす。
「こいつが厄介‥‥包み込まれる前に叩き落とさないとっ」
ヒューイはバルカンを叩き込んでいく。
キューブワームは単体でいるうちにはさして脅威ではない。早期に殲滅すればどうにかなるが、他のワームと連動されると非常に厄介である。
「邪魔だぜ、まとめて落としてやるぜ」
ヒューイのハヤブサたちは次々とキューブを潰していく。
「ヘルメットワームはどうにかなるか? タロスは厳しいな。陸にも目を向けないといかん」
ヒューイは友軍と連携してキューブを減少させると、積極的にタロスへ向かって行く。
「集中攻撃を、再生させるなよ」
――地上ではアーク・ウイング(
gb4432)たちが地上の敵軍排除に向かっていた。
「守ってばかりだとジリ貧になりそうだからね。ここらで一発かましておかないと」
陸戦配置については下記のとおり――。
ミカガミ×10、阿修羅×10、ロビン×10、アンジェリカ×10、S−01H×10、ハヤブサ×5、イビルアイズ×2、ウーフー×2
接敵後、S−01H、ハヤブサ、イビルアイズ、ウーフー全機には、キメラの対応にまわってもらう。
「行くよ、まずはゴーレムを排除する」
「ああ、どうにかここらで一発ぶちかましてやらんとな!」
「全機突入!」
アークたちは迎撃に出てくるワームやキメラを掃討に向かう。
「行けー! 敵の戦列をこじ開けるよ!」
突進したアークたちは、ゴーレムと切り結んで戦列を突き破ると、対空攻撃を行うタートルワームに突撃した。ミカガミとロビンとともに、アークはタートルワームに突進する。
練剣「白雪」で亀を両断して、それから機刀に持ち替えて攻撃して行く。
そうして――。
八女郡からはUPCは後退、熊本北部のバグアの突進は止めた。佐賀方面は一進一退で戦闘は幕を引く。
「‥‥さん、あなたの意思を継いで、私は戦います」
戦闘終結後、あやこは北の空を見つめた。