タイトル:【ODNK】みやま市救援マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 1 人
リプレイ完成日時:
2009/04/01 22:47

●オープニング本文


 福岡南西、みやま市。バグアと人類の競合地域である。両軍の戦力が展開し、慢性的な戦闘状態にある。
 地上部隊は散発的に現れるキメラを迎撃していた‥‥。
「撃ち方用意!」
 望遠鏡を構える下士官の声で兵士たちは重火器やロケット砲を構える。
 接近してくるのは猛獣のような大型キメラ。大地をもの凄い速さで突進してくる。
「放てえ!」
 兵士たちはトリガーを引いた。
 ドドオオオオオオン‥‥!
 重砲の弾丸がキメラを直撃、その肉体を木っ端微塵に吹っ飛ばす。
 続いて現れる複数体の猛獣キメラに、隊長は部下達に後退を命じる。
「反撃しつつ後退!」
 兵士たちはありったけの弾丸をキメラに叩きつけ、出足を挫くと、じわじわと後退していく。
「怪物め‥‥数で圧倒しようってか」
「毎度のことだ。餌と見れば突撃してきやがる」
 兵士たちは走った。やがて、市街地の比較的開けた場所にキメラを誘い込む。
 そこには数台の戦車が待ち構えていた。部隊は改めて陣を敷くと、戦車を前面に押し出してキメラを待ち受ける。
 ガオオオオッ!
 UPC軍が待ち構えるところへ、キメラたちは飛び込んできたが――。
 次々と火を吹く戦車の砲列。突進してくるキメラを次々と粉々に打ち砕いていく。
 兵士たちも反撃。戦車が撃ち漏らしたキメラに対戦車ライフル、ロケットランチャー、ミサイル砲を打ち込む。
 ドゴオオオオッ! ドドオオオオン‥‥! ドドドドオオオオン‥‥!
 嵐のような弾幕に次々と撃破されていくキメラたち。
 やがて、キメラたちは恐れをなしたか後退し始める。
「どうやら怪物たちも諦めた様子だな‥‥ご苦労さん、敵は撤退したようだ」
 戦車を操る装甲部隊の兵士はキメラの後退を確認して歩兵達に労いの言葉をかける。
「もう大丈夫だ! 敵は撤退したぞ!」
 兵士たちは隠れていた民間人に呼びかける。こわごわと市民達が姿を見せる。
「この辺りもかなり敵の侵攻が近付いてきました、みなさんは安全な南へ非難して下さい」
 隊長は護衛をつけて市民を送り出そうとした‥‥その時。
「な、何‥‥! 隊長あれを‥‥!」
「‥‥!」
 兵士たちの目に映ったもの、それは地面すれすれの超低空飛行でゆっくりと進んでくるヘルメットワームであった。
「ヘルメットワームだと!」
「迎撃!」
 戦車に乗る兵士たちは低空で市街地に侵入してくるヘルメットワームに慌てて火砲を叩きつけた。
 しかし――戦車の砲弾にびくともせず、次々と現れたヘルメットワームは地上部隊を取り囲み、プロトン砲を掃射した。
 圧倒的な破壊力。後退する戦車を次々と破壊していく。そして――。
 絶望する人々の上空に浮かぶヘルメットワームの装甲は、ただ無機的な光を放って空中にあった。攻撃が止んでしばらく、一方通行の通信が流れてきた。
「‥‥降伏せよ、しからざれば攻撃する‥‥降伏せよ、しからざれば攻撃する‥‥」
 バグア軍からの降伏勧告が無慈悲に無線から鳴り響く‥‥。
 果たして、生き残った兵士は通信機に飛びつくと、後方の基地に援軍を求めた。万に一つの可能性を信じて。

 ――ラストホープ。
 みやま市で交戦中の部隊が避難途中の民間人とともに四機のヘルメットワームに取り囲まれていると言う知らせが入ってきた。
 バグアは降伏を呼びかけていると言うが、信じ難いことである。基本的にバグアにとって利用価値のない人間がどんな運命を辿ることになるか、火を見るより明らかである。
 あるいは何かの罠か。十分に考えられることだが、時間はない。いかにして人質を救い、彼らを無傷でワームを撃退するか、傭兵達はナイトフォーゲルに乗り込むと、一路北九州目指して飛び立った。

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
伊佐美 希明(ga0214
21歳・♀・JG
藤村 瑠亥(ga3862
22歳・♂・PN
アルヴァイム(ga5051
28歳・♂・ER
ロジャー・ハイマン(ga7073
24歳・♂・GP
ユウ・エメルスン(ga7691
18歳・♂・FT
風花 澪(gb1573
15歳・♀・FC
アーク・ウイング(gb4432
10歳・♀・ER

●リプレイ本文

 有明海を低空で飛ぶ八機のナイトフォーゲルは合図を待っていた‥‥。
「‥‥最悪の事態も考えておくべきでしょう」
 心を鬼して郷土防衛の戦いに臨む藤田あやこ(ga0204)の言葉に、能力者たちの顔が厳しいものに変わる。
「ま、バグアが人質を生かしておくわけないね。あやこの言う通りかもしれないね‥‥最悪のケースも考えときな藤村。私はここにいるメンバーの命を優先する」
 伊佐美希明(ga0214)はペアを組む予定の藤村瑠亥(ga3862)に呼びかけた。
「お前に言われるまでも無いさ。俺も心積もりはしているつもりだよ」
「ふん、ならいいけどね」
「だが――」
 とアルヴァイム(ga5051)が口を挟んだ。
「救出を求めている者がいる限りは助けたいものです。元より我らに求められているのはただワームを倒すことではないでしょう」
「誰一人死なせたくは無いですね‥‥望みがある限り」
 ロジャー・ハイマン(ga7073)は一人でも死なせたら後悔するだろうと思っていた。
「搦め手ってのはどうも好きになれねぇ。侵略者ってんなら真正面から攻めてきて欲しいもんだ。まぁどんな手でこられてもやることは変わんねぇがな」
 ユウ・エメルスン(ga7691)は言って肩をすくめる。確かに全員がユウと等しい思いであった。もっとも、これはバグアと人類の戦争であり、人類は滅亡の瀬戸際に立たされている。バグアに正々堂々と戦えと騎士道精神を求めても無理な話ではあるが‥‥。
「大規模作戦以外じゃ初めてなんだよね機体乗るの‥‥。ちゃんとできるかなー‥‥不安すぎるぅー‥‥」
 風花澪(gb1573)の言葉にペアを組む歴戦のアルヴァイムが言葉をかける。
「風花、貴様のことは我がサポートしましょう」
「う、サポートされたい‥‥」
 通信機の向こうでぽふっと吐息する風花にアルヴァイムは肩をすくめる。
「と、とにかく足引っ張らないように頑張るね」
「よろしく」
 仲間達の会話を聞きながら、一人アーク・ウイング(gb4432)は呟いていた。
「かなりまずい状況みたいだね。人質全員助けたいけど、厳しいかな。でも、やるしかないね。アーちゃん頑張るしかないよ」
 10歳?の能力者は半ば自分に言い聞かせているようだった。
 と、アークは呟くのを止めて顔を上げる。
「間もなく作戦開始です‥‥」
 あやこの言葉に全員操縦桿を握りしめる。
 そして――前方の山岳から合図の照明が上がる。
「行きましょう、全機ブーストで突入します」
 アルヴァイムの言葉に全員ブーストをかける。
 空を駆け抜けるナイトフォーゲルが超音速で戦場へ突進する。
 合図の十キロ地点から人質が捕らわれている場所まではブーストで約十秒。この十秒に能力者たちは全てを賭けた。

 ――戦闘区域。人質となった兵士と民間人は恐怖の眼差しを上空のヘルメットワームに向けていた。
 と、ヘルメットワームが角度を変えて地面の方を向く。
 ブウウウウウン‥‥。
 触手のようなワームの腕に光が収束していく。そして、閃光が爆発し、大地の人々をなぎ払った。
 プロトン砲を食らった人々は一瞬にして消滅した。

「人質に手を出す時間を与えず、一気に叩きのめすよ」
 アークが呟く間に、能力者たちは戦場に到着する。
 四機のワームを確認した能力者たち、シュテルンを操る藤村、ロジャー、風花、アークたちはバーニアを全開にして急ブレーキをかけると変形しながら大地に降り立った。
 あやこはラージフレアを散布して急降下。ユウも着陸するとラージフレア鬼火を放つ。
 D2ライフルで藤村機を援護する伊佐美。ヘルメットワームはゆっくりと向きを変える。
 藤村は負傷中のためファーストコンタクトに全てを賭ける‥‥!
「っく‥‥! 不甲斐ないな、これは」
 ブーストの加速も今の藤村には負担だったようだが。
「最初で最後だ‥‥終わらせてもらうぞ!!」
 機槍ロンゴミニアトをヘルメットワームに叩き込む!
 大爆発にHWの機体が傾くが――。直後にワームから反撃のプロトン砲を食らう藤村。
「っち‥‥、やはり無理だったか‥‥後は頼む!」
 後退する藤村。
「人質は‥‥どこに‥‥!?」
 ロジャーは足元で動いている人影を発見してHWとの間に割って入る。
「ラストホープからの救援です! 皆さん無事ですか!」
 ロジャーは叫びながらHWにバルカン砲を叩き込む。
「こ、攻撃された‥‥何とか‥‥まだ生き残っている者が‥‥(ザザーッ)」
 ――ズバアアアアア!
 プロトン砲がロジャーのシュテルンを襲う。懸命に立ち塞がって生き残った人質を庇うロジャー。
「必殺あやこキーック!」
 外部スピーカからあやこの声が鳴り響くと、人々は慌て逃げ出す。あやこはレッグドリルでHWを蹴り上げる。ドリルがHWの装甲を削る。
「悪夢鋸、金曜斬!」
 KV用チェーンソー金曜日の悪夢を振るうあやこのロジーナだったが、HWは後退しながらプロトン砲を放つ。
 そこに襲い掛かる風花のシュテルン。ディフェンダーで切りかかる!
「そこっ! 今日はきっちりつけを払ってもらうよ!」
 ドゴオオオオ!
 爆発が生じるもHWはくるっと急旋回して後退しながら風花機にプロトン砲を叩き込む。
 ――ズバアアアア!
 別のHWが風花機にプロトン砲を浴びせかけながらゆっくり旋回する。
 ドドドドドドドドド!
 アークはマシンガンを連射する。
 HWは後退しながらアーク機にプロトン砲で反撃――。
「おっとそこまでだ」
 ユウはフレアを放ち、ガトリングでアークを援護する。
 と、四機のHWはくるっと下方を向きながら高速で上昇、しつつ置き土産のプロトン砲を地面に叩き込んだ。
 爆発に吹っ飛ぶ人々。
 HWは速やかに地上を離脱すると、一瞬の間に超音速へ加速し、上空の伊佐美機、アルヴァイム機に襲い掛かってくる。
「おいでなすったな‥‥!」
 伊佐美は高速で上昇するHWの背後に食らいついた。
「これでも‥‥食らえ!」
 伊佐美はミサイルを全弾発射した。――が、何とHWはでたらめな加速力でミサイルを全弾振り切った。
「‥‥んな!」
 そしてKVにも不可能な急旋回を見せると、まっしぐらに突進してくる。
「ちっ‥‥」
 伊佐美はD2ライフルの照準を合わせると、トリガーを引いた。
 HWはそのまま突進してくると伊佐美機に激突。フォースフィールドを使った体当たり、フィールドアタックだ。
「野郎‥‥!」
 HWを憎々しげに睨み付ける伊佐美。
 上空でHWと激しいドッグファイトを展開するアルヴァイム。
 ドウッドドウッ! ドウッドドウッ!
 ロケットランチャーが流れるようにHWの軌跡を追うが――。HWは全弾振り切って高速旋回するとプロトン砲を打ち込んでくる。
 すれ違いざまにガトリングを叩き込むアルヴァイム。
 ドドオオオオオオ!
 爆発と炎がHWを包み込む。アルヴァイムのディスタン恐るべし。
「逃がしはしませんよ」
 アルヴァイムは通り過ぎるワームを見やりながら操縦桿を傾ける。急速旋回しながら背面飛行、ローリングで機体を立て直してワームを追う。
 他の六人も空に上がってくる。
「許さない! あなた達だけは許さない‥‥! けど、ここから何とかして引き離さないと‥‥地上が危険です」
 あやこは飛びながら仲間達に呼びかける。
「数ではこちらが上です、何とか追い込めませんか」
「やってみましょう。ペアでワームを挟み撃ちに」
 アルヴァイムはバンクでサインを送ると、風花とペアを組む。
「ロジャーさん、そっちをお願い」
「了解」
 あやこ、ロジャーのペアは目標のHWを挟み込む。
「地上は地獄絵図だ‥‥。何とか彼らを救う方法はなかったのか‥‥自分の不甲斐なさに腹が立つ」
「藤村、嘆くのは敵を倒してからにしな」
「いや、本当に負傷が悔やまれるが‥‥」
「行くよ!」
 藤村と伊佐美はHWを猛追して追い立てる。
 ユウとアークもHWを挟み撃ちにする。
 数で勝る能力者たちは空中を激しく舞いながらHWを追い立てる。
 だがHWの機動力はでたらめなまでのスピードに旋回、直角ジグザグ飛行と何でもありでKVでは付いていけない場面がある。
 数で勝る能力者たちを弄んでいるかのように飛び交うHWは全くその場を離れようとしない。それどころか攻撃してくる。
「駄目だ、こいつら全く動かないよ」
 伊佐美が苛立たしげに呟く。
「これ以上は無理だね、何とかここで食い止めるしかない」
 伊佐美は操縦桿を傾けながらHWの攻撃をかわす。
 最小の被害で敵を倒すにはせめて空に引き上げただけでも良しとするしかないだろう。能力者たちは地上の人々にほとんど使い物にならない無線で何とか避難するように言ってから、再度反撃に転じる。
 あやこは気合いを込めて操縦桿を傾けると、HWに食らいついて8式螺旋弾頭ミサイルを撃ち込んだ。
 ドドオオオオン! 命中!
「最悪の時は脱したとは言え、こいつらのおかげで多くの人質が‥‥」
 ロジャーは無くなった大勢の人々の無念を込めて、HWの側面からレーザーを叩き込んだ。
「せめてお前達を落とさずに帰れるものか‥‥!」
 敵討ち、ロジャーは操縦桿を傾けると旋回してHWを追う。
「因果応報ってやつだ、やられた分はきっちりお返しさせてもらうよ!」
 伊佐美はアグレッシブフォースを発動させてスナイパーライフルを叩き込んだ。
 ドウッ! ドウッ!
 爆発するヘルメットワーム。
「今度会った時は‥‥今回の借りを返させてもらうぞ」
 藤村は無理はせず、爆発するHWを見つめていた。
 ドガガガガガガ!
 アルヴァイムは捕らえたHWにガトリングを叩き込む。
「今ですよ風花」
 炎上して動きが鈍ったHWに背後を取った風花はレーザー砲を打ち込んだ。
 ズバアアアア!
 風花のレーザーがHWを貫通して、遂にワームは空中で爆発轟沈した!
 ドゴオオオオ‥‥!
「お見事」
「やった〜、大規模戦以外で始めて落としたよ〜(ぶいっ)」
 風花はHWの撃墜に手放しで喜んだ。
「伊佐美さん、藤村さんは大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ‥‥」
「藤村、今回は出番無しだねえ」
「仕方なかろう」
 藤村は憮然としながら戦況を見つめていた。
 かくしてアルヴァイム、風花ペアが一機撃墜。
「行ったぞアーちゃん!」
 ユウはガトリングでワームを追い込みながらアークに機会を作った。
「これで決めるよ」
 アークはミサイルを全弾発射した。
 ドドドドドドオオオオ! ――命中!
 爆発と炎がHWを包み込む。が、ワームはまだ健在で素早く旋回する。
 アークは続けてD2ライフルを叩き込んだ。
 ドウッ! ドウッ!
 ワームはたまらずアークの射程から逃れる。そのままワームは戦闘空域から離脱する。
 他の二機もそれに続いて離脱。撃墜に恐れをなしたか、HWはあっという間に北に飛び去った‥‥。

 地上に降り立った能力者たちは凄惨な光景を目撃することになる。
「‥‥お前達が来る直前のことだ、突然ワームが光線を放って我々を殲滅しに掛かったのは」
 傷ついた兵士がその時の状況を説明した。ナイトフォーゲルの接近を察知したから? HWは人質に無差別攻撃を加えたと言う。
 残骸に埋もれた人々があちこにいて、状況は一刻を争うものだった。今すぐにでも救助が必要な人々が後には残されることとなった。
「ひどい‥‥」
 あやこは動かなくなった子供に毛布を被せていた。泣きはすまい、戦いはまだ続く。
「ひどい話だな‥‥無差別攻撃か‥‥」
 立ち尽くす伊佐美も怒りを覚えずにはおれない。
 藤村も厳しい表情で破壊された戦場を見つめる。アルヴァイムはその肩に手を置き、一つ頷いた。
「ああ‥‥分かってる‥‥だが、何とかして助けたかった」
 ロジャーは拳を強く握り締めていた。うめいて助けを求める人々を前に、自分は無力だ。
「とにかく、基地と連絡をとって、救援をよこしてもらわにゃ」
 ユウの言葉にアークはただ呆然と立ち尽くしていた。信じられない‥‥無差別攻撃が行われるとは。
「ご愁傷様ー? 早く帰っておれんじじゅーす飲みたい‥‥」
 風花はそもそも多少の犠牲は止むなしと思っていたから生き残っただけでも彼らは幸運だと思うのだった。
 ともあれ、能力者たちはUPC軍の救助部隊がくるまでその場に止まり、警戒に当たった。やがて救助隊が到着し、能力者たちは苦い経験を味わってラストホープに、またある者はシベリアへ帰還するのであった。