タイトル:【ODNK】逆襲の陸戦マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/05/29 23:23

●オープニング本文


 北九州、福岡南――。
 今年に入ってから、バグア軍の攻勢が兆しのようにあり、本格的な攻勢があるのではないかと、UPC軍は警戒を強めていた。
「ただし、聞くところによると、現在ダム・ダル(gz0119)はアフリカ侵攻作戦に出撃中との報が入っている。いっそ地中海で海の藻屑と消えてくれれば幸いなのだがな」
 熊本基地で士官たちが交わす言葉は、半分以上本気であった。大規模作戦なら、あるいはあの赤い悪魔を撃墜することが出来るかもしれない。
 だが、最初の交戦で入って来た報告書に目を通しながら、士官たちは期待が外れたことを知る。ダム・ダルは例のごとくファームライドを駆り、ユニヴァースナイトに接近し、傭兵たちを退けている。撃墜とは程遠い結果であった。
 と、そこへ下士官が報告書を持って駆け込んできた。
「た、大変です――!」
 下士官がもたらした情報に、熊本基地に衝撃が走る。あるいは、遂に来たかと思う者も少なからずいた。それは、春日方面からの大規模なワームの南進を知らせる報告であった。そして、そこにはファームライドが出撃していると言う情報が含まれていたのである。

 筑後市へ急進して地上に展開するワームの群れは、整然と戦列を整えていた。地上部隊を預かる強化人間の高橋麗奈はダム・ダルの副将だ。今、彼女は、新型機のティターンに搭乗していた。これまで搭乗していたエースHWを上回る機体である。
 アフリカでザ・デヴィル(gz0336)への義理を果たしたと考えたダム・ダルは、ヨーロッパから再び春日基地へ帰還すると、高橋に福岡南への南進を命じた。
「ことしは逆襲の一年としたいものです」
 高橋はそう言って、新たに与えられた新型機ティターンに乗って地上部隊を率いて行った。
「回線はつながったか」
「どうぞ、UPC軍の全ての電波に入り込めます」
 高橋が言うと、ややあってダム・ダルの声が回線に流れる。
「聞け、UPC軍よ。私は春日基地司令ダム・ダル。しばらく九州から離れて、私のことを忘れてしまったとしたら残念だ。あるいはお前たちは、あのままアフリカで撃墜されてくれれば、そんなことを思ったのではないか。だが希望と言うのはよくよく破られるためにあるものだ。私は春日基地に舞い戻ると、延び延びになっていた計画をそろそろ実行に移す段階にあると考えた。すなわち、福岡南の競合地域への占領作戦だ。これに備えて、今年に入ってから春日で温存していた精鋭を放出することにする。UPC軍よ、心せよ。福岡南を制圧した暁には、北九州戦線にピリオドを打つべく、熊本基地への攻撃を開始する。これは我が野望である。実現するのにさしたる時間は必要ないであろう」
 ダム・ダルはそこまで言って、通信を切った。
「熊本基地はハチの巣をつついたような騒ぎになっているでしょうな」
 ややあって言葉を投げたのは、地上から侵攻する高橋である。
「UPC軍にはまだ十分な戦力が残っている。人間たちもそれなりの戦力を用意してくるだろう。だがお前が言ったこともあながち当たっているかも知れん。今年は逆襲の年となる可能性はある。全体としては拮抗しているのは否めないが」
 そう言うダム・ダルはの言葉を聞き、高橋はレーダーに目を落とす。やがてUPC軍の地上部隊が出撃してくる。それを確認して、高橋もまた軍を南へ進めるのだった。

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
ゲシュペンスト(ga5579
27歳・♂・PN
井出 一真(ga6977
22歳・♂・AA
飯島 修司(ga7951
36歳・♂・PN
麻宮 光(ga9696
27歳・♂・PN
美空(gb1906
13歳・♀・HD
リア・フローレンス(gb4312
16歳・♂・PN
エイラ・リトヴァク(gb9458
16歳・♀・ER
秋月 愁矢(gc1971
20歳・♂・GD

●リプレイ本文

 整然と戦列を整えて滞空するワームの大軍。
 上空のダム・ダル(gz0119)は、接近してくるKVの編隊を確認した。
「司令――」
 高橋麗奈は上空のFRに言葉を投げる。
「UPC軍からナイトフォーゲルの出撃を確認しました、接近してきます。予定通り、ジャミングを切ります」
「よろしい、では、続いて電波ジャックに移れ」
「はっ‥‥しかし、これには何か意味があるのでしょうか?」
「九州全域に散っているスパイへの信号だ。熊本基地の目は、こちらに釘付けになっている。人類が良く使う囮作戦だろう。声東撃西と言う奴だ」
「は‥‥」
「電波ジャックは目くらましにすぎん。無論、我々はこちらで派手にUPCを迎撃する。では行くぞ。電波ジャックの開始とともに攻撃を開始する」
 ダム・ダルは至って真面目に部下達に命令を下した。
「了解しました。地上部隊も前進を開始します」
 高橋も部隊を前進させる。

 ――UPC軍陣営。前進する傭兵たち。
「今回は新型のティターンが登場か。どれほどの力を持っているのか、出来るだけの情報を集めておかないとな。これからも遭遇戦が予想される」
 麻宮 光(ga9696)は言って、レーダーに目を落とす。敵機が動き始めている。
「北九州戦線も久しぶりだな。ここで一矢でも報いておかなくては北九州解放など夢また夢だからな。可能な限り尽力する事としよう」
 榊 兵衛(ga0388)は雷電「忠勝」を前進させる。
 ふむ。彼我戦力差は若干こちらに不利と。飯島 修司(ga7951)は胸の内に呟く。であれば、頭を叩くのが常道ではありますが‥‥ご多分に漏れず、腕っこきなんでしょうなぁ‥‥。
「昨日は希臘、今日は福岡。ダルの中の人も大変だな。人間を見下す割に精鋭の温存とか庶民じみた戦いするのね。そこが狙い目よ」
 不気味に光る眼鏡の奥の瞳、藤田あやこ(ga0204)は「ふふ‥‥」と意地悪く笑った。
「しかし‥‥妙に静かだ。ジャミング一つない。どうなってるんだ‥‥?」
 井出 一真(ga6977)は、コクピットから見える景色を見渡して、一人ごちた。
 この依頼は俺にとってはハードルの高い依頼だ。難しい故に腕の立つ連中と一緒に戦える。そこに俺の目的がある。秋月 愁矢(gc1971)は操縦桿を傾け、思案顔。錬度の高い戦闘を体験し、出来うる限りの技術の吸収。それが目的だ。だが、足手まといになるつもりは無い。技術が足りないなら、連携や戦術でそれを補えばいい。
「死力を尽くして任務に当たれ‥‥か」
「この一戦負けられないのであります」
 ヒューストンでの小野塚愛子戦で手痛い敗北を喫した美空(gb1906)は、今回の戦いにその時の戦いを重ね合わせての参戦である。
「分かってはいたが、戦力ではあちらが上か‥‥が、やるからには全機生還、くらいの高い目標は持ちたい」
 ゲシュペンスト(ga5579)は言って、気持ちを高ぶらせる。戦の前の高揚感に包まれて、ゲシュペンストは心地よい緊張感に身を置いていた。
 びびんじゃねぇ、あたしは、この為に居るんだ。冷静になれ、それを、欠いたら命取りだ。エイラ・リトヴァク(gb9458)は、愛機のヘルヘブン750を前進させながら、心を落ち着かせる。静かだ。
「行くぜ、奴らの策を頓挫させてやろう、あたしらでよ」
 全機に通信を入れる。
「みなさん御武運を、それでは作戦開始といきましょう」
 リア・フローレンス(gb4312)が言うと、傭兵たちは「おお!」と答える。
 傭兵たちの策は、全軍敵中央に突進し、しかる後に偽装後退、ワームを引き付け、敵を逆に包囲すると言うものであった。
「全機攻撃‥‥何だ?」
 榊は突然回線に鳴り響いた大音量の音楽に眉を吊り上げた。
「何ですかこれ‥‥クラシック音楽?」
 麻宮は怪訝な表情でコンソールを操作する。どうやっても音楽は消えない。
 UPC軍の回線に流れ込んできたのは、ベートーベンの交響曲第五番「運命」であった。
「ほう‥‥これは、電波ジャックですね」
 飯島が冷静に言うと、藤田の瞳がきらりと光った。
「ダムの思惑かしらね? 全く何を考えているのか知らないけど‥‥惑わされずに行くわよ!」
「ジャミングを切ったのはこのためか‥‥しかし‥‥今は」
 井出は目の前の敵に集中する。
「後衛部隊は支援攻撃を頼むぞ、突撃!」
「突入!」
 傭兵たちは操縦桿を傾けると、スロットルを吹かせて加速した。
 ライフルやレーザーを撃ち込みながら、突進する。
 バグア軍は予想通り、突出してきた傭兵たちに対して、両翼を伸ばして半包囲隊形を取りつつ前進する。
「何を考えているか‥‥知らんが、傭兵どもの先端を叩き潰せ!」
 高橋は、部下達に鋭い声を飛ばすと、自らは後方に待機する。
「行くぜ! 予定通りだ!」
 秋月は、友軍のシュテルン乗りとともに垂直離陸すると、敵軍の両翼に向かって飛んだ。
「食らえー!」
「ぬっ――!」
 ワームが上方を見上げる中、9機のシュテルンは敵の両翼にフレア弾を投下した。灼熱がワームの集団を焼き尽くし、一瞬両翼の足が止まる。
 そのまま秋月達は飛び交うプロトン砲をやり過ごして、敵軍の後方へと抜ける。
「秋月さんたちがやったのであります! 美空達も一気に敵陣を抉り取るのであります!」
「一気に敵陣に穴を開ける!」
「まずは一押し!」
「バグア軍のみなさん! 押し通ります!」
 傭兵たちが回線に声を叩きつけると、バグア軍からも罵声が返ってくる。
「小賢しいわ! ひと思いに粉砕してくれる!」
「一斉射撃用意!」
「ってえ!」
 プロトン砲が炸裂すると、傭兵たちの戦列を閃光が薙ぎ払う。
 敵に届いた藤田は金曜日の悪夢を振りかざしてゴーレムに切り掛かった。
「慢心は足元をすくわれるわよ!」
「まだ‥‥本気ではないが‥‥」
 榊は槍を振るうと、ゴーレムを串刺しにして後退する。
「まだまだ‥‥ではありますがね」
 飯島も槍を振るってゴーレムの頭を吹き飛ばすと、後退する。
 突進した傭兵たちは、敵陣に楔を撃ち込んだところで、一撃離脱を図る。
「全速後退なのであります! 全機後退なのであります!」
 美空は真紅の刀を高々と振り上げると、仲間たちに撤退の合図を送る。
「よし! 全機全速後退!」
 傭兵隊長たちが号令を下して、KVは瞬く間に後退して行く。
「この辺りまでだな‥‥俺たちも合流するぜ!」
 秋月達も再び舞い上がると、友軍と合流する。
 ワームの戦列が乱れて、KVを追うに連れて縦に伸びていく。
「深追いするな! 射程内の敵を確実に落としていけばよい!」
 高橋はティターンのコクピットで舌打ちした。
「高橋様! 敵は壊走状態です! 一気に追い打ちを掛けてやりましょう!」
「侮るな! 脆すぎる! 追ったところですぐに反撃が来るぞ!」
「ですが、既に前進した部隊は押さえが利きません!」
「全く容易く釣られおって。全軍を前に出せ! 飛び出した連中を回収して態勢を立て直す!」
「はっ!」
 ワームの戦列は傭兵たちを追って崩れた。
 そして、戦列を整えたKVは逆襲に転じる。
「良し! ここから敵に逆撃を加えるぞ! 引き付けた敵を包囲しつつ両翼を伸ばして前進!」
 傭兵隊長から号令が飛ぶと、KVは中央と両翼に分かれて整然とした動きで反転攻勢に転じる。
 ラストホープ組も戦線各所に散って再突撃する。
 中央に麻宮、榊、飯島、藤田、右翼に井出、秋月、美空、左翼にゲシュペンスト、エイラ、フローレンス。
 プロトン砲の応戦をかいくぐって、傭兵たちは敵ワームに殺到した。
「油断するな、敵もすぐに態勢を立て直してきますよ」
 麻宮は言いつつ、阿修羅を加速させる。獣王の突進を思わせる加速力で、大地を駆け抜ける。ミサイルポッドを放出して、間合いを詰めると、ゴーレムにツイストドリルを叩き込んだ。ドリルが貫通して、ゴーレムを串刺しにする。
 反撃の一刀を跳ね返して、ドリルを連打する。
「行けっ」
 操縦桿を傾け、跳ねるような動きでゴーレムを仕留めると、前に突進した。
 榊は二基のファランクスをばら撒きながら、無双の槍捌きでゴーレムを沈めて行く。右に左に槍を振るって、ゴーレムを串刺しにしていく。
 と、加速してきたゴーレムとタロスが打ち掛かってくる。
「ぬっ――」
 榊は相手の速度を図って、強化ゴーレムと判断した。槍で受け止めながら、後退する。
「簡単にはいかんか‥‥が、俺一人ではない」
「苦戦しているようですね、と言うのは失礼ですかね」
 飯島のディアブロが榊の雷電の背後に付く。
「とんでもない」
「そうですね。行きますか」
 ディアブロが加速すると、デモンズ・オブ・ラウンドが強化ゴーレムを寸断した。凄まじい破壊力は魔神クラスのKV。一撃を振るうたびに、強化ゴーレムの武装ごと撃砕して行く。
 タロスの攻撃を受け止め、飯島はディフェンダーで敵機を叩き斬った。
「行くわよ! 今日はお前たちが悪夢を見る番よ! バグアの悪夢がどんなものかは知らないがな!」
 藤田はガトリングを構えると、気合を込めて撃って撃って撃ちまくった。全周に向かって銃撃をばら撒き、友軍を支援する。
 接近してくるゴーレムの攻撃をディフェンダーで受け止め、レッグドリルを叩き込んだ。
「奢りがお前たちの敗因だ!」
 裂帛の気合とともに金曜日の悪夢で切り掛かる。ゴーレムの刀を弾き飛ばして、装甲を切り裂く。
 右翼から敵を包囲してく傭兵たち。
 井出は突入して、機関砲を撃ち込みつつ接近。
「食らえっサンダーテイル!」
 テイルを撃ち込み、カラーリングされた白いタロスと打ち合う。
 井出の阿修羅は装甲はさして強化されていないが、回避性能は高い。タロスの銃撃をかわしつつ突撃すると、ソードウイングで切り裂いた。凄絶な一撃で白いタロスの装甲が飛ぶ。
 反撃の一刀をしなやかな獣を思わせる動きで回避すると、さらに一撃ウイングを叩き込む。
 突撃してくるゴーレムに強化ゴーレム。井出はライフルで牽制しながら距離を保つ。
「やらせるかよ! ここからが正念場なんだ!」
 秋月は言って、初めての集団戦で気力を奮い起こす。
「スモークディスチャージャー!」
 煙幕を巻き上げると、それに隠れながら機関砲を連射する。
 飛び交うプロトン砲が機体をかすめるように貫く。ゴーレムが突進してくると、煙幕の中で刀が飛んでくる。
「ちい!」
 秋月は受け止めた。
「まだまだあ!」
 ゴーレムを押し返すと、剣を叩き込んだ。
 美空はドラゴン・スタッフ、焔刃「鳳」、釈迦掌を駆使して、支援攻撃を行う。
「秋月さん! サポートするのであります!」
 ドラゴンスタッフでビームを浴びせかける美空。
「サンクス美空! これでも‥‥食らえ!」
 秋月は剣を裂帛の気合とともに振り下ろした。スパークとともにゴーレムの胴体が撃破される。ゴーレムは沈んだ。
「やった‥‥!」
「右翼から敵を押し返すのであります!」
 左翼からも傭兵たちはワームを押し返していく。
「数でこちらを上回る敵を捻じ伏せるにはどうすればいい? 簡単だ、囲んで袋叩けばいい。そうすりゃ内側の敵が外側に攻撃を加える事は難しくなり実質的に戦ってる奴の数が多いのはこっちになる」
 ゲシュペンストはカラーリングされたエースゴーレムに肉薄する。金色の派手なエースゴーレムは疾風のような一撃を繰り出してくる。
「――速いが!」
 ゲシュペンストは直撃を受けるも、槍で反撃の一打を打ちこむ。
「ならば! 究極! ゲシュペンストキィィィィック!!!!」
 レッグドリルの一撃を弾き返す黄金のゴーレム。プロトン砲の連打を食らって、リッジウェイは爆発炎上した。
「うおおおっ‥‥」
 ゲシュペンストは危険を察知して離脱する。
「ゲシュペンストがやられたか‥‥」
 エイラは慎重に友軍と連携を取っていた。エースには友軍と協力してレーザーを撃ち込み、牽制する。
 タロスに対しても友軍との連携を重視して中距離、遠距離から攻撃を当てて行く。レーザーとランスでじわじわとタロスにダメージを与える。
「さすがにタロスは手ごわいが」
 接近してくるゴーレムと打ち合う。剣で敵の攻撃をさばいて、ドリフト走行で回り込むと、ランスを叩き込む。
「悪いな。無茶はしても無謀はしないぜ。何をしようと絶対に生きて帰るつもりなんでな」
 ガトリングナックルを叩きつけて距離を保つ。
「照準さえされなければずっと僕らのターンだ!」
 フローレンスはアンチロックを起動して、リボルバーで仲間を火力支援する。
 気持ちは強く、前に出て味方を支援する。ゴーレムと打ち合い、流れるようにタロスとの戦闘に移る。タロスの鋭い一撃を跳ね返すと、リボルバーを叩き込む。しかしタロスもスライドしつつ受け止める。フローレンスも槍を突き出すが弾かれる。
「さすがにタロス‥‥!」
 距離を保ってリボルバーを撃ち込み、エイラと合流する。
「エイラさん」
「よおリア。無事か」
「何とか、さすがにエースは手ごわいですね」
「ああ、敵さんもしぶとい。簡単には落ちてくれん」
 ――中央部隊、混沌とする状況の中、麻宮、榊、飯島、藤田らは高橋のティターンを確認する。
「あのカラーリングは‥‥なるほど、敵の指揮官は高橋のようだな。宜しい。相手にとって不足無し。その首を我が鋭鋒の先に掲げて、反撃の象徴としよう」
「赤いタロスですか‥‥高橋麗奈ね」
「行くぞ」
「支援します。露払いは任せて」
 藤田たちが銃撃で道を切り開き、麻宮、榊、飯島はティターンに突進した。
「高橋、聞こえているだろうが、お前の首、忠勝が貰い受けるぞ」
 三方向から突撃してくるKVに、高橋はティターンを振り向ける。
「ここまで押し返されるとは‥‥新型機ティターンの披露目には残念だが」
 榊の連打を捌いた高橋のティターンは、スライドしつつ飯島の凄絶な攻撃をも適度に捌いて見せた。
「ほう‥‥このディアブロの攻撃をさばくとは‥‥」
 飯島は驚く。
 麻宮は獣のようにドリルを突き出して飛びかかったが、ティターンはスライドして回避する。
 切り裂かれたティターンの生体部分が回復して行く。
 加速したティターンは、飯島の機体に連打を浴びせた。ティターンの剣がディアブロの装甲を切り裂く。
 飯島は格闘武器を駆使して反撃を撃ち込みティターンを後退させる。
「ちっ‥‥一機では被害が馬鹿にならん」
 高橋は護衛機を呼び寄せ、盾にすると、ライフルでの攻撃に切り替える。
「邪魔だ!」
 榊は強化ゴーレムを叩き潰すと、ティターンに迫る。
「ふふ‥‥一対一なら簡単にはいかんぞ傭兵」
 高橋は榊の雷電と互角以上に打ち合う。
 高橋は飯島にタロス数機をぶつけ動きを封じると、榊と麻宮を相手に五分に渡り合う。
「いつまで再生しているんだ?」
 麻宮は、常に活発に傷口を塞いでいくティターンの再生能力に眉をひそめる。
 やがて、上空のダム・ダルから撤退命令が出ると、高橋は兵を退く。
 傭兵たちにも余力はなかった。どうにか敵を後退させたところで、UPCも次の来襲に備えることになる。