タイトル:【ODNK】福岡南の風塵マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 1 人
リプレイ完成日時:
2010/04/17 00:51

●オープニング本文


 北九州久留米市――。
 哨戒中のイビルアイズと護衛機のS01Hは、バンクサインを交換しながら旋回した。
「‥‥こちら哨戒中のワイバーン、本部どうぞ」
「(ピーガガ)‥‥こちら本部、ワイバーン何かありましたか」
「定時連絡です。久留米市周辺に敵影なし。これより南へ周回します」
「(ピーガガ)‥‥了解しました」
 と、次の瞬間、S01Hの背後に、赤い機体が出現し、ロックオンアラートが鳴り響いた。
「な、何だ!」
 赤い機体――春日基地司令ダム・ダル(gz0119)が搭乗するファームライドは、プロトン砲を連射すると、S01Hを撃墜した。爆発四散するKV。
「何ですか! 攻撃!?」
 イビルアイズのパイロットはレーダーに目を落とした。北方から多数の光点が向かってくる。
「ワイバーンより本部へ! 敵機来襲! 援護を願います!」
「その通りだが、逃げ切れるかな」
 イビルアイズはブースターを吹かせると、一気に離脱するも、ファームライドは加速して易々と追いついた。
 ロックオンアラートが鳴り響く。
「くっ、やられる‥‥!」
 パイロットは死を覚悟したが、ファームライドは速度を緩めると、イビルアイズを逃がした。
 ダム・ダルはコクピットで思案顔で遠ざかるイビルアイズを見送る。
 北から部下のワームの編隊が来るのを待つ。

 南の筑後市へ離脱したイビルアイズは、敵機の反応を確認して、改めて本部との回線を開く。
「敵の奇襲はファームライドだと思われます。北から来るワームの総数は20機余りです」
「(ピーガガ)ワイバーン了解しました。スクランブルを掛けます。無事で何よりです。本部へ帰還して下さい」
「ラジャー、そうさせてもらいます‥‥」

 ――UPC軍の本部ではスクランブルが掛かる。待機していた傭兵たちは自身の機体に向かって駆けて行く。
「またこっちへ敵さんか。懲りない連中だな」
「と言って、本格的に攻めてこられると拙い。あの辺りを押さえられると長崎と熊本の間に楔を打ち込まれるようなものだ」
「それはそうと、またダム・ダルが出たって聞いたわ」
「ああそうらしいな。一機仲間が落とされた」
「奴さんにはなるだけ、当たらず障らずだな。いつもおいしいところばかり持って行きやがるが‥‥」
 傭兵たちはコクピットに乗り込むと、一機、また一機と北へ向かって飛び立って行った。

●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
三島玲奈(ga3848
17歳・♀・SN
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
ソード(ga6675
20歳・♂・JG
井出 一真(ga6977
22歳・♂・AA
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
グロウランス(gb6145
34歳・♂・GP
エイラ・リトヴァク(gb9458
16歳・♀・ER
D・D(gc0959
24歳・♀・JG

●リプレイ本文

 先の壮絶な戦いで重体を食らった終夜・無月(ga3084)。
「あのファームライドは‥‥要注意ですね‥‥。各機、戦場が近い、敵は四機一組の戦術です。こちらはロッテを組んで対しますよ」
 無月はコンソールを操作しながらレーダーに目を落とす。
 敵ワーム編隊はシュヴァルム隊形を取っている。バグアは模倣しただけだろうが。バグアが厳密な空戦戦術を取った例は少ない。
「本土防空戦で独空軍のロッテ編隊戦術にいたぶられた英軍は対策を講じた‥‥」
 操縦席に山積みの歴史書を見やる三島玲奈(ga3848)。敵のシュヴァルム戦術に対するべく、歴史を読み漁って来た。
「今日こそダム・ダル(gz0119)死ねばいいのに」
 玲奈の台詞を聞けば、ダム・ダルは褒め言葉と思ったであろう。
 そして、玲奈は軍属傭兵たちにお願いする。
「シュヴァルムは攻撃と監視役が交互に担当する。だから折角の戦力が半減する。軍属機から監視役を選出、一任して攻撃に専念してくれ。交替の隙が狙い目だ。あとシュヴァルムは一撃離脱が前提だ。退路を塞がず後ろから撃て」
「了解した。詳しいな‥‥しかし」
 軍属傭兵たちは、思案顔。
「束ねた編隊は巨大な1機と同じだ。編隊の転進は鈍重だ。陽動して転進の隙を狙え」
 玲奈は続けた。
「編隊の端を集中攻撃して崩壊させろ。ロッテ編隊は維持されるのが前提で、隊内同士の防衛は考慮されてない。それをやると隊が崩れるからな」
「要するに、敵の戦列を崩せば、勝機も見えると言ったところか。敵がシュヴァルムに固執する限りは」
「そうだ。それはこちらにも言えることだけど。崩して包囲戦に持ち込み確固殲滅しろ。多方向から陽動を仕掛け編隊崩壊を招け。私もする」
「考えてみれば一昔前の空戦に戻ったみたいだな」
 今回もまた‥‥ダム・ダルが保護者よろしく出てきているのか‥‥何とか今回で一歩でも状況を進めたいものだが‥‥。
 かのバグア人とは数奇な運命で結ばれているカルマ・シュタット(ga6302)は、相変わらずのダム・ダルの行動に不信感を持っていた。
「ダム・ダルの動きは相変わらず不明だけど、要注意だね。最近の報告書を見ていると、部下が窮地に陥ったところで出てくる機会が増えているみたいだね。あの高性能は相変わらず健在か‥‥」
 圧倒的な火力を誇るシュテルン「フレイア」の名を冠する機体に乗るソード(ga6675)は、必殺のレギオンバスターの準備に余念が無い。
「さて、最近何かと騒がしくなっている福岡南の戦いですね。好き勝手にさせるわけにはいきませんから死守です」
「ソードさんのフレイアなら、あるいはFRとやり合えるのでは」
 カルマの言葉に、ソードはコクピットで首を振った。
「いえ、まあ実際俺の機体は自分で言うのもなんですが相当に改造しています。でも、それであの赤い悪魔とやりあえるかと言うと、自信はありませんよ。今回は基本HWに行かせてもらいますけどね」
「タロスにHW‥‥侮れる相手ではないですね」
 整備士にまでなったKV好きの井出 一真(ga6977)は、操縦桿を握る手をほぐすように指を離した。
「三島さんが言われるように、敵のシュヴァルム戦術には、どれほどのものか分かりませんが。油断は禁物ですね」
 玲奈は井出の側面に機体を置くと、言葉を掛ける。
「バグアがシュヴァルムと言っても、多分猿真似でしょうけど、ドッグファイトではこちらも各個撃破される可能性もありますしね。確かに油断は禁物ですが」
「フィンガー・フォーと言う奴ですか‥‥」
「ガッハッハ! バグアも小細工を弄してくるものだ! ダム・ダルは相変わらずか! シュヴァルム戦術はここ最近頻繁に使ってくるが、こっちも結構やられているからな! 今回はそうはいかんぞ!」
 孫六 兼元(gb5331)は、愛機のミカガミ、フツノミタマを操る。
「カルマ氏! 今回はよろしく頼むぞ! ダム・ダルの動きが気がかりではあるがな!」
「全く、ダム・ダルはヨリシロになってから性格が掴みどころが無い奴になりましたからね。昔は敵ながら敬意を表したものですが」
「うむ! やはり、バグア人というのは我々には理解し難い! わしら人間とは事象の見方も異なるのだろうがな!」
「あの怪物ジョージ・バークレーを思い出しますね。ダムももしかして、あんな怪物になってしまったのかと思うと、正直悲しくなりますね」
「決着を付けたいところだがな! もっとも、確かにあのダムはカルマ氏が知っているダムではなくなってしまったからな!」
「ええ、まあ過ぎたことではありますが‥‥」
 ソーニャ(gb5824)は何度となく北九州の戦場ではダム・ダルと相対している。
「今回も負けないよ。シュヴァルム戦術か‥‥何を考えているのか‥‥エイラさん、よろしくお願いしますね」
 エイラ・リトヴァク(gb9458)はヘルヘブン750を操る。先の戦いでは陸戦でこの地を防衛した。
「ソーニャ、よろしく頼むぜ。経験はあたしなんかよりずっと上なんだからよ」
「やれるだけのことは。でも、ボクもここでは何度か煮え湯を飲まされたこともありますしね。毎回が勝負だよ」
「毎回が勝負か‥‥ま、やるしかないが」
 グロウランス(gb6145)には、腑に落ちないところがあった。
「しかし、ダム・ダル‥‥一体何を考えている。急場を上官に頼る様な、甘い部下を育ててどうするつもりだかな。まぁ、いい。今は目前の敵を叩くのみ。状況が動けば真意も見えよう」
「奴の目的は確かに不明ですからね」
 ソードの言葉に、グロウランスは頷く。
「強化人間は将来のヨリシロ候補だと言うが、あんな部下を育てて、一体何になるのか‥‥首をかしげたくなるな」
 仲間たちの後方に付いて、巨人的な印象を与えるスピリットゴーストを操るのはD・D(gc0959)。
「噂に聞く春日のダム・ダルね‥‥どんなものか」
 まだ駆け出しのヘヴィガンナーだが、機体は最新鋭のゴーストだ。その四連カノン砲は絶大な火力である。
「支援攻撃は任せてもらおう‥‥ここは私のゴーストの出番らしいからな」
「よろしく頼みますよ‥‥」
 無月はレーダーに目を落とすと、接近してくる敵ワームを確認して指令を出す。
「各機戦闘隊形を取れ。ソードさんのレギオンバスター発射後にドッグファイトに移行する」
「ラジャー」
「了解しました」

 ――編隊を組んで接近する両軍。その初手を取るのはワームである。主兵装のプロトン砲は標準的なバグアの兵器である。長射程から繰り出されるその怪光線は地球侵攻以来、人類を苦しめて来た。
 二十近い光条が空を貫き、傭兵たちを襲う。が、KVは軽やかに跳ねるような機動でロールするとプロトン砲をかいくぐって接近する。
「兵装1、2、3発射準備完了。PRMをAモードで起動。マルチロックオン開始、ブースト作動」
 ソードはコンソールを操作しつつ、ワームをロックする。
「ロックオン、全て完了!」
 フレイアに搭載されている2000発のK−02ミサイルが火を噴く。
「『レギオンバスター』、――――発射ッ!!」
 2000発のミサイル群がワームに殺到する。
「ミサイル発射」
 無月もK−02ミサイルをHWに放出する。
「発射」
 軍属傭兵も全機ミサイルを放出する。
 編隊を組んだまま回避行動をとるHW。
 ――直撃。圧倒的なミサイル群がHWを捕える。空中で火球が炸裂し、紅蓮の炎が空を彩る。
「何だこの破壊力は‥‥! 馬鹿な‥‥魔改造機か‥‥?」
 ジャミングに交じって、敵の声が流れてくる。
 ソードのレギオンバスターはバグア軍に衝撃を与える。
「赤いタロスを確認した! カルマ氏! 行くぞ!」
「了解しました」
 孫六とカルマは、キーラーの機体に向かって突進する。
 態勢を立て直したHW、高橋麗奈の赤い機体が突進してくる。
「やってくれるなUPC。だが、レギオンバスターは一度きりの大技だ。そう何度も使えるものではない。行くぞ!」
 ソーニャはHWの戦闘隊形を見やり、機体を傾けた。
「隊形、デルタからトレイル、後ろに食いついてるHWを処理」
 ループでワゴンホイールに巻き込むのが目的だ。
「編隊機動は普段からの積みかさねがなければ真似できないよ」
「ソーニャ、こっちが囮だな」
 エイラもソーニャについて、旋回する。ソードの前に敵機をおびき出すのが目的だ。
 が、元軍人の高橋はそれを見抜いた。
「小賢しい真似をする‥‥あの旋回する機体に近づくな! こちらは敵の上空から強襲するぞ! 旋回する敵機を撃て!」
 シュヴァルムの一つが上昇して、ソーニャとエイラの機体に上方から襲い掛かった。
「敵機上空から接近」
「援護するぞ。ソーニャ機、離脱しろ」
 軍属KVがHWの射線に入って援護する。
「了解しました」
「打って出るか?」
「そうですね‥‥ソードさんにあの赤い機体を押さえてもらいましょう。ソードさん、お願いします」
「了解しました。グロウランスさん、サポートを頼みます」
「OKだ」
「高橋麗奈。行きますよ!」
 ソードとグロウランスは加速した。
「俺からも歓迎の花火だ」
 グロウランスは時限信管のロケットを撃ち込んだ。回避されるが、敵機の側で爆発する。
「ぬっ!」
 高橋は一瞬視界を遮られた。
 ソードが加速して、対空砲エニセイを連射した。
 エニセイが高橋の赤いHWを貫通する。大爆発する高橋機。
「編隊を解除する! あの青い機体を潰せ!」
 HWの編隊が散開して、ソード機のシュテルンに集中砲火を浴びせる。
 しかし、フレイアは尋常ならざる機動で回避する。
「ソードさんを支援するよ、こちらは各個に撃破するよ」
 ソーニャはバレルロールで突進すると、エイラもそれに続く。
「そう簡単にやられる奴じゃないからな」
 グロウランスはバルカンをばら撒きながら、だが改めてソード機の魔改造ぶりに舌を巻く。
「全機、ドッグファイトに移行するぞ」
 HWと格闘戦に入るKV。
 ソーニャもエイラもグロウランス達も、圧倒的な強さを発揮するソード機を中心にワームを落としていく。
「敵ファームライドに動きなし、そのままタロスの迎撃に移れ」
 無月はレーダーに目を落としながら、後方で支援に当たっていた。
「ダム・ダルは‥‥まだ動きませんか」
 玲奈と井出はロッテを組むと、敵タロス隊へ突進した。
 軍属KVはシュヴァルムの瓦解を誘って、敵編隊の翼へ攻撃を叩き込む。
 突進してくるタロス隊は、すぐにばらけて編隊が崩れる。
「シュヴァルムを維持しろ! 各個撃破されるぞ!」
 赤いタロスに乗るキーラーは怒声を飛ばして、自身は突進してくるカルマと孫六を迎撃していた。
「ガッハッハ! また会ったなキーラー! 今度こそ、決着を付けさせてもらうぞ!」
「貴様は‥‥例のミカガミ乗りか! 何度も俺の邪魔をしおって、今日こそは俺の手で撃墜してやるわ! 貴様の最後の日となろう! ‥‥ミカガミ乗り、名前を聞いてやろう」
「わしは孫六! 冥土の土産に覚えておくのだな!」
「‥‥来い!」
 カルマは前進してくるタロスを迎え撃ち、孫六がキーラーに挑むのをサポートする。
「孫六さん、周りの雑魚は俺が止めておくよ」
「ガッハッハ! すまんカルマ氏! 恩に着るぞ!」
 孫六は加速する。
 D・Dはスコープに敵機を捉えると、ファルコンスナイプを起動させて固定兵装の四連カノン砲を打ち込んだ。
「道をあけるか、ゴーストに撃たれるか選べ‥‥」
 玲奈と井出は、切り崩されたタロスの一機に集中攻撃を浴びせる。
「所詮は付け焼き刃程度だったな。バグアの猿真似か」
 玲奈はライフルを撃ち込みながら、突撃する井出を援護する。
「SESフルドライブ。ソードウィング、アクティブ!」
 バレルロールで加速した井出の阿修羅は、弾丸のようにタロスへ加速した。ソードウイングが激突する。
 改良された自慢のウイングがタロスを凄絶に切り裂いた。貫通して、そのまま回避行動をとるタロスの足を切り飛ばした。
「編隊を維持出来なければ、それまでだ! 個々の戦力ではタロスが勝る! 小賢しい人類の戦術など不要! タロスの力で傭兵どもを切れ!」
 強化人間たちは自らを叱咤すると、慣性飛行で自在に飛び交い、本来の動きを見せる。
「そらなら‥‥こちらは各個に撃破するまで」
 カルマはアテナイをばら撒き、ツングースカでタロスの足を止める。
 D・Dのゴーストは戦域との距離を保ち、弧を描くように雄大な巨体を旋回させる。基本は守勢、援護のシフト。ミサイルで牽制して、ライフルで友軍を支援する。
 仲間たちが追い込んでいくタロスに的を絞って、長距離からカノン砲を叩き込む。四連カノン砲がタロスを貫通して、装甲を吹き飛ばす。ゴーストの大火力が制圧する。
「少々卑怯だけれど、これが後衛の役目なの‥‥悪いな‥‥」
 巨大なゴーストは雄大に泳ぐように戦域を飛ぶ。
「ガッハッハ! 受けよキーラー! 我がミカガミの一撃!」
 孫六は加速すると、赤いタロスにブレードウイングで挑んだ。切り裂かれるキーラーの赤いタロス。
 反撃のプロトン砲が孫六のミカガミを貫通する。
「孫六! 死ぬのは貴様だ!」
「ガッハッハ! それはどうかな!」
 バレルロールで突進した孫六のミカガミ――孫六は牙を剥いてブースターを起動させた。
「にっ!」
 キーラーが虚を突かれる。
 その瞬間――ミカガミのブレードが、赤いタロスの胴体を両断した。
「うおおおおお‥‥何だと!」
「キーラー! お前の負けだ!」
「俺を倒したところで、ダム司令には勝てん! この借りは次に返すぞ孫六!」
 無月は、動きだしたFRの反応に警戒の声を送る。
「FRが動き出しました。孫六さん、警戒して下さい」
「おお! 来るかFR!」
「ダム司令! 申し訳ありません! この負けは必ず勝利に変えて見せます!」
 この時キーラーは、自身の命運を知る由もなかった。
「キーラー、お前の昇格は永遠にないな。お前には、その資質が無い」
「何ですか?」
 ダム・ダルは真っ二つになった赤いタロスに近づくと、プロトン砲を連射して破壊した。キーラーの悲鳴が轟き、赤いタロスは爆発四散した。
「なっ!」
 孫六はその目ではっきりとキーラーが粛清されるのを見た。
「ダム・ダル! 外道に落ちたか!」
「外道? そう見えるか孫六とやら。だが見方を変えてみろ。選ばれた者にしかヨリシロへの道は開かれないのだ。これまでのキーラーを見て、本当にバグアに相応しい者であったか」
「お前たちの価値など聞いてはおらん!」
 孫六は激昂したが、ダム・ダルは平静であった。
 すでに多くのHWとタロスが数機落ちていた。ダム・ダルは撤退の合図を出す。
「ダム司令、シュヴァルムを逆手に取られました。さすがに‥‥」
 高橋の赤いHWがFRの横に降りてくる。
「そのようだな。束の間の優勢であったか。そろそろ、春日の軍を動かす頃合いかも知れんな。戻るぞ」
「は‥‥」
 そうして、ダム・ダルは部下を率いて北へ撤退した。