●リプレイ本文
201号線、496号線ともに、突貫工事で対ガルガの接近を阻むトラップが仕掛けられていく。
兵士たちは工事を終えると、すぐさま撤退を開始する。
「後は頼んだぞ。我々は後方支援に回る。最悪の場合に備えて、後ろを固めておく」
「まあ任せろと言える相手じゃなさそうだが、幸運を祈ってくれ」
須佐 武流(
ga1461)は言って、後退する兵士たちを見送った。
「さて‥‥後はガルガの到着を待つばかりですが‥‥」
篠崎 公司(
ga2413)がぽつりと言葉を漏らした。心は覚醒して沈着なまでに平静だ。
「頂くことにするって言われても、それを許すはずがないのに。挑発のつもりなのか、それとも宣戦布告をするだけの余裕があるのか‥‥。まぁ、何にせよ倒して町を守る。それだけですね」
旭(
ga6764)は仲間たちを見やり、201号の先に視線を向ける。
「ま、俺ごとき少女漫画家一人、潰せぬキメラたちだ。特にボス、ありゃ駄目だな」
夜十字・信人(
ga8235)は地面に突き刺した大剣と片手剣を抜き、担ぐ。
「早くネームを持って行かねば、怒られるのだが」
少し笑って。
「しかし、運が良い。アシスタント候補がこんなにも」
仲間全員をぐるりと見渡すと、相変わらず迷言を吐く夜十字。
「ただのキメラとは違う‥‥だけど自分の力と仲間を信じるだけだ。そうだよね、コンユンクシオ‥‥」
アセット・アナスタシア(
gb0694)は愛剣に手をかけ呟いた。
「この様子じゃ伊達やはったりは通用しなさそう‥‥なら一撃必殺で挑むしかないね」
「どんなに強靭なキメラが来ようとも美空(
gb1906)は負けないのであります。能力者の誇りにかけて負けてやるわけにはいかないのであります」
LHでも一二を争うちっこさを誇る美空だからか、巨人キメラであるガルガには相応のコンプレックスがある模様。いつにもまして戦意の高い美空であった。
「噂に聞くガルガが沢山ですね。何としても止めてみせましょう」
ぐっと拳を握りしめるフェイト・グラスベル(
gb5417)。普段は身長99センチと美空よりも小さなフェイトだが、覚醒して今は口調も姿も大人の女になっている。
「信人兄さん、今日はよろしく」
「うむ、今日はアシスタント一号に任命するぞ」
「ありがとう」
フェイトはにこりと微笑んだ。
間もなくガルガが来る。
――496号方面。
‥‥折角また九州に来れたのに重症なのはちょっとカッコつかないな。けど、できるだけはやらせてもらおうか‥‥。
カルマ・シュタット(
ga6302)は重い体を引きずるように銃を構える。先の戦闘で重体を食らった。
「やれやれ‥‥何とも間の悪いことだ」
「さーてと。またまたガルガ祭りだが、こっちは組織でちゃっちゃと片付けようぜ!」
キラ・ミルスキー(
ga7275)は言って、軍属傭兵たちに言葉掛ける。
「ガルガですか‥‥その性能、どれほどのものか、見せてもらいましょう」
二刀使いの優(
ga8480)は、思考を巡らせながら496号の先に目を凝らした。
「私もガルガを見るのは初めてですが、相当に厄介な相手のようですね。それにダム・ダル(gz0119)の言葉も気がかりですが」
ドラグーンのシャーリィ・アッシュ(
gb1884)は言って、アイカメラの先に見える視界を確認して、バスタードソードを握りしめる。
「みやこ町を電撃的に頂くか。アーちゃん達も随分となめられたものだね。そこまで言われた以上、手痛い目にあってもらうしかないよね」
と真剣な表情で呟いているのはサイエンティストのアーク・ウイング(
gb4432)。普段はかわいらしい10歳の少年だが、今は真剣な顔だった。
「ガルガか‥‥まさか、ここまで量産が進んでいるとはな。実に厄介極まりない。ここで徹底的に叩き潰しておきたい所だが――」
鹿島 綾(
gb4549)はつい最近ガルガと戦った。その時には必殺の連続攻撃を耐え凌がれた。それを上回るボスガルガがいると聞いて、実際想像がつかなかった。
「報告書にはあれを越える奴が掲載されているが‥‥」
「さて‥‥参りましょうか‥‥」
処刑執行天使の二つ名を持つ天宮(
gb4665)は、微かに微笑んでいた。魔術師のような風貌の男である。ローブを身にまとっている。
「いくら強くても動かなければ問題はありません」
「どうかな‥‥数は多くて強い、しかも統率も取れてるか。厄介この上ないな」
ヘヴィガンナーのジャック・ジェリア(
gc0672)はガトリングガンを傾けながら煙草をふかしていた。
「春日基地司令とやらの肝いりらしいからな。全く、敵さんも良く良く手を考えてくるもんだぜ」
すでにガルガは完全体が完成した以上、逐次戦線に投入されてくるのは間違いないであろう。皮肉にも傭兵との戦闘データが元になっているのだから笑えない話である。
――そして、ジャックは仲間のスナイパーと先行して、トンネルの出口付近でガルガを待ち伏せる。
――最初の花火は仕掛けたトラップ、丸太を踏み潰し、ボーラーを引きちぎりながら進むガルガの足元で、対戦車地雷が爆発する。
ドン! ドン! ドン! ドン! と地雷がそこかしこで炸裂し、傭兵たちは双眼鏡でその様子を見ていた。
「どうだ」
須佐は余り期待せずに篠崎に問う。
「‥‥対して効果はありません」
「だろうな」
「特に、ボスは俺の貫通弾を握りつぶしたふざけた奴だからな。まあ気休め程度か」
夜十字は頭をかきながら呟いた。
「ガルガ――来ます」
美空は双眼鏡を下すとガトリングを構える。
「ではこっちも行くか」
「各自、連携して敵に当たれ。ラストホープ組はつわものぞろいのようだ。彼らを中心にキメラを押し返すぞ」
「出来れば撃破したいところですが‥‥」
軍属傭兵たちの言葉を聞きながら、フェイトは戦斧ベオウルフを構える。
整然と前進してくるガルガの隊列から、地鳴りのような咆哮が轟いて、舞い上がる土煙から姿を見せたその巨人キメラたちは、腕を持ち上げ、銃撃を開始する。腕に仕込まれたレーザーとガトリングが火を噴いた。凄まじい銃撃がまず傭兵たちを襲う。
「その手は報告書で見ました。弾幕で制圧するのは、今度はそうはいきません――支援攻撃開始します」
美空はガトリングを持ち上げると、銃撃を開始。
「射抜かせてもらいます」
篠崎も走りながら矢を連射する。
軍属傭兵たちもスナイパーの支援を受けながら一気にガルガへ肉薄して接近戦に持ち込む。
須佐、旭、夜十字、アセット、フェイトはガルガの爆風のような弾幕の中を突っ切って駆け抜ける。
獣じみた挙動で体をひねりながら突進する須佐。
「行くぞ――!」
弾幕を加速して回避しつつ突進、きりもみ旋回しながら飛びあがると、ねじ込むように蹴りを叩き込んだ。凄まじい破壊力を誇る須佐の蹴りが、ガルガの胸板を貫通した。
シールドで跳ね返して、ガラティーンを叩き込む旭。吹き飛ぶガルガの肉体。
「スナイパー君、悪いが一人、俺の専属狙撃手になってくれ。援護を頼むよ」
こちらも先陣切って突撃する信人。
「フェイ(
gb5417)俺の後ろに付け、君の間合いまでエスコートしよう」
「はい」
加速する信人がラジエルの斬撃を叩きつければ、ガルガは傾いた。そこへフェイトがベオウルフを撃ち込んだ。
「膝を折ったガルガを狙うと良い。俺は次だ」
「了解です」
信人がガルガの足を打ち砕き、フェイトが撃破に回る。
「まずは頭から叩く‥‥!」
アナスタシアは弾幕をかわしながらソニックブームを撃ち込む。
「信人兄さん、フェイト‥‥私も手伝うよ。これからが勝負だからね」
加速するアナスタシア。
「私の剣技がどこまで通用するか‥‥いくよコンユンクシオ!」
突進したアナスタシアは愛剣コンユンクシオをガルガに叩き込む。ガルガの肉体を凄絶に切り裂く。
傭兵たちはガルガに接近戦を仕掛けると、乱戦に持ち込んでいく。
――と、背後に控えていたボスガルガが進み出てくる。
「オオオオオオオオオオオオオ‥‥!」
口からレーザー光線を吐きだした悪魔のような風貌のボスガルガ。直撃を受けた軍属傭兵の一人が撃ち抜かれて倒れる。
「奴らが‥‥二体か。行くぞ!」
須佐はボスガルガに突進した。
ボスガルガの銃撃をかわしながら、懐に飛び込んだ須佐。キックをねじ込んだ。手ごたえはあった。須佐の蹴りはボスガルガの肉体にめり込んでいる。確かに肉を砕いた感触があったのに、ボスガルガは息がこすれるような「シュルシュル」という笑いを漏らす。
「こいつ‥‥笑ってやがる」
篠崎が弾頭矢を頭に叩き込んだ。ドカーン! とボスガルガの頭部が爆発に包まれる。が、ボスガルガは微かに傾くのみで、須佐に拳を撃ち込んだ。
ドゴオオオオオオ! と須佐は受け止める。
そこへ旭が紅蓮衝撃を叩き込んだ。――ドズバアアアアアア! と切り裂かれるボスガルガ。血飛沫が飛び、肉が吹き飛んだ。
須佐と旭の連続攻撃を受け止めながら、ボスガルガの筋肉が脈動する。すると、もの凄い速さで格闘戦を仕掛けるボスガルガ。須佐はかすめたが、旭は吹き飛ばされた。
美空が貫通弾を込めると、ボスガルガを狙い撃った。
「これでも食らえなのであります」
直撃した貫通弾がボスガルガの肉体にめり込む。
旭は立ち直って再度紅蓮衝撃を撃ち込む、須佐は神速の勢いで飛びまわり凄絶な蹴りを撃ち込んでいく。
「全く不死身か‥‥」
須佐は倒れないボスガルガに呆れつつ蹴りを撃ち込む。
信人もフェイトとアセットとともにボスガルガと当たる。
「前回のように埋められるのは御免でね、今日は女神を連れて来た」
クルシフィスクの斬撃を打ち込みながら、ボスガルガを自分に釘づけにし、破壊力が高いフェイトの攻撃への囮にする。
「今だ。フェイ!」
竜の翼で加速したフェイトはベオウルフに竜の爪を乗せて撃ち込んだ。
ドッゴオオオオオオオ! とベオウルフがボスガルガにめり込む。
「アセット!」
「行くよコンユンクシオ!」
アセットは加速して両断剣を叩き込んだ。
――ドズバアアアア! とボスガルガを切り裂いた。
そして次の瞬間、疾風のような攻撃が飛んできた。
ボスガルガの拳がアセット、フェイトをなぎ倒した。
「挫けるなよ二人とも」
信人は大剣を水平に傾けると、ボスガルガに突き入れた。貫通する一撃。剣はボスガルガの背中から胸にかけて突き抜けた。
ボスガルガは咆哮すると、足の筋肉が盛り上がって、爆発的な回し蹴りが信人を捕えた。吹き飛ばされる信人。
「全く‥‥」
「信人兄さん――」
「後ろの軍属たちは大丈夫‥‥か? 俺たちはこっちを片づけるぞ」
「はいっ」
だが、最後に彼らがボスガルガを倒すことは出来なかった。
496号――。
閃光手榴弾がトンネルの中で爆発する。ガルガたちの悲鳴がこだます中、ジャックたちは銃撃を浴びせた。
ボスガルガは「ガオオオオオオオ!」と咆哮すると、ノーマルガルガは態勢を立て直して加速してくる。対戦車地雷を踏んで爆発の中、ガルガの群れが突進してくる。
「おいでなすったな」
カルマは地味ながらもライフルを叩き込んだ。重体のカルマの動きは鈍い。仲間たちが動き出すのに、とてもではないがついて行けない。
「今回は足手まといだな‥‥」
カルマは重体を呪いながらゆっくり動きだした。
「何だ、今回は力押しで来る気かよ! 俺様には上等だけどな!」
キラはトンネルから出てくるガルガの群れにライフルを撃ち込んだ。ガルガの群れが散開してくるのを確認して、トランシーバーで仲間たちに警戒を促す。
「敵さん一気に突進してくるぜ! 皆の衆気をつけろよ!」
「あれがガルガですか‥‥」
優は二刀を抜くと前進する。ノーマルガルガと激突して刀を撃ち込む。
竜の翼で突進したアッシュ、竜の咆哮を乗せてバスタードソードを撃ち込んだ。吹っ飛ぶガルガ。
アークはエネルギーガンで支援攻撃を開始する。
「ガオオオオオオオ!」
ガルガの群れも腕を持ち上げて、走りながら銃撃を開始する――。
「邪魔なものはさっさと潰させてもらおうか‥‥!」
鹿島は弾幕を駆け抜けると、一気にガルガの腕を潰しに掛かった。鹿島の二刀がガルガの腕の銃火器を粉砕する。鹿島はそのままノーマルガルガに連打を浴びせる。
天宮はライフルを連射して迎撃、それから接敵して大鎌をガルガの中枢神経に撃ち込むも、ガルガの神経がどこにあるかは不明である。
「相手が死ぬまで撃たなくていい。攻撃力を削れ。向かってくる奴から潰せ」
ジャックは制圧射撃で支援する。エミタのサポートを受けたヘヴィガンナーの範囲攻撃でガルガの動きががくりと落ちる。
「ガルガを押し返せ!」
傭兵たちはガルガに肉薄して、格闘戦に移行する。
カルマ、キラ、アーク、ジャックは支援射撃をガルガに叩きつける。
「ボスガルガ、後ろから動かず――いや、待て、前に出てくるぜ! ボスガルガが前に来るぞ!」
キラは高台からガルガの動きを監視して、無線機に声を流した。
優と鹿島、シャーリィと天宮はその動きを確認して、前に出る。
「確かにタフですね‥‥それにボスガルガとは‥‥」
「気をつけろ」
四人はボスと激突する。
ノーマルガルガを圧倒する鹿島と優の攻撃を、ボスガルガは完璧にブロックする。
「硬いな‥‥想定内だが」
シャーリィはボスガルガの拳を受け止める。ボスガルガの筋肉が盛り上がって、シャーリィを押し返す。
「いかに強かろうが、使いこなす頭と経験がなければ‥‥!」
シャーリィは足で竜の咆哮を使って大地を蹴ると、ボスガルガを押し返した。それでも、ボスガルガは踏みとどまって、連打を撃ち込む。
アークが虚実空間を飛ばすと、ボスガルガの動きが落ちて、シャーリィは攻撃を跳ね返した。
「何と言う硬さ‥‥」
天宮はちくちくと鎌でボスガルガを突いていたが、注意をそらす程度。中枢神経を探すどころではない。
と、その時である。牽制していた天宮は、背後に気配を察して振り返った。
何と、突然ダム・ダル(gz0119)が出現していた。
「ダム・ダル‥‥?」
天宮は飛び退った。
キラは照準の先にダム・ダルを発見して、仲間たちに注意を促す。
「気をつけろ! ボスガルガの隣にダム・ダルが出現!」
「ご自分が開発した玩具の出来に満足ですか?」
「指揮官がこんなところにほいほい姿を見せて大丈夫なのか?」
優と鹿島の問いに、ダム・ダルは思案顔で見返す。
「真面目に答えると、時には現場の状況をこの目で確認しておかねば、勘も鈍ろうと言うものだ。それにしてもゾディアックも随分と数を減らしたものだ。なるほど本星からゼオン・ジハイドがやってくるのも時間の問題と言ったところか」
ダム・ダルはそう言うと、指揮棒を一振りする。するとガルガの群れはするすると後退して、戦場から離脱する。
しかし、201号方面も496号方面も、ガルガの集団はみやこ町から完全には撤退せず、町の境界付近でいつでも反撃できる位置に付くのだった。