タイトル:【ODNK】獅子の牙22マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/02/09 06:22

●オープニング本文


 北九州春日基地――。
 司令官のダム・ダル(gz0119)は、指揮シートにもたれかかると、目の前のホログラフィと向き合った。
「ウォン司令」
「やあダム君。あけましておめでとうとでも言っておこうか」
「地球人は365日が過ぎるたびに祝賀を上げるそうですな」
 ダム・ダルは肩をすくめた。
 ホログラフィに移るアジア統括バグア、ジャッキー・ウォンの口許にはからかっているかのような笑みが浮かんでいた。
「君から送られてきた報告書を見た」
「余り褒められた内容ではないことはお断りしておきましょう」
「ふむ‥‥」
 北九州戦線は膠着していて、各地で一進一退の攻防が続いていたが、ここ最近傭兵たちの奮戦もあって、UPC軍は春日基地へ迫る勢いで解放作戦を進めていた。
「瀋陽の件は残念でしたな。シェイク様を失い、UPC軍は勢いづくばかり」
「その件については、上層部でひと悶着あった。まあいずれにしても、今私は日本に関わっている時間はない。中国やインドを放っておくわけにもいかないのでね。春日基地は君に任せるしかないが‥‥」
「お任せ下さいと言える状況ではありませんが、微力を尽くします」
「ふふん‥‥最近人形作りに凝っていると噂で聞いたが?」
 ウォンは相変わらずアルカイックスマイルを浮かべていたが、目は笑っていなかった。
「お目にかけることが出来るようになれば、サンプルを送りましょう。能力者をベースにしたキメラを作成中ですので‥‥」
「ほう‥‥面白そうなおもちゃを考えたものだが。まあ結構、報告は承知した。引き続き北九州の統治に力を尽くしたまえ」
「は‥‥」
 ウォンの姿が消えると、ダム・ダルは側近の強化人間高橋麗奈を呼んだ。
「またまた築城へ行ってくる。改良型ガルガのサンプルをヘルメットワームに積んでおけ」
「司令自ら戦場へ?」
「ああ」
「ご注意ください。いかにダム司令とは言え、たびたび一人で立ち向かうことのなきよう」
「ファームライドは使わんが、実戦から遠ざかっていると勘が鈍る。尤も今回もガルガの試運転だが。留守中、春日基地を頼んだぞ」
「はっ、お任せ下さい!」
 高橋はびしっと敬礼した。
 ダム・ダルは頷くと、ヘルメットワームに乗り込んで、ガルガを搭載した檻とともに築城方面へ飛んだ。

 築城方面、築上町――。
「最近キメラの攻撃が多すぎる‥‥」
 南部の山岳地帯から止めどなく出没するキメラは、UPC軍の兵士たちに休むことなく襲い掛かってくる。南の中津市から、続々とキメラが出現するのだ。中津市の耶馬渓一帯で現在も散発的な攻防が続いていた。
 兵士たちは北九州が制圧されてからこれほどの激戦を経験したことはなく、無限の回復力で襲い掛かってくるキメラの前にぎりぎりの戦いを続けていた。
「一杯のコーヒーがこれほどうまいと感じることもないだろうな」
 兵士たちは、ベースキャンプで暖を取りながら、冬の寒さを凌いでいた。
 ――と、その時である。無線機から声が流れてきた。
「各小隊! 警戒せよ! 大型の人型キメラが県道を北進中! 市街地に接近中である! 至急迎撃態勢に入れ!」
「おいでなすったか‥‥」
 兵士たちは紙コップを放り投げると、キメラの迎撃に向かった。
 そこで彼らは痛撃を被って撤退することになるのだが‥‥。

 ――ラストホープ。
 オペレータのフローラ・ワイズマン(gz0213)は、築上町からのスクランブルを聞くと、端末を操作して本部のモニターにて傭兵たちと顔を合わせる。
「‥‥ここ最近、築城方面で確認されている人型キメラ、ガルガが確認されました。数は五体です。福岡県道237号、235号、233号、234号、231号を北進して市街地に入りました。正規軍はガルガの前に後退を余儀なくされました。ガルガはすでに市街地に入っており、混乱が予想されます。正規軍と協力し、住民の避難を同時進行でガルガを撃退して下さい。今回軍属傭兵はいません。速やかに現地に向かい、ガルガを迎撃して下さい」
 そうして、傭兵たちはUPCの高速艇に飛び乗った。高速艇は北九州に向かって飛んだ。

●参加者一覧

藤村 瑠亥(ga3862
22歳・♂・PN
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
キラ・ミルスキー(ga7275
16歳・♀・SN
夜十字・信人(ga8235
25歳・♂・GD
ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751
19歳・♂・ER
鈴原浩(ga9169
27歳・♂・PN
霧島 和哉(gb1893
14歳・♂・HD
アレックス(gb3735
20歳・♂・HD
カンタレラ(gb9927
23歳・♀・ER
日下部 司(gc0551
17歳・♂・FC

●リプレイ本文

 築上町に到達した傭兵たちは、UPC軍と連絡を取り合うと、そのまま五つの県道を北進してくるガルガの迎撃に向かった。
 237号線に霧島和哉(gb1893)にカンタレラ(gb9927)。
 235号線にユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)にアレックス(gb3735)。
 233号線に藤村瑠亥(ga3862)にUNKNOWN(ga4276)。
 234号線にキラ・ミルスキー(ga7275)と鈴原浩(ga9169)。
 231号線に夜十字・信人(ga8235)と日下部司(gc0551)である。
「今回は、和哉くんとの連携を、実戦のなかで感覚を試していくつもり。矛盾のペアがいる依頼で、盾を奪っちゃう形になっちゃったけど‥‥ごめんね、アレックス。先行投資、ってことにしといてね?」
「ま、姉貴の言うことには逆らえねえわなあ」
 アレックスはカンタレラの艶のある言葉に肩をすくめる。
「姉御さんから有望株だとご指名だからね‥‥頑張ってみようか」
 カンタレラの指名を受けた霧島は優しそうな笑顔を浮かべていた。
「姉貴さんのこと、よろしく頼んだぜ。俺たちの大事な姉貴さんだからな」
「任せて。姉御さんには傷一つつけさせはしない」
「まあ、二人とも今日は随分と紳士らしいことね」
 カンタレラが揶揄すると、アレックスと霧島は肩をすくめた。三人は同じ小隊のメンバーであった。
「あ、そうそう、和哉君には私がアーマーに捕まって移動することを許してね」
「‥‥にしても、またまたガルガの出現とは‥‥何か悪いことが進行中でなければいいけど」
 言ったのはユーリ。ここ最近のガルガの頻発的な攻撃に疑問が湧く。
「と言うと?」
 藤村は首を傾げて問う。
「戦うたびに強化されてきているからね。この新型キメラは。ダム・ダル(gz01109)が姿を見せたこともあったし、嫌な予感がするんだよね」
「ふむ‥‥ダム・ダルが姿を見せていると言うのは気がかりだな」
「さて、な、だが新型だろうとキメラごときに時間を取られている時間はないが‥‥な」
 UNKNOWNは煙草を吹かしながら、戦場となる市街地を見渡す。
「厄介なデカブツが跳梁しているようですが、圧倒的な力押し、これ以上正の攻法はありません。それを奇襲で突き崩すがスナイパーの仕事です」
 キラは覚醒して赤い瞳が妖しく光る。
「ガルガ‥‥ですか。ダム・ダルの影がちらつくのは不気味ですが」
「ガルガな、前回取り逃がした汚名を返上‥‥せんでも良いか、別に」
 夜十字はフォルトゥナに貫通弾を込め、ガンホルダーに入れた。
「まあ、折角あっちから出向いて来たんだ。鉛玉くらい御馳走せんと、失礼にあたるな」
 そう言って、コンビを組む日下部の肩を叩いた。
「うむ。俺がシェフなら、君はソムリエか」
 緊張気味の日下部の肩をほぐしてやる。日下部はこれが初めての実践であった。
「ソムリエは『樽を担ぐ人』と言う意味だそうだ。ダム樽の先兵くらい、ぽいっ。だな」
「足を引っ張らないように頑張りますのでお願いしますっ!」
 日下部は精一杯の笑顔を振りまくのがやっとだった。今日と言う日が日下部にとって特別な一日になるのだろう。
「キラさんよろしくお願いしますね。俺が前に出て踏ん張りますから」
「支援は任せて下さい。支援するのがやっとですが」
 鈴原とキラのコンビは234号線へ向かう。
 そうして傭兵たちはそれぞれに迎撃に飛ぶ。

 233号線――。
 藤村とUNKNOWNは悲鳴と怒号が交錯する市街地を抜けていく。UPC軍の軍曹と会う。
「要請を受けてラストホープから来た。ガルガはどこまで来ている」
「ラストホープの? ガルガは市街地を破壊しながら悠然と歩いてくる。このまま県道を南へ進んでくれ」
 二人は軍曹と別れると、疾風のように駆けた。
「あそこか?」
 爆発音が轟いてくる。炎が立ち上り、時折閃光が爆発している。
 UNKNOWNは藤村に合図を送ると、建物に隠れながらガルガに接近していく。
 ――ガルガは腕と同化したレーザー砲を市街地に撃ち込んでいた。
「オオオオオオオオオオ‥‥」
 口から閃光がほとばしり、ガルガの口から伸びた光線が市街地を焼き尽くした。
「‥‥GO」
 UNKNOWNの合図とともに、二人は飛び出した。
 藤村の凄まじい速さにガルガは反応できなかった。二刀小太刀がガルガを切り裂く。
 ガルガは腕を振り回すと、藤村を狙ってレーザーを連射した。
 しかし――藤村の動きは尋常ではなく、恐らくラストホープ屈指であろうその回避能力はガルガのレーザーをことごとくかわした。
「どうした狙撃手‥‥その程度か!」
 藤村は爆発的な身体能力で突進する。
 UNKNOWNはスコーピオンとエネルギーガンを八連射した。
 ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! とUNKNOWNの銃撃が次々とガルガの肉体を貫いていく。
 そして藤村の神速の攻撃がガルガを切り裂く。
「しかしこいつ‥‥並み外れたタフさを持っている‥‥」
 藤村は遂にガルガの頭部を切り飛ばした。と、ガルガの胸に第二の目が開き、腹には口が開いて咆哮する。
 それでも――UNKNOWNと藤村の攻勢はガルガを圧倒した。ガルガは逃走を試みたが、足を切り飛ばされて転倒すると、藤村とUNKNOWNは滅多打ちにした。そして、遂にガルガの活動は停止した。
 UNKNOWNは酒を振りまくと、ガルガの肉体を焼いた。
「よし、藤村は北へ、私は南へ、グッドラック」
 UNKNOWNと藤村は手を打ち合わせると、南北へ援軍に向かった。

 235号線――。
 ユーリはSMGで接近してくるガルガに銃弾を嵐のように叩きつける。
「――ガオオオオオオオ!」
 ガルガはもの凄い勢いで突進してくる。
「速い‥‥が」
 ユーリは後退しながらデヴァイスターを取りだすと銃弾を撃ち込んだ。
 ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! とガルガの肉体を貫通する銃撃。
「まずは、厄介な足を止めさせてもらう!」
 苦無を叩きつけたアレックス。ドドドドド! と苦無がガルガの足に突きささる――が、ガルガはものともせずに突撃してくる。
「オオオオオオオオ!」
 ガルガの爆発的な突進、体当たりを、ユーリはまともに受けた。
 吹き飛ばされるユーリ。
「あいたた」
「にゃろう! インテーク開放‥‥ランス『エクスプロード』、イグニッション!」
 アレックスはランスを撃ち込んだ。槍の先端から炎が爆発し、ガルガの肉体を吹き飛ばした。
 ガルガは態勢を整え起き上がると、アレックスにパンチを叩き込んだ。
 ドゴオオオオオオ! と凄まじい衝撃をアレックスは受け止めた。
「あのなあ‥‥てめえいい加減に‥‥くたばれ!」
 アレックスは竜の爪を叩き込んだ。槍がガルガの胴体を貫通する。ガルガは奇天烈な咆哮を上げた。
「――!?」
 直後に真下から蹴りが来て、アレックスは吹っ飛んだ。
「アレックス!」
 ユーリはウリエルを抜くと、ガルガの足を切り裂いた。
「ガアアアアア!」
 反転してガルガの裏拳が飛んできてユーリを打ちのめす。
 空中で態勢をアクロバットに整えたアレックスは万力の力を込めてランスを振り下ろした。
「おおおおおりゃああああ! 炎帝の槍にて灰塵と化せ! 終焉の一撃(ファイナル・ストライク)ッ!!」
 クリティカルヒット! アレックスの一撃はガルガの肉体を貫通して炎が爆発、上半身を吹き飛ばした。
「や、やったか!」
 降り立ったアレックスは、崩れ落ちるガルガを見て吐息した。ガルガの下半身はそれでも動いていたが、ユーリが粉砕する。
「やったな」
「やれやれだぜ」
 そこへ藤村がやってくる。
「あれ、藤村」
「お前たちもやったのか」
「ラッキーかな」
 アレックスはトランシーバーで237号線と連絡を取る。
「和哉、アレックスだ。ガルガを倒した。そっちはどうなってるか」
 しばし間があって、
「アレクさん。こっちは大苦戦だ。何とか止めているけど」
「今から行く。待ってろ」
 三人は北へ走った。

 隆起している腕の一部が開口して、銃弾を吐き出してくる。ガルガは霧島とカンタレラに銃撃をばらまいた。
 霧島はガルガの凄まじい銃撃に耐える。
「あそこ」
 ガルガの開口部にペイント弾を撃ち込んだ。銃撃の開口部は基本腕しかない。
 ドドドドドドドド! と飛んでくる銃撃を受け止めつつ装輪装甲で逃げる。カンタレラが霧島のアーマーに捕まって移動する。
「ムダ、だよ‥‥。それは、前に‥‥みたから‥‥ね」
「な、並大抵の装甲じゃないわね‥‥やっぱり」
 恐るべき銃撃を跳ね返す霧島の装甲に驚くカンタレラ。自分なら恐らく即死ものだろうと推測する。
 二人は移動しながらエネルギーガンと小銃でガルガを削る。ガルガは小揺るぎもしないが、二人はダメージを蓄積させる。
「そこ! 和哉君!」
「えんりょ‥‥する、気は‥‥ない‥‥よ?」
 カンタレラの銃撃の後を霧島が撃つ。
「オオオオオオ‥‥ガアアアアア!」
 ガルガの口から閃光がほとばしり、光線が霧島を貫通した。
 ずかずかと突撃してくるガルガ。
「逃げるわよ!」
「全力後退するよ‥‥」
 しかし加速したガルガが霧島にパンチを叩きつける。
 ――ガキイイイイン! と霧島は受け止めた。霧島の頑丈な装甲はびくともしない。ガルガの凄まじいパワーを完璧に跳ね返した。霧島の装甲はドラグーン最強クラス、何とガルガの攻撃に小揺るぎもしない。
「‥‥汚い手で‥‥! 弟分にさわるんじゃねーわよ‥‥!」
 激昂したカンタレラは機械剣で切りつけたが、ガルガは易々と受け止めると、投げ飛ばした。大地に叩きつけられるカンタレラ。地面にめり込んだ。
「ガルガ‥‥お前の相手は‥‥」
 そこで、ユーリ、藤村、アレックスが駆けつけた。
「お、遅いじゃないの。危うく死にそうだったわよ」
「すこし‥‥大変、だった‥‥かな?」
 霧島とカンタレラはガルガと距離を保って逃げる。
「和哉、姉貴! 待ってろ! 今からそのでかぶつをぶちのめしてやる!」
 三人の援軍はガルガに突進していく。
「オオオオオオ‥‥オオオオオオオ!」
 ガルガは咆哮すると大地を蹴った。
 激突する傭兵たちとガルガ。
 このガルガは並み外れたパワーとタフさを持っていた。常識外の神速を持つ藤村はかわしたが、ユーリやアレックスはダメージを受ける。
 しかし、最後に傭兵たちはガルガを圧倒する。この巨人キメラは、ぼろぼろになって崩れ落ちると、遂に活動を停止したのであった。

 ――234号線。
 キラと鈴原は潜伏してガルガを待ち受けた。鈴原はキラの前50メートルの物陰に隠れていた。
「キラさん、ガルガが接近してきます。そろそろ行きます」
「了解、浩。援護します」
 ズウン‥‥ズウン‥‥ズウン‥‥とガルガが建物を破壊しつつ接近してくる。
「よし、行きます!」
 鈴原は飛び出すと、ガルガの腕目がけて疾風のように駆け抜けた。アサシンの訓練を受けた鈴原の動きはしなやかで、地を行くヒョウのごときであった。
 小銃を撃ち込みながら突進してガルガの腕に切りつける。ガルガは腕を持ち上げて鈴原の一撃を受け止めた。ガキイイイイン! と鈴原のツインブレイドがガルガの腕を叩いた。直後に鈴原はガルガの腕に銃撃を叩き込んだ。が、ガルガはびくともせずに鈴原をぶん殴った。
「――ぐっ!」
 直撃を受けて吹っ飛ぶ。態勢を整えて反転しつつ、鈴原は大地を滑った。
 キラは遮蔽物に隠れるようにしながら、ペイント弾をガルガの顔と胸に撃ち込んだ。それから遮蔽物の間を駆け抜けながらアサルトライフルを撃ち込んだ。
 ドウ! ドウ! ドウ! と三連射。
 ガルガは苛立たしげに腕を振るうと、キラ目がけて銃撃態勢に入る。すううううっと勢い口を開いて、腰を落とした。
「撃たせるかよ!!」
 鈴原は飛びかかって、ブレイドを叩きつける。空中で身をひねるようにして、ガルガの口にツインブレイドをねじ込んだ。
 その瞬間、ガルガの口から閃光が爆発した。鈴原の肉体を光線が至近距離で貫通する。
 ガルガも口から首にかけてブレイドが貫通したが、鈴原は墜落して焼け焦げた肉体を活性化で回復させる。
「やられたが‥‥奴も無傷じゃないだろ」
「浩、無事ですか」
「何とか」
「バックアップします」
 キラはガルガの口目がけてライフルを連射、強弾撃や鋭角狙撃を叩き込む。
 鈴原は立ち上がると、ガルガの足を狙ってブレイドを叩き込む。
「ガアアアアアア!」
 キラの狙撃にわめきながら腕を振り回し、鈴原の攻撃に反撃する。
 そこへUNKNOWNが到着する。
「待たせたかね」
「UNKNOWNさん――終わったのですか」
 キラはガルガに狙いをつけたまま、UNKNOWNを顧みた。
「ああ、終わったよ」
 UNKNOWNは煙草に火をつけると、奮戦する鈴原を見やる。
「鈴原も頑張っているようだ。俺もすぐに行った方がよさそうだ」
 UNKNOWNはキラの肩を叩くと、飛び出した。銃を八連射。
「UNKNOWNさん!」
 ガルガの巨体を撃ち抜いたUNKNOWNの来援に鈴原は安堵の息を漏らす。
「行くぞ鈴原。さっさと片付けてしまおう」
「はい」
 UNKNOWNは至近距離から銃撃を叩き込む。鈴原は裂ぱくの気合とともに流し切りを叩き込めば、足を両断した。
「ガアアアアア‥‥!」
 崩れ落ちるガルガに、鈴原は腕を叩き斬り、頭を潰した。
 キラとUNKNOWNもやってくると、ガルガが活動を停止するまで銃弾を叩き込んだ。

 ――231号線。
 飛び出した夜十字はソニックブームをガルガに叩き込んだ。ズバアアアア! と切り裂かれるガルガがずんずんと突進してくる。
 日下部も姿を見せると、超機械ザフィエルを振るう。超機械から発せられる光線がガルガを打ち据える。
 ガルガは腕を持ち上げ銃撃を開始するが、夜十字がジグザグにかわしながら懐に飛び込み、剣を振るう。
「がら空きだ」
 と、ガルガの胴を切り裂く。
 夜十字の攻撃に合わせて、日下部は隠れながら超機械でサポート。夜十字が残した傷跡にダメージを被せていく。
「その大火力と――そのしぶとさが――貴様の今日のアンラッキーだ」
 夜十字はゼロ距離でフォルトゥナに貫通弾を乗せて足を撃った。ガルガの肉体が吹き飛ぶ。夜十字がさっと手を上げると、日下部は頷いた。
「今だ!」
 迅雷で突進すると、ガルガの足に超機械を連射した。
 崩れ落ちるガルガ。
 夜十字と日下部は暴れ回るガルガの巨体にひたすら攻撃を浴びせ、最後に止めを刺す。ガルガの肉体は原形を留めていなかった。
「これが‥‥バグアとの戦争」
 最初の実戦を終えた日下部の心は疲労していた。
 そうして――傭兵たちはガルガの全滅を確認する。

 ‥‥小型のモニターで一部始終を確認していたダム・ダルは、「完璧だ」と呟いて、春日基地へ帰還する。