●リプレイ本文
150機のナイトフォーゲルとラストホープの傭兵たちは、苅田町の北部へ向けて迎撃に向かう。レーダーには百を越す敵機の光点が浮かび上がっている。
音速で飛ぶ傭兵たちは瞬く間にバグア軍との距離を縮める。ピッピッピッピッ‥‥と敵の光点動き始める。
「行くぞ、全機ミサイル発射」
UPCのナイトフォーゲルから七千発を越えるカプロイアミサイルが放たれると、ミサイル群は敵機を目指してうねうねと追尾しながらヘルメットワームに襲い掛かる。
次々と命中するミサイルが爆炎を上げて、鮮やかに空を紅の炎で染め上げる。
「ひゃっほう! 行くぜ! 全機突入!」
翠の肥満(
ga2348)は軽快にディアブロを操りながら敵中に飛び込むと、ワームを捕らえてミサイルを撃ち込んでいく。
ローリングしながら翠の肥満は無数の敵軍を見て雄叫びを上げる。
「わーお敵も味方もたっくさんだ! 空中に展開する全KVへ、食い放題だぜ大暴れしちゃろうや!」
味方のレーダー機能は無数のキューブで壊滅的な打撃を被っている。こちにも40機程度の電子戦機がいるが焼け石に水である。
「キューブ迎撃隊! さっさとこのやっかいな妨害電波を潰してくれよ! 敵ワームは僕たちが引き受けるからよ!」
翠の肥満は言って、次々とミサイルを叩き込んでいく。
「戦場の風紀委員真帆ちゃん参上!」
熊谷真帆(
ga3826)は友軍機と矛を並べて雷電が突撃する。
「不法占拠者には制裁です!」
真帆はD2ライフルに敵機を収めると、トリガーを引く。
「今日と言う今日はバグアを北九州から追い出すです!」
火を吹くライフルがワームを撃って咆哮する。
敵ワームからも無数のプロトン砲が飛んでくる中――。
真帆はローリングしながらもかいくぐって、敵の反撃に耐える。
「(ダムさん‥‥お会い、するのは、G3Pの、初期、以来、です、ね。覚えて、いない、でしょう、けど。最近は、九州で、航空決戦に、参加が、多い、です、ね)」
ルノア・アラバスター(
gb5133)は胸の内に呟きながら、S−01を加速させる。バレルロールでプロトン砲の嵐を回避しながら、ライフルや機関砲を叩き込む。
「さあ、花火の、始まり‥‥野郎共、突っ込む、ぜー(棒読み)」
たどたどしい口調のルノアは棒読みで言いながら空中戦に飛び込んでいく。
「敵タートルワーム――戦列を整えて前進! 砲撃が来ます!」
イビルアイズから警戒の声が響き渡ると、地上から大口径プロトン砲の閃光が空を貫いた。
「空陸迎撃部隊! タートルワームを押さえてくれよ!」
翠の肥満は言いつつ、プロトン砲を回避しながら、ディアブロをワームの背後に付けると、ライフルを叩き込んだ。
「この乱戦でトロトロ飛んでられると思うなよオッ!?」
ライフルの連打を浴びて、爆発轟沈するヘルメットワーム。
友軍のキューブ対応部隊が敵軍の背後にすり抜け、ジャミングを行って浮かんでいるキューブの大群に襲い掛かっていく。次々と撃滅されていくキューブ。
「何て数だ‥‥きりが無いぞ」
キューブの大軍はそこかしこに滞空していて、さしたる移動力は無いものの、全てを倒しきるには時間が掛かりそうだった。それでも何とかジャミングの一角を崩して、キューブの妨害を弱体化させる。
「‥‥少しは回復したか? こちら支援機ウーフーより、敵の通信量より敵エースと思われるワームの位置を割り出す。エース機対応の連中はそちらへ向かってくれ」
「頼んだぜ」
翠の肥満はレーダーにマーキングがされていく様子を見守った。
――巷に雨の降る如く、軍靴響く京都郡。UNKNOWN(
ga4276)は骨董品とも言えるK−111改を操る。機体を前進させながら、帽子のボルサリーノを整え、悠然と煙草に火をつけると、インテリメガネの奥から眼前のワームを見つめる。
ふーっ、と煙草の煙を吐き出すと、照準に捕らえたヘルメットワームにバルカンを叩き込む。ワームは瞬く間に粉々になって吹き飛んだ。
「‥‥‥‥」
UNKNOWNの機体が風のように流れる。幾条ものプロトン砲が飛び交う中、機体は滑る様に攻撃をかわしていく。
ピッピッピッピッ――とレーダーにエース機の位置が割り出されていくと、アルヴァイム(
ga5051)とカルマ・シュタット(
ga6302)も味方の支援に向かう。
翠の肥満は口笛を吹き鳴らしながら、プロトン砲の雨の中をディアブロでかいくぐり、紫のエース機に迫る。
「紫のエース、もらったぜ」
ミサイルを撃ち込めば、直撃を食らってエース機が傾く。
「この程度で私が落ちると思うのか。授業料は高くつくぞ」
「そいつは勘弁だね」
エース機の反撃を受けながらもライフルを撃ち込む翠の肥満。
「友軍機はいい勝負を続けているようだな」
カルマはHWを叩き落しながら、アルヴァイムにダム・ダル(gz0119)出現がまだないことを告げる。
「ふむ‥‥今のところ我が軍有利と見ます、どこかに隠れているのでしょうか」
アルヴァイムもディスタンの装甲でプロトン砲を跳ね返すと、ライフルでHWを打ち砕いた。
真帆は友軍とロッテを組んで確実に戦火を上げていた。この大空中戦に真帆の雷電も少なからず直撃を受けたが、まだまだ撤退するには早すぎる。
「熊谷、雷電、赤のエース機を確認した。高橋麗奈だろう。行くぞ。奴を落す」
「了解、真帆ちゃんスペシャル、ヘビガト猛攻喰らえです!」
赤の高橋機に迫る真帆と友軍機のロビンに、赤いヘルメットワームはプロトン砲を打ち込んでくる。
直撃を受けて雷電のコクピットが揺れる。
真帆は先行するロビンの背後に下がると、赤いヘルメットワームにミサイルを叩き込んだ。ロビンはマイクロブーストを起動させて突進、レーザーバルカンを撃ち込む。
「小賢しいわ。苅田奪還など夢のまた夢よ。九州のUPCが全戦力を投じたところで我々の優位は子揺るぎもせぬわ!」
高橋は言って真帆たちに襲い掛かってくる。
「バグアの不法占拠は断固許しません! 人殺しなんて娯楽の世界だけで十分だけど、それでも真帆ちゃんは許せません!」
真帆はミサイルを叩き込みながら高橋とすれ違い、きっと赤いヘルメットワームを睨みつける。
「熊谷、雷電、行くぞ。あいつを落して敵の一角を崩す」
真帆は高橋と激戦に突入することになる。
メタルレッドのS―01がプロトン砲の閃光をかいくぐって、ライフルを放つ。青いエース機に肉薄するルノア・アラバスター。
「アルちゃん‥‥お願い!」
機体を加速させながら飛ぶルノアと平行して、アルジェがK02カプロイアミサイルを発射する。500発のミサイル群がエース機目がけて飛ぶ。
ミサイルを回避しながら逃げるエース機に、ルノアはエネルギー砲を連射する。
「バグア軍、ここで、みんな、叩き落す、ぜー(棒読み)」
ルノアはたどたどしい口調で、呟きながら、照準の先のエース機を狙い打つ。
エネルギー砲を食らって炸裂する青いエース機。
「やっつける、ぜー」
ルノアはそのままエース機に食らいつく。
光学迷彩を解いて、姿を現したファームライドは、悠然と傭兵たちの前に滞空する。
「UPCも尋常ではない善戦をする‥‥折れぬ砕けぬ心とはよく言ったものだな」
コクピットで、ダム・ダルは戦況を見やりながら思案顔であった。
その姿を発見したウーフーがUNKNOWNとカルマ、アルヴァイムに連絡を入れる。
「ダム・ダル‥‥ようやくおいでなすったか。行くぞ」
三人のラストホープ屈指の傭兵たちは、カルマを先頭にファームライドに接近する。
赤い悪魔は三機のナイトフォーゲルの接近に気付いたようで、プロトン砲を打ち込んでくる。
「ダム・ダル、お前も負けが込んできているのに大変だな」
カルマはプロトン砲をかいくぐって無線でダム・ダルに呼びかける。
「‥‥あと余計なお世話かもしれないけど、負けが込みすぎてバグア内で粛清されることがないようにな‥‥お前は俺が、カルマ・シュタットが倒す」
「カルマ・シュタットか、お前も気をつけろ、俺がその気になればお前など一瞬で粉砕できるということをな」
「冗談でしょう、ダム・ダル」
アルヴァイムがディスタンを加速させると、ライフルを連射する。直撃を受けたファームライドが爆発する。
カルマもアルヴァイムと挟撃体制を取ってファームライドに立ち向かう。
ファームライドは加速してプロトン砲を叩き込んでくる。
アルヴァイムがFRの攻撃に耐えながらライフルで応戦。
カルマは加速するとツングースカで飛び交う赤い機体を狙う。しかしファームライドはシュテルンの攻撃を軽やかにかわす。
この時、二人の攻撃はダム・ダルの視界からUNKNOWNの機体を遮蔽していた。UNKNOWNは影のように密かに下にもぐりこんでいた。
カルマはブーストを起動させると、PRMを使ってカプロイアミサイルを発射する。これもUNKNOWNを隠すための攻撃。アルヴァイムはミサイル群を見やりながらもファームライドにぴたりと付く。
「運が悪かった、な。私とお前では戦い方の相性が悪い」
UNKNOWNは煙草の煙の向こうに、ファームライドを捕らえていた。
スロットル全開で加速するUNKNOWNの機体が突進する。
ミサイルを慣性飛行でジグザグにかわしながら反転したところへ、UNKNOWNのK−111の機槍ロンゴミニアトが虚空を駆け抜ける。UNKNOWNはさらにブーストで加速。
ロンゴミニアトがファームライドを直撃――! 大爆発が起こって赤い機体が激しく揺れる。
「――にっ!?」
ダム・ダルは意表を突かれる。最強クラスのナイトフォーゲルの中にはステアーやノーマルシェイドに匹敵する機体が存在するのだ。
「ダム・ダル――!」
カルマは猛進して残りのPRMを使ってアグニを連発。
UNKNOWNも至近距離からバルカンを連射する。
ダム・ダルは後退しながら、UNKNOWNの機体にありったけのプロトン砲を叩き込むと、光学迷彩で姿を消した。
「逃げたか‥‥意外にも慎重なバグア人ではあるな‥‥」
UNKNOWNは直撃を食らった機体を立て直し、通常の航空戦の支援に回る。
以降ダム・ダルは光学迷彩で消えたまま、戦域全体の指揮に回ったのであった。
地上陸戦班――。
50機のゴーレムが眼前に展開している。が、それ以上に行橋市駐留の第一から第九部隊100機余りのナイトフォーゲルがゴーレムに攻撃を開始する。
「【立花】発射用意」
陸戦班の指揮を取る鹿嶋悠(
gb1333)は、ミサイルポッドを装備したKVに攻撃の合図を送る。【立花】とは大量のミサイル発射とともに敵機に攻勢を仕掛ける傭兵たちの作戦案である。
「ミサイルなんてのは狙い撃つんじゃなくて、いやそりゃ大当たりに越したことはないけどね。結論としては『爆発の熱と圧で敵をぶん殴る』もんだと思ってね」
鈴葉・シロウ(
ga4772)は友軍機に伝える。
ミサイルポッドを装備した第九部隊が配置に付く。
「敵機をマーキングする」
岩龍乗りが官制を行いながら、各自ミサイルの発射態勢に入る。
「全機ミサイルを発射せよ。発射と平行して突撃を開始する」
「ロックオン、ミサイル発射」
「発射」
「発射!」
「地上にただ一人だけでも心を分かち合う魂があると言える者も歓呼せよ。そしてそれがどうしてもできなかった者はこの輪から泣く泣く立ち去るがよい」
第九部隊のミサイル発射にベートーヴェンの第九を掛けて歌うシロウ。
「ここからが本番か‥‥空・空と来て今回ようやく地に足が着いたからな。久しぶりの陸戦だからな、本領発揮といこうか相棒。邪魔する奴らは全て撃ち貫くのみ!」
麻宮光(
ga9696)もミサイルを発射して阿修羅を突進させる。
伊達士(
gb8462)も自機を突撃させる。収入のいい依頼と考えて飛び込んだが、伊達はこれが何と初任務。強敵と経験豊富な者たちのチームに来たことで、萎縮していた。
「通りすがりの傭兵ってだけにはなりたくないやろ」
多くの参加者からアドバイスされた事に感謝しているが、なかなか言葉にしてうまく伝えられずにいた。
「みんなをげんなりさせることだけはしたくないんよ」
それでも、生きて帰り、必ず謝辞を伝えると意気込むが、無意識に身体が硬くなっている。
ミサイルが流れるように飛んで行き、ゴーレムを直撃して地上に火球が炸裂する。
「何この数! あたし、場違い?」
「行くぞ伊達!」
鹿嶋は伊達を叱咤し、敵部隊の側面から突撃を仕掛ける。UPC軍も一気に前進、装輪走行でゴーレム部隊に向かって走る。
ゴーレムたちはミサイルの攻撃を受けて態勢を崩したが、直ちに起き上がってくる。
「全機鹿嶋に続け!」
UPC軍は正面からゴーレムと激突する。
鹿嶋、シロウ、光、伊達はゴーレムの側面から突入。ガトリング、ライフルを連射しながらゴーレムに攻撃を開始する。
鹿嶋はグレネードを放って突入、機槍黒竜を叩き込めば、ゴーレムの盾を貫通して大爆発が起こる。
シロウの雷電も脚爪シリウスでゴーレムを切り裂く。
「食らえツイストドリル!」
麻宮の阿修羅のドリルがゴーレムを貫通する。爆発とスパークがゴーレムを傾かせる。
「何この人たち‥‥」
鹿嶋、麻宮、シロウが早くもゴーレムを沈めていくのに、伊達は呆然。
「空気読めへんって思われるのは嫌や。でも。誰でも初陣があるんやしっ」
伊達は敵中に乗り込み、幻霧を発生させる。
霧の向こうから襲い来る影に、伊達はディフェンダーを構える。
一体のゴーレムが姿を見せ、伊達はの翔幻は刀で打ち砕かれた。
「くっ‥‥やっぱり駄目だ」
伊達は弱々しくディフェンダーを振るったが跳ね返される。
さらに打ちのめされて、伊達は後退した。
「伊達さん、下がって下さい。無理せず銃撃で支援攻撃を」
鹿嶋が敵機を粉砕すると、伊達は悔し涙を流して後退する。
そこへ塗装されたエース機が襲い掛かってくる。
「指揮官機‥‥貴様の首‥‥貰い受ける!」
鹿嶋はエース機に激烈な攻撃を加えて沈めた。機槍がエース機を打ち砕き、ゴーレムは粉々に吹っ飛んだ。
麻宮もガトリングとドリルを駆使してこの乱戦、ゴーレムを撃退していた。
エース機にクラッシュテイルを叩き込む。
「テイル! 出力最大!」
爆発するエース機は阿修羅に反撃、刀が阿修羅を打ち据える。
光はガトリングを撃って間合い取る。
複数のエースを失って、地上戦は傭兵が優勢に戦いを進める。
ゴーレムは倍以上のUPC軍に多数の被害を出して後退する。
‥‥長期にわたった戦闘でナイトフォーゲルの練力はほとんど底を突いた。陸戦ではゴーレムを撃破したが、空戦では傭兵たちも撤退を余儀なくされる。ラストホープの傭兵たちは強力な機体で多数のワームを撃墜したが、敵も途中から逃げに転じる。差し当たり、苅田北部の制圧に向けて軍は進軍を開始する。
苅田攻略戦は、両軍の大規模な戦力が投入され、熾烈な戦いが続くことになるだろう。