●リプレイ本文
「‥‥第八部隊、これより敵機の迎撃に入る‥‥用意はいいか」
「準備は万端だ‥‥バグアどもを奈落のそこに叩き落してやるぞ」
須佐武流(
ga1461)はロビンの機体を傾けると、眼前の敵大部隊に友軍とともに接近していく。
ザザーッとレーダーが乱れる。麻宮光(
ga9696)は阿修羅の操縦桿を握りしめると、武流の後から戦場に侵入する。
「キューブワームか‥‥各機、有視界での戦いになりますよ。第一、第四、第五、第八部隊、後に続け」
「ラジャー、麻宮。それにしたって敵さんはとんでもない大軍だ。しかし今回はキューブの数が多すぎる」
「‥‥何とか支援攻撃を頼みます」
岩龍乗りたちは全機でジャミング中和装置を働かせるが、キューブ二十機のジャミング能力は壊滅的だ。
「全機‥‥エン‥‥ゲージ。ミサイル‥‥発射用意」
アリステア・ラムゼイ(
gb6304)のフェニックスの機体が陽光を受けてきらめいた。
接近するワームの大集団から閃光がほとばしり、幾条ものプロトン砲が飛び交う。
爆発炎上する友軍機に、アリステアは冷静であった。
「怯むな! ミサイル発射!」
UPCナイトフォーゲルからも無数のミサイル群が発射される。流れる流星のように、五千発以上のカプロイアミサイルがヘルメットワームに襲い掛かる――!
次々と命中するカプロイアミサイル――炸裂する大火球が空中を彩り、炎の壁となって空を埋め尽くした。
「ダム・ダル‥‥彼と戦うのも久し振りではありますが‥‥まずは敵の妨害戦力を何とかしませんと」
セラ・インフィールド(
ga1889)のシュテルン、カルマ・シュタット(
ga6302)のシュテルン、狭間久志(
ga9021)のハヤブサ、音影一葉(
ga9077)のディスタンと第六部隊のバイパーが敵の側面から背後に向かう。
ヘルメットワームの一団が向きを変えて接近してくる。プロトン砲が飛んでくるが、傭兵たちは機体をロールさせて回避する。
突撃する傭兵たちはライフルやマシンガンを叩き付けながらワームとすれ違う。
目の前にはキューブワームにメイズリフレクター。
「MRは私が仕留めましょう」
音影はディスタンを傾けると、マシンガンをMRに撃ち込んだ。次々と粉々になっていくMR。ディスタンも反射ダメージを受けるが、強力な防御力で持ち堪える。
「キューブを片付けるぞ」
久志はキューブに接近すると、すれ違いざまのソードウイングで撃滅していく。
武流のロビンからレーザーが放たれる。光条がHWを打ち抜き、反撃のプロトン砲が飛んでくるが、武流はローリングで回避する。
武流を追撃してくるHWに第八部隊のKVが編隊を組んでインターセプト、波状攻撃をしかけると、敵機も距離を保って旋回する。
態勢を整えたHWは戦闘隊形を組んで、武流たちに攻撃を開始する。
「占領地域の苅田を落そうとは、どこまでもしぶとい奴らよな、UPC軍!」
バグア兵の声が回線に響き渡る。視界に青いHWが飛び込んでくる。
「総力戦‥‥といったところか。奴らも焦っている‥‥ようだが。‥‥俺たちも‥‥焦っているのかも知れんな。‥‥エース機のお出ましだ、各機、雑魚ワームと切り離せ」
「ラジャー」
武流はロビンを突進させると、友軍機は機体を傾けてワームに弾幕を叩き付ける。
敵エース機は加速して、武流に向かってくる。武流はレーザーを打ち込んでソードウイングを叩き込んだ。
すれ違いざまに爆発するエース機、距離を保つと、プロトン砲を打ち込んでくる。
ロビンは被弾してコクピットが揺れる。武流は顔をしかめると、エース機に反撃のレーザーを叩き込んだ。
「武流――援護しますよ」
光の阿修羅が加速して突進してくる。エース機の背後を捉えると、ガトリングを浴びせかける。
弾丸の嵐が青いエース機の装甲を打ち抜き、大爆発が起こる。
「友軍各機、戦線を立て直してワームの攻撃を回避せよ。戦線を維持しつつ敵機を確実に仕留めていきましょう」
光は回復した回線に呼びかけると、武流とエース機を挟み撃ちにしながら、撃墜する。
「ぐ‥‥ああああ‥‥!」
パイロットの強化人間は最後の悲鳴を残してワームとともに消滅する。
「指揮官機が撃墜された、やるな‥‥人間ども、舐めて掛かると痛い目に合うぞ、全機警戒せよ!」
バグア兵の声が鳴り響く。
「こちらも気を引き締めていきますよ。全機戦闘隊形を維持、敵ワームをここから駆逐してやりましょう」
アリステアは先頭に立ってワームに突撃する。彼のフェニックスの背後には第一部隊と第四部隊が展開している。アリステアを先頭に編隊を組み直すと、HWに攻撃を叩きつける。
敵ワームも編隊を組んでアリステアに襲いかかってくる。
「全機散開、ロッテを組んで死角をカバーせよ」
アリステアは言って、操縦桿を傾けると、機体をローリングさせながらプロトン砲をかいくぐり、バルカンを撃ち込んだ。轟音を上げてワームが爆発する。
友軍機はミサイルを撃ち込みながら、ライフルやレーザーを撃ち込んでいる。
上空をぐるぐると回りながら、KVとワームは空中戦を展開する。
「ロックオン‥‥食らえ!」
アリステアは機体をぴたりとワームの背後に付けると、ホーミングミサイルをHWに撃ち込む。
流れる軌跡を描いてミサイルはHWを直撃、ワームは爆発炎上、空中で木っ端微塵に四散した。
「‥‥避難作戦は現在混乱を来たしている。敵の襲来で長く持ち堪えることが出来なければ、軍は撤退する」
「ふむ‥‥敵は何としても食い止めてみせる。UPCには活動を継続してもらいたい」
鹿島綾(
gb4549)は出発前に軍の士官たちと打ち合わせを行っていた。
「避難は現在どの程度進んでいるのだ」
「現在苅田町の市民の半数近くが南への撤退を終えているが‥‥戦いは始まったばかりであろう」
「任せて欲しい‥‥と気前のいいことを言うつもりは無いが。今は出来うる限りの力を尽くすのみだ」
そこで哨戒中の旋龍から連絡が入った。
「こちらへ接近している敵機の姿を確認した。迎撃部隊のナイトフォーゲルは直ちに出撃を」
「来たか‥‥では我々はこれで、みなを守ってみせる。行くぞ」
綾は軍属傭兵たちを顧みる。傭兵たちは厳しい表情で頷いた。
綾ら、傭兵たちはKVに飛び乗った。そしてスロットルを全開にする。KVの機体は轟音を上げてバーナーを吹かすと、道路を滑走路にして次々と飛び立っていく。
人々は軍の先導を受けて避難して行く‥‥。
「みなに手出しはさせないぞ」
綾は友軍機にバンクサインを送ると、編隊を組んでKVは飛ぶ。
「前線から連絡が入った。現在町の北部で敵の空戦部隊と激戦の最中にあると。今のところ敵の突破を許してはいないようだ」
「ならば‥‥こちらは南へ入ってくる敵機を全機撃墜するまでだ」
そこでレーダーに滞空しているワームの光点が浮かぶ。
「見つけたぞ。スパローより第二部隊へ。害虫退治の準備はいいか?」
「ラジャー、第二部隊、いつでも心積もりは出来ているぞ。害虫退治を成し遂げよう」
「敵機が動き出しました。凄いスピードです、HWでしょう」
岩龍から管制官が伝えると、綾は顔を引き締める。
「全機エンゲージ、接敵に備えろ」
瞬く間にHW数機の姿が大きくなる。
「ミサイル発射」
友軍機からミサイルが放たれると、ワームを直撃する。
綾は加速して接近すると、スラスターライフルを打ち込んでいく。
凄まじいライフルの一撃がHWを吹っ飛ばして装甲が弾け飛ぶ。
「帰れとは言わん! 潰れていけ!」
綾はトリガーを引いてHWに弾丸を叩きつける。
「人々は守る‥‥誰一人として、犠牲は出さない‥‥」
綾はそこで回線を切り替える。
「地上部隊UPCへ、避難地域から数キロ離れた空で敵を迎撃している。敵機のほとんどはまだこちらへ来ていない。避難を継続せよ」
「了解‥‥支援に感謝する」
「以上」
綾は目の前で爆発四散するワームを冷ややかに見つめていた。
「お前達の為すがままにはさせないぞ」
前線にファームライドが姿を見せたのは、戦いが激しさを増し、両軍ともに撃墜者が出始めたところだった。
赤い機体はナイトフォーゲルに襲い掛かると、プロトン砲やカプロイアミサイルを発射し、凄まじい攻撃を叩き付けていく。
セラ・インフールドは仲間達に連絡を流す。
「久志さん、カルマさん、音影さん、ファームライドの出現を確認しました。いよいよですね」
「了解」
「了解しました」
「ようやく出ましたね。ファームライド‥‥ここで落ちてもらいますよ」
「ダム・ダルへ、ダム・ダルへどうぞ――」
セラの問いにダム・ダルは無言であった。
「先代のダム・ダルはかなりの酒豪でしたが貴方はどうですか?」
「‥‥‥‥」
「機会があれば皆でお酒でもどうでしょう? お互い何か得る物があるかもしれませんよ?」
「それは騎士道精神というやつか。戦場で俺を相手に大した余裕だな」
ダム・ダルはそれだけ言って通信を切った。
音影は第六部隊を率いて突進すると、攻撃を開始する。
「各機、捕らえる必要は無し‥‥空を埋め尽くしなさい」
第六隊のバイパーはスタビライザーを起動させると、ラージフレアを展開してG放電ミサイルを発射する。
が――ファームライドは全てかわして急上昇する。
続いてバイパーは離脱、音影、久志のロッテ、カルマとセラのロッテがファームライドに迫る。
「道を開けるのはFR‥‥貴方です。それとも互いに散りますか‥‥?」
音影は超絶的な破壊力のレールガン――電磁加速砲ブリューナクを発射するも、FRは腹立たしいほどの軽やかさでかわした。
続いてミサイルを連弾するも、ファームライドは高機動でそれらも回避する。
「西研のGSB程じゃないけど‥‥喰らえッ!!」
久志はミサイルを全弾発射――ファームライドはこれも全て回避する。
「ファームライド‥‥」
カルマは照準の先に赤い機体を捕らえると、残りのミサイルを全弾発射する。
カルマはミサイルを放り投げるように機体を動かすと、その行く先を見つめる。
ファームライドは慣性飛行でミサイル群をかいくぐると、ミサイルの追尾を全弾回避する。
セラもミサイルを全弾発射するが、ファームライドはこれもかいくぐって迫り来る。
「さすがに‥‥やってくれますね」
「ここまでは予想済みです。仕切り直しですよ」
音影は仲間達に告げると、対ファームライドの四人は旋回して態勢を立て直してロッテを組み直す。
ファームライドは慣性飛行できゅんきゅんとスライドするように接近してくる。
音影がラスターマシンガンを叩き込めばファームライドは高速で回避するが、久志が同時にソードウイングで切りつける。
ウイングがファームライドを切り裂くと、爆発が起こってFRはひゅんと後退する。
そこへカルマがD2ライフルを叩き込めばセラもブースターで接近してソードウイングで切り付ける。再びウイングがFRを切り裂いて赤い機体が爆発する。
ファームライドは態勢を立て直して後退すると、プロトン砲を連射する。直撃を受けた傭兵たちの機体が爆発して揺れる。唯一、音影のディスタンはこれに耐えた。
「ここで‥‥引くわけには行かない!」
久志がブースターを起動させれば、音影がマシンガンで支援攻撃を行いながらFRへ攻撃を仕掛ける。
カルマも鋭い瞳でFRを見据えながらアグニ砲を発射。ブースターで接近するセラを支援する。
久志とセラのソードウイングを立て続けに食らって爆発するファームライド。
そこでファームライドは後退すると、傭兵たちの前から撤退するのだった。
‥‥ゴーレム対応のヨネモトタケシ(
gb0843)と鹿嶋悠(
gb1333)もすでに激戦の只中にあった。
第七部隊を正面に配置し、第九部隊と連動して、ヨネモトと悠はゴーレム部隊の側面から突貫した。
「さぁて、御相手致しましょうか‥‥『泥人形』諸君」
ヨネモトのアヌビスはバルカンを打ち込みながら突撃する。
「貴様らとは背負っているモノが違うのでな‥‥かかって来い! 木偶人形ども!」
悠もライフルを打ち込みながら突進。グレネードを叩き込んでゴーレムたちの集団に襲い掛かる。
鬼火を展開、アクセサリのブースターも全開でヨネモトは突撃する。
「一足先に‥‥冥府へと堕ちたいのは何方ですかなぁ?」
ヨネモトは双機刀を振りかざしてゴーレムを一閃。機刀が直撃して、ゴーレムの足元を打ちのめす。敵の盾が砕け散って、ゴーレムは膝をついた。
「食らえ木偶人形ども! ここから先は一歩も通さん!」
悠は機槍でゴーレムの足を串刺しにした。大爆発が起こって、ゴーレムは沈んだ。
「護るモノのある戦いの底力‥‥見せて差し上げましょう」
ヨネモトはフレキシブル・モーションを発動させ弱手側から低い体勢で腰部ブースターと高出力ブースタ−の推進力も活かして、双機刀で斬り上げる。
「我流‥‥烈双刃!」
ズバアアアアアアア! と機刀がゴーレムを切り裂いた。吹っ飛ぶゴーレム。
友軍機も奮迅し、何とかゴーレムを足止めしている。
「貴様らどれ一体として残しておかんぞ!」
悠は一撃ごとに怒りをこめて機槍を振るう。
ヨネモトと悠は数機のゴーレムを撃破すると、敵の赤い指揮官機が前に出てくる。
「小賢しいUPCが! 俺様が叩き潰してくれるわ!」
「叩き潰すだと?」
悠は気合いを入れ直すと、機槍を構えて前進する。
赤いゴーレムは悠と激烈な格闘戦を演じる、ゴーレムは剣と盾を振り回して、悠の雷電の機槍と盾と打ち合うが、やがて凄まじい雷電の一撃に沈む。
「ば、馬鹿な‥‥!」
狼狽の声を上げる赤いゴーレムに悠は止めを差した。
指揮官機が破壊されると、残ったゴーレムは慣性飛行で逃げ出した。
‥‥かくして戦いは収束していく。空のヘルメットワームは、やがてダム・ダルがまとめ上げて撤退していく。バグア軍はかなりの被害を出したようである。
UPCにもそれなりの被害があった。何とか離脱した者が大半で、被害は最小に食い止められたが。
バグアの撤退を促したことで、民間人の避難は無事に終了する。
苅田攻略の指揮を取っている行橋市の村上中佐は、報告を受けて吐息する。
「これで‥‥いよいよ苅田町の制圧に向けて地上部隊を送り込むことが出来る。本部には増援を頼むとしよう。新北九州空港の奪還‥‥苅田町の完全征圧に向けて‥‥だが、ただで引き下がるほどバグアもお人好しではあるまい」
帰還した傭兵たちは、中佐の言葉を受けて厳しい顔だ。苅田の完全征圧には、バグアの激烈な抵抗が予想される。
苅田町への奪還戦は、嵐の中に向かって進みだそうとしていた‥‥。