タイトル:【ODNK】獅子の牙・9マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/07/07 15:21

●オープニング本文


 北九州、春日基地――。
 ダム・ダル(gz0119)は待機中の自身の機体を見上げていた。赤い悪魔と呼ばれるゾディアック専用機、ファームライドである。春日基地司令ではあるが、ダム・ダルは今もゾディアックメンバー牡牛座でもあった。
 そこへ、強化人間の女が現れた。高橋麗奈である。
「ダム・ダル様‥‥みやこ町より、UPCの攻撃によって基地が陥落したと知らせてきました」
「実に興味深いことだな」
「は?」
 ダム・ダルの顔にいつものアルカイックスマイルはなく、思案顔で顎をつまんでいた。
「人間は愛や希望と言ったもののために命を掛けて戦う。不可解なことだ。奴ら一人の力などたかが知れているが、共通の敵のために一つとなった時、奴らは強大な力を発揮する。実に興味深い習性だとは思わぬか。我らバグアには無い特性だ」
「‥‥‥‥」
 沈黙する高橋の顔に一瞬感情が揺れる。
「バークレーが敗れたのもひとえに奴らの力を見誤った‥‥というところか。そうは思わぬか、ん?」
「ダム・ダル様‥‥みやこ町の件ですが」
「ああ、すっかり忘れていたな」
 そしてダム・ダルの瞳にいつもの鋭利な光が戻った。
「東の戦線を立て直す。西園寺は処分したため、代わりが必要だ。高橋、お前に現在進行中のみやま市戦と兼任で築城方面の指揮を任せる。気が向いたら俺も出撃するが、その時は俺の直衛にあれ」
「私がでございますか?」
「今のところ適当な者がいないのでな、当面はお前が指揮を取れ。早速だが、築城方面に新たな仕掛けを撒く。占領地域の苅田市で遊んでいる強襲型のヒューマノイドキメラを解放する。みやこ町の北、行橋市へ向かえ」
「みやこ町は放っておくのですか?」
「まずは足場を固めよう。行橋は苅田市からの支援も容易い。みやこ町奪還は周辺を固めてからだ」
「は‥‥」
 ダム・ダルは高橋を見送ると、再び思案顔でファームライドを見上げるのだった。

 行橋市、UPCベースキャンプ――。
 みやこ町解放の知らせにキャンプは沸いていた。ワームとの激戦を制し、あの西園寺を撃退した傭兵たちの活躍は前線の兵士たちを奮い立たせた。
 先の戦いの後、ダム・ダルからの言葉が直接UPCに届き、西園寺を処分したと知らせてきた。ダム・ダルは自ら敗北を認め、みやこ町の戦いは実に残念だったと述べたものである。ダム・ダルの真意はともかく、その言葉を聞いたUPC軍は感銘を受けなかったが、むしろ春日基地司令であるダム・ダルが直接言葉を発したことに一抹の恐怖を覚える。つまりは、この次は叩きのめしてやるという宣戦布告であろうと。
「ダム・ダルか‥‥あの西園寺ですらみやこ町では手こずったと言うのに‥‥」
 行橋市の指揮を取る村上勇中佐は苦々しげに呟いた。若いがここ行橋でバグアの攻勢を支え続けている。
 行橋市は現在バグア軍と膠着状態にあり、キメラの慢性的な被害に悩まされていた。
 村上中佐は熊本基地に増援を要請していたが、本部からは現状維持の回答が寄せられるばかりだった。
 中佐はいつものように報告書に目を通していた。市内各所で発生するキメラが引き起こす事件はピンからキリまであるが、報告書はうず高く積まれていた。
 そこへ士官がやってくる。
「中佐、北の戦闘地域で異状が」
「どうした」
「警戒に当たっていた傭兵が重傷を負って戻ってきました」
「何?」
 中佐は立ち上がると、手当てを受けている傭兵の元を訪れた。
「大丈夫か、何があった」
「中佐、北の苅田との境界に突然敵の大軍が現れたんだ。至急援軍を送ってくれ。仲間達が取り残されている」

 ‥‥行橋の北に現れたのは人型のキメラであった。筋肉繊維むき出しの人間らしき姿で、異様に長い腕に強靭な爪を持ったグロテスクなキメラである。高い身体能力を持っており、まるで忍者のように動き回る。
「何だってんだ急に慌しくなってきやがった‥‥」
 逃げ遅れた軍属傭兵たちはキメラの様子を伺っていた。ヒューマノイドキメラは次々と跳躍してなだれ込んでくる。その集団が見る間に増えていく。
「こいつは‥‥援護がないときついぞ」
 傭兵たちは何とか退路を探して後退するのだった。
 かくして、ラストホープに行橋市からの援軍要請が舞い込むことになるのであった。

●参加者一覧

ミア・エルミナール(ga0741
20歳・♀・FT
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
紅 アリカ(ga8708
24歳・♀・AA
ナティス・レーヴェル(ga8800
24歳・♀・DF
狭間 久志(ga9021
31歳・♂・PN
麻宮 光(ga9696
27歳・♂・PN
狐月 銀子(gb2552
20歳・♀・HD
皓祇(gb4143
24歳・♂・DG

●リプレイ本文

 行橋市北部――。
「ここも随分と荒れ果てているね‥‥」
 路面が悪化してガタゴトと揺れるインデースの中で、ミア・エルミナール(ga0741)は外の景色をどこか物悲しそうに見つめていた。
「みやこ町は無事に開放されたようだが‥‥」
 ドライバーのカルマ・シュタット(ga6302)は悪路に顔をしかめながら地図に目を落としていた。
 このまま無事に人類優勢で戦いが進めば、恐らくあいつが出てくるはずだが‥‥。
 カルマの脳裏に「アイツ」のことがよぎる。かつてバグア軍の強化人間ゾディアックメンバーとして戦った現春日基地司令ダム・ダル(gz0119)。カルマはダム・ダルと少々奇縁があった。瀕死の重傷を負いながら、あの孤高の戦士だったダム・ダルはカルマの愛機に名を授けてくれた。
「‥‥まだ解放できてない地域はあるわよね。いいわ、一つずつ確実に、取り戻していきましょう‥‥」
 紅アリカ(ga8708)が流れる黒髪をかき上げながら呟いた。
「‥‥‥‥」
 麻宮光(ga9696)はこれまでの戦いを思い浮かべながら荒廃した町の景色を眺めていた。こっちへ来るのも何度目か‥‥。
「敵さんもしぶといな‥‥いや、執拗なまでに攻撃を仕掛けてくる」
 光は瞳に憂いをたたえて顎をつまんだ。
 インデースは悪路を行きながら戦闘地域に進入する‥‥。
 と、次の瞬間、車体の天井にドシン! と何かが落下してきた。
「何だ?」
 カルマは片手でハンドルを操作しながらショットガンを取り出した。
 すると、ボンネットに噂に聞くヒューマノイドキメラが下りてきたではないか。
「キメラだと‥‥! こんなところで‥‥」
「にゃろう! そんなところに乗るんじゃない!」
 ミアの叫びにグロテスクなキメラは揺れる車体の上でバランスを取りながら咆哮した――。
 が、カルマがフロントガラスごとショットガンでキメラを打ち抜いた。吹っ飛ぶキメラ。
「少し荒っぽくなりそうだな」
 カルマはそのままアクセルを吹かすと、車体でキメラを乗り越えて逃げた。
 キメラは咆哮するとすぐさま立ち上がって追ってくる。

 その頃、狭間 久志(ga9021)が運転するファミラーゼもキメラの強襲を受けていたが‥‥。
「ちいっ、突然降って来るとはね‥‥」
 悪路に揺れる車体の中で久志は悪態をついた。
 キメラは天井にしがみついて、フロントガラスにグロテスクな顔を晒していた。
「このモンスターめ‥‥久志、ハンドルをしっかり頼む。天井ごと奴を切る」
 ナティス・レーヴェル(ga8800)は恋人の久志に言うと、刀を車体の天井に刺して、そのまま押し込んだ。
 肉が砕ける音がして、キメラは絶叫した。
 ドラグーンの狐月銀子(gb2552)と皓祇(gb4143)はバイク形態のまま疾走して、エネルギーガンと超機械をキメラに叩き込む。
 キメラはたまらず車体から転げ落ちた。
「やれやれ‥‥この辺はそろそろ危ないってことかしらね」
 銀子はトランシーバーで味方と連絡を取った。
「こちらB班銀子よ。キメラの強襲を受けたわ。そろそろ注意した方がいいかもね」
「‥‥銀子さん‥‥アリカよ。‥‥こっちも攻撃を受けたわ‥‥何とか引き離したけど」
 そこでジープで移動中の軍属傭兵からも連絡が入る。
「こちらアルファ小隊。キメラの攻撃を受けた。どうやら敵さんの陣地に飛び込みつつあるようだな」
 この辺りが侵入するのは限界か。
 傭兵たちはキメラを殲滅してから、ほぼ予定通りの車両の待機ポイントで車を止めると、要救助者の捜索を開始する。

「逃げ遅れた傭兵さん、助けに来たよ。あたしたちはラストホープカラの援軍。可能なら返事をちょうだい」
 ミアは崩れた建物を乗り越えながら、周囲を見渡していた。
「‥‥こちらデルタワン。救援が来たって?」
 かすれるような声で答えが返ってくる。
 ミアはアリカとカルマ、光に合図を送ると、逃げ遅れたと言う傭兵たちに呼びかける。
「多分あたしたちは近くまで来てると思うんだけど‥‥今どこにいるの?」
「戦闘地域の南の外れまで、何とか後退しているんだが‥‥」
「南の外れねえ」
「大きな紅い看板が出ているビルディングが見えないか? この辺りでは目立つ建物だが」
「ああ見えた」
 言ったのは双眼鏡を持っていた光だ。
「ほとんどその真下にいる」
「よし、すぐに行くから待っていて下さい」
「頼むぞ、キメラも南下してきているから、気をつけて‥‥」
「負傷者はいるか」
 カルマの問いに、
「ああ、一人は深手を負った。今にも敵に見つかりそうだ。おっと、切るぞ。俺たちはビルの一階に隠れているから」
 無線は切れた。

 その会話を聞いていた銀子らB班は遠目に見える紅い看板を見やる。
「場所が分かったみたいね」
「何とか間に合いましたか‥‥」
 久志はほっと吐息する。
「えーっと‥‥こちら銀子、A班どうぞ」
「光です」
「ああ光君? 要救助者が見つかったみたいね」
「ええ、これから向かいます、そっちからも頼みますよ」
「うん、キメラの数が気がかりだけど‥‥ありきたりではあるけれど、囮で注意を逸らしている間に軍属の人達に救助に当たってもらったらどうかしら」
「囮ですか‥‥そうですね、俺たちが囮になりますか」
「銀子、カルマだ。盛大に暴れてくれ。まあ俺は救急セットを持ってひとまず軍属の連中と一緒に行くが。怪我人を回復次第、そっちに合流する」
「OK、よろしくー」

 ミアは後方支援にやってきたサイレンキラーを眩しそうに見上げる。
「友軍ヘリへ、こちらレッドハート。これより救出作戦を開始します。支援をよろしゅう」
「了解レッドハート、任せておけ、キメラの様子はばっちり伝えてやるよ。救出の流れは聞かせてもらった。頼んだぞ!」
 サイレントキラーが上空を旋回する。傭兵たちは救援を待っている味方の元へ走った。

 ‥‥救援を待つ二人の傭兵はビル内の暗闇の中で息を殺していた。
 一人は行きも絶え絶えに額から汗が噴出している。足を深々と切られて、出血がひどい。
 もう一人がトランシーバーを持って仲間のところへやってくる。
「安心しろ、ラストホープからも援軍が来たそうだ。帰れるぞ」
「そうか‥‥だといいがな」
「おい弱音を吐くな。すぐ近くまで味方が来てるんだ」
「だが‥‥あのキメラの大軍相手に、どこまでやれるか‥‥敵はすぐ近くまで迫っている。逃げられると思うか?」
「しっかりしろ、大丈夫か」
「ああ‥‥意識が遠くなっていく気がするよ‥‥なあ、いざとなったらお前一人でも逃げるんだぜ」
「何を‥‥」
 そこで、外から銃撃とキメラの咆哮が鳴り響いていくる。
 負傷した傭兵は目を閉じ、もう一人ははっとしたように顔を上げた。
 AU−KVのエンジン音、銃撃、キメラの咆哮が交錯する。
「‥‥味方か? ちょっと見て来る」
 傭兵が駆け出そうとすると、ビルの入り口からちかちかと懐中電灯の光が見える。
「ここか?」
 やって来たのは救援の軍属傭兵とカルマだ。
「おーい! 誰かいるか? UPCだ!」
 待っていた傭兵は思わず天に祈った。
「ああ! ここだ! こっちだ!」
 カルマは走ってやって来た。
「負傷者がいるそうだな、とりあえず手当てをさせてくれ」
「ああ、こっちだ」
 カルマは負傷者の元へ辿り着くと、救急セットで傭兵を手当てした。
「とりあえず応急処置だ。出血は止まった。あとはベースキャンプまで何とか行けるか」
 負傷していた傭兵は顔色が少し良くなって立ち上がる。
「歩けるか?」
「肩を貸してやれ」
「すまん‥‥」
 カルマは軍属傭兵と向き合った。
「借りが出来たな、ラストホープの連中に」
「さあ行ってくれ。あとは俺たちで奴らを食い止める」
「頼んだぞ」
 かくして、負傷者を運んで、軍属傭兵たちは壁を破壊して裏手から出て行った。
 カルマはそれを見届けると、戦っている仲間達のもとへ向かって歩き出した。

 外は激戦の只中に会った。
「おおおおおおりゃああああ!」
 ミアのタバールが高速で飛びかかってくるキメラを捕らえる。ぐっしゃあ! と肉と骨が砕けてキメラは苦悶の声を上げた。
「まだまだああああ!」
 そこへ別のキメラが長く鋭い爪を突き出して襲い掛かってくる。ミアは素早く腕をかざすと、キメラが繰り出す凄まじい速さの爪攻撃を生身で受け止める。
「そのくらい‥‥遅いよ!」
 ミアはタバールを一閃してキメラの腕を吹っ飛ばし、頭部に紅蓮衝撃を叩き込む。鮮血を舞い上げて沈むキメラ。
「まず一体!」
 合流したカルマはセリアティスを振りかざしてキメラに猛進する。このキメラは事前情報ではかなり速いとのことだったが――カルマは更に速い。
「豪破‥‥斬撃!」
 槍を回転させながら目にも止まらぬ一撃を繰り出す。キメラを貫通するセリアティス。キメラの抵抗を回避して、カルマはセリアティスを次々と叩き込む。キメラはずたずたになって崩れ落ちた。
 まるで忍者さながらの体捌きで、連続攻撃を仕掛けてくるヒューマノイドキメラの攻撃を刀で叩き落すアリカ。
「‥‥確かに‥‥速いわね‥‥でも、まだ見える分にはやりやすいわね」
 キメラの爪を寸分違わぬ見切りで回避すると、アリカは相手の腕を流し切りで叩き落した。絶叫してもんどりうつキメラに連続攻撃を浴びせかける。
「‥‥これで、終わりよ‥‥」
 すれ違いざまに、アリカは流し切りでキメラの首を吹っ飛ばした。どさっと倒れ伏すキメラ。
 ナティスは背中を久志に預けて、両断剣をキメラに叩き込む。
「‥‥醜く生を受けた者よ。地に還るがいい」
 だがキメラの反撃も鋭い。胸に爪の直撃を受けて後退するナティス。
「ナティス! 僕の魔女に手を出して‥‥ただで済むと思うな!」
 久志はソニックブームでキメラを吹っ飛ばす。久志とナティスは視線を合わせると、ふっと笑みを交わす。ナティスは活性化で生命を回復。
 そしてナティスは再び前に出ると、今度はキメラの連続攻撃に自身の攻撃を叩きつけて相殺する。
「この程度、幾百との死を乗り越えてきた私が怯むとでも‥‥?」
 久志はナティスの身を案じながら、キメラの連続攻撃をかわしていた。全身から青紫の陽炎が吹き出して、そのエネルギーで久志を取り巻く大気が歪んでいる。大気の歪みを利用して擬似的なディレイアタック――残像攻撃を仕掛ける。キメラの爪が久志の残像を切って空振りする。久志はカウンターを叩き込んですれ抜けざまに紅蓮衝撃でキメラの脇腹を切り裂く。激痛に咆哮を上げるキメラ。久志は反転してキメラの心臓を背後から串刺しにした。
「さ、忍者と俺と‥‥どっちが速いかな?」
 麻宮は二体のキメラから連続攻撃を受けていたが、キメラのスピードをさらに麻宮は上回っていた。疾風脚使用で、ものすごい速さでキメラの攻撃をかわしながら二刀を叩き込んでいく。
「どうやら‥‥こっちに分がありそうですね!」
 ダメージを蓄積せていく麻宮の攻撃に、ヒューマノイドキメラはたまらず後退する。
「正義の鎧を身に纏い、勇気の剣で悪を討つ‥‥龍の戦士、只今参上!!」
 と戦場に姿を現した銀子も、装甲にものを言わせてキメラを撃退していく。
「前に出たのから狙うわよ‥‥命が惜しけりゃ下がりなさい!」
 だが突進してくるキメラの攻撃を跳ね返して、機械爪でぶん殴ってエネルギーガンを密着状態から打ち込んでいく。
 と、そこで離脱した傭兵たちから連絡が入る。無事に戦域から脱出したと。
「そう、良かったわね‥‥あとは任せて!」
 銀子は龍の翼で一気に突進すると、空中に舞い上がってキメラの頭部を蹴り上げ、エネルギーガンを連射した。頭を打ちぬかれて倒れるヒューマノイドキメラ。
「地獄で待ってなさい‥‥そのうちアンタ等の親分も連れてってあげるわ」
 皓祇は刀と超機械を操りながら戦線を支えていた。
「そうですか‥‥無事に脱出できましたか。それは何よりです」
 覚醒の影響ででAU−KVの四肢が黄金のオーラで輝いている。
「では‥‥後は思う存分にやらせてもらいましょうか!」
 アーマーの脚部がスパークと黄金のオーラに包まれる。――竜の翼。そのまま空を切って突撃した皓祇はアイカメラを通して静かにキメラを見据える。
 キメラも突進してくる。皓祇の腕がスパークして黄金のオーラが軌跡を描く。――竜の爪。空中で激突。
 キメラの爪と皓祇の刀がぶつかって、衝撃に一瞬空気が弾けた。

「‥‥敵キメラおいでなすったぞ、北から接近だ。数は十体以上」
 サイレントキラーから報告が流れてくる。
「二体撃破ぁ! て、にゃろう、やってやろうじゃないの。まだまだあ!」
 キメラを倒して弾けるミアの声に傭兵たちは意気上がる。
 ここまで傭兵たちはおよそ三十体のうち半数のキメラを倒していた。
「レッドハート、まだいけるけど、みんなは大丈夫?」
「ああ‥‥いけるがな、敵が来るなら全滅させるか」
 カルマが答える。
「‥‥いいわよ‥‥ここで敵の侵入を完全に断ってしまいましょう‥‥」
 アリカは目の前のキメラの死体に目を落として言った。
「SilverFox了解よ。一気にかたをつけてしまいましょう。やってやるわ」
 銀子の言葉に一同頷く。
 その後、押し寄せたヒューマノイドキメラを傭兵たちは完全に打ち倒し、現れた敵を全滅させることに成功するのだった‥‥。

 ‥‥傭兵たちが帰還したあと、戦場に築城方面の指揮官である強化人間高橋麗奈が姿を見せる。
「さて、西園寺明が死んで、ダム・ダル様は私に築城の指揮を任された。私に巡ってきた千載一遇の好機か‥‥あるいは‥‥」
 高橋は不敵な笑みを浮かべると、苅田市の方へ戻っていくのだった‥‥。