●リプレイ本文
「どうやら護衛機が敵機と交戦に入ったようです」
「うむ‥‥やはり来たな」
UPC艦隊旗艦の艦橋で、艦長は部下からの報告を受けて重々しく頷いた。
北米の戦いに向けて、全軍が移動を開始している。バグアには当然察知されているだろう。
「我々の任務は、傭兵たちとともにロサンゼルスを守り抜くことだ。どうやら本部からの指示も出たようだな」
「しかし‥‥少数の部隊でバグア軍の攻勢を支えきれるのでしょか‥‥北米には噂のバグア機エースが存在するのでしょう?」
「疑問を差し挟む余地は無い。この作戦は上が決めたものだ。我々は命令に従うまでだよ」
「は‥‥」
艦長はじっと前を見つめた。
「空で戦っている傭兵たちの健闘を祈るとしよう。だが万が一ということもある。艦載機の発艦準備を整えさせよう。敵の増援は今のところ確認されていないが‥‥」
艦橋は慌しさを増していく。待機中の傭兵たちが乗る艦載機に出撃準備命令が下される。
そしてその頃、護衛機の十機のナイトフォーゲルは来襲した八機のHWと遭遇戦に入りつつあった‥‥。
「‥‥敵機確認。間もなくエンゲージに入ります」
篠崎美影(
ga2512)は岩龍のレーダーに映る敵影に機体のコンソールを操作する。
「カプロイアミサイル搭載機は敵機AからEに攻撃をお願いします」
「HW編隊真正面から突入してきます。各機体当たりに警戒せよ」
ウーフー乗りの篠崎公司(
ga2413)もレーダーを操作しながらジャミングを開始する。
「了解管制官、榊機は差し当たり正面の敵機を粉砕する。バグアパイロットにはあの世で後悔させてやろう。敵には速やかな退場を願う」
榊兵衛(
ga0388)は言って雷電の操縦桿を傾ける。
「ソード機了解しました。初撃で敵の足を止めましょう。ミサイルはレギオンバスターで全弾発射します」
シュテルンの機体を操るソード(
ga6675)の必殺技、レギオンバスター。PRMシステムを起動し錬力100全てを攻撃へと転換。行動値全てを使ってカプロイアミサイルを発射する技である。現在1250発のミサイルを発射可能である。
「ヴァレス機了解。ミサイルで敵さんの出鼻を挫く」
凄まじい速さで接近してくるレーダーの敵機を確認して、ヴァレス・デュノフガリオ(
ga8280)はミサイル発射ボタンに手を置く。
「間もなく射程に入ります。各機割り振られた目標への攻撃をお願いしますね」
美影はレーダーに目を落としながら僚機に攻撃の合図を送る。
「各機とも現在の高度を維持、カプロイアミサイル発射後は速やかにドッグファイトに移行願います。警戒発令、オーバー」
公司の官制がそれに続く、美影はカウントダウンを開始。
「カウント、4,3、2、1、0!!」
「ミサイル発射」
「ロックオン完了。『レギオンバスター』発射します!!」
「挨拶の花火だ、残らず持っていけ!」
榊、ソード、ヴァレス機から二千発以上のミサイルが放たれ、無数の流星となってHWに向かって飛んでいく。
HWは回避行動を取って上昇したが、ミサイルはもの凄い勢いで追尾、全弾命中して轟音と爆炎を巻き上げる。
「やってくれるな傭兵ども! だが我々の攻撃を防ぎきることが出来るか!」
炎の中から姿を現すHW。損傷しているがパイロットの強化人間たちはワームをナイトフォーゲルに向かって突進させてくる。
「敵機散開。榊さんは敵機Aに向かって下さい‥‥」
「敵機CとE、上方から背後に回り込みつつあります。ソード機とヴァレス機で対応願います」
美影と公司は引き続き官制を続ける。
空中戦はドッグファイトに移行していく。
「超伝導アクチュエータ軌道、我が忠勝の前に露と消えるがいい」
榊は敵機をロックオンするとミサイルを叩き込んでいく。
突進してくるワームを超伝導で回避しながらミサイルを打ち込む熊谷真帆(
ga3826)。サポートの保護者と一緒に敵機を追い込んでいく。
「逃さないです、母ちゃんに言いつけるです。私たち一人ひとりは単なる能力者ですが‥‥二人で敵を挟撃すると丼となります。『丼』、丼となった親子は‥‥無敵ですっ!」
「わけの分からぬことを‥‥何が無敵だ! 舐めおって!」
強化人間は真帆に罵声を叩き付けると上昇下降してプロトン砲で反撃してくる。超伝導アクチュエータを起動して回避する真帆。
「悪いバグアはお母ちゃんと一緒に倒すです! 戦場の風紀委員真帆ちゃんが許しません!」
真帆は雷電をうねるような動きでHWに食らいつく。
「厄介なキューブがいないのは幸いだけど‥‥」
智久百合歌(
ga4980)は乱れ飛ぶワームの背後にぴたりと付けると、ドゥオーモミサイルを発射。ワイバーンから百発のミサイルが流れるようにHW目がけて飛んでいく。――命中。爆発がワームを包み込む。
さらにブースターを起動して一気に間合いを詰める。旋回するHWのプロトン砲の反撃をマニューバ機動で回避しながらソードウイングで切りつける。
「残念ながら、ここから先は関係者以外立ち入り禁止なのよ。あなた達には退場してもらうわ」
「我ら強化人間はバグアのテクノロジーでお前達を越えた! 止めることは‥‥出来ん!」
HWは慣性飛行で急旋回してワイバーンの攻撃を回避する。
「来たな‥‥CIWS起動、火器管制アクティブ‥‥空戦隊Simoonの鴇‥‥いざ参る!」
藍紗・T・ディートリヒ(
ga6141)のアンジェリカから放たれたドゥオーモミサイルがワームを捕らえる。
爆発炎上するワームが旋回してアンジェリカに向かってくる。プロトン砲が直撃してコクピットを揺らす。
「さすがに、この重い機体では回避は無理‥‥ならば当たっても、被弾箇所を散らして態勢を維持し、一撃を当てるのみ!」
藍紗は機体をロールさせながらすれ違いざまに粒子砲を叩き込む。
「そう簡単に落とせると思うでないぞ‥‥味方が来るまでの時間くらい稼いでみせるのじゃ! その油断とともに沈め!」
「おのれ‥‥どこまでも邪魔立てするとはしぶとい奴らだ!」
「それはこっちの台詞じゃ!」
強化人間の言葉に藍紗はアンジェリカを反転させる。逃げるワームにブースター、スタビライザー軌道で接近、ミサイルを叩き込んで粒子砲を連射する。瞬く間に練力が無くなっていくが、ワームに大打撃を与える。
「めぐみさん、敵機Cへ攻撃をお願いします」
美影の指示で緑川めぐみ(
ga8223)は敵ワームに接近する。
「了解、いきなり全力全開でいくわ! パニッシュメント・フォース発動!!」
ディアブロの機体能力を解放するめぐみ。コクピットから見える位置にもワームを捕らえると、G放電ミサイルを連射する。命中したミサイルが放電を巻き起こす。
続いてホーミングミサイルを叩き込む。流れる軌跡を描いてミサイルは命中。だがワームは怯むことなく飛んで旋回する。
「もう! ただのヘルメットワームじゃないわ! 装甲硬いじゃないの! こんなのを艦隊に近づけるわけにいかないわ!」
マシンガンを打ちながらブレードウィングでの斬り合いに移る。
「最後の武装はこれしかないし、ディアブロは斬り合いを目的にしたものだもんね。いくわよ!」
ブースト+パニッシュメント・フォースを併用。一気に肉薄する。
「受けてみなさい。生まれ変わったディアブロの怒りの一撃を!」
「小賢しいわ!」
逃げるHWにブレードウイングを叩き込む。爆発するワームはまだ落ちない。それどころか反撃の体当たりを受けてめぐみは冷や汗ものだ。
「くっ‥‥やるわね!」
そこへ智久のワイバーンが援護に訪れる。
「どきなさい強化人間、ここはお呼びじゃないのよ」
D2ライフルの連打を受けて離脱するHW。
「すいません智久さん!」
「何の、お互い様よ」
アーク・ウイング(
gb4432)はシュテルンを操りながらソードとともに空戦に挑んでいた。
慣性飛行で逃げるHWに食らい付きながらミサイルを全弾叩き込む。アークの見つめる先で爆発するワーム。
「大規模作戦に悪影響を出すわけにはいかないからね。一機たりとも抜かせないよ」
さらにPRMシステムで命中を上昇させ、D2ライフルを叩き込んでいく。HWは巧みなロールでかわすが、直撃を食らって態勢を崩す。
「取り柄は硬いだけですか? つまらないですね」
ソードはブースターを起動させると、一気に間合いをつめて、対空砲エニセイを打ち込む。
「う、おおおお‥‥!」
強化人間の叫びとともにHWの装甲が弾け飛び、遂にワームは爆発四散した。
ヴァレスはワームのプロトン砲を右に左にロールで回避しながら、機会を伺っていた。
「バグアのパイロット、この程度か‥‥」
シュテルンの可変翼を左右上下に開いて空気抵抗を発生させ、機体を下降させて失速させる。急ブレーキが掛かって、ワームはシュテルンを追い抜いた。直後、ヴァレスは翼を戻し、ブースターで一気にワームとの間合いを詰める。
8.8高分子レーザー、通称アハトを浴びせかけ、さらにスラスターライフルを叩き込み、最後にソードウイングの直撃を打ち込んだ。
ワームは爆発し、強化人間の悲鳴が通信回線に響いた。
「馬鹿な! この機体がナイトフォーゲルに落とされるなど‥‥そんな馬鹿なことが!」
そしてHWは爆発四散して木っ端微塵に吹っ飛んだ。
「‥‥戦況報告。残る敵は六機です。ヴァレスさんは敵機Bを‥‥ソードさんは‥‥」
美影はレーダーのマークに目を落としながら味方を割り振っていく。
「各機とも最後まで手綱を緩めることなく。増援が無いとも限りませんからね」
公司は機体を傾けながら、コクピットから飛び交うナイトフォーゲルとヘルメットワームを見つめる。
「智久、俺とロッテを組めるか? 連携プレーで行こう」
「いいわよ。お望みならね」
榊の問いに智久はバンクサインで答える。
「よし、行くぞ!」
雷電とワイバーンが編隊を組んで敵ワームに攻撃を仕掛ける。
榊がライフルでワームを追い込み、智久がソードウイングで攻撃を仕掛ける。
「やるわね」
智久は榊の雷電を見やりながら、メロディを口ずさんでいる。二機一組でワームを追い込み、智久もライフルを次々と叩き込む。
「ぐあああああ!」
爆発四散して吹っ飛ぶHW。
真帆もサポートの母親とともにHWを追い込んでいた。
「丼は最強です! 親子丼アターック!」
ガトリングとD2ライフルを立て続けに食らったHWは爆発、遂には吹っ飛んで砕け散って海の藻くずと消える。
藍紗のアンジェリカはめぐみのディアブロとロッテを組んで敵機に当たる。
「まだまだ護りの天使の二つ名は不似合いかもしれないですけど、その名に負けないように頑張ります! 行くわよ!」
ブレードウイングを叩きつけるめぐみ。離脱するめぐみに続いて藍紗が必殺の粒子砲を叩き込む。
「我が主砲必殺の一撃‥‥その身に刻むがいい!」
閃光がHWを貫き、ワームは木っ端微塵に爆発して消滅。
ソード、ヴァレス、アークは三機一組のケッテを組んでワームを追い詰めていく。
「おのれ! 何と言うことだ! ここまで撃墜されるとは‥‥」
「全機撤収せよ! 残念だがこれ以上の戦闘は不可能だ。撤退!」
「傭兵たちよ! この借りは北米で返させてもらうぞ!」
捨て台詞を残して次々と離脱していくヘルメットワーム。太平洋の彼方に飛び去っていく‥‥。
美影と公司はレーダーから敵影が消えたのを確認する。
「敵ワーム全機撤退しました。周辺に敵影なし」
「任務はひとまず無事に終了です。艦隊にワームの撤退を知らせるとしましょう」
こうして太平洋の激戦は幕を閉じた。
UPC艦隊は、この後無事に北米西海岸に到達することになるのである。
だが戦いはこれから、待ち受ける北米決戦において、傭兵たちは再び激闘に身を投じていくことになるのであった‥‥。