タイトル:【ODNK】獅子の牙・6マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/05/31 21:50

●オープニング本文


 北九州、春日基地――。
 かつてラゴンの高潔な戦士であったダム・ダル(gz0119)に、もはやかつての面影はない。いや、今やダム・ダルの中にいるのはバグアであり、外見は人間だが、その心は人類を捕食する悪魔のごとき異星人のそれであろう‥‥。
 ダム・ダルは春日基地の司令部でモニターに映し出された北九州の地図を眺めていた。
「全く、ウォン司令もお遊びが好きなお方だ‥‥」
 北九州における電撃的な侵攻の後、バグア軍の攻勢はUPCと能力者たちの反撃によって阻止されている。この状況を指して、ダム・ダルはバグア軍アジア総司令官ジャッキー・ウォンが遊んでいると形容したのである。
「無論これは我々にとって遊戯であるから、私としては結構なことだが」
 ダム・ダルは不敵な笑み浮かべると、室内に入ってきた二人の部下に目を留める。
 一人は精悍な顔つきの青年、もう一人は冷たい印象を与える長い黒髪の美女である。青年の名を西園寺明、女性の名を高橋麗奈と言った。西園寺は正体不明だが、高橋はUPCの情報部が強化人間であることを掴んでいる。二人ともかつて芦屋基地攻防戦でバグアと戦った元UPCの上級士官である。
「お呼びと伺いましたが‥‥」
「うむ‥‥」
 西園寺はダム・ダルに目を向ける。高橋は小首を傾げてダム・ダルの様子を見やる。
「みやこ町の件だが。中々に混沌とした状況になってきた。いや、責めているのではない。結構な話だ。戦闘の継続は望ましいところ。人類は古来より戦争を続けてきたようだが、異星人と戦うのは無論始めてのこと。このような圧倒的不利な状況、存亡の危機を賭けた戦いに、あるいは最後の希望を抱いているやも知れぬが‥‥」
 ダム・ダルの言葉はそこで宙に消えた。西園寺と高橋は顔を見合わせる。
 やがてダム・ダルはモニターに目を向けると言葉を紡いだ。
「次なる手を考えよう。みやこ町の戦いをさらに混沌の中へ引きずり落とすために。まだ町の中央で両軍の睨み合いが続いているのだろう。ゴーレムとヘルメットワームを八機ずつ貸し出そう。みやこ町中央の均衡を破壊せよ」
「は‥‥」
 西園寺と高橋は引き下がり、ゴーレムとヘルメットワームを率いて春日基地を出立した。

 みやこ町、UPC軍ベースキャンプ――。
 現在町の北部ではキメラ集団との戦いが続いており、南部の山岳地帯にはバグアがキメラを放っていると言う報告が入っている。
 町の中央にはこれまで目立った敵の戦力は展開してこなかったが、それも過去形となった。偵察からの報告によれば、八機のHWと八機のゴーレムが空と陸から侵入しつつあるという。
 バグア軍は例によって「ごきげんよう」と挨拶し、空のHWを率いているのが西園寺明、地上のゴーレムを率いているのが高橋麗奈であることが一応明らかになっている。
 HWはやや低空で、ゴーレムは徒歩で、ゆっくりとした速度で町中央に展開しているという。
「無論、奴らがあっという間に音速に近い速さで動き回るのは当然だろうが‥‥」
 指揮官の早川中佐は唸るように言うと、みやこ町に駐留しているナイトフォーゲル十六機を出撃させる。
「それから――」
 中佐はオペレータに告げる。
「ラストホープに援軍要請を。我々軍の戦力は限られているのでな。何としてもラストホープからの援軍が必要だと」
 かくして、みやこ町における空陸の戦いが幕を開けたのである。

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
熊谷真帆(ga3826
16歳・♀・FT
ソード(ga6675
20歳・♂・JG
リュウセイ(ga8181
24歳・♂・PN
ヒューイ・焔(ga8434
28歳・♂・AA
ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751
19歳・♂・ER
狭間 久志(ga9021
31歳・♂・PN
最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
鴇神 純一(gb0849
28歳・♂・EP
萩野  樹(gb4907
20歳・♂・DG

●リプレイ本文

 コスプレ職人の仇名を持つ鴇神純一(gb0849)は本日はカウボーイ風のコスプレだ。純一はウーフーに乗って、UPC岩龍乗りとともに官制を行う。
「‥‥あーあー、さぁさぁ、お待たせしました 全女性兵士のお耳のオアシス、鴇神さんの管制のお時間だ。今日は岩竜パイロットの白川さんとの2枚看板で、皆さんをばっちりナビゲートするぜ」
 どうやら官制もカウボーイ風らしい。
 UPCの傭兵十六人、ラストホープから駆けつけた十人の傭兵たちは陸戦と地上に分かれてそれぞれ迎撃に向かう。
 純一は陸戦の官制を行う。岩龍乗りの白川は敵影を確認して、傭兵たちの注意を喚起する。
「こちらspear、各機、これより戦闘区域に入る‥‥オーバー」
「spear了解、敵さんもどう出て来るか分からない、まずは落ち着いていこうぜ」
 純一の官制を受けながらspearのTACネームを持つ榊兵衛(ga0388)はKVを進めていく。
 腰まで届く長髪で色白、古風な大和撫子で印象は風紀委員タイプ。刀鍛冶の娘で時代劇が好き。刃物マニアと思いきや西部劇好き銃好き。実は、人殺しは娯楽の世界だけでいいと思っている平和愛好家。こんな熊谷真帆(ga3826)は普段は愛らしい十六歳の少女なのだが覚醒すると筋肉粒々になってしまう。
「戦場の風紀委員真帆ちゃん参上! 九州の混迷に秩序をもたらすのです!」
「OK真帆ちゃん、頑張っていこうぜ。鴇神さんがばっちりサポートしてあげますぜ」
「空に8機。陸に8機ですか‥‥。16機の友軍に10機の傭兵。数では優位ですが、それだけの話です。一つの油断も出来ません。気を引き締めていきましょう」
「全くだ。数ではこっちが有利だが、戦いは数で決まるとは限らないって偉い人も言ってたかも知れないな。気を引き締めていこうぜオール」
 ソード(ga6675)の言葉にも軽快な純一の官制が響き渡る。
「‥‥ん。お腹空いた」
「憐ちゃん、戦いが終わるまでの辛抱だ。毎回のことながらハードな任務だが、自慢のナイチンゲールで敵さんをぶった切ってくれ。頼りにしてるぜ」
「純一カレー食べたい」
「今すぐってわけにはいかないが、UPC本部食堂って兵舎のメニューにカレーライスも入っていたぜ」
 最上憐(gb0002)は純一のナビゲートを聞いて、カレーライスを思い浮かべる。
 そうこうする間にゴーレムが接近してくる。

 上空――。
「‥‥敵影を確認。各機エンゲージに備えよ」
 官制を務める岩龍の白川のナビゲートで傭兵たちはロッテやケッテを組んで遭遇に備える。
「久しぶりの機体依頼だ。がんばるぜっ!」
 リュウセイ(ga8181)は最近ガールフレンドに振られたらしく、その気分を振り払うように前を見据えた。
「くっ‥‥あいつの笑顔が眩しいぜ‥‥」
 リュウセイの脳裏に振られた彼女の笑顔が浮かぶ。
「赤いワームが、二機か。西園寺明‥‥いつまでも、やられっ放しはいやだ。この戦いで、勝とう」
 萩野樹(gb4907)は長らくみやこ町での戦いに参加してきた。その意味では何度も西園寺に苦杯を舐めさせられてきたわけであるが‥‥この戦いに掛ける思いは人一倍なのだろう。
「ユーリ、狭間、真っ赤な機体が目に止まったら目を離すんじゃねえぜ。何としても西園寺とやらに一泡吹かせてやろう」
 ヒューイ・焔(ga8434)の言葉に狭間久志(ga9021)とユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)は思案顔で応じる。
「過去の依頼を見ていると、相当な使い手のようだが‥‥」
「これ以上好き勝手はさせないさ。ここで終わらせてやる」
 久志は同じハヤブサ乗りのライバルであるヒューイや、過去に同小隊で戦ったユーリがいていつもよりやる気になっていた。
 接近してくるヘルメットワームが瞬く間に大きくなってくる。
「‥‥敵ワーム散開して急速旋回‥‥! 各編隊、攻撃態勢に入れ‥‥!」
「落ち着きな白川さん。ここからが本番だ。官制を頼むぜ」
 ヒューイは言って操縦桿を傾ける。KVの機体を旋回させると、赤いヘルメットワームに突進する。

 地上部隊――。
「‥‥ん。当たらない様に。接近して斬る。単純明快」
 憐のナイチンゲールがジグザグ走行でゴーレムに肉薄する。ゴーレムは正面から憐のツインブレイドを受け止める姿勢を取ったが、憐は素早くナイチンゲールの腕を動かすと、ブレイドが反転して逆方向からゴーレムに叩きつけられる。
 ゴーレムはよろめきながら剣を振るうが、憐はそれを捌いて連続攻撃を浴びせかける。ゴーレムはたまらず浮き上がると、低空飛行で後退、プロトン砲による攻撃に切り替える。憐はアクセサリの高出力ブースターをフルに吹かしてゴーレムに容赦なく近接攻撃を仕掛ける。
 真帆はガトリング砲とレーザー砲を構えて撃って撃って撃ちまくっていた。
「やあああああああ! 食らええええええ! 滅多打ちにしてやるですよ!」
 戦場に飛び交うガトリングと高分子レーザーの閃光。仲間達の援護射撃、ゴーレムの逃走阻止。
「とにかく弾をばら撒いて、がっぷり四つに組んで貰います」
 走りながら真帆の雷電は、常に複数のゴーレムを照準に置き、銃弾の嵐を放っていた。
 敵味方合せて二十機近い機体が入乱れての乱戦だ。そこかしこで建物がぶっ壊れる派手な市街戦が展開されている。リロードされる真帆のガトリングから次々と薬莢が排出される。
 純一は戦況を見やりながら、盾を地面に立て、それを照準台にするように戦車砲を構えて援護している。
「両手に花とは、いい気分だ‥‥よっしゃ嬢ちゃんたち、密着リードすっから、しっかり踊って木偶人形たちを切り刻んでやんな!」
 相変わらず純一の軽快なナビゲーションが流れる。
「戦況は五分五分だ。敵さんも意外にやるね〜。おっと、感心してばかりもいられない。みんな頑張ってくれないと、大将首はまだ健在だ。頑張っていこうぜ」
 実況中継のようにナビゲートしながら純一は移動して、戦車砲とミサイルを撃ち込んだ。

「‥‥俺と【忠勝】の前に立った己が不運をこれより存分に味わうのだな。もとより敵に掛ける一片の慈悲もない」
 榊はライフルを打ち込みながら敵指揮官の高橋機に突撃する。
「ソード、行け!」
「任せてください!」
 逆方向から高橋の赤いゴーレムを挟撃するソード。
 ソードはレーザーブレードを抜くと、必殺の「シャイニングペンタグラム」で切りかかった。
 必殺技「シャイニング・ペンタグラム」とは、PRMシステムで錬力100を使い、知覚を上昇させ錬剣で5連続切る技である。剣の軌跡が五芒星の形になるため、この名前がついたという。ソード機シュテルンの陸戦の必殺技である。
「このタイミング! 『シャイニング・ペンタグラム』!!」
 レーザーブレードが五芒星の軌跡を描いて赤いゴーレムを切り裂く。
 高橋機はたまらず後退する。
「やるな傭兵‥‥この私のゴーレムを傾かせるとは」
「まだ、未完成ですがね。それでもなかなかの威力なんですよ」
「だが‥‥私を落とすにはまだ甘い!」
 高橋機は後退しながらプロトン砲を叩き込むが――。
「強化人間‥‥高橋! 俺の槍でお前の首を頂くぞ! 食らえ忠勝の一撃を!」
 榊は高橋機に飛び掛かって機槍ロンゴミニアトを叩き込んだ。
 凄まじい一撃が赤いゴーレムを貫く、かに見えた。だが高橋機は巧みに機体の剣を操ると、榊のロンゴミニアトを受け流して捌いた。
「何‥‥!?」
 予想外の高橋機の動きに榊は意表を突かれる。
「甘いと言ったであろう。その程度の剣捌きで私が討てると思うか」
「ふん‥‥やってくれるな。この忠勝の一撃を捌いてかわすとは。だが当たれば終りだ。ゴーレムごとき一撃で粉砕してくれるぞ」
「ほう、ならば‥‥やってみるがいい。私を捕らえきれるかな?」
 高橋機は悠然と身構えると、ソードと榊の前に仁王立ちした。

 空戦部隊――。
「‥‥ワイバーン、背後から敵機が迫っているぞ。気をつけろ!」
「了解岩龍、何とか振り切ってみる‥‥!」
 管制官の岩龍乗り白川は戦況を逐一仲間達に伝えている。
 UPC軍はHWとほぼ互角の戦いを演じている。ラストホープの傭兵たちは主に西園寺の赤いHWへの攻撃に注力していた。
 ヒューイは西園寺の追撃をブーストで振り切る。
「やれやれ‥‥意外にやってくれるねえ。西園寺さんよ」
 ヒューイの機体が音速を超える。
 西園寺機はヒューイを追うが、ユーリと久志が援護に回って西園寺をヒューイから引っぺがす。
 二人のバルカンの攻撃をローリングしながら回避する西園寺。そのまま急上昇して一気にユーリの側面に急降下してくる。でたらめな機動力である。
「三人がかりなら私を落とせるとでも思ったのかね傭兵諸君?」
「速い‥‥!」
 ユーリは機体に急ブレーキをかけて速度を落とすと、木の葉落としを試みる。失速寸前の急降下から急上昇に転じて西園寺の真下に食らい付く。
 西園寺はプロトン砲をユーリに叩きこんでいたが、下を取られて逃げる。
 ユーリはバルカンを叩きこんだが、西園寺のHWは流れるような動きで弾丸を回避する。
「はっはっはっ、私と対するにはまだ時間が掛かりそうだな」
「それはどうかな」
 久志が西園寺機の背後を捕らえ、G放電ミサイルを叩き込む。
「こいつを食らってまだ笑っていられるかな西園寺!」
「ぬ‥‥!」
 ミサイルは全弾命中して凄まじい放電を放って爆発する。
「小賢しい真似をする奴がいる」
 赤いHWは急速旋回すると瞬く間に久志の側面から背後に回りこむ。
「そう簡単に当たってやれるか‥‥『速さ』では絶対負けない!」
 久志はブーストを起動してHWを引き離す。叩きつけられるプロトン砲を久志のハヤブサがKVでは信じ難い超機動でかわしていく。
「ほう‥‥地球人のナイトフォーゲルにしては素晴らしい。是非とも我が軍に欲しいものだが‥‥」
 西園寺は執拗に久志のハヤブサを狙う。
「敵はそっちばかりじゃないぜ西園寺!」
 ヒューイにユーリが援護射撃を行う。西園寺はそれでも久志の背後にぴたりと付いて離れない。
「西園寺! そうは問屋が卸さないってね! こいつでしばらくだまってな!」
 リュウセイのイビルアイズがロックオンキャンセラーで西園寺機の照準を狂わせる。
「ジャミング‥‥? あのイビルアイズか?」
 西園寺はリュウセイの機体に攻撃を仕向けるように命じる。
「邪魔な電子戦機にはさっさと退場してもらおう」

 襲い来るHWにリュウセイは逃げる。プロトン砲が直撃してコクピットで冷や汗もののリュウセイ。
 操縦桿を傾けて懸命にワームを引き離す。
「落ちるわけにはいかないんだよ! でなきゃ、あいつに笑われる!」
 あいつの前でぶざまな死に様だけは晒せないんだ‥‥!
「今行きます、リュウセイさん!」
 萩野のロングボウが駆けつけ、ミサイルでHWを蹴散らしていく。
「すまん樹」
「電子戦機を狙うのは、敵も当然です。味方も精一杯のようですし‥‥とにかく、無理はしないで」
 萩野はそう言うと、他の僚機の支援に回る。西園寺も気になるが、今回は味方の岩龍の護衛も兼ねていたし、西園寺には三機の味方が向かっている。
 萩野は支援に徹してリュウセイを狙ってきたHWが撤収するのを確認すると、再び友軍と戦列を並べる。
「UPC所属の仲間たちも、善戦しているな‥‥今度は、負けない」
 萩野は射程に入ったHWに確実にミサイルを当てていく。
「こちら岩龍、萩野機へ、トレボーの支援に回れ。集中攻撃を浴びているようだ」
「了解岩龍。支援に回ります」

 ――ヒューイ、久志、ユーリらは西園寺機を追い回して何度かソードウイングを叩き込んでいた。
 彼らはみなソードウイングと銃火器のドッグファイトが戦闘スタイルだった。ソードウイングは当たれば凄まじい破壊力だ。
 だが西園寺機もしぶとい。でたらめな機動力でしばしばKVを引き離し、プロトン砲で応戦してくる。
 上空できりもみ旋回しながらもつれるように飛ぶ傭兵たちと西園寺機。
 三機で追い込みながら西園寺に切りかかるヒューイのハヤブサ。だが――。
「惜しいなハヤブサ。だが部下には丁度いい乗り物だ。そのうち頂くとしよう」
 西園寺の赤いHWは悠然と飛び跳ねるような動きでハヤブサの接近をかわす。
「その達者な口もそこまでだ西園寺!」
 ユーリのR−01がバルカンで襲いかかる。しかし西園寺は素早く回転しながら全弾回避する。
「今だ久志!」
「行くぞ、翼面超伝導‥‥! ここは逃がさない!!」
 久志は翼面超伝導を発動させてさらにブーストの加速を加えて突進。まさにハヤブサの機体が悲鳴のような唸を上げるが、久志はソードウイングで切りかかった。
「もらった!」
 ハヤブサの刃がHWの側面に叩きつけられようかと言う寸前のところで――。
 西園寺のHWは高速で垂直方向にジャンプしてその一撃をかわした。
「残念だったな傭兵諸君」
 そこで無線に地上の高橋の声が流れ込んでくる。
「西園寺様」
「どうした」
「部下達は傭兵たちから痛撃を被って後退した様子です。敵にも損害は与えました。我々は撤収する頃合かと」
「そうか‥‥こちらはどうだ? 空戦隊、飛行隊長、戦況を伝えろ」
「西園寺様‥‥敵KVに損傷は与えましたが‥‥こちらも無傷では済みません」
「ふん、痛みわけと言ったところか。まあ良いわ。これからが面白くなってくるぞ」
 西園寺はそう言うと、傭兵たちに向かって言葉を残す。
「傭兵諸君、聞いての通りだ。諸君らの善戦により我らは撤退する。まず想定内の戦果だな。お互い中央市街地には決め手を欠く戦いであったな。今後の楽しみとしよう‥‥では、さらばだ!」
 そう言うと、西園寺と高橋は部下を率いて撤退して行った。

 ‥‥戦闘終結後。
「ご苦労だった。諸君らの助勢で何とか持ち堪えたようだ」
 早川中佐は傭兵たちの労を労う。
「だが‥‥大した戦果は挙げられなかった」
 榊は悔しそうに仲間達を振り返る。
「全く‥‥いつだったか完勝に近いほどバグアを追い込んだこともあったけど、今回は敵さんしぶとかったなあ」
 ヒューイ言って頭を掻いた。
「西園寺‥‥いつか、必ず決着を、つけてみせる」
 萩野は言って、ワームが飛び去った西方を見やるのだった。
「(ドリンク飲み干し)くっはぁ‥‥やっぱ何回やっても戦闘と同時管制はしんどいねぇ‥‥さっさと戻って、マイハニーとイチャイチャするかな」
「実況中継‥‥じゃなくて官制ご苦労様でした」
 真帆は純一の様子に肩をすくめる。
「‥‥ん。お腹空いた。帰る」
 憐は言ってナイチンゲールに乗り込むと、補給を受けてラストホープに向けて帰還する。
「では、俺たちは帰ります」
「軍への協力に感謝する」
 ともに戦った兵士たちは敬礼してラストホープへ帰還する傭兵たちを見送るのだった。