●リプレイ本文
「難民とキメラが遭遇しそうだって? なんだ、地上型ばかりじゃないか。他の人に任せるよ。ここには強い人がいっぱいいるからね」
ソーニャ(
gb5824)は、依頼を見ていて、適当にモニターを切り替えていた。と、手が止まる。
「ってちょっとまって。この写真‥‥真由さんじゃない。大変だ‥‥!」
ソーニャはエルシアンを回してすぐに飛び出して行った。
春日市――。
「けっひゃっひゃっ、我輩はドクター・ウェスト(
ga0241)だ〜」
ドクターはクノスペから降り立った。クノスペB「ブリューエル」に搭載してきたメディカルコンテナを見上げた。
「今回はメディカルコンテナを積んできたね〜。使うことにならないことを祈っているがね〜」
UPCの軍曹はクノスペを見上げた。
「KVの汎用性には驚かされますね」
「全く糞が、人間追い詰められると何するかわからんというがバグアも同じだな」
降り立った堺・清四郎(
gb3564)は頭をかきながら吐き捨てるように言う。
「九州の復興作業の最中にやぶれかぶれの襲撃とはな。とっとと野垂れ死にしてくれれば面倒がなかったものを‥‥。だがくる以上は相手をしてやる。戦って死にたいと言うならば最後まで付き合うのも武人というものだ」
清四郎は武人たらんとしていた。
「久しぶりの地上戦だね。それはさておき、敗残バグアなんかにいいようにはさせないよ」
と気合を入れているのは傭兵たちの妹アーちゃんことアーク・ウイング(
gb4432)だ。
「ドクター、今回はよろしくお願いしますね」
アーちゃんはいつも研究所で顔を合わせているドクターに笑顔で敬礼した。
「けひゃ、アーちゃん君、またこんなところで会うとは奇遇だね〜。お互い無事に戻ってこれて何よりだね〜」
「あ、ドクターからそんな言葉をもらうなんて嬉しいですね」
アーちゃんはにこにこしていた。
「まあ吾輩としては、研究対象がいなくなるのは残念だが、平和と引き換えと言うことなら仕方ないかね〜」
複雑な表情を浮かべるドクター。
(憎悪すべき存在がいるが、倒すべき目標は居ない。憎しみの中、この呆けたような自分はなんだろう)
自分と同じく憎悪を持って戦うもの達の無駄な動きを思い浮かべる。
「ドクター?」
アーちゃんは首を傾げた。
「アーちゃん君がまっとうな大人になれるような世界が来ると良いと願っているね〜。今となってはだが〜」
「ドクターどうしたんですか? 戦いが終わるのは、寂しいものがありますか?」
「けひゃ」
ドクターは、アーちゃんの頭を撫でて吐息した。
「春日か、久しいな!」
孫六 兼元(
gb5331)は言うと、異星の友の顔を思い浮かべた。
「またこの地で剣を振るう事になるとは、やはり因果だな! ダムよ、お前の遺した置き土産は、きっちりワシが始末を付けるぞ!」
ダム・ダルは、最後に孫六を「友」と呼んだ。
「それにしても、ガルガが未だに残っておったとは‥‥。まぁ以前は、戦場を埋め尽くさんばかりに居ったからな! 生き残りが居っても不思議は無い‥‥か?! 機体は防衛戦の内側に、人型で待機! ワシは生身で出るとしよう!」
「真由さんは‥‥」
ソーニャは避難民の様子を見ていた。彼女がいないか探して見る。
「あ‥‥?」
ソーニャは彼女を見つけて、駆け寄った。
「真由さん?」
「はい?」
真由は振り返って、驚いた様子を見せた。
「ソーニャさん? ですか?」
「そうだよ。無事で良かった」
ソーニャは小さな体で真由を抱きしめた。
「真由さん‥‥真由さんには生きてほしかった。良かった、間に合って」
「何だか照れちゃいますね」
真由は言って、笑った。
夢守 ルキア(
gb9436)は合流すると、ドクターに歩み寄った。
「デューク君、キメラ殲滅なら、手伝うよ? デューク君は危なっかしいからね。私が見ていないところで危ない真似はされたくない、かな」
「心配してくれるのは嬉しいが、君には何か、吾輩も逆らえないところがあるね〜。反抗期の人に監視されてるみたいだね〜」
「そりゃ、デューク君は監視しておかないとね」
ルキアは言ってから、軍にKVを預けておく。
「私は避難民の護衛に付くから、ヨロシクね!」
「了解しました」
敬礼する軍曹。
「あ、そう言えばタロスが降り立ったみたいだけど。動きは無いのかな?」
「今のところ動きはありません」
それから、ルキアは避難民の誘導に加わる。
「みんな、家族単位で固まって貰えるかな。無線も持ってね。全員、車を持っていたら車移動、私も荷台にでも乗せて貰いたいかな」
「あいにくと、こちらに車両は手配できませんで‥‥」
軍曹が申し訳なさそうに言う。
「そう。じゃあ仕方ない、か。みんなで歩いて行こう」
それから、生身班の仲間達にお願いをしておく。
「みんな、布陣は広くして満遍なくカバー出来るようにヨロシクね。キメラ一匹通すだけでも大変だしね」
それから、避難民の大人には照明銃や閃光手榴弾、呼び笛や無線機を渡しておく。
「少ないケド使って。音が聞こえたら、駆けつけられる」
ルキアは民に言った。
「皆、私達はきみ達を守る。でも、皆も私達が守りやすいように、動いて欲しい。敵が来たら、私達に促して」
「わ、分かりました」
民間人達は閃光手榴弾を慣れない手つきで触っていた。ルキアは使い方を教えておく。
「全く、バグア本星からの残骸被害にあうのは分かるが、その市民達を狙いに奴らが‥‥!? チッ‥‥!」
ドゥ・ヤフーリヴァ(
gc4751)は言って、KVを軍に預けておく。
「俺は生身で行きます。うちの狐を宜しく頼みます‥‥軍人さん方」
「気を付けて下さいね」
「ドクター、また会いましたね。相も変わらずバグアのやることなすことは迷惑千万ですね‥‥。佐渡が死んでも、地上には脅威が残ります」
「ドゥ君、平和にはまだ、避けては通れない戦いがあるのかも知れないね〜。バグアにはバグアの、まだ諦めない連中がいるようだからね〜。恐らく地上に残っているのも佐渡の部下達だろうが〜」
「ドクター、俺は少し、ようやく戦いに慣れてきましたが、それも、戦後を支えるのに少しでも力になれば‥‥ですが」
「人類としては、大人しく宇宙へ還ってくれることが一番なんだがね〜。吾輩たちにも戦う余力は大きくない〜」
「バグアにも、ですけどね。エアマーニェ、良く最後で退いてくれましたね。最後まで何を考えているか分からないところもありましたが、あれがいなかったら、バグアの幹部達もまとまって行動していないでしょうしね。一応結果にはひとまずの安堵が、出来る宇宙でしょうか」
「バグア以外の知的生命体を攻撃しない、約束だね〜。ほとんどSFの話だから、吾輩たちが生きている間に動くかどうか、と言ったところだね〜」
「そうですね‥‥」
ヤフーリヴァは吐息した。
「さて、みなさん」
そこで、櫻小路・なでしこ(
ga3607)がふわりと言った。良くも悪くも場の雰囲気を和ませてしまうムードメーカー。お嬢様騎士である。
「今回の目的は、春日に迫る野良化したキメラの群れとガルガの一団の迎撃、殲滅。タロスの撃破ですね」
なでしこが言うと、自然と傭兵たちは集まってきた。
「全体の方針として、春日に向かうキメラ集団を阻止する様にKVにて最前に迎撃ラインを形成。中長距離にて射撃によるキメラ集団の迎撃を実行。大型のキメラやタロス等はKVで必ず仕留めましょう。生身で出る方々は、迎撃ラインを抜けた敵を遊撃的に動き迎え撃ちます。春日に到達しない様に逐次叩いていきましょう」
「今回はガルガの抑えも重要になって来るな! そこは任せてもらおう!」
孫六は言って、腕組みした。
「生身対応は孫六様、ドクター様、ヤフーリヴァ様、でキメラを迎撃。わたくしと堺様、ソーニャ様、アーちゃん様でKVでの迎撃ラインの形成となりますね。よろしくお願い致します」
「了解した」
清四郎は頷く。
それからなでしこは、UPCの軍曹と打ち合わせておく。春日に駐留する軍はそれほど多くは無いが、それだけに連携は重要だった。
「御承知かとは思いますが、キメラと言えど囲まれると危険となるので孤立しない様に注意をお願いしますね」
「そうですね。我々は最終防衛線を守ります。まあここまで来る敵は少ないでしょうが‥‥」
「よろしくお願い致します」
そうして、傭兵たちは出立する。
「では参りましょうか。みなさん、キメラの動きに注意をし、春日より離れた位置に迎撃の布陣をお願いします」
「みんな、こっちは急ぐよ」
夢守は、迎撃に向かう仲間たちを見送った。
展開した櫻小路は、接近して来るキメラにPCB01ガトリング砲での一斉射撃を行う。
「まずは有象無象を叩くわよ」
櫻小路は視線を移した。ケルベロスが猛進していく。
「ちょっと、待ちなさい! 通行禁止よ!」
櫻小路はアンジェリカ白姫を装輪走行で加速させると、練槍アイスバーグを一閃した。ケルベロスの首が飛ぶ。続く一撃で、ケルベロスの動きを止めた。
ガルガが抜けて行く――!
「生身班のみなさん! ガルガが一体抜けます!」
なでしこは叫んで、思わず後ろを見た。ガルガは速い。
「これ以上は――」
レーザーガトリング砲、ショルダー・レーザーキャノンで薙ぎ払う。
清四郎は、まずは上空からK02を全弾発射した。
「こいつを食らえ! モンスターども!」
ミサイル群がキメラを木っ端みじんにするが、K02は対地ミサイルではないので威力は落ちる。
そのまま迎撃ラインに着陸し、スラスターライフルとアハト・アハトを撃ちまくり、復興地域には近づけさせないようにする。
「復興地域には近づけさせん!」
突進して来るガルガに、ライフルを叩き込むが、目標が小さく速く、捉えきれない。そのまま抜けて行くのを追尾するように清四郎は機体を回頭させた。
「援護する、伏せろ!」
追撃の銃撃がどうにかガルガを捕える。
「‥‥速いな」
清四郎は向き直って前方のキメラ群と向き合う。
アーちゃんは迎撃ラインを構築しつつ大型キメラを優先して排除していく。
「行かせないよ!」
スナイパーライフルD02を着実に叩き込み、狙撃で一撃ごとにキメラを潰していく。接近して来るガルガをガトリング砲「嵐」で迎撃するが、ガルガは抜けて行った。
「ガルガは速いね‥‥!」
アーちゃんは他の獣キメラを撃破していく。
ソーニャも空から対地攻撃を行う。ただし対地ミサイルではないのでこちらも威力は落ちる。着陸すると、ガトリング、ライフルで撃破していく。常時アリス起動で、ブーストを使いつつ滑る様に移動。バックの走輪走行で距離を取り射撃戦を行う。生身班より難民から遠方を戦域とし、ライフルとガトリングで防衛線を敷く。
「ボクの空間認識力は高速のバック走行を可能にする」
混戦の中、ガルガを粉々にする。
「おやすみなさい」
ドクターは「やってきたね〜」と覚醒。覚醒紋章が足元から全方向に展開する「憎悪の曼珠沙華(リコリス)」。先見の目を使い、電波増強で抜けて来るガルガをエネガンで迎撃する。ガルガの急所を探してみる。
「あればカネモト君達が見つけているか〜」
言いつつ、ガルガの一撃を回避し機械剣で切り裂く。
「まだ動く」
ドクターは真っ二つになったガルガの肉体をエネガンで焼き払った。
「ダムの遺した宿業は、ワシが受けねばならん!」
孫六は、ボスガルガとスーパーの存在も警戒しつつ加速。
「思えばあの2体を、誰も倒すこと無く九州は解放されたな‥‥! まさか此処に居らんよな?」
気を取り直し、目前のガルガに集中する。
刀を八双に構え脚甲を地に踏み下ろし十字撃を叩き込む。続いて、逃げ遅れたガルガを、袈裟斬りで両断する。さらに、猛撃を使い刀を突き刺し動けなくすると、脚甲で連続して蹴りを叩き込み、ガルガをずたずたに引き裂いた。
ヤフーリヴァはガルガと当たると、霊剣デュラハンとバーニングロッドを構えて距離を保つ。
「ドクター」
ヤフーリヴァはドクターと連携しつつ、ガルガを追いこんでいく。剣を打ち込み、続いてロッドを叩き込む。二刀戦法。四連撃の後、離脱する。
「よし、抜刀・瞬――!?」
と、ヤフーリヴァの手が止まった。何と、超機械を持って来るのを忘れたらしい。
「しまった‥‥! 仕方ない」
迅雷を使用し、死角へ回り込んでの両断剣でガルガの腕を切り飛ばす。そのままガルガをドクターと撃破する。
ルキアは民間人の盾となり、制圧射撃でガルガの足を止める。アタッカーたちの合間を埋める。続くガルガとの激戦でスキルは使い果たした。
「まだ先があるね‥‥」
時計と地図を片手に、目的地までの距離を考える。熊本までの道は遠い。
「む‥‥タロスか?」
清四郎はレーダーに目を落とした。タロスが低空で接近してくる。降り立つタロス。
「来たわよ」
なでしこも銃器を構える。
「こい、栄光あるバグアの一員として恥じない戦いを見せてみろ」
清四郎は言った。
「無銘とはいえ、いくつもの激戦を潜り抜けてきた、アーちゃんのシュテルンを容易く落とせると思ったら大間違いだよ。逆に、ここで引導を渡してあげる」
「何だと‥‥!」
「はぐれ者同士、ボクを死に場所に選んでくれたの?」
ソーニャは言った。
「でも君のこの作戦。憎しみばかりで目的や理想が感じれないんだよ。死に場所を求めているような」
「貴様らを安穏と生きさせん!」
「そう。ならば最後はいつか夢見たはずの理想郷。そんな幻想を抱えて戦おう。憎しみを抱えて逝くなんて寂しすぎるよ」
と、タロスはじわじわとグロテスクに変形していく。
「機械融合か?」
タロスが加速する。
清四郎はべズワルと機刀を抜いた。
「自棄の攻撃が当たるか! 来るなら一戦士として来い! 斬!!」
タロスの腕が飛ぶ。
アーちゃんは側面からPRMシステム・改で知覚を最大強化し、練剣「白雪」で一撃。
バグアは咆哮した。
ソーニャも練剣でタロスを切り裂いた。
なでしこは牽制するタイミングを図っていたが、無用だったようだ。
崩れ落ちるタロス。
「こちらKV班。敵を無力化した」
ややあって、夢守が答えた。
「こっちもキメラを、ガルガを叩いたよ。避難民は無事」
「了解。こっちはバグア人が乗っていた」
すると孫六がやってきた。
「お前、何処でガルガを手に入れた?! まだ他にも居るのか? 答えろ!!」
「北九州の辺境にはキメラプラントが地下に残っている。ガルガは再生されるのだ」
哄笑するバグア人を、孫六は切り捨てた。
「みな聞いた通りだ! 地下のキメラプラントを破壊しておかねばならん!」
無線で連絡を取る。
「けひゃ、それは興味深いね〜。まだプラントが眠っているのかね〜」
「あ、デューク君、それじゃ私も行こうかな。後は軍人さん達に任せても大丈夫みたいだし」
「出来れば吾輩の好きにさせてほしいね〜」
――それから、傭兵たちは痕跡を捜索すると、北九州の地下に眠っていたキメラプラントを破壊しておいた。