タイトル:【決戦】バグアの栄光マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/10/13 06:25

●オープニング本文


 バグア本星近郊‥‥。
 遭遇戦が続いている。宇宙空間のあちこちで爆発の閃光がきらめく――。
 エクスカリバー級宇宙巡洋艦バリサルダは、一部の周辺バグアと苛烈な戦闘状態にあった。
「G光線ブラスター砲、撃て」
 艦長のジャック・モントロン中佐の号令とともに、閃光がほとばしり、キメラの群れを薙ぎ払う。
 ULTから出向していた綾河美里(gz0458)は、モニターを確認して、コンソールを叩いた。
「キメラ群、さらに来ます!」
「各砲塔で迎撃せよ」
 モントロン中佐が静かに言うのに、副官の桜舞子大尉は、吐息してメインモニターを見つめる。
 ULT情報分析官のフローラ・ワイズマン(gz0213)は、前線の状況を確認して、KV隊隊長のアキラと回線を開く。
「アキラ隊長、敵ワーム、続いてきます」
「了解した! まだまだ終わりじゃないかねこの宇宙は――」

 バグア軍――。
「もはや我々の故郷は終わりだ。こうなった以上は、あの艦もろとも玉砕し、最後にバグアの栄光を刻みつけてやるのだ」
 モリア・ドランは酔いしれて言った。
「いや、ただ艦を潰すだけでは飽き足らん。あの艦に突入し、限界突破で皆殺しにしてやる!」
 激昂していたのはダイド・エルム。
「バリサルダと機械融合すれば、敵艦にぶつけてやることも可能よ!」
 さらに激しく言ったのはビンデロイド。
「いいわ。それじゃあ、KV隊は私たちが引き付けるわ。あなたたちはバリサルダへ突撃しなさい」
 それらを聞いていたシェリーン・ヌマは、三人の援護を申し出る。
「バグアに栄光あれ――!」
 バグア人たちは咆哮すると、バリサルダへ加速していく。

●参加者一覧

須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
ルリム・シャイコース(gc4543
18歳・♀・GP
フール・エイプリル(gc6965
27歳・♀・EL

●リプレイ本文

「今回は切羽詰ってるなパープリンちゃん‥‥じゃなくて美里。ま、ちゃっちゃと片付けて後で飯でもおごってやるよ」
 須佐 武流(ga1461)の言葉に、綾河美里(gz0458)は「むー」と武流を見つめ返す。
「須佐さん、今は激戦のど真ん中ですよ! さあさあ! びしっと行って下さいね!」
「わあったわあったよ。そうかりかりするなよ。前はもうちょっと面白い奴だったのになあ‥‥」
 武流がドックに到着すると、仲間たちは集まっていた。
「須佐様、こっちですわ」
 櫻小路・なでしこ(ga3607)が手を振って呼び掛ける。
「遅れてすまん」
 武流は床を蹴って舞い降りた。
「さて」
 となでしこは一同を見渡した。
「編成ですが、ティターンに孫六様、堺様が当たり、カスタムタロスにルリム様とフール様。本星HWにソーニャ(gb5824)様。カスタム本星HWにわたくしとリヴァティー×1で当たりますね。須佐様とUNKNOWN(ga4276)様は遊撃的に動くと言うことで宜しいでしょうか」
「了解だ」
「OKしたよ」
「また、有人機とキメラには軍KVを主軸に対抗して頂きます。また、バリサルダ護衛も軍KVの一部で対応願います」
「了解した」
「全体方針ですが、初手に先制の一斉攻撃。バリサルダからも砲撃お願い致します。先制後、各目標に向け展開、各個撃破。残る敵の再度の一斉攻撃および掃討。敵は水際で撃破ですが、艦に取り付かれた場合は手空きの傭兵で追撃を行います」
「敵は何機か特攻を仕掛けるつもりのようだ」
 モントロン中佐は言ってうなった。
「敵が多く乱戦になるため孤立に注意いたしましょう。KV隊の指揮はアキラ様にお任せいたしますね」
「任されよう」
「バリサルダからの援護は先制の一斉砲撃と、敵が集中した箇所に集中砲火をお願いします」
「了解した」
「真っ向勝負と来るのであれば、きっちりと受けて立ちましょう」
「私のK111は恐らく微動だにしないから、艦の壁として立ちはだかろう。簡単には抜かせない機動力もあるしね」
 UNKNOWNが言うと、モニターのフローラが頷いた。
「よろしくお願いしますねUNKNOWNさん。頼りしてますよ」
「フローラ嬢のご期待に添えるなら、頑張ってみるかね」
 UNKNOWNは軽く笑った。
「いざ、参る! てところだな」
 堺・清四郎(gb3564)は拳を打ち合わせた。
「特攻を仕掛ける気か! 正面から来るとはいい度胸だ! 全力を持って迎え撃とう!」
 清四郎は敵の士気の高さに気を引き締める。
「絶望してバグアの栄光にすがりつくような連中か。滅びの美学って奴か? バグアにも追い詰められて、希望を失い暴走する奴が出ているようだな」
「やれやれ、あの赤い月に王手を掛けたと言うのに、未だバグアの勢い止まらずか‥‥! ワシは宿敵との決着を果たしたが、勝って兜の緒を締めよ、だな! 努々油断する無かれだ!」
 孫六 兼元(gb5331)は言うと、「うむ」とモニターを見つめた。
「なかなか勢いが有るのが、何機か居るな! ならばワシは、ティターンを相手しよう!」
「何? この変な攻撃。がむしゃらに突っ込んできてるよ。まさか特攻? 今さら、戦略的効果は薄いわよ。バグアの栄光? なるほど、気持ちはわからないでもないけど。それも今さらね」
 ソーニャは言って、吐息した。
「フローラさん、敵に取りつかれないよう頑張って来るよ」
「お願いしますね」
(敵も最後と突攻ですか)
 ルリム・シャイコース(gc4543)は内心呟き、口に出しては敵に呪詛を述べ掛けた。
「汝らバグアが往くは地獄と知れ」
 そして、ルリムは言った。
「それにしても、長い戦いだったわね。ようやくここまで来たってところ。宇宙から一つの敵がいなくなる。そして、異星人が沢山いるってことも、バグアがヨリシロにしていた姿からも見て取れるね。バーデュミナス人にクリューニスか‥‥そう言えば、彼らはどうなるんだろうね」
(艦に近づけさせないですよ)
 内心に呟くのはフール・エイプリル(gc6965)。
「敵の意気込みは相当なものですね。これは気合を入れて掛からないと」
 そして、フールはルリムの言葉に返した。
「バグア人のような凶暴な種族でなければ、受け入れることは出来るんだろうかね。ひとまずバーデュミナス人やクリュースについては、UPC預かりになるんだろうけど」
「そうね。戦いが終わったら、少し考えてみようかな」
「さて、それでは行くかね。凶悪なバグア人がお待ちかねだよ」
 UNKNOWNは言って、歩きだした。

「それでは参りましょう」
 なでしこは言って、ミサイルのボタンに指を置いた。敵機が迫る。呼吸を整える。この瞬間は、誰にとっても慣れ難い。
 だが、ほとばしる感情と感覚に身を任せ、だが頭は冷静に、傭兵たちは戦場へと入って行くのだ。彼らの中のエミタが同調する。
「ミサイル攻撃開始。FOX2ミサイル発射!」
 なでしこはGP7ミサイルを放った。SESを内蔵した450発のミサイルがバグア軍に叩きつけられる。着弾。爆発の閃光が宇宙空間を照らし出す。
「G光線ブラスター砲発射!」
 バリサルダから放たれた主砲が闇を貫く。タロスは散開し、巻き込まれたキメラ群は消失した。
「ふ‥‥それではやってみようか。フローラのために」
 UNKNOWNは言って、K02を全弾発射する。500発のマルチロックミサイルがタロスを薙ぎ払う。
 UNKNOWNは平静に流れるように期待を操ると、ライフルで次々とキメラを撃破していく。圧倒的な漆黒の神改造機UNKNOWNが宇宙を駆ける。
 清四郎は、K−02を全弾叩き込む。
「特攻とはな! 初期の地球では我らがHWに対して行っていたのだがな‥‥だがやらせはせん! ブレイドFOX1!」
 放たれたミサイル群は着実にタロスを捕え、撃墜していく。
 武流のフィーニクスBis「カマエル」が宇宙を駆ける。
「行くぜ! 雑魚どもにはこいつをくれてやる!」
 武流はプロトディメントレーザーを起動した。フィー二クス・レイの砲塔からレーザーがほとばしり、キメラ群を薙ぎ払う。カマエルの装甲の隙間から、余剰のエネルギーが排出され、炎の羽が舞い散るように煌めく。
 人型に変形すると、簡易ブーストと姿勢制御でデブリを回避しつつティターンに突進する。
「自爆など今日日流行らん。それに、最初から玉砕覚悟などはじめから負けを宣言しているようなものだ。そんな覚悟で挑むとは笑わせてくれる。お前らバグアは肉体は強いだろうが、精神が甘すぎる。甘えた気持ちで戦うな。今まで命がけで臨んだ連中がこの程度とは‥‥この程度で今まで勝ち続けられたのが奇跡だろうな。‥‥もういい。俺の前から消えろ‥‥ただ、それだけだ‥‥」
 タイガーファングで装備されたブースターと機体の高出力ブースター、ディノスケイルの推進力も利用し細かい機動で機体を制御し、遠心力や慣性をつけて切りつける。
「我々だけが滅びると思うなよ! 佐渡様が地球を道連れにしてくれるわ!」
「‥‥‥‥」
 武流はフォビドゥンガンナーを近接攻撃に混ぜて叩き込んだ。
 ティターンから離れると、カスタムタロスに当たった。
 エナジーウィングで打ち掛かり、タイガーファングとのコンビネーションを叩き込む。
「邪魔だ!」
 叫ぶカスタムタロスのプロトン砲を残像回避で回避すると、至近距離からプロトディメントレーザーを叩き込む。
 レーザーがカスタムタロスを貫通する。
 そこへタロスが殺到してくる。
「あのフィー二クスを殺せ!」
「やってくれるのか、え?」
 武流は後退しつつ、フォビドゥンガンナーで牽制する。
 なでしこは全体の指揮を取っていた本星HWに加速した。
「リヴァティー、頼むわよ。本星HWを叩くわ」
「了解」
 シェリーン・ヌマは冷静に応じた。
「人間。邪魔をするな。お前たちは我々を追い詰めた。遊びはお終いだ。侵略戦争は手ぬるかった。最初からお前たちを滅ぼしておくべきだったのだ。今となっては遅いが‥‥」
「わたくし達は必死に生きている。最後まで高みの見物をしていたあなた達には分からないわね。成長するのは自分達だけではないと」
 なでしこは言って、フォビドゥンガンナーを撃ち込む。
「く‥‥」
 シェリーンはフォースフィールドを貫通する衝撃に焦った。
「馬鹿な」
 なでしこはリヴァティーと連携して加速すると、SESエンハンサー起動で練剣ビームクレイモアを叩き込んだ。剣がHWを貫通する。
「なぜ‥‥なぜだ‥‥!」
 シェリーンは叫び声を上げて爆発四散した。
 清四郎と孫六はティターンに標的を絞り接近戦を挑みかかった。
「ティターンのパイロット! 名は!? お互いパイロットでは味気がないだろう?」
「随分と威勢が良いな、バグア人! ワシは孫六 兼元! お前の名を聞いておこうか!」
「地球人! 俺はモリア・ドラン! そこをどけ! 切り捨てるぞ!」
「そうか、ならば死合うぞ! モリア!」
 清四郎はフォビドゥンガンナーを展開すると、粒子砲で牽制しつつベズワルと機刀で斬りかかる。激しく打ち合う。
「ここまで手こずるのも久しいな! だが、俺は負けん! この戦争の平和を見るまでは!」
「何が平和だ!」
 突進して来るティターンに、清四郎はフォビドゥンガンナーの機体を体当たりさせると、強引に隙を作りベズワルを叩きつける。
「撃つだけがガンナーじゃないんでね」
 凄絶に切り裂かれるティターン。
「く‥‥おのれ!」
 孫六は堺の反対側へ回り込み挟撃の構えから突進した。刀身がティターンに吸い込まれて行く。
「背後からの斬捨て御免っ! てな! 武士道は勝ち、生き残るが本道だ! 勝つ為の手段は選ばん! お前等も、何か企んどるだろう?! 艦に向かって一直線だったという事は、差詰、艦内からの直接攻撃かな? 言っておくが、万歳アタックの果てに栄光など無いぞ! 無駄に将を失った軍が残るダケだ! 妄執に目が曇り、そんな事も気付かんか? お前等も武人の端くれならば、戦場で雄々しく戦って見せろ!!」
「お、おのれ‥‥ええ!」
「無駄に命を散らすは、武人の誉れに有らず! ソレに気付かんかった事が、お前等の敗因だと知れ!」
 ティターンは爆発四散した。
「む? 堺氏! 雑魚どもがバリサルダへ抜ける! 行かせるな!」
 孫六は遠隔攻撃機「八葉」で牽制、タロスを切り裂いた。【OR】空間手裏剣「八葉」。直径3mの八方手裏剣。自力飛行し、目標へ斬撃を加える。
 ソーニャはビンデロイドの本星HWと対峙する。
「バグアのすごさなんて十分承知してるわよ。人間は個としてはバグアにかなわない。そして宇宙を渡りここにたどり着いた事もね。それより、ボクたちを見てよ。ボクたちはただ搾取されるだけの存在じゃない。ちゃんと君たちを並び立てる。劣る所は別の力で補って君たちを理解できる。そうだよ理解できるんだよ。きっと。ボクたちはここで殺しあう事しか許されない。それでも生き物なら最後まで生きようとするべきだし、それが叶わないなら、相手に自分を刻みたい。生きた証をね。君たちは人間をちょっとばかり勘違いしてた。それを認めるだけで共に生きられる。それは簡単なこと。そんな夢を見たりもするんだけどね。ボクはなんの力もなく、命じられるままに殺すしか出来ないんだけどね。だからせめて、君にボクを刻もう。ボクに君を刻もう。ボクたちの存在が新しき世界へつながりますように。そう、今、君の前にいるのはボク。この悲しき幸運。出会いに感謝を込めて」
 ソーニャはハヤテ2機と連携し、GP−02を弾幕に展開。高速で本星HWの足を止めると、フォビドゥンガンナーを叩き込んだ。
「撃て!」
「人間などに‥‥敗れるのか! 私たちが!」
 本星HWは爆発四散した。
「セベク神よ、我に加護を与えたもう」
 フールは言って、ルリムとカスタムタロスへ加速する。
 モニターの赤と青の光はまだ交錯している。
「‥‥‥‥」
 ルリムも加速する。
 フールは照準最適化機能を起動すると、遠隔攻撃機【SP】シェルクーンチクで先制攻撃する。シェルクーンチクの銃撃が叩き込まれる。
 ルリムもまた照準最適化機能を起動させると、20mm長距離機銃×2で牽制射撃を行う。
 フールは続いて、【SP】滑腔砲オブイェークトを構えると、この大型砲を撃ち込んだ。巨大な実弾がカスタムタロスを直撃する。
「何を‥‥!」
 ダイド・エルムはプロトン砲で反撃してくる。直撃がフールの機体を襲う。
「流石に‥‥ですが負けません」
 ルリムはカスタムタロスの動きを見極めながらガンランチャー・オブイェークトで射撃する。これまた巨大な実弾がカスタムタロスに命中する。初弾命中箇所を中心に攻撃するようにする。
 フールは接近し、滑空砲を投げ捨てるとガトリング砲とディフェンダーに切り替えた。
 ルリムもまた、ガンランチャーを投げ捨て、量産型機刀「凪」に持ち替えると加速した。
 フールとルリムは連携してカスタムタロスに当たる。
 フールはガトリングで胴体部を攻撃し、傷ついた部分をディフェンダーで抉るように切り裂く。カスタムタロスの反撃を受防最適化機能でディフェンダーで弾き返す。
 ルリムは被弾箇所を重点的に抉る様に切り裂く。受防最適化機能でカスタムタロスの剣撃を弾き返す。
 二機でダメージを蓄積させていく。ディフェンダーと機刀「凪」が切り裂き、カスタムタロスは折れ砕けた。
「バグアに‥‥栄光あれ!」
 ダイド・エルムは機体とともに運命を共にした。

 UNKNOWNは補給に戻っていた。
「ふむ‥‥順調なようだね」
 その時だった。サイレンが鳴り響き、
「第75ブロックにタロスが取りつき、バグアが侵入しました! ブロックを封鎖します! 退避して下さい!」
「少し散歩してくる、か」
 UNKNOWNは身を起こして歩き出した。
 覚醒&探査の目で、酒を片手に無線聞きつつ75ブロックへ向かう。
「こちらUNKNOWNだ。これから迎撃に向かうよ」
「UNKNOWNさん! 宇宙服は!?」
「何、大丈夫だよ」
 隠密潜行で駆けだした。
 バグアは封鎖を突破して、UNKNOWNと遭遇した。
「人間! 貴様から血祭りだ!」
 限界突破した下級バグアは、加速した。
 UNKNOWNは攻撃を回避すると、行動力にモノ言わせた知覚銃の炎弾の雨を叩き込んだ。18連射。
「うむ、一大事だ。――宇宙服だと煙草が吸えん」
 壁を蹴り、さらに18連射。バグアは悲鳴を上げて、体が崩壊していった。
「侵入者を撃破した。他は?」
 ややあって、
「取りついたのは一機のみです。外の敵は撃破しました。UNKNOWNさん、大丈夫ですか」
 フローラの声に、UNKNOWNは肩をすくめた。
「大丈夫だ。無事に終わったようで良かったね。後は、本星か」
 UNKNOWNは煙草に火を付けて歩き出した。
 傭兵たちはバリサルダに帰還し、互いの無事を確認した。