タイトル:月面基地拡張計画4マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/07/24 06:31

●オープニング本文


 宇宙要塞カンパネラ――。
「真由ちゃん‥‥」
 ULTオペレーターの綾河美里(gz0458)は、傍らの友人を見やる。
 真由は、花束をそっと置いた。そこには、輸送艦隊の指揮官だった高木少佐の墓があった。もちろん墓には誰も入っていない。だが墓は墓だった。二人は共同墓地に来ていた。
 真由も美里も、手を合わせて高木少佐の冥福を祈った。先の戦いは前線勤務の軍人であれば、常に死と隣り合わせだと、今更ながらにそのことを突き付けられた戦いだった。真由は奇跡的に助かったが、彼女が受けた衝撃は大きく、軍に辞表を出した。
「本当に辞めちゃうの?」
 美里が言うと、真由は笑った。
「私、軍人には向いてないみたい。地球の人たちのために戦うってことがどういうことなのか、分かってなかった。こんな気持ちで、戦い続けることなんて出来ないわ。みんなに付いて行けない」
「辞めてどうするの?」
「上官が民間企業を紹介してくれたから、地球で頑張るわ」
「そう‥‥」
「美里ちゃん、でも、心は置いていく。私たちが戦った記憶は、たとえ色褪せても消えない絆だよ」
「真由ちゃん‥‥」
 美里は涙が溢れて来るのを止められなかった。
「美里ちゃん、泣かないで。私たちは心は一つだよ。地球から美里ちゃんがいる宇宙(ソラ)を見上げてる」
「うん‥‥真由ちゃん‥‥私ね‥‥絶対忘れないから‥‥みんなのことも」
 美里は真由に抱かれて泣いた。

 ――月面基地崑崙に、輸送艦隊が到着した。崑崙で大規模な改修工事が始まろうとしていた。この輸送艦隊が運んできたKVドックのコンテナは、そこに組み込まれることになっていた。
「そうですか‥‥真由さんが地球へ帰ってしまいましたか」
 停泊している護衛艦、エクスカリバー級宇宙巡洋艦ジョワユーズの艦内で、ULTから出向しているフローラ・ワイズマン(gz0213)は、モニターに映る美里と話していた。
「真由ちゃん、気持ちが切れてしまったみたいで。もう戦えないって‥‥寂しいです」
 ああは言ったものの、美里はしょんぼりしていた。
「真由さんとはこれからも友達でいれるじゃないですか。また地球に戻ったら会えますよ」
「でも‥‥もう私たちとは違いますよね」
「そうですね」
 フローラは多くは語らず、美里の言葉を聞いていた。美里はそれからも話し続け、フローラはずっと聞いていた。
 やがて――。
「フローラさんは強いですね。最前線へどんどん飛び込んでいく。怖くないんですか?」
「怖いですよ。でも‥‥いいえ、美里さんだって、カンパネラにいるじゃないですか。地球にいることに比べたら、危険な仕事ですよ」
「それは‥‥まあ‥‥」
 そこで、敵襲を知らせるサイレンが鳴った。
「ごめんなさい、美里さん。敵襲みたいです。またお話しましょう」
「フローラさん! 気を付けて下さいね!」
「いえい♪ 頑張ってきます♪」
 フローラはガッツポーズを見せると、通信を切って端末を叩いた。
 敵戦力はまたしてもアレン・キングスレー(gz0472)、今回はビッグフィッシュとワーム、キメラの集団である。
 ジョワユーズは危険を承知で浮上した。ビッグフィッシュを崑崙へ近づけないための牽制である。多数のワームが相手では相性が悪い。KV隊の出番である。
「総員第一級戦闘配備! 本艦はビッグフィッシュを後退させる。その間にKV隊でキメラとワームを迎撃。頼むぞ!」
 艦長のジャック・モントロン中佐の鋭い声が飛ぶ。
「アキラ! しっかり頼むわよ!」
 副官の桜が言うと、KV隊の隊長アキラは、笑みを浮かべて敬礼した。
「お任せあれ。バグアの好きにはさせません――! みんな、行くぞ!」
 傭兵たちは出る――。

 バグア軍――。
「南米でシェイク・カーンが生き返った、らしい?」
 キングスレーは、地球からの報告書を見やりつつ、首を傾げた。
「そんな話は聞いたことが無い。あの女は瀋陽で死んだだろう。事実なのか?」
「分かりません。こちらでも今、確認中でして。ただ、肉声を確認しました」
 今、キングスレーの副官を務める女性型異星人をヨリシロにしたバグア――クワイスは言って、しなやかな指で顎をつまんだ。
「少なくとも死者が蘇ると言うのは‥‥あり得ませんので、声だけを使ったとか、何かの手違いではないかと思うのですが‥‥」
「確認してくれ。メトロポリタンXよりも、こちらの方が気になる。地球で起こっていることで関心事は無かったが‥‥」
「肉声を使ったとすると、エミタ・スチムソンは何か牽制でも仕掛けるつもりでしょうか」
「地球最後の大御所だからな、エミタ・スチムソンは。ブライトン様の側近だ。同じ地球のシェイクを使ったのは、地球への思いれなのか、何か別のものか」
「アレン、あなたは地球に思い入れがあるのですか?」
 クワイスは問う。彼女は地球に降りたことが無い。
「あそこは、激しい戦場だった。地球人達の感情に、俺も翻弄されたものだ。さて‥‥行こうか」
 キングスレーが攻撃命令を下すと、ビッグフィッシュは次々とワームとキメラを吐き出し始めた。

●参加者一覧

須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
ゲシュペンスト(ga5579
27歳・♂・PN
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF
神棟星嵐(gc1022
22歳・♂・HD

●リプレイ本文

 櫻小路・なでしこ(ga3607)が言った。
「とうとう種切れの感がしますが、今回も早々にお引き取りいただきましょう」
 一同を見渡す。
「今回の役割及び編成ですが、ティターンブラックスターに孫六様、夢守様が部分管制も担当、それから堺様が当たりますね。それからビッグフィッシュ対応にゲシュペンスト(ga5579)様、ソーニャ(gb5824)様、またリヴァティー×10に付いて頂きます。強化タロス対応に、わたくしと神棟様、リヴァティー×4に付いて頂きますね。遊撃に須佐様が当たって下さります。残るタロスと宇宙キメラには、リヴァティー×10、ハヤテ×14、ラスヴィエート×14で対応願います。後方援護はジョワユーズにお任せします」
「了解した」
「では、まずは先制攻撃で前面に展開のキメラ群を切り崩すことから始め。先制攻撃後、各自は目標に向け展開し撃破。その後、その他の援護へ向かう段取りで。ジョワユーズは後方で全体管制と援護砲撃をよろしくお願いします。軍KV隊はタロスとキメラの殲滅をお願いします」
「オーケー、んじゃま俺は遊撃っつーことで。一応キングスレーを叩いていくかね」
 須佐 武流(ga1461)はにかっと笑った。
「さて、行くか‥‥宇宙に上がって戦う経験もなんだかんだで増えてきた。今となっては自分が月に行くなんて想像すらしていなかった頃が懐かしい」
 ゲシュペンストは言って笑った。
「真由が退役したと聞いたが?」
 堺・清四郎(gb3564)が言うとフローラは頷いた。
「ええ。色々聞いています」
「あんな歳の娘が軍で戦っているという時点で間違いだからな、それでいいんだ」
 清四郎は言って吐息した。
「やれやれ、真由が退役したか‥‥それも一つの立派な決断だ。変な意地をはり、勇気を出し入れする阿呆よりもよほど胸を晴れるな。あの娘が安心して次にいけるように今回も張り切っていくか」
「ジョワユーズにもすっかり馴染んでしまったな! 最早、我が家と言っても差し支えあるまい! ガッハッハ! その我が家を壊させるわけにはイカンからな、キングスレーには御退場願おうか!」
 孫六 兼元(gb5331)は笑った。
「それじゃあボクはBF対応だね。ゲシュペンストさんよろしくね」
 ソーニャは言った。
 夢守 ルキア(gb9436)は吐息した。
「相変わらずアルゴシステムと管制システムでの支援だね」
「キングスレー、今回はBFを伴って来ましたか。それに本星型HW、これにはキングスレーを補佐するバグアが乗っているのでしょうね」
 神棟星嵐(gc1022)は言うと、頷いた。
「真由殿が地球に帰られましたか。たしかに、バグアに捕らわれて生還しただけでも奇跡の様な状況ですからね。これ以上、怖い思いはしない方がいいでしょう‥‥もちろん、その分は自分達が働いて見せますよ」
「フローラ様、こんな時に何ですが、カンパネラへ帰ったら、綾河様もお誘いして、オペレーター女性陣で強気な女子会を開きませんか?」
「あ、いいですね♪ こんな時だからこそ、ですね」
「エミタ・スチムソンとの決着も着きそうだし。メトロポリタンXが奪還されたら、俺も故郷に戻ってみるかね‥‥」
 武流は回想した。ニューヨーク。
「俺は、自分が亡霊にならないようにこの登録名を付けたが、それもあと僅かかね」
 ゲシュペンストが言うと、清四郎は笑った。
「ふ‥‥俺も、父に報告に行ける日が来るかね」
「ガッハッハ! 思うところは同じかね! ワシは地球をレスキューする一心で戦ってきたが、バグアどもが出て行ったらどうするかね」
 孫六は言って、昔を思い出した。バグア侵攻によって大きく世界は変わった。
「ボクは帰る場所も無いし‥‥戦いがボクを飛ばせてくれた。戦う場所が無くなったら、どこへ向かおうかなあ‥‥結局、またあそこに帰るのかな。飛ぶためなら何でもするけどね」
 ソーニャの言葉に、フローラは言った。
「ULTも戦後にはどうなるか分かりませんしね。ソーニャさんも一般人へ戻る道があるのではありませんか」
「一般人、か‥‥」
「セカイを生きる、見る、触れる、私は自分の道を進むだけだけどね。世界のどこへ行ったって、道は続いている。何トカなるもんさ」
 ルキアは、笑った。
「この時代はどう記憶されるのですかねえ」
 神棟は言った。
「自分たちが英雄とは思いませんが。エミタ金属によって作られた、バグアの兄弟のような存在ですからえね‥‥」
 神棟の言葉は宙に浮いた――。

 ルキアは管制システムを立ち上げた。
「蓮華の結界輪起動、アルゴシステム起動」
「G5弾頭を発射する――」
「それじゃあ行くわよ! FOX2ミサイル発射!」
 なでしこは、コンフォーマルガンポッドを発射した。
「行くぞ! FOX1!」
 ゲシュペンストは【SP】DRAKE STORMを連射した。
「フローラが大丈夫だって事を見せるために頑張るとするか!」
 清四郎も出会い頭にK−02をキメラ、タロスに全弾発射。
「それじゃあボクも行きますか」
 ソーニャはGP−02を叩き込んだ。
「戦いの火蓋は切られました。この基地はバグアとの戦いだけではなく、今後の人類の発展に必要な大事な場所。最後まで守り抜きます!」
 神棟は言って、ミサイルHA−06とGP−9を全弾発射する。
 数千発のミサイル群がバグア軍を薙ぎ払う。閃光が炸裂し、キメラ群は粉々になった。
 武流は加速すると、プロトン砲をかいくぐって敵陣に突進した。レーザー砲「凍風」で牽制しつつ、敵の中央に残像回避を使い突入した。中心に着いたところでプロトディメントレーザーを発射。なぎ払うようにその場で機体を回転させながら撃つ。ビッグフィッシュを優先し、その他にも攻撃を当てていく。これは無茶な攻撃で、的が絞れずPディメントレーザーは拡散してしまった。
「ちっ‥‥駄目だったか‥‥!」
 接近して来るタロスをタイガーファングで切り裂き後退する。
 なでしこと神棟は強化タロスへリヴァティー4機と共に加速した。
「行くわよ神棟さん! みんな!」
「了解です」
「リヴァティー2機で半数を足止め、残る2機を各個撃破」
「了解!」
 人型変形し、レーザーガンで攻撃するなでしこ。打ち掛かって来る強化タロスと機槍で打ち合い、続いて練剣ビームクレイモアを叩き込んだ。寸断される強化タロスが爆散する。
 神棟は凍風で牽制をしながらバレルロールで敵の攻撃を掻い潜るように接近。十分接近した所で人型へ変形しライチャスで近接戦闘に移る。
 なでしこと連携し、凍風で頭部と腕部を狙い命中した所をライチャスで追い撃ちをかける。強化タロスの頭部と腕を切り落とし、真っ二つにした。
 その後、残る強化タロスを集中攻撃で落とす。
「残り二機に集中攻撃で行きましょう!」
 強化タロスは激しく抵抗したが、破壊された。
「ふう‥‥いつもながらここが厳しいですね」
 言って、神棟らはいったん補給へ戻る。
「行くぞソーニャ!」
 ゲシュペンストは加速した。
「よーし行きますか」
 ソーニャもバレルロールで突進する。
 二人はBFへ向かった。ゲシュペンストがワームやキメラの排出口を潰して周り、続いて艦橋や推進部等の弱点と思しき箇所を集中的に攻撃する。ソーニャはすれ違いざまにレーザーを叩き込んでいく。爆発に包まれるBF。
「鯨獲り開始と行こう‥‥長居は出来ない身の上なんでな、出し惜しみ無しで一気にやらせてもらう!」
 ゲシュペンストは必殺のレッグドリルを繰り出した。
「究極ゥゥゥゥゥッ! ゲェェシュペンストォォォォォッッ! キィィィィィィィッック!!!!」
 ドリルがBFを突き破る。ゲシュペンストはそのままBF内部をライフルで破壊していく。やがて爆散するBFから離脱。
 ソーニャもBFを一機沈めていた。
 清四郎も、最初の弾幕の隙間から抜けだし、ビッグフィッシュの1体をM−12で狙い撃ちにする。
「久々の対艦戦だ!」
 M−12の閃光が貫き、BFは爆発した。
 なでしこがBFへ加速する。近接からビームクレイモアに機槍「心眼」で兵装破壊を行うと、マニューバAでロケット弾ランチャーにレーザーガンを叩き込み破壊した。
 ルキアはキメラをウィングエッジで撫で斬りにしつつ、キングスレーに向かう。
「Via.素晴らしいね、ホント。自分の幸運に感謝だよ」
 Via(ウィア)は道、アレン君が意味を知るトキがあるのか、それは私もシラナイ。
 ルキアは本星HWからの射線には、常に注意しておき、各自へとマッピング結果を送信しておく。
「見つけたぞ、キングスレー! もう小型要塞は品切れか!?」
 清四郎は咆哮した。
「お前のお陰で真由は退役した、この戦いその門出にさせてもらう!」
「何だと?」
 清四郎は武装を機刀、ベズワル以外をパージし身軽にし、マニューバを全開で使って相手を翻弄する。加速。
「数年前までは考えられなかった、『戦後』がやっと間近に見えてきた‥‥お前は生き残ったら何をするつもりなんだ!?」
「俺は、そろそろ地球とはおさらばだ。尤も、お前たちの戦力を束ねても、我々の本星には遠く及ばん」
「戦うだけじゃない‥‥育め! データじゃない。言葉で、心で! バグアに伝えてみたらどうだ!? 少なくとも人間たちはそうやって文化を、矜持を、伝えてきた!」
「人間とは文化が違い過ぎる。我々は優秀なヨリシロを手に入れること、それを目的に宇宙を旅しているのだから」
「キングスレー! 今回はBFで、攻撃衛星は無しか? とうとう、戦力が尽きてきたと見える! だが、黙って下がる気は、微塵も無いのだろう! なれば、お互いに納得行くまで戦おうぞ!」
「来い‥‥孫六!」
 練機爪を主体に、拳脚の当て身を用いて戦う。
「ぬう!」
 機刀「一文字」を居合いの抜き打ちで斬りつけた。
 キングスレーは受け止め、タロスの赤い瞳が鈍く孫六を捕える。
「キングスレー!」
 左手で相手の打ち込みを受け、膝裏へ右足で蹴りを打ちながら、顔面へ右手の裏拳を叩き込む。
 頭上からの斬撃を右上げ受けで防ぎ、同時に自分の右膝を敵右膝に打ち付け蹴りを封じ、左手の爪を敵の右脇下に打ち込む。
「キングスレーよ、ワシは強くは無い。ただ強く有りたい、と足掻いているダケだ! そうする事で、常に高みを目指せる! そして、その途上に居るのがダム・ダルで有り、キングスレー、お前なのだよ! お前の魂は、一太刀毎に響いて来ていた! 譲れないモノ、得たいモノ、全てはその太刀に掛けられている! お前は初めて地球を見た時、美しいと思ったか? ワシは、美しいと思った! 故に、この星と其処に住まうモノ、あらゆる全てを助けたいと思ったのだよ! この太刀に掛けてな!」
「それこそが、我々が恐怖を抱く根源だが。人類は我々には理解できない思いというものを持つ」
 ルキアは動きながらの攻撃で、ジョワユーズ防衛のスタンスに直ぐに入れるようにいた。長距離バルカンを叩き込む。
「答えはね、常に求めるものなんだ。きみの答えは――? きみは、何故、此処にいる? 生きると言うコトは、エゴを通すコト。他者を殺すコト、ね、きみが此処にいるのは――何のタメ? 私はセカイ、セカイが欲しい」
「俺が知る限りバグアに難解な普遍的な考えはないだろう。人間の哲学は難解に過ぎる‥‥」
 キングスレーは回避する。
 ルキアは孫六、清四郎と連携して、一気にレッグドリルの攻撃と近接状態でバルカンを異叩き込んだ。ティターンはデュスノミアを弾き飛ばした。
 武流も加速する。近接戦を挑み攻撃の隙を誘うと、ティターンの攻撃を捌き残像回避で回避。側面に回りこむ‥‥と見せかけ正面にとどまりエナジーウィングで攻撃する。数回エナジーウィングで攻撃、ティターンを釣りだし後ろに下がると、そのままプロトディメントレーザーを撃ち込んだ。
「同じことを何度もやると思ったか。お前の未来は‥‥俺が決める!」
 キングスレーは受け止めた。
「アレン・キングスレー。俺はお前のことは良く知らん。お前からは生きる気力を感じない。だが、死ぬ覚悟すらも無いように見える。‥‥もっとも、どちらでもいい。立ちふさがるなら倒す」
「そうはいかん」
 キングスレーはプロトン砲で反撃すると離脱した。
 ソーニャは、後方にいた本星HWに接近する。
「ちょっと疑問。バグアにも人間のように、戦う者と平和を営む者がいるの? バグアの望む平和ってなに?」
「ソーニャ傭兵、私たちは侵略者です。全てはその為に注がれ、それは変わることは無いでしょう」
 クワイスは答えた。
「アレンは自分を敗残って言ったけど、ボクたちが勝つってどういう事?」
「貴女は難しい質問をしますね。それは自分自身に問い続けるしかないでしょう」
「ボクは戦いを否定しないけど、好きなわけじゃないよ。でも平和な世の中がボクを飛ばせてくれるとは思えない。ボクたちの戦いの終着にボクたちの居場所はないんじゃないかな。少なくともボクの望む世界にボクはいらない。それでもボクは夢を見るんだよ」
「貴女がたがここまで来た以上、私たちの本星で迎撃する態勢は整えていますよ。ブライトン様の言葉はまだ下りていませんが‥‥」
「あのHW、動きからして管制をしているように見えます。ここで落とせばこちら側が優位になりますね」
 神棟は加速した。リヴァティーには両側より挟撃体勢をお願いし自身は正面より凍風で迎撃。波状攻撃しつつリヴァティーは上方へ自身は下方より接近し変形の後、A・ファングを起動しライチャスで畳み掛ける。
「こちらは神棟星嵐、参ります!」
「地球人、今日はこれまでです」
 クワイスは離脱した。
 傭兵たちはバグア軍を後退に追い込み、崑崙を守り抜いた。
 清四郎は、地球を向いて言った。
「頑張れよ‥‥真由、負けるな!」

 ――KV格納庫。いつものようにコックピットに寝床を作っていると、フローラがやってきた。
「ソーニャさん」
「あれ、フローラさん、めずらしいね、こんな所にくるなんて」
「ここで寝るんですか?」
「真由さん――。地球に戻ったんだ。新しい命を生み、育て、平和な世界の一部となる。それはいいね。生き残った者がなす事としては最高の部類かな。彼女に伝えて。ボクの夢と理想を君がかなえて。あのこの事だから、妙な後ろめたさを感じていそうだからね。ボクを容れないボクの憧れ、理想郷。出来ればいいなぁ」
「ソーニャさん‥‥」
「ねぇ、ボクの理想の世界には、飛ぶために血を啜り、得体の知れない生き方をする者はいないんだよ。フローラさんも自分の子供たちのそばにいて欲くないでしょ。それでも見ていてくれる? そして覚えていてくれるかなぁ。ボクがいた事」
「ソーニャさん、あなたはどうするつもりなんですか――?」

 なでしこは美里が落ち込んでいると聞いて思うところがあったのか、任務完了後、カンパネラへ帰還し、女性オペレータ陣を誘って強気な女子会を開くのであった。