●リプレイ本文
これがフィーニクス‥‥まだオリジナルの力には程遠いか‥‥だが、必ず使いこなしてみせる。
須佐 武流(
ga1461)はフィー二クスを見上げていた。
「武流―! こっちこっち!」
軍傭兵が手を振る。
武流はフィー二クスから離れて歩きだした。
漸 王零(
ga2930)は呆れたように口を開いた。
「キングスレー‥‥あいつまだ生きてたのか‥‥まぁ‥‥とにかく、新型の慣らしをかねて、がんばるとしますか」
「それでは確認ですが」
櫻小路・なでしこ(
ga3607)が言った。
「識別コードがキングスレー様ということで、小型衛星の撃退ですが、キングスレー様はティターンで出るか小型衛星で指揮を取って来るか分かりませんね。ティターンで出るとして、孫六様にソーニャ(
gb5824)様、堺様が当たるということで宜しいでしょうか」
「無論だ!」
孫六は笑った。
「それでは、強化タロスにはわたくしと神棟様、それからリヴァティー×4で当たって頂きます。小型衛星対応にはいつもの通りジョワユーズが。タロス&宇宙キメラ対応に王零様。それからリヴァティー×20、ハヤテ×14、ラスヴィエート×14が王零様に付いて頂きます」
「了解した」
「全体の方針ですが、いつもの通り先制攻撃にタロス&キメラ群に一斉攻撃。先制攻撃後、各役割、分担に応じて分散し交戦開始。各自の撃退完了後、小型衛星攻略へ。締めはジョワユーズによる攻撃で撃破、と言ったところでしょうか」
「我の担当は軍のKVらと共にタロス&宇宙キメラ、か。我は乗り換えたばかりの新型の慣らしをかねての参加となる。なので、できるだけ多くの敵と戦うように動くつもりでいるよ。軍のKVには基本的に数が多い宇宙キメラの対応をお願いしたいかな。タロス撃破後は苦戦してるところのフォローに回るようにするが、その際、軍の三分の一も一緒にフォローに回ってもらえるだろうか」
王零は言った。
「それにしても、大きくなってきたな。ここも」
堺・清四郎(
gb3564)はKVドックを見渡した。
さて、いつもどおり奴がここらへんで襲ってくるはずだが‥‥。まだ生きているか? 生きているのならば出てこい‥‥!
「相変わらずしぶとい奴だが‥‥」
「ガッハッハ! このタイミングで、小型衛星の襲撃? 間違いない、キングスレーだな! ティターンを倒したとは言え、奴が限界突破もせずに死ぬ筈は無いからな! 戦域にティターンの姿は無し、とすれば衛星に奴が居るか?!」
孫六 兼元(
gb5331)は笑った。
「アレン・キングスレー、か」
ソーニャはぽつりと言った。
「アレンは死に場所を探しているとは思えないんだよね」
「ヘパイストスが敗れた今でも、このように仕掛けてくるとは‥‥。油断なりませんね」
神棟星嵐(
gc1022)は言って、蒼い髪をかき上げた。
「何度この月面基地へ攻め込もうと、返り討ちにして差し上げましょう。あ、なでしこ殿またよしくお願いします」
「よろしくお願いしますね」
なでしこはにっこり笑うと、場の雰囲気が和んでしまった。ふわりと、お嬢様騎士のムードメーカーが和やかな空気を作りだしてしまう。
「ふふ‥‥なでしこ殿、相変わらず良くも悪くもムードメーカーですね」
「あら。それはどういう意味ですの?」
なでしこはぐぐっと神棟に詰め寄る。
「い、いえいえ、深い意味は無いんですよ」
あせあせっと、神棟は後退した。
「なでしこ殿はお嬢様騎士と言われるほどの方ですからね」
「あら」
「うにゃあ‥‥何だかなあ‥‥このオーラは‥‥」
武流は、苦笑すると、和やかな空気に一抹の心地よさを感じつつ、肩をすくめた。
「櫻小路、勇敢なお嬢様だぜ」
「ふむ‥‥まあ、我に言わせれば、なでしこはなでしこで、みんなから愛されている、と言うところかね」
王零が言うと、武流はむせ込んだ。
「お前‥‥奥さん二人いるくせに何かわいこぶってんだ?」
「おい、武流、それは違うぞ。我が詐欺師みたいではないか」
「あー、王零さんそう言えば、まだ二股かけてんだー」
ソーニャが言うと、王零は口許を緩めた。
「まあその話は後でたっぷりとしようかね?」
「それじゃあ、ボクもアレン対応だね。今日もアレンにレーザーの嵐が振り掛かりますように‥‥」
そうして、アキラが拳を叩いた。
「よーし、んじゃあ行くとするかね。各チーム! 油断するなよ! いつも通りジョワユーズにラストを渡そう! 行くぞ!」
傭兵たちは駆けだした。
「ではまずこれを食らえ‥‥プロトディメントレーザー!」
武流はフィー二クスレイの破壊力を増大させたこの一撃を発射すると、キメラ群、タロスを薙ぎ払う。
直線600メートルを閃光が貫通すると、爆散するタロスとキメラで宇宙空間が弾けた。
「漸王零、ダーナヴァサムラータ‥‥敵の殲滅にはいる!!」
王零はまずは先制攻撃として管狐をタロスに向かって発射。コンテナミサイルがばら撒かれ、タロスに襲い掛かる。王零のヴァダーナフが持つ強力な攻撃力がタロスを破壊していく。その威力は絶大である。
「さすがにこの機体は‥‥」
「それじゃあわたくしも行くわよ! GP7発射!」
150発の小型Gプラズマミサイルが放たれる。次々キメラを撃破していく。
清四郎は孫六、ソーニャと一緒に小型衛生に突っ込んで武装やキメラ搬出口を壊すつもり。
「敵中突破と洒落込むか‥‥が」
まずは敵と接触前にK−02を全弾発射して相手を怯ませ、その隙に突破する。
「いつものだ、遠慮なく喰らえ!」
500発のミサイルがキメラ群を薙ぎ払う。
「ガッハッハ! 行くぞ!」
孫六はまずは一斉攻撃を見送る。
「それじゃあボクも行きますか」
ソーニャも前進すると、ミサイルを全弾発射した。直撃がバグア軍に炸裂する。
神棟は、キメラ群に向けてミサイルポッド、GP−9とHA−06を発射して迎撃。
「人類の意地、何度でも御見せします。Azurblaue Drache、ミサイル全弾発射!」
着弾すると爆発と閃光が弾ける。
「FOX1、FOX2ミサイル発射!」
軍傭兵たちも数千発のミサイルを発射する。
「よっしゃあ! 行くぜ!」
武流は加速した。レーザー砲「凍風」でキメラを掃討していくと、変形してタロスと打ち合う。タイガーファングを叩き込み、ブースターと機体の高出力ブースター、ディノスケイルの推進力も利用し細かい機動で機体を制御し、遠心力や慣性をつけて殴る、突く、薙ぐ、斬りつける。宇宙空間での格闘戦である。タロスを破壊し、さらに強化タロスへ向かう。
「やらせるかあ!」
武流は咆哮すると、さらにエナジーウィングによる攻撃も加える。タイガーファングと凍風をフェイントに織り交ぜ破壊する。プロトン砲は全て回避。
王零は戦闘機形態でKA−01で対応。リロードしつつ、キメラ群を破壊していく。
「友軍各機、我のフォローをよろしく」
接近加速すると、人型に変形してプルート・デヴァステイター、ファランクス・ロンディニウム、強襲用追加ユニット「荒狂嵐」、銃剣サクリファイスを巧みに使う。
一体化したプルートとサクリファイスで迎撃する。
「行くぞ」
ドウ! ドウ! とプルートを五連射。キメラを破壊していく。
荒狂嵐とファランクスで牽制しつつプルートの射撃を交え、サクリファイスの斬撃を叩き込む。
サクリファイスは銃剣だが、プルートと一体化したれっきとした剣である。
サクリファイスで敵を突き刺し、射撃でタロスを破壊する。
「よし」
ある程度敵が減らせたらブースト&フォース・アセンションを起動し一気に殲滅に入る。
「デュアルモードシステム‥‥モードN、アクティブ!!」
豊富な運動力と火力の向上で敵機を撃墜していく。
「ふむ‥‥さすがは最新鋭機‥‥こいつは予想以上の化け物だな」
なでしこは強化タロス撃破に向かう。
「神棟さん、行くわよ!」
「了解です」
「行くぞなでしこ」
リヴァティー四機も加速する。
「リヴァティー二機で半数を足止め、残る二機を各個撃破。行くわよ!」
レーザーガンで牽制しつつ加速。人型変形で懐に潜り込み練剣ビームクレイモアで切りつける。一撃二撃と弾いて、なでしこは強化タロスを寸断した。
神棟も突進。櫻小路、軍のリヴァティーと連携しつつ、人型へ変形し味方と挟撃する様に移動しながら、レーザー砲「凍風」で牽制する。
間合いを計りながら、味方の攻撃で怯んだ隙にブーストで接近。
「行きますよ――!」
加速し、ライチャスで袈裟切り、更にアグレッシブ・ファングを起動し逆袈裟切りで止めを狙う。
「この間合いなら‥‥! Azurblaue Drache吶喊します!」
神棟は強化タロスを真っ二つに切り裂いた。
「お見事――」
「残るは一機です」
「各個に撃破するわよ」
なでしこらは集中攻撃で強化タロスを撃破していく。
「強化タロスを早々に片付け、他の応援へと急ぎましょう」
「一度、補給へ戻った方が良くはありませんか」
「そうね‥‥」
神棟が言って、なでしこらは補給に戻る。
清四郎は敵陣を突破し、衛生のキメラ搬出口や対空兵器、レーダーアンテナ、主砲などをMー12や8.8で壊していく。
「生きた心地がせんな‥‥全く。やるしかないが」
清四郎は衛星に取りつき、破壊していく。
孫六も飛行形態で衛星の攻撃を掻い潜り、表層ギリギリに接近し09式で衛星の武装を破壊していく。
「むう‥‥」
武装の他、キメラの排出口等も確認し、破壊していく。
「キングスレー! 居るんだろう? 衛星は無力化させて貰うぞ!」
孫六はオープンチャンネルで呼び掛けた。
衛星の能力が低下すれば、奴が出てくる筈だ! 奴がティターンで出てきたならば、人型で迎え撃つ!
ソーニャは空戦形態、アリス、通常ブースト常時起動で突進する。ロールを多用した螺旋起動で攻撃、回避を同時に行い、接敵する。衛星表面をかいくぐり、レーザーで破壊していく。正面攻撃にてすれ違い、離脱。囮として撹乱陽動をかけ、味方の攻撃の起点とする。
「敵キメラ群第二波の放出を確認」
「むう‥‥」
と、そこでティターンが戦場に出て来るのを確認した。アレン・キングスレーだ。
「ねぇアレン。世の中ってままならないね」
ソーニャは言った。
「選択肢は限られ、時の流れに翻弄されていく。それでも最後まで自分の為に、自分の想いで飛ぼう。モスは、ボクとの戦いを楽しんでくれたかな。誇りと満足をもって逝けたかなぁ。疑っていないんだけどね。ボクが向こうに行ったとき、きっと豪快に笑って迎えてくれる。ままならないのは常。どう逝くかは自分。楽しんで行こう。最後のその時に笑っていられる様に」
それから続けた。
「追悼――目的地を目指し、向かい風に押し戻されても懸命に前を向く。たどりつけるかわからない。それでも最後まで懸命に羽ばたく。そして力尽き、波間に消える。それはあまりにもありきたりな光景。ありきたりな勇者のお話。それを愚かと言わないで下さい。彼らの誇りと勇気は崇高であり、その想いは悲しいまでに美しい。約束しよう。何処までも飛びたい。それでも、力尽きる最後の時。ボクも笑って逝くと」
「‥‥‥‥」
「神への祈り? まさか。ボクは神様には祈らないよ。ボクが祈るのはボクの中にいる人たち、バグア含めて。他にどんなに蔑まれてもなじられても、ボクの中にいる人たちに誇れる自分であれば、ボクはボクでいられる。ボクがボクであれば、ボクの中の人たちもまた永遠なんだよ」
「お前の思いは分かるソーニャ。俺も敗残の身でなかったら、今少し寛大な心でいられたかもな」
清四郎は機刀とベズワル以外の武装をパージして、斬りかかっていく。その際ベズワルを脅しに使う感じで嫌がらせ攻撃を繰り返して時間稼ぎをして、回避行動に集中してエクスカリバーが衛星を破壊するのを援護する。
「やはり生きていたか! キングスレー! お前との決着を付けたいのは山々だが今回は運びが主任務なのでな! 悪いが時間稼ぎに付き合ってもらうぞ! お前との決着はまた舞台が整ったところでつけたいのものだ、それまで死ぬのではないぞ、軍人としては失格かもしれんが矜持でお前との戦いを楽しみにしているのだからな‥‥」
「清四郎‥‥お前の牙は鋭い。それは俺の心に突き刺さっている」
キングスレーは言いつつ、だが清四郎の打撃を弾いていく。
「矢張り生きておったか!」
孫六も吶喊した。
「あの程度で死するとは思っておらんかったがな! お前もまた武士なれば、如何な状況でも生き残り、次の戦いに備えると解っておった! お前が限界突破するまで、簡単に死なれてはワシが困るしな! ガッハッハッハ!」
「孫六‥‥まさしく死の影に追われている感覚だ」
キングスレーは弾いた。
孫六は機刀の斬撃を喰らわせ、接近し練機爪の攻撃に連続し肘や膝も叩き込む。Fアセンション・Fビートダウン・ブーストを同時に使い、ティターンを蹴り飛ばし間合いが取れた所を、居合の要領で機刀の連続斬りを叩き込んだ。
ティターンの腕が飛ぶ。
「ワシはお前に、情けなど掛けた覚えは無い! お前にはバグアの武士としての敬意と、ある種の共感が有るのみだ! ワシもお前も、その牙は折れておらん! 寧ろ、鋭さを増している! 信念を持ち戦う者は、決して簡単には倒れん! それは、お前とて同じだ! 故に牙折れるまで、互いに打ち合い魂を燃やすのだ!」
「お前は強い孫六。お前の刀には魂が宿っている‥‥」
キングスレーは後退した。
「逃がすかよ!」
武流が突進した。
「むう‥‥!」
近接戦を挑みかかると、キングスレーの攻撃を残像回避で回避。側面に回りこみ、至近距離からプロトディメントレーザーを放った。
「ターゲットロック! ‥‥破壊する! 消し飛べ‥‥!」
閃光がティターンを貫く――寸前のところでキングスレーはかわしたが、装甲をえぐり取られた。
キングスレーはそこで退却した。
「ジョワユーズ、雑魚は任せろ。衛星を頼む」
王零が通信を入れた。
「ジョワユーズ! 援護するぜ!」
武流は残像回避を駆使して衛星に接近。プロトディメントレーザーで砲撃。レーザーでなぎ払うように機体を動かしながら撃つ。
「目標を破壊する‥‥!」
もちろん衛星は巨大なので、武流の攻撃で破壊はされないが表層はダメージを受ける。
なでしこはブースト&ツインブースト空戦スタビライザーで一気に踏み込み、SESエンハンサー使用の帯電粒子加速砲を衛星主砲に叩きつけ、駆け抜ける。
「さて、仕上げです。モントロン艦長、お任せ致します」
神棟も加速、レーザー砲「凍風」で防空機能を破壊する。残りのミサイルポッドを小型衛星の対艦用ミサイルと光線砲に向けて全弾発射。
「小型とは言え衛星に変わりありません。ここまで潜り込めば、良い的です!」
爆発が衛星を包み込み、ジョワユーズのG兵器が叩き込まれる。
G光線ブラスター砲が吸い込まれて行く。
衛星は閃光とともに爆散、消失したのだった。