タイトル:【崩月】大攻勢に向けてマスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/07/09 19:16

●オープニング本文


 宇宙要塞カンパネラ――。
 大型封鎖衛星ヘパイストス攻略作戦が発令された――。
 これに向かうは新たに編成されたUPCアジア宇宙艦隊である。月面会戦で勝利したUPC軍の士気は高い。
「バグアの宇宙封鎖網はもはや機能していない。宇宙軍はここにヘパイストス攻略を任とする艦隊の編成を決定するものである。諸君らの健闘に期待するところ大である」
 ウォルター・マクスウェル少将(gz0139)は言って、各艦の艦長たちを激励した。
「月面会戦の余韻に浸っていたいところだが、封鎖網が崩壊したとはいえ大型衛星の諸勢力は無視できない存在だ。これを叩く」
「は――!」
 艦長たちは敬礼した。軍人であれば行けと言われれば危険な任務にも躊躇いは無い。
 眼下の蒼い星を臨み、UPC軍は作戦行動を開始する――。

 ULTから出向してきている分析官のフローラ・ワイズマン(gz0213)は、オフィスにて報告書をまとめていた。
 ここ最近の月面会戦‥‥月面基地崑崙の状況‥‥戦場となったカンパネラ‥‥封鎖衛星ヘパイストス‥‥エクスカリバー級宇宙巡洋艦ジョワユーズが体験したバグア戦闘艦との戦闘など‥‥。
 フローラはオフィスに缶詰で、端末に向き合っていた。月面会戦は終結した。人類は勝利を収め、月面は確保されることになるだろう。次に向かうは、あの赤い月であろうか‥‥。フローラは吐息して、深呼吸とともに背中を伸ばした。
「お疲れさん」
 差し出されたカップに、フローラは視線を上げた。
「アキラさん」
 視線の先にいたのは、ジョワユーズのKV隊隊長、アキラであった。
「ようやく終わったな‥‥月面会戦だけど。初めての大規模作戦にしちゃ、俺達は出来過ぎだな。宇宙でバグア相手に、敵さんの親玉を倒した。次は、あの赤い月だろうかね」
「私も同じことを考えていました」
 フローラが笑みを浮かべれば、アキラは肩をすくめた。
「仕事、順調そうだね」
「そうでもなくて。ここのところ失敗続きなんです」
「失敗? あんたでも悩むことがあるんだな」
「ちょっと、随分な言い方ですね」
「いや‥‥」
 アキラは吐息すると、コーヒーを一口飲んで言った。
「食事でもどうかな、て言いに来たんだど」
「あ、いいですよ」
「随分あっさりOKするんだな」
「どこに行きますか? て、そんなに選択肢があるわけじゃないですけど」
「おしゃれな店でもあればいいんだけど。寿司でも食いに行く?」
 アキラが言うと、フローラは立ち上がった。
「いいですよ。じゃ、お寿司食べに行きましょうか――」

「あ? あれフローラさんとアキラさんじゃないですか?」
 ULTオペレーターの綾河美里(gz04587)は、ジョワユーズの副官桜舞子とカンパネラの町を歩いていて、その二人が歩いているところを見つけた。
「アキラさん、楽しそうですね〜。これは現場を押さえとかないとね!」
 美里は言って、携帯で写真を取った。

 ――翌日、ジョワユーズにて。
「アキラさん!」
 美里は、桜と話しているアキラのところへ向かうと。現場を押さえた写真をじゃじゃん! と見せた。
「PM20:00過ぎ。これはどういうことなんですか?」
「そ、それは‥‥」
 うろたえるアキラに、桜は低い声で何事かぶつぶつと呟いた。
「これから大事な戦いを控えてるってのに、ちょっと浮ついてるんじゃないの?」
 桜が厳しい口調で言うと、アキラは「いやいや」と手を振った。
「大事な戦いもあるけど、これも大事なことですよ副官殿」
「可愛い部下の振りしてればいいと思ってるの?」
「何を怒ってるんですか桜さん?」
「怒ってません!」
 ――と、ジョワユーズの艦長ジャック・モントロン中佐が威風堂々と歩き過ぎて行く。
「若いって宝だねえ‥‥」
 そして入れ違いに、フローラがやってくる。
「みなさん、スケジュールを確認してくださいね。ヘパイストスに対して本格的な攻勢に転じます。上級スタッフは会議がありますので」
「フローラさん!」
 美里はじゃじゃん! と写真を見せた。
「あ、えーと‥‥」
 フローラは珍しく慌てたように言葉を詰まらせた。
「現行犯ですよ! ね、舞子ちゃん?」
「みんなには言ってないわよ、お二人さん」
 桜はそう言うと、部屋から出て行った。
「あー‥‥じゃあ、この写真は、消去しておきますか。えい!」
 美里は写真を消去した。
 ジョワユーズはヘパイストスへ一大攻勢に出ようとしていた、決戦が迫る、その幕間である。

 ――封鎖衛星ヘパイストス。
 衛星指揮官ドゼイ・モスは、カンパネラの動きにうなるように吐息した。
「月面で勝利を収め、意気上がる人類の様子が目に浮かぶようだな」
 モスは、傍らで部下を相手にチェスをしているアレン・キングスレー(gz0472)に言った。
「それは士気も高いだろうな。この次に人類が来るのは我々の本星だろう。それもそう遠くない日に。もはや我々の宇宙封鎖は機能していない」
「このヘパイストスも限界か‥‥」
「お前はどう出るドゼイ。カンパネラはいよいよヘパイストスにチェックメイトを掛けようとしている。ここで死ぬ気か?」
「私はブライトン様からこの衛星を預かる身だ。簡単に逃げることは出来ん」
「なあ、宇宙は広大だぞ。逃げるのは恥ではない。衛星を枕に討ち死にするのがお前さんの美学なのかね」
 キングスレーが言うとモスはうなった。
「このゲーム付き合ってやるよ」
 キングスレーは立ち上がった。
「ただしドゼイ、ヘパイストスを枕に討ち死にするのは、俺が許さん。お前には生きてバグアに果たすべき使命がある。俺はそう信じているんだがね」
「お前らしくない言葉だな。我々は所詮高次元の欠片に過ぎん。全ては還っていく」
「ドゼイ・モスと言う『バグア人の選択』を、俺は見届けたいだけだ」
 キングスレーは、眼下の蒼い星を見下ろした。あの青い星には随分としがらみが出来てしまったものだ。
 ヘパイストスは、総力戦の構えで、UPC軍を迎え撃とうとしていた。

●参加者一覧

櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA
アーク・ウイング(gb4432
10歳・♀・ER
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF
神棟星嵐(gc1022
22歳・♂・HD
クローカ・ルイシコフ(gc7747
16歳・♂・ER

●リプレイ本文

 戦闘開始前、ヘパイストスへ向かう途上で、ジョワユーズの会議室に傭兵たちと各艦の士官たちが集結した。また、別方面から出立していた巡洋艦も集結し、戦いは総力戦の様相を呈していた。
 櫻小路・なでしこ(ga3607)が立ち上がった。
「いよいよ大型封鎖衛星ヘパイストスとの決戦となりました。今回の分担、編成ですが。対ヘパイストスにジョワユーズとエクスカリバー級巡洋艦×2が当たって頂きます。わたくし達傭兵はキングスレー様のティターンブラックスターに、夢守様が部分管制に、また孫六様と堺様、アーちゃん様が全体の管制に当たります。敵の有人機強化タロス対応に、わたくしと神棟様、ソーニャ(gb5824)様、ルイシコフ様、リヴァティー×4に付いて頂きます。予想される敵のタロスとキメラと各艦護衛には、リヴァティー×10、ハヤテ×24、ラスヴィエート×14で当たって頂きます」
「了解したなでしこ。こっちは大丈夫だ」
 KV隊の隊長アキラは、言って頷いた。
「また、全体の方針と作戦ですが、先制の一斉射撃において、随行の2艦も砲撃参加をお願いします」
「うむ」
「また、先制後、各KVは担当の配置へ展開および交戦。ジョワユーズ以下の3艦は援護しつつ進行し配置展開。配置展開が済んだジョワユーズ以下3艦からの一斉砲撃でヘパイストスを撃破して頂きたく存じます」
「KV隊の援護無くして勝利は無い。よろしく頼む」
 堺・清四郎(gb3564)は腕組みして、吐息した。
「地上で持ち越した決着‥‥今度こそつける‥‥」
 いよいよ最後のヘパイストスか‥‥中東、インド、オーストラリアと戦い続けてきたがいよいよここが決着の場所か? だからこそ前に俺たちに直接会ったか‥‥。いつも通りただ俺はひと振りの刀であるだけだ‥‥。キングスレー‥‥決着をつける!
「とうとうヘパイトスまでチェックをかけたね。月での戦いも勝利できたし、今回も勝たないとね」
 と気合を入れているのはアーク・ウイング(gb4432)である。
「ヘパイストスとの決戦か! 此処まで長かったが、あと一息だ!」
 孫六 兼元(gb5331)は言った。
「だが奴の、キングスレーの妨害が必ず有る! 奴との付き合いも1年を過ぎたか‥‥。ソッチの決戦も、近々なのだろうな!」
「宇宙へ来て、月を見て、ヘパイストスで勝つ。アレン君はどう動いて来るかな」
 夢守 ルキア(gb9436)が言うと、ソーニャは肩をすくめた。
「ヘパイストス、ドゼイ・モスが指揮するこの衛星にようやく辿り付く事が出来ました。ここで討ち、先ず一つの区切りをつけるとしましょう」
 神棟星嵐(gc1022)は言って、蒼い髪をかき上げた。
「先日のキングスレーの人質解放については、些か疑問が残りますね。自分達人間を見て、何を思うのでしょうか‥‥」
「先日の報告は見たけどね」
 クローカ・ルイシコフ(gc7747)は笑った。
「日増しに敵の抵抗も少なくなってきたね。決戦の為に戦力を温存してるのかな。油断できないけど、ちょっとつまらないよ」
 ――会議が終了すると、傭兵たちはそれぞれの機体へ向かう。

 アーちゃんは全体の管制に当たりつつ、周囲に浮かび上がる電子データに目を映す。封鎖衛星ヘパイストスから放たれるキメラとワームを捕える。
「敵キメラ、ワーム群来ます。攻撃を誘導します。各艦、砲撃用意願います」
「了解管制機」
「各艦、KV隊、攻撃開始――」
「FOX1、FOX2ミサイル発射!」
「G5弾頭、撃て!」
「G光線ブラスター砲、発射!」
 なでしこはミサイルを発射し、清四郎は敵陣に突進。
「最後の決戦か‥‥生き残るぞ!」
「アーちゃんはヴィジョンアイで支援します! えい!」
 神棟は発艦後、アーちゃんの指示に従いGP−9ミサイルをキメラ群に発射。
「これまで通り、数で押し寄せてくるのなら、こちらも連携で以って迎え撃つまでです!」
 ルイシコフも撃ち込む。
 数千発のミサイルが炸裂すると、閃光が宇宙空間で弾けた。
「こっちも始めようか。蓮華の結界輪稼働、アルゴシステム起動」
 ルキアは管制システムを起動させると、衛星への射線を計算する。
「エクスカリバー級各艦、ヘパイストスへ初手でG5弾頭を撃って。それを囮にブーストを使い掻きまわす」
「了解した」
「当たればよし、当たらなくても射線内の敵が消えたらいい」
 ルキアは加速するとバルカンでキメラを撃墜していく。
 G5弾頭を回避する敵ワーム。キメラ群を蹴散らしながらミサイルは加速する。
 ヘパイストスから閃光がほとばしり、G5弾頭を薙ぎ払う。
 ルキアは逃げ惑うキメラトカをバルカンで破壊した。
「(主兵装は切り札、白金蜃気楼が私のワイルドカード)」
「それじゃあこっちも行きますか。エルシアン、出ます!」
 加速するソーニャ。
「まずはGP−02で行かせてもらうよ」
 強化タロスに撃ち込むと、続いてレーザーで攻撃。レーザーが貫通する。強化タロスは爆散した。
「続いて!」
 神棟は加速すると、その後強化タロスに向かう
「タロスを早々に撃破し、ヘパイストスの砲塔を破壊しにまいりましょう」
 人型へ変形すると、敵の動きを止める為、凍風で牽制し回避した先へラヴィーナを撃ち込む。着弾。ブーストで加速すると、A・ファングとB・ノウを起動し、ライチャスでタロスの胴体を目指して突貫。
「人類の勝利が手の届くところまで来ているのです。ここで押し切られる訳にはいかないのです!」
 強化タロスを両断した。
 ルイシコフは前線へ突撃すると、速やかに接敵。ミサイルを叩き込み、接近しつつガトリングを撃ち込む。ライチャスで突進すると、強化タロスと切り結ぶ。一撃、二撃と弾いて、ガトリングを叩き込んだ。無重力を流れるように移動しながら、射撃距離から格闘距離へ柔軟に移動。
「行くぞバグア君!」
 ライチャスの連続攻撃で隙を強引にこじ開ける。機剣が貫通し、強化タロスは爆発四散した。
「こっちも行くわよ!」
 なでしこは加速した。
「リヴァティー、支援をお願い!」
「なでしこさん、敵も最後にしぶといですね」
 神棟がなでしこに接近する。
「最後のあがき‥‥だといいけれど」
 なでしこは神棟機の肩を叩いた。二人は加速すると、連係プレーで強化タロスに当たる。神棟が牽制し、なでしこはレーザーガンとGP7を叩き込んだ。レーザーガンを連射し、加速する。
「そこまでよ!」
 なでしこは人型に変形すると練剣を叩き込んだ。両断され四散する強化タロス。
 アーちゃんは複合ESM「ロータス・クイーン」で周辺を警戒する。
「キングスレーはまだ奥ですか‥‥」
 アーちゃんは言って、電子データに目を向ける。レーザーガンでキメラを撃ち落としていく。
「エクスカリバー級各艦、進行ルートをKV隊が確保します。進んで下さい」
「了解アーちゃん管制機」
 キングスレー機の動きに注意を払いつつ、アーちゃんも前進する。
「アーちゃんよりデルタスリー。練力の回復に向かって下さい。ソーニャさん、いったん帰還願います」
「了解アーちゃん☆」
 そうしつつ、アーちゃんはピュアホワイトの演算能力をフル稼働させ、味方艦がヘパイストスを攻撃するための進攻ルート――可能な限り、敵の迎撃が薄く、移動距離が短いルート――の割り出しも行う。
「各艦、アーちゃんの誘導に従って下さい」
「了解した。誘導に従う――」
 ルキアは、遮蔽物に身を隠し、歩行形態で前進する。バルカンを叩き込みつつまた遮蔽物に身を隠す。
 タロスが突撃して来るのを、KVトンファーで受け流し、ウィングエッジで切り裂く。
「敵衛星との距離を保って。KV隊、まだ早い。無理は禁物だよ」

 ‥‥そうして、宙域の真ん中では、キングスレーと傭兵たちが激突していた。
「キングスレー、前回は人質とワシ等を何も無く解放してくれた事には感謝だ! だが戦場ではお互い、情けは無用! 武士として刃を振るわせて貰うぞ!」
「来い孫六。武士ならば、だが、いざ尋常に勝負だ、とは言わんが、泥臭く行かせてもらうぞ」
 孫六は間合いを取り機刀で斬り合い、隙を見て懐に入り練機爪で関節を狙う。キングスレーは受け止めた。
「堪えられるか? キングスレー!」
 FアセンションとFビートダウンを同時使用し、キングスレーの剣の軌道の反対へ回り込みつつ、激しい連打を浴びせる。
「むう‥‥!」
 ティターンの足が止まったところでもう一度繰り返す。ガードされてもそのガードごと打ち砕けば良い。キングスレーの盾が腕ごと破壊された。
「ちい‥‥!」
「キングスレーよ、かつてワシの異星の友に贈った言葉を、今一度お前にも贈ろう! 輪廻の道をやり直し、今度は地球人として産まれて来い! そしてその時には‥‥その時は『友達』になろう!!」
「何だと‥‥孫六」
「お前の身に付いた宿業は、ワシが引き受けよう! お前の生きた証、戦いの軌跡、それはワシの生きた証で有り、ワシの軌跡でも有る! この戦いでは小さな波紋だが、確実に世界を動かした波紋だ! 今迄の大局の陰には、常にワシ等が居た! 人は心に鬼が居る。鬼の語源は『隠』陰で有っても、其処に確かに存在したのだ!」
「く‥‥この俺が人間から情けを受けるなど‥‥あり得ん!」
 キングスレーは離脱し、プロトン砲を叩き込んだ。
 ルキアはバルカンで援護射撃を行う。縺れ込んでるところに、デブリを蹴り黄金龍の鍵爪+ブースト接近。白金蜃気楼を展開して、手持ちミサイル「雷参型」をティターンに押しつけた。爆発がティターンの装甲を吹き飛ばす。
「私だって棄てた者はある。養父を殺した。彼は戦場に立ちたかったケド、足が腐って出来ない。夕焼けの赤と血の紅で、真っ赤だった、私も、養父も。死に意味なんて無い。そんなのは生者の妄想だ。死者は何ももたらさない。私は世界を見るタメに、自分のタメ此処にいる、セカイを記録して。きみは、何故此処にいるの?」
「く‥‥夢守ルキア‥‥お前の問いに答えなどない‥‥ちい!」
 だがさらに、そこに清四郎が待ち受けていた。接敵したところで機刀とベズワル以外の武装をパージし、決戦に挑む。
「余計な武装はいらん! 俺はこの二刀を信じるのみ!」
 小細工はせず、マニューバを全開にし体への負担を考えずにこの一戦のみを考えて真っ向勝負で挑む。
「侍‥‥堺・清四郎‥‥推してまいる!!」
 主に機刀を防御に、ベズワルを攻撃に使う。
「さあ、顔を付き合わせて斬り合うぞ‥‥俺たちが知りたくてあの時呼んだのだろう? 今度こそ最後まで付きあってもらうぞ!!」
「むう‥‥清四郎、貴様も俺の行く手を阻むか‥‥だが、俺は死なん! まだ湧き立つ血がある。俺にはまだ、残された道があるのだ!」
「ならば打ち砕くのみ! いずれにせよ、お前が敵であったこと光栄に思う。俺の全てをぶつけられる相手でいたことをな‥‥」
「清四郎!」
「いくぞ‥‥この勝負だ!!!」
 機刀を浅く当てたりフェイントに使いベズワルを叩き込むことに集中する、必要ならば機体ごとぶつける肉を切らせて骨を立つ戦法も使う。
 激しく撃ち合う両機。
「ぐふぅ!? ま、まだまだぁ!!」
「くう‥‥!」
 キングスレーは、もう片方の腕を飛ばされた。
 プロトン砲で逃げる。追撃する孫六と堺。
 さらに、アーちゃんが側面から襲い掛かった。G放電装置を叩き込む。直撃がティターンを捕える。ヴィジョンアイも使用して支援する。
「月での戦いは人類が勝ったよ。だから、そろそろお前とアーちゃんたちの因縁にも決着をつけよう」
「ちい‥‥アーク・ウイング‥‥! 貴様もか!」
 アーちゃんは加速すると、レーザーガンを叩き込んだ。ついに爆発四散するティターン。
「何と言うことだ‥‥俺の機体を落とすとは‥‥」
 キングスレーは脱出ポッドで密かに離脱すると、小型のキューブワームをばら撒いて逃走した。
「きみはvia(ウィア)意味は道。変化を見せ、変容への道を歩いた。キロクしよう、きみを、私の中に」
 ルキアは死んだと思い葬送の言葉を送ったが、追いつめられたキングスレーはまだ生き残っていた。

 ――ジョワユーズはオニキリマルと合流してヘパイストスへ加速する。
 ソーニャは補給に戻ると、ジョワユーズから離艦した。アリス、Mブースター、通常ブーストフル稼働にて要塞突入。
「付録じゃなくてヘパイストス本体とやり合うとこまでくるとはね。ボク自身もおどろきだよ。さすがに本物は対空火力も半端なさそうだね。だからこそ先陣はボクがもらう。ボクたちが一番要塞戦をやってるからね。艦長、こちらソーニャ。エルシアン出ます」
「了解ソーニャ。幸運を」
「みんな行くわよ!」
 櫻小路、神棟、ルイシコフらもKV隊と加速する。
「みんな行くよ」
 ソーニャは友軍各機と加速した。一気に砲火をくぐり抜け、要塞を這う様に飛行。障害物をすり抜けマップを頼りに目標物を撃破してゆく。
「撃て!」
 エルシアンのGP−02とあわせて友軍の多弾頭ミサイルで要塞の対空火力を撹乱する。
「モスか。ほんと、良く戦う。増援は期待できないはず。それでもはやることなく堪える所はじっくり堪えてくる。確かに下手を打てばこちらの被害も甚大になるとしても、勝機があるとは思えない。それをここまで戦えるとは、ほんと面白いね。君の様なタイプのバグアは初めてだよ。人間とバグア。ほんと、面白い。この二つ。見てみたいと思わないかい? 何処に行くのか。何処までいけるのか。行き着く先の先まで。どう思う?」
「小賢しい娘だ。このヘパイストス、ただではやらんぞ」
 櫻小路は、表層の兵装破壊をし、更にブースト&ツインブースト空船スタビライザーで行動アップし、SESエンハンサー使用で強化型帯電粒子加速砲 をヘパイストスの主砲に叩き込み駆け抜ける。
 神棟も加速し、凍風で主砲塔群を破壊、離脱する。
 ルイシコフは砲の届かない至近まで潜り込み、ロケット機剣攻撃。砲身接続部等、攻撃継続に関わる要所を破壊すると離脱する。
「久しぶりだね。今何が見える? 何を信じてる? バカげた妄信も、下らない誇りも全て砕かれて、物事がスッキリ感じるでしょ。きみ個人の感想、聞かせて欲しいな。バグアの理想を、きみも追い求めたんだろう。見果てぬ夢の結末は、ここにある。その無念、僕は受け止めるよ。人類は、きみらの屍を踏み台に先へ行く」
「お前たちの進化、成長‥‥驚嘆に値する。行くがいい‥‥我々の星へ。今のお前たちの力を以ってしても、ブライトン様は止めることは出来んだろう」
 ジョワユーズら各艦からG光線ブラスター砲が撃ち込まれる。
 ヘパイストスが震撼した。直後、ヘパイストスから主砲の閃光がほとばしり、エクスカリバー級一隻を撃墜した。
 それは最後の一撃だった。ジョワユーズらの集中砲撃を受けて、ヘパイストスは沈んでいく。やがて、閃光を放ってヘパイストスは爆散した。
 大型衛星と、ドゼイ・モスの最後だった。