タイトル:衛星ヘパイストス5マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/06/25 22:40

●オープニング本文


 宇宙要塞カンパネラ――。
 月面会戦の激戦が収束に向かいつつある。バグア宇宙艦隊は壊滅的な打撃を受け後退。UPC宇宙艦隊も一部が撃沈する激戦であり、月面周辺の主戦力は双方ともに後退しつつある。
 アジア宇宙軍の一翼を担い、月面基地崑崙の護衛を主に担当していたエクスカリバー級宇宙巡洋艦ジョワユーズは、カンパネラへと帰還していた。
 損傷した艦を急いで修復しているのにはわけがある。封鎖衛星ヘパイストスの活発な動きである。
 ヘパイストスはここへ来て動きを再開しており、カンパネラの危険宙域に入り込み、戦闘艦や小型衛星といった戦力を展開し、ワームとキメラを放出していた。
「帰って来たと思ったら、また仕事か‥‥休暇が欲しいね全く」
 KV隊の隊長アキラは言って、ジョワユーズを見上げた。
「まだ休むには早いぞ帰って来た隊長」
 艦長のジャック・モントロン中佐は、いかめしい顔で腕組みしつつアキラの後ろに立っていた。
「や、やあ艦長も生きてたんですか」
「何だと?」
 モントロン中佐は、凄い顔でアキラを睨むと、艦に向かって歩き出した。
 アキラが吐息すると、無重力のドックの中を飛んでやってくる副隊長のジルがいた。
「隊長! またすぐに出撃みたいです! 本部から命令が出たそうです!」
「この間はよくやってくれたな。無事に任務が成功して、自信になったろう」
「いえ‥‥傭兵にも助けられましたから」
 と、そこへ中佐と入れ違いに、副官の桜舞子とULTオペレーターの綾河美里(gz0458)が歩いてやって来る。
「アキラさん! お元気でしたか!」
「よおパープリン‥‥じゃねえや、綾河。おかげさんで、生きて帰って来たよ」
「またジョワユーズに出撃の命令が下りてるみたいですね!」
「ヘパイストスだな‥‥大人しくしてくれよなあ。こっちは月面がまだばたついてんだからさあ‥‥」
「艦隊が解散するまで、私たちに休暇は無いのよアキラ」
 桜が言うと、アキラは肩をすくめた。
「副官殿いつでも真剣なんですから‥‥休暇は必要ですよ?」
「十分休んだでしょう? 治療室のベッドの上で」
「あー、そう言うこと言いますか副官殿! 部下が死にかけたってのに!」
「隊長、副官は‥‥」
「ジル、余計なこと言わないで。任務に集中しましょう」
「はい‥‥」
 その様子を見ていた美里は、首を傾げて頭に「???」を浮かべていた。
 ――と、ULTから出向している分析官のフローラ・ワイズマン(gz0213)が空中から降り立った。
「アキラ隊長、ジル副隊長、午後からKV隊のブリーフィングです。桜大尉、作戦会議が間もなく始まります。お二人とも資料は端末のフォルダに入れておきましたので確認して下さい」
「あんたいつの間にかすっかりうちの事務スタッフになってるね」
「おかげ様で、いい経験が出来ました。宇宙は地上とはまるで違いますね。あの赤い月に近づいているかと思うと、怖くなってきますけど」
「フローラさんも凄いですね〜☆ 尊敬します!」
 美里はきらきらした眼差しでフローラを見やる。
 ――ジョワユーズは、再びヘパイストスの迎撃に向かおうとしていた。

 ‥‥封鎖衛星ヘパイストス。
 衛星指揮官のドゼイ・モスは、上級バグアのアレン・キングスレー(gz0472)とともに、本星からの定時連絡を受けていた。二人の前に浮かび上がる三次元ディスプレイには、文字と資料の映像だけが映し出されていた。
「‥‥というわけだ。状況は以上だ。ヘパイストスを引き続きカンパネラ方面へ転進させるように。近い将来、本星にも動きがあるだろうが、それまではカンパネラを押さえておくように」
 無機的な通信が途絶えると、モスとキングスレーは吐息した。
「と言うことであれば、やるしかないか」
 モスがうなるように言うと、キングスレーは肩をすくめた。
「ふむ‥‥いずれにしても、我々は戦場において最善を尽くすしかない、か。時間は残されてはいないが」
「カンパネラへの戦略は明確ではないが‥‥この衛星だけではまともには戦えん」
「やりようはあるだろう。カンパネラを落とせと言うわけではないのだから。軽く挑発してみるか」
 やがて、モスは自らが乗り込み、小型衛星ヘパイストス三号・スリーをカンパネラ方面へ前進させる命令を下したのだった。キングスレーは専用機のカスタムティターンに乗り込んだ。

●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA
アーク・ウイング(gb4432
10歳・♀・ER
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF

●リプレイ本文

 ふわりと、場の空気が和んだ。お嬢様騎士の櫻小路・なでしこ(ga3607)は最初に口を開いた。
「今回はヘパイストスの小型衛星を始めとする敵の撃破ですね」
 ムードメーカーなでしこの口調に、良くも悪くも場が和んでしまう。
「まず役割と編成ですが。敵小型衛星にいつも通りジョワユーズが対しますね。それからティターンには夢守様に孫六様、堺様。強化タロス対応にわたくしに、ソーニャ(gb5824)様、またリヴァティー×6に援護と陽動に当たって頂きます。遊撃には終夜様が着いて頂きますね。タロス、ジョワユーズ護衛、キメラ対応にアーちゃん様が管制と護衛を兼ね、残りリヴァティー×13、ラスヴィエート×19、ハヤテ×14について頂きますね。あ、KV隊の指揮はアキラ様にお任せしますのでよろしくお願いします」
「了解したなでしこ。ばっちり決めてやるぜ!」
 アキラは言って、拳を持ち上げた。
 なでしこはにこやかに頷き、続いて言った。
「全体の方針ですが、大筋は次の通りですね。先制の一斉砲火による最前のキメラの排除、敵の戦力分散。先制攻撃後、各自目標撃破に向け散開、交戦開始。この間のジョワユーズは小型衛星に向け進行と援護砲撃を。目標撃破後はジョワユーズに合流し援護させて頂きます」
「それにしても懐かしい顔がありますね‥‥」
 ラストホープ最高クラスのエースアサルト、月狼の隊長でもある終夜・無月(ga3084)が口許を緩めた。
「俺は遊撃と言うことですので‥‥状況に応じて必要な場所へ回るとしましょうか‥‥。こき使っていただいて結構ですよ‥‥」
「今回からアキラ氏も復帰か! まぁ、無事に戦地に戻ってくると信じておったから、心配はしとらんかったぞ! 仮に万が一が有ったとしても、武人たれば覚悟の上だろう? だが信念に生きる者は、そう簡単には倒れることは無いものだ! さあ、復帰第一戦だ! 奴らに眼にモノ見せてやろう!!」
 孫六 兼元(gb5331)は言って笑った。
「ところでなでしこの作戦説明でいいのか? アキラ、異論はないのか」
 堺・清四郎(gb3564)が言った。
「ああ、オーケーだ。いつも通りの流れだな。うちの連中もすっかり馴染んだろう」
「ふむ‥‥だが、この戦争も終わりが見えてきたかもしれんな‥‥。守勢に回っているが粘りがなく、また士気もそれほど高くない‥‥。バグアにも厭戦気分が出回っているのか? なんにせよ動きがあるのはもうすぐか‥‥」
 清四郎始め、傭兵たちの多くが月面会戦の勝利によって、バグアの後退を察していた。
「ヘパイストスの小型衛星も3番目か。まあ、いつもどおりがんばるぞ」
 と気合を入れているのはアーク・ウイング(gb4432)。傭兵たちの妹だ。
「なでしこさんはいつもお疲れ様なのですよ〜。アーちゃんもジョワユーズの護衛と管制を頑張りますね!」
 それから、アーちゃんは清四郎を見上げた。
「バグアもいよいよ追い詰められたみたいですね。宇宙空間の封鎖網も破壊されましたし。次にアーちゃん達が向かうのは、あのバグアの赤い月でしょうか」
「そうだな‥‥」
 清四郎は吐息する。
「尤も、あの赤い月は破壊は出来んだろう。あんなものが地球の上で爆発したりしたら地球は受け止めることは出来んだろうからな‥‥だが」
 と清四郎は言った。
「バグア人にも厭戦気分が広がっているようだし、あの赤い月を何とかして撃退はしたいところではあるな」
「むむ‥‥そうですね!」
 アーちゃんはぐぐっと拳を握りしめる。
 ソーニャはアキラに向かって言った。
「アキラさん、傷はもう良いの? ボクのおまじないきいたのかな」
 言うと、副隊長のジルがからからと笑った。
「なーにがおまじないだ。お前のは呪いだろうが!」
「あ、のろいだって。呪いもお呪いも同じものだよ。ボクの想いがこもっているからね」
 アキラは笑った。
「おまじないより、ソーニャの世話の方が良かったがね」
「え? 君の世話の方が利いたって? うふふ、可愛いね」
「まーあれだ。ソーニャは天使に見えたり悪魔に見えたりするからな〜」
「そうでしょ? え? 悪魔? アキラさん何言ってるの?」
 ソーニャがぐりぐりとアキラの腕に拳をめり込ませる。
「いや‥‥違うって、小悪魔だよ小悪魔! 可愛い小悪魔ちゃんだよな〜 はっはっは!」
「どこがそんな風に見えるのかな〜?」
 ソーニャはきらーんとアキラを見据える。
 ショタっこストライクフェアリー夢守 ルキア(gb9436)は、にこにこしながら二人の様子を見ていた。
「あは、アキラ君。傷は大丈夫? 前回の報告は聞いてるよね」
「まあ、何とも我ながら情けないところを見せちまったなあ」
 それからルキアは言った。
「私たちの戦略はジョワユーズのブラスター砲発射まで、時間を稼ぐコトだね。あー、みかがみ君こんにちは! て言うのも変かな」
「いえいえ‥‥」
 無月は笑って、優しく頷いた。
「今回は積極攻勢に出た方がいいと思う。障害空域、射線が通らないのは相手も同じだ。だから私達が引きつけさえすれば、時間は稼げるハズ。ところで、作戦の提案に、ミサイルを軍KVと私達の両面から撃つのはどう? そのまま私達は敵との戦闘になだれ込み、そうすれば軍KVを追う事は出来ない。両方に分かれる事で、一箇所に纏まっているより当たる可能性も少ないハズ」
「オーケーだ。ま、お前さん達に負担を掛けるのも心苦しいが、厳しいところは任せるぜ。よろしく頼むぜ」
 そこで、オペレーターから艦内放送が流れる。
「間もなく敵との交戦宙域に入ります。KV隊各機、準備に備えて下さい。切り離しを行います」
「よし、では行くぞ!」
 傭兵たちは駆けだした――。

「ロータスクイーン起動。管制を開始しますっ――」
 アーちゃんは管制システムを起動させると、自分の周りに浮かぶ電子データに目を向けつつ、コンソールを操作していく。
「キメラ群約100体。ミサイル攻撃誘導します。距離400で総攻撃開始して下さい」
 アーちゃは言って、各機とデータリンクを図る。
 周囲に浮かぶ電子データは目まぐるしく変化し、言葉では言い表せない幾何的な光となってアーちゃんの感覚にリンクする。アーちゃんは直感でそれらを理解し、バグア軍の動きを察知する。背後に浮かぶ敵衛星から放たれる重力波の歪みが、禍々しい感覚となってアーちゃんの感覚に触れて来る。アーちゃんは滑らかなタッチでコンソールを叩いて行くと、友軍のミサイル攻撃を誘導する。
「オーケーアーちゃん! 頑張りに感謝だ!」
 軍傭兵たちは言って、ミサイル攻撃を開始する。
「全機FOX1、FOX2ミサイル発射!」
「行くわよ! GP7ミサイル発射! 撃て!」
 清四郎はルキア、兼元と組んでティターンに当たるが――。
「もう呼吸や間合いの取り方も覚えてきたな‥‥」
 まずは敵と接近し射撃戦が始まる前にKー02をキメラやタロス等に発射して機先を制す。
「毎度おなじみの届けものだ! 受け取れ!!」
「アーちゃんもヴィジョンアイで支援するよ!」
「ガッハッハ! プロトディメントレーザー! てい!」
「行くよ! GP02Sミサイルポッド、食らって!」
「まずはアレン君の前に片付けちゃおう。ミサイル撃って行こう」
「では、俺はこのまま遊撃に向かうとしましょうか‥‥」
 数千発のミサイルが発射される。圧倒的なミサイル群がキメラ群を薙ぎ払う。爆発と閃光がキメラ群を飲み込み、破壊する。
「ではソーニャさん、リヴァティー各機、行くわよ!」
 なでしこが言うと、ソーニャは「了解!」と答える。
「リヴァティー4機で強化タロス半数の抑えをお願い。その間にリヴァティー2機はわたくしとソーニャさんの援護に。残りのタロスを各個撃破するわ」
「了解したなでしこ」
 なでしこは距離を置きつつレーザーガンで相対する。強化タロスが反撃して来るのを、一転してブースト+ツインブースト空戦スタビライザーで一気に詰め人型変形し練剣を叩き込む。ビームクレイモアは強化タロスの胴を寸断した。強化タロスはプロトン砲で後退する。
 ソーニャはアリス、通常ブースト常時起動。加速すると、高分子レーザーを叩き込んでいく。反撃のプロトン砲はロール機動で回避しつつ、GP−02で撹乱、レーザーで叩く。前進し、囮となって撹乱陽動をかけ、味方の攻撃の起点とすると、回り込んだリヴァティーが強化タロスを追いこんでいく。
「君の名前を聞くよ。ボクはソーニャ」
「ま、待て!」
「チェックメイトだね」
 ソーニャは言って、強化タロスを撃墜した。
「残りは二機よ。ソーニャさん、軍のみんな、勢い叩くわよ」
 なでしこは言って、仲間たちとソラを駆ける。
「傭兵ども‥‥我々は敗北を認めたわけではない!」
「それならば、わたくしたちも手綱を緩めるわけにはいかないわね」
 なでしこらは、強化タロスを追い詰めて行く。
 アーちゃんは継続して障害区域マップを探査する。複合ESM「ロータス・クイーン」でマップ間を警戒する。ジョワユーズの側にあり、障害物にも警戒する。怪しい反応にはヴィジョンアイを使用する。
「ジョワユーズには近づけないよ!」
 レーザーガンでキメラを破壊する。
 周囲に浮かぶ電子データにはこれまでの戦闘データが映っている。戦況や味方の動きから敵がどのように動くか予測する。
「KV隊。ジョワユーズ側面のタロスをお願いします。友軍各機、補給指示に従って後退して下さい」
 無月は人型に変形すると、機拳シルバーブレットでタロス、キメラを撃破していく。
 障害物の間をブーストと姿勢制御で加速し、一撃、また一撃と敵機を撃墜していく。滑らかなKVの動きは彼にとって生身の延長戦であり、その動きは正確無比であった。
「行きますよ‥‥」
 無月は突進すると、機拳を突き出し、タロスの装甲を正確に打ち抜いた。高位の操縦技術及び永き時共にする高次元能力持つ愛機故の特性を駆使。篭手のブースターも駆使し、全身の位置を巧みに操りつつ、プロトン砲から後退しつつアサルトライフルで撃破する。
 清四郎はキングスレーのティターンに突進する。マニューバをフルに活用し多角的に様々な角度から接近攻撃を仕掛ける。蹴りやマニューバそのものをぶつける、等機体のあらゆるものを利用して隙を作りベズワルを叩き込む。ビイイイイイン! とキングスレーはベズワルをレーザーブレードで弾いた。
「バグアも精彩が欠いてきたな、限界が近いのか? キングスレー!」
「限界か‥‥お前たちの著しい成長は我々を追いこんだ」
「大人が子供に戦う術しか教えられない、そんな未来などにしたくないのでな‥‥押し通らせてもらおう!! 大人のツケを子供に押し付けるのは情けなさすぎるからな! そんな世代は俺たちだけで十分だ!」
「地球の未来に興味はないが、お前たちの思いはそれが力になるのだろう。ゲバウ様を正面から倒したのは、驚きではあるが」
 孫六は飛行形態で急速接近すると、挨拶代わりに駆け抜け様にウィングエッジで斬り付ける。プロトン砲を残像回避で回避し人型に変形。
「ヘパイストスの動きが活発化した様だが、戦力がいつもより乏しくなっているな?! いよいよ、お前等も疲弊が見えてきたのかな?」
 孫六は練機爪を的確に叩き込んだ。大きなダメージを狙うより、動きを鈍らせる為の損傷を狙う。
「柔法に曰く『相手の攻撃を制すには、その基点を制すべし』! 即ち、剣を振るう腕の、肩口がその基点也!」
 残像回避で接近。
「ワシ等との戦いで、失って久しいモノを思い出したか? どうだ、なかなか悪くない気分だろう! しからば、その想いを掲げ、いざ尋常に勝負だ! ズゥ某も既に亡い! ここからがワシとお前の、本当の戦いだ!!」
「俺が見届けることになるのは、地球の最後ではなく、お前との決着の方か。大勢は決したとは言わんが、俺もどこまでこの地球に足跡を残せるか」
 ルキアも加速すると、ミサイルを叩き込み、白金蜃気楼を発動する。デブリへ移動、隠れると、ゲリラ戦のようにバルカンで狙撃していく。
「デカダンに目覚めたんだ。ま、冗談はおいていて、刹那的なんじゃなくて、私は私以外にならない。変化はするケドね」
 ティターンが後退するところをブーストで側面を狙う。ティターンの回線にルキアの声が流れる。
「私はきみの生を生きられないし、きみは私の生を生きられない。世界に触れるタメに、生きてるんだ。それに、何度でも言うよ。世界は全てであり、セカイは個人のもの。私は世界も好きだケド、セカイが一番スキ。世界が壮大だと言うのなら、それを視る事の出来る『モノ』はそれ以上に未知数だよ。世界はあるダケさ」
「お前の言うセカイとやらは、自分自身を通して見るものかね。それは傭兵らしい自由と繋がるもの、かな」
「彼がキングスレーですか‥‥」
 無月はアクロバットな機動で加速すると、練剣「雪村」を叩き込む。機拳が敵に触れる瞬間発動させ穿ち貫く。初動予知不可能化で通常攻撃に紛れ五連撃を叩き込む。
「ミカガミ? ほう‥‥懐かしいものだ」
 キングスレーは雪村をレーザーブレードで弾き返すと、戦況の変化に後退した。
 ジョワユーズが小型衛星に突進する。
「ヘパイトスの付録の小型衛星ね。確かに脅威だけど、本気でカンパネラを落とすつもりとは思えないわね。かといって、適当に済ませる気もなしと妙にまじめなんだから」
 ソーニャは言って、前進する。
「深追いに気をつけてね。ボクら自体を削る事が目的かも――衛星指揮官、モスって言った? 戦い方に強靭な意志を感じる。人は叶わぬ理想、届かぬ想いにのたうちまわるのがいい。無為と知っても前の敵を殺し、一歩でも前へ、自嘲しながらも歩くのを止められない。そんなタイプだよ。どぉ? 当たった? 同類は匂いでわかるんだよ。ほんとに魅力的。相対せずにはいられない。この類は共食いする習性でもあるのかしらね。でもちょっと安心してるんだ。アレンって理想家っていうか、インテリっぽいから現実を見限り、けりをつけたがってるじゃないかって。でもやっぱりアレンも同類。立ち止まる術を知らぬ者だね。ボクたちは行きつくとこまで行ってみるしかないんだよ。意味なんかいらない。何処までいけるのか。何があるのか。ただそれだけで十分」
 ソーニャたちが衛星の砲塔群を蹴散らし、ジョワユーズのG光線ブラスター砲が炸裂する。
 アーちゃんは戦況を分析して、ジョワユーズがへパイトス三号を攻撃するための進攻ルートを割り出す。
 G兵器が衛星目がけて襲い掛かる。
「人間どもか‥‥戦いがここまで彼らを強くしたのだとしたら、皮肉なものだが」
 ドゼイ・モスは言って、爆発する衛星からティターンで離脱する。
「今更驚くことは無い。ゲバウ様を倒した地球人だ。戦う意味があるとすれば、我々はお互いの選択を見届けるのみ――」
 キングスレーは言って、離脱するのだった。