タイトル:【崩月】ヘパイストス4マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/06/11 20:34

●オープニング本文


 封鎖衛星ヘパイストスの司令官ドゼイ・モスは、月面における戦況を確認していた。
「モス司令官――」
 バグア指揮官のジンダハールは、モニターを見つめるドゼイに歩み寄った。
「うむ‥‥」
 ドゼイは頷き、思案顔で宇宙空間を見上げた。
「本星艦隊は優勢ですが、人間たちの動きは‥‥」
 続いて言ったのは、同じくバグア指揮官のケルヒナ。
「ゲバウ様は本格的な攻勢に転じるだろうが‥‥我々は動くべきかな」
 ドゼイの問いに、ジンダハールとケルヒナは言った。
「ここは後退すべきかと思われます。ゲバウ様と人間たちの戦闘結果次第でしょうが、我々にはゲバウ様に加担する義理もありません」
「私もジンダハールに賛成します。ここで人類を攻撃したところで、我々に得るものはありません」
「ふむ‥‥」
 ドゼイはうなって、モニターに映るカンパネラを見つめていた。
「どうやら幕引きが近いらしいな――」
 その言葉に、三人は振り返った。視線の先に立っていたのは、アレン・キングスレー(gz0472)であった。
「キングスレー、貴様月面じゃないのか」
 ジンダハールの言葉に、キングスレーは肩をすくめた。
「いずれにしても、戦闘結果がどうあれ、今後の展開は変わるだろう。地球人が壊滅するならば、人類を手に入れることは二度とできなくなる」
 キングスレーが示唆したのは可能性であって、何かを求めている口調ではなかった。
「我々がゲバウ様を助力したところで、何も変わるまい。ゲバウ様は今、ユダを駆っておられる。つまりは、これはあの方にとっても譲ることのできない戦い。大幹部同士の思惑に、我々が差し出がましい真似をする必要もないだろう」
 ドゼイもまた、何かを求める振りもなく言った。ブライトンの配下である彼らにとって、ズゥ・ゲバウが直接動いたこのゲームにこれ以上参加することは、理由が無い。ゲバウは本星最高クラスの大幹部であり、その目的は地球人の壊滅。地球攻略を任務とするドゼイもまた、今は状況を見守るしかないと考えていたが――。
「ヘパイストスをカンパネラへ向けてもらいたい――」
 キングスレーの言葉に、「なぜ」と問う。
「我々は地球に関わってきた者たちだ。今そこで起こっていることに、無関心を装うのはよそうじゃないか」
 キングスレーは言った。
「今そこで、出来ることをする。お前もそう言ったではないかドゼイ」
「あれは‥‥確かに言ったが、状況が違う」
「理由を付けて逃げるのかドゼイ・モス」
「そう言うお前はどうするつもりなのだキングスレー」
「足跡を残し、見届ける」
「何を」
「この戦いの最後を、だ」
「‥‥‥‥」
 ドゼイは、沈思の後に吐息した。キングスレーと言うバグアにこのような一面があろうとは。そして、口を開いた。
「ヘパイストスを動かしても構わんが。小型衛星も戦闘艦も出さん。これはあくまでカンパネラへの示威行動だ。私に出来るのはそこまでだ。ワームとキメラは勝手に使え」
「十分だ」
 キングスレーは笑って、踵を返した。自身のカスタムティターンに向かって歩き出す。

 ――慌ただしさを増すカンパネラでは、ULTオペレーターの綾河美里(gz0458)がヘパイストスの動きを最初に察知した。
「封鎖衛星ヘパイストスが接近してきます! ワーム、キメラを展開しています! ‥‥でも変ですね。これは何かの威嚇みたいです。危険宙域には入ってきません。ワーム、キメラが接近します。とにかく、待機中のKV隊のみなさん、デルタチーム出撃願います」
 美里は言って傭兵たちを送りだす。
 ヘパイストスの内情をカンパネラが知るはずもないが、この不自然な動きはドゼイ・モスに何かがあったのだろうと推測された。ゲバウからの命令なのか、それ以外の何かがあったのか。いずれにしても、カンパネラは一応の警戒を向けることになる。

●参加者一覧

櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA
アーク・ウイング(gb4432
10歳・♀・ER
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF
ビリティス・カニンガム(gc6900
10歳・♀・AA
黒羽 拓海(gc7335
20歳・♂・PN

●リプレイ本文

「まずはわたくし達の編成と役割ですが――」
 櫻小路・なでしこ(ga3607)は確認するように言った。
「ティターン対応に孫六様、夢守様が管制に付き、アーちゃん様も管制に当たり、ソーニャ(gb5824)様、堺様が当たります。こちらはキングスレー様との交戦になりますので、十分過ぎるほどの警戒が必要ですね」
 それから、となでしこは続ける。
「強化タロス対応にわたくしと、カニンガム様、黒羽様、リヴァティー×6。タロスと宇宙キメラ対応に残り、リヴァティー×10、ラスヴィエート×16、ハヤテ×8に当たって頂きます。隊長様、よろしいでしょうか?」
 なでしこが言うと、隊長の男性は頷いた。
「ありがとうございます。後、全体の方針なのですが、敵の第一波、宇宙キメラに対し、先制の一斉射撃を実施することを提案いたします。一斉射撃後、割り振りに応じて展開し、交戦開始。強化タロスとティターンはは引き離す様にし、全域の管制を夢守様とアーク様の二人にお任せする形でいかがでしょうか」
「それにしても、陽動にしては妙だな‥‥お粗末すぎる」
 言ったのは堺・清四郎(gb3564)。
「いよいよ月での戦いも佳境に入ってきたところだ。このようなところで躓く訳にいかん。相手にどんな思惑があろうとも我が刀を信じそれを粉砕するまでだ!」
「今回のバグアの目的は、カネンパラに対する牽制なのかな? まあ、何にしろいつもどおり戦うだけだね」
 と呟いているのはアーク・ウイング(gb4432)。
 孫六 兼元(gb5331)は唸るように言った。
「しかし何だろうな? ヘパイストスが接近してきても、危険宙域に入らんだと‥‥? 此処での戦いも随分経つのに、今更威嚇も無かろうに。一体、何の心算だ? まぁいい、直接訊いてくれば済む話だ! ドゼイ・モスかキングスレーか、いずれ考えるのは純軍事的な目的とは限らんことがままにしてある! 奴らバグア人はとかくな!」
 言って、孫六は自分の機体を紹介しておく。
「さて、今回より、フィーニクス『甕布都神』をロールアウトした! キングスレーを不死長が切る!」
 ソーニャは、思案顔で言った。
「アレンがまともに来るはずないけど‥‥」
 ソーニャは言って、時々締め付けられるような胸を押さえた。
「私は管制として、有人機警戒かな。アレン君を対応するケド、全体的なカバー役も行うよ」
 夢守 ルキア(gb9436)は言った。
「大海賊の末裔」を自称するそばかす娘、ビリティス・カニンガム(gc6900)は拳を打ち合わせた。
「面白ぇ。寄生虫共! 幾らでもかかって来やがれ! 鏖殺大公がまとめて叩き潰してやるぜ! まあ、アレン何とかはおまえらに譲ってやるが、強化タロスはあたしがぶちのめしてやるぜ!」
 こちらは元気過ぎるカニンガム少女。と言うか好戦的だ。
「よお櫻小路、作戦は了解したぜ。上等じゃねえか。有人機対応たあ腕が鳴るぜ。バグアの畜生どもとはあたしも大概戦ってきたが、いい加減うんざりだぜ! 宇宙に寄生するゴミだ奴らは!」
「カニンガムさん、今日は寄生虫退治に力を振るって下さいね。敵は満載ですからね」
 なでしこが和やかに言うと、カニンガムは笑った。
「おう任せとけ! あたしに喧嘩を売るたあ上等だぜ! ゴミ虫どもが! ぶっ潰してやる!」
「あらあら」
 黒羽 拓海(gc7335)は静かに燃えていた。宇宙も大規模作戦で随分と慣れた。これまでにも幾度か宇宙に上がったが、キングスレーと相対するのは二度目であった。
「キングスレーか。会ったのは地上で一度、言葉を交わす事も無い程度だったが‥‥再び関わる事になるとはな。まあいい。まずは厄介な取り巻きからだ」
 言って、なでしこの作戦案を確認する。
「強化タロスか‥‥厄介な相手ではあるが、宇宙に上がってから多くのバグア人も散っていったな。連中も必死なのかも知れんが‥‥それにしても俺達も遠くまで来たものだが」
「よお黒羽! ま、死なない程度にぶちかましてやろうぜ!」
 カニンガムは言って、黒羽の背中をばしばしと叩いた。
「おいおいおまえ、10歳でも熟練エースアサルトだろう。手加減してくれよ。腰が砕ける」
 カニンガムは「あ」と手を止めた。
「何でも厄介な相手だろう。キングスレーは。インドで会った時はそんな印象は無かったが。たかだか一人の戦闘員だったが、報告書を見ていると、ここまで強大な敵になるとはな‥‥あの時倒しておけばと思わないでもない」
 ソーニャとアーちゃんとルキアはその時黒羽と同じ戦場にいた。
「確かにあの頃のアレンは、デリーを置いて死ぬつもりでいたように思うけどね」
「そうですね。今はそんなの遠い記憶ですよね」
「アレン君は今ここにいる。強くなったねほんと。思いもしなかったなあ」
 そこでオペレーターが連絡を入れる。
「間もなく迎撃区域に入ります。傭兵のみなさん、発進準備に備えて下さい。各機、切り離しを行います」
 傭兵たちは駆けだした――。

「こちらアーちゃんです。ロータスクイーンを起動します。今回はちょっと管制に手が回らないかもしれませんが」
 アーちゃんはシステムを起動すると、自身の周辺に浮かぶエレクトロリンカーの電子的なデータを確認しつつ、コンソールを操作していく。障害物に紛れて接近して来る敵集団を捕え、各機とデータリンクを行う。
「敵第一波、キメラ群来ますね。各機、ミサイル攻撃を用意して下さい」
「了解したアーちゃん」
「こちら夢守、私の方でも電子支援を開始するよ。アルゴシステム起動、蓮華の結界輪起動、各機データリンク開始」
 アルゴスシステムに、強化タロスのナンバリングを行う。アーちゃんのピュアホワイトの演算システムの有効範囲測定――有効範囲は半径20キロである。
「徹底攻勢で、相手の能力も見極めたいね。敵だってどんどん、進化してるハズ――ある程度戦況を見るコトで、敵の能力を見ておこう」
「全機攻撃開始。FOX1、FOX2ミサイル発射願います」
「了解アーちゃん、行くわよ。コンフォーマルガンポッド発射!」
 なでしこは言ってミサイルを発射。
 清四郎も敵のタロス、キメラにK−02を全弾発射し、相手の戦力を削る。
「いつもの挨拶だ‥‥受け取れ! FOX1!」
「アーちゃんも撃ちますよ。G放電発射!」
「ガッハッハ! ワシは切り合いに行く!」
「こっちも行くわよ。ミサイルポッド、発射!」
 ソーニャは言って敵を撃つ。
 ルキアは回避型、初手にミサイルポッドを放ち、その後はデブリに身を隠す。
「(私なら、後ろから撃つね‥‥だから)」
 ブーストをかけて方向転換と同時に、ホーミングミサイルと主兵装の十二式高性能長距離バルカンで迎撃する。
「行くぜ行くぜ野郎ども! やっほい海賊旗を上げろ! M−HM8FT全弾発射!」
 カニンガムは笑いながら言って、ミサイルを叩き込む。
「凄絶なミサイル攻撃‥‥やるじゃないか中々」
 黒羽は言って、敵との距離を保つ。
 軍KVもミサイルを発射し、1000発以上のミサイルがバグア軍を襲う。障害物を抜けて、ミサイルが直撃する。
 傭兵たちの前方に閃光が炸裂する。キメラ、ワームが残骸となって消滅する。
 直後、バグア軍から反撃のプロトン砲が来る。不気味な怪光線が傭兵たちの機体を薙ぎ払う。
「全機、警戒して下さいね」
「管制システムで支援するよ」
 アーちゃんとルキアの管制システムのサポートを受けて、傭兵たちはプロトン砲を回避していく。
「敵無人機とキメラは任せるわよ! あたくしたちは強化タロスに向かうわ。黒羽さん、カニンガムさん――」
「よし、では行くとしようかなでしこ」
「よーしんじゃあ始めるか!」
 黒羽とカニンガムは加速した。
「こっちは援護する」
 リヴァティー6機が散開する。
「さて、キングスレー様のお相手はお任せして、こちらは強化タロスを叩いてしまいましょう」
 なでしこは加速した。ティターンからの引き離しを図る。
 コンフォーマルガンポッドを叩き込むと、人型に変形して練剣と練機刀で近接戦闘を仕掛ける。まずは切り合い、一機を落とす。
 僚機の援護にレーザーガンとロケット弾を使用していくが、マニューバAを使用しつつ切り捨てていく。
「やっほーい!」
 カニンガムは加速すると、ティターンから引き剥がす様に動きつつ、ライフル撃ちつつ接近、ヘリオポーズを叩き込んでいく。
 程10以内の敵には常時リーヴィエニA発動し攻撃していく。
「よし! ここだ! ニェーバの猛撃食らいやがれ!」
 カニンガムは言って、飽和攻撃「ミチェーリ」発射する。内蔵機関砲群「オーブラカ」が咆哮する。3000発の銃撃が強化タロスを捕える。
「回避の落ちた奴から潰していけ!」
 カニンガムは突進して、ヘリオポーズで切り捨てる。敵の攻撃は全て受け防御。
「そんな蚊が刺した様な攻撃がこのテラドゥカスに効くかよ! てい!」
 言いつつ、プロトン砲の直撃に斜め四十五度・改で生命力を回復する。
 黒羽は前進すると、二挺のライフルで気を引きつつ、ティターンから引き離すように誘導する。強化タロスのバグア人が罵り声を上げて接近して来る。
「上司より先に、自分の身を守ったらどうだ?」
 黒羽は人型で、二刀での近接戦を挑む。激しく打ち合い、FET−Aで切り捨てる。
 障害物を簡易の盾にし、ブースト込みで蹴って急激に軌道を変えて強化タロスの攻撃に対する。
「ふむ‥‥」
 レーダーに目を落とすと、射線が通りにくい程の障害物を確認し、味方は撃ちやすく、敵は撃ちにくい位置への誘導を試みる。
 一機、また一機と強化タロスは撃墜されていく。

 清四郎は、戦闘機状態での一撃離脱の戦法を仕掛けて削りに行く。
「キングスレーか!? 随分らしくない戦いを仕掛けてきたな、なんだ? 遂に矜持で喧嘩を売るようになったのか!? 戦うことでしか自分を表現できないか? キングスレー!」
「堺清四郎か‥‥ひとまず月面の結末は見えつつあるが。本星にも動きはあるようでな」
「しかし、バグアの言う下等な考えで戦いを挑むようになったな‥‥だがそれがいい! 少なくとも搾取存在から喧嘩相手になったのだ、戦うのならば目線を合わせて殴りあわんとな! ならば刻み付けろ! 刻みつけてみせろ! 堺・清四郎という存在を! アレン・キングスレーの存在を!」
 人型形態になり白兵戦を仕掛ける。ティターンと激しく切り合う。
「清四郎、誇り高き地球人か――」
 アーちゃんはロータスクイーンを操作しつつ、ルキアと協力してできた余力で迎撃に回る。
 アーちゃんはヴィジョンアイを使用して味方を支援すると、タイミングを図ってレーザーガンを叩き込む。
「キングスレー、月面での戦いはどんな結末に終わるかは分からないけど、お前との決着だけは何が何でもつけるからね」
 とキングスレーに告げる。
「アーク・ウイング、それはどうかな。結末は意外なものになるかも知れん」
 孫六は練機爪を主体に、接近戦を仕掛ける。残像回避を積極的に使用し、左右だけでなく上下に回り込みながら攻撃する。
「キングスレー、今日はあまり踏み込んで来んとは、随分と消極的だな! 示威行為の心算か? そんな事をせんでも、お前の強さ、厄介さは良く解っとるぞ!」
 言って、孫六は打ち合う。
「キングスレー、確かに永遠に続くモノなど有りはしない! 色即是空、空即是色! 全ては『空』に帰依する! そして、この長きに渡る地球とバグアの戦いすら、広大な宇宙の中では些細な小競り合いにもならんだろう! だがワシ等は此処で、存在し戦っている! 己が身を掛け、信念を掲げてな! キングスレー、お前自身はこの戦いに何を望む! 武勲を立て、幹部の仲間入りか? それともバグア繁栄の礎となり、名誉の戦死を遂げるか? 唯の戦士として戦えれば良い、などと冗談は止めてくれよ?!」
「この戦い、我々にとって不利になりつつあるが、結末はいずれにしても来る。戦争の終わりに、我々全員が崩れ落ちることはあるまい。我々には、これからも旅路が残っている」
 ソーニャの基本戦術はアリス、通常ブースト常時、高速移動、ロール起動で最小限の動きで回避、最短、最速で肉迫し火力を叩き込む。紫電が咆哮する。
 笑みと囁きが、歌う様にこぼれる。
「所詮、ボクらは時の流れからすればほんの微細な塵にしか過ぎない。それでも時はそんなボクたちから出来てる。君が時に刻む傷、ボクなら見つけられるよ。時の流れ、ボクたちは余りにもちっぽけ。夢は破れ理想は叶わない。知ってはいても命を賭けて見るのもわるくない。命の使い道なんてそれくらいなのかも。君は微かに時を動かす。目には見えない、感じない、でもボクだけは知っている。それに意味はある? 意味はあるさ。だってこんなにわくわくする。ねぇ知ってる。ボクの胸の中に確かに刻まれた君の傷があるんだよ。たとえ死んでも消えることなく、じくじくと切なく痛む傷。アマンダやマリアの傷もある。この痛みがボクの生きた証。ボクは君の胸に刻めただろうか? 君にボクを刻みたい。ボクが最初に言った言葉だね。ボクはきっと子供は生めない。だからかなぁ。こんな方法でしか命の証明が出来ない。ボクたちは求め続けてきた。ボクが一番君に似ている。それがバグアの性ならボクはバグアに似ている。命の性なら、ボクたちはちゃんと生きているんだね。だから分る。たとえ死んでもこの傷がボクたちを再会させる。愛おしい傷の痛みを抱いて今夜は眠ろう」
「この言葉は言ったかな。記憶には残る傭兵だと」
 キングスレーは受け止めつつ言った。
「人間の言葉、歌に見えるものがあるのだろう。それが思いの力と言うやつか」
 ルキアは、白金蜃気楼を使用して、そこにバルカンをバラまき、側面から攻撃する。
「原始に取りこんだ、ってバグアもヨリシロになる前の『ソンザイ』が確立してたってコトじゃない?」
 ミサイルを使い、加速することでキングスレーの攻撃はかわす。
「つまり、ヨリシロにされてるのは君達かなって。ま、自分の『種』が絶対的優位に立ってる錯覚に陥ってるのは、両方ともだケド。私達は芽吹き、花を付け、実となり枯れて行く――それが生き方。きみの母星に、花はあった? 知りたい、に理由なんて無くて、きっと好奇心トカ興味。セカイを知るタメなら、それを見るタメなら、何だってするさ。セカイはきみのタメにあるんだよ、私達一人一人のタメに」
「我々には確かに存在があるが‥‥。ま、俺は自分の母星を見たことが無い宇宙育ちだ。花はあっただろうがな。世界か‥‥人間と話していると複雑な感覚に陥るな」
 そこまで言って、キングスレーは後退する。
「逃がさん!」
 孫六はプロトディメントレーザーを放った。ティターンは爆発したが、態勢を立て直して離脱する。
 それから傭兵たちは、タロスとキメラを任せた軍の援護に向かい、バグア軍を撃退したのだった。