●リプレイ本文
出発前、ジョワユーズ艦内――。
姿を見せた須佐 武流(
ga1461)。
「よお、件の一部始終は聞かせてもらったぜ。えーと‥‥オペレーターのパープリ‥‥んじゃなくて美里さん? チョコはうまかったぞ。だが‥‥それだけじゃ足りないな。まぁ 無事で帰ってくるんで‥‥愛のあるもの、期待しておくぜ? 帰ってきたら‥‥よろしくな!」
「武流さん‥‥優しいんですね」
ほろり‥‥と吐息する美里。
「あ、そうだ! この間採用されてサンプルが送られてきた宇宙食とかどうですか? 宇宙用丼物・麺類セット、宇宙用カレーセット、おいしかったですよ!」
閑話休題――。
櫻小路・なでしこ(
ga3607)は、ジョワユーズのKV格納庫で仲間たちといた。
「ポセイドン近郊に位置する小型衛星の破壊ですわね。この依頼を成功させて、弾みをつけたいところですわね」
それから、一同を前に割り振りを確認する。
「編成ですが、各班の管制はピュアホワイトにお任せするとしまして‥‥艦直衛に管制のアーちゃん様、孫六様、クローカ様に須佐様? でよろしいでしょうか。それからわたくし、ですわね。アキラ隊長様はKV隊統括を、こちらにラスヴィエート×4とリヴァティー×4を以ってジョワユーズの護衛をお願い致します。ラスヴィエートとリヴァティーは艦の両舷側の護りをお願い致します」
「了解したぜなでしこのお嬢様」
アキラの言葉に、なでしこはにっこりと笑う。
「では、先行、衛星牽制としてヤフーリヴァ様、ソーニャ(
gb5824)様、風見様の管制、それからハヤテ×4になりますわね。先行してジョワユーズの露払いをお願いします。また衛星への牽制、好機に主砲破壊等を担当ですわね」
「概ねそんなところかね。振り分けは了解したぜ」
アキラは言って思案顔。
「本命を叩く味方のための露払いか。まあ、こんなところで躓く分けにはいかないから、絶対に成功させないとね」
と気合いを入れるのはアーク・ウイング(
gb4432)。可愛らしく拳をぐぐっと持ち上げて握りしめる。
「よおアーちゃん、気合入ってるな〜。勇敢な男の子だな。頼りにしてるぜ」
アキラががしがしと頭を撫でて言うと、アークは「きゃあ!」と声を上げた。
「アーちゃんは女の子なんだよ!」
「えー?」
アキラは慌てて謝ると、アークの髪を整えた。
「しかし無数のキメラを吐き出す衛星とは、厄介な存在だな! これ以上、要らんモノを地球の周りにばら撒かれたくないからな、大元を潰させて貰う! ワシは艦の直衛に就き、艦前方にて敵機の迎撃に当たろう! 敵を艦に近づけ無いように、最も接近している敵を最優先で叩いてゆくぞ! アキラ氏、また会ったな! キミには艦直衛で、軍KVの統括を御願いしたい!」
孫六 兼元(
gb5331)の言葉に頷くアキラ。
「ワシは飛行形態にて、ウィングエッジを主体に立ち回り、09式自動歩槍を牽制のメインとして使用! ちなみに、天は翼を持たん機体なので、サブアームの縁を加工してウィングエッジを装備しているところがポイントだ!」
「相変わらず斬り合いにこだわりのあるんだな‥‥」
「ガッハッハ! 09式を連射して接近し、擦違いざまにウィングエッジで斬り伏せてゆく戦い方だな!」
「ボク達は先行、衛星牽制だね。遥さん、ドゥさんよろしくね」
ソーニャは言って、アキラに向き直る。
「ねぇアキラさん。アキラさんもボクたちへんなの仲間だからね。よろしく。なんなら、美里ちゃんもいれとく? 美里ちゃんなに? 副長さんもいれる? いいよ。くるもの拒まず。去るもの許さずだね――」
「変なのって何だよ」
「えへへ☆ お仲間じゃない〜」
とソーニャは話題を変える。
「ブレナー博士、大きな犠牲を払い救出されるのは彼の本意とするところではないのだろうけど、100の犠牲を払い1を助ける事も戦略的に意味のある事と納得してもらうしかないね。それにボクは生きた博士に再会してお話をまた聞きたい。頭をなでてくれたらいいなぁ。とこで本部は、すぐに博士をヨリシロにしないって根拠があるってことかな?」
ソーニャが問うと、アキラは肩をすくめた。
「それを考えるのはオリム中将だ。オリム中将が何の確信も無く作戦を発令はしないだろう。中将を信じて頑張るだけだな」
「ほむ? そうだね。まぁいいや、まずはこの作戦がんばって成功させよう」
ドゥ・ヤフーリヴァ(
gc4751)は、愛機を見上げていた。タマモ――フック・フォクス・イーノクス。
「確かめる為――疑う。地上でのある戦いを潜り抜けた僕の腕と、この前の戦闘データの考察を‥‥こいつの下で再度手ごたえとして確かめる」
「‥‥今回もまた大軍勢が相手ですか。まあ、大軍で攻撃をしかけられている船を時間まで守れと言われるよりは気楽ですが」
言ったのは風見 遥(
gc6866)。
「私たちの目的はG兵器の発射を成功させること。私自身は先行、衛星牽制班の情報管制。可能であれば敵主砲の破壊ですね‥‥。ヤフーリヴァさん、随分力が入っていますね。タマモ‥‥ですか?」
「こいつはただのタマモじゃないんですよ遥君。僕の宇宙を駆ける分身。でも、まだ僕は魂を入れ切れていないんですね。こいつはまだ、イーノクスになり切れていないんです」
「イーノクス‥‥?」
「ヤフーリヴァさん、今日も燃えてるね」
ソーニャが言うと、遥はほくほくと笑った。
「ソーニャさん、電子支援は任せて下さいね。ヤフーリヴァさんも。衛星には危険が伴う接近ですが。マウル少佐も後ろに控えているようですし、少佐のためにも道を切り開いて差し上げないと」
「マウル少佐もストレスで倒れないと良いけどね☆」
ソーニャと遥は笑う。
ヤフーリヴァは、肩をすくめると、タマモを見上げる。
「覚悟はできてるか、おいイーノクス」
「海神ポセイドン、か。星の海と言うけれど、あんなのに支配される海なんてゴメンだ。取り巻きなんか手早く片付けて沈めに行きたいね。大体、僕は神様なんて嫌いなんだよ。今回は小細工無しの全力を出せば良いんだ、派手にいこう」
クローカ・ルイシコフ(
gc7747)は言って、ついでにソーニャへ少しちょっかいを出しにいく。こないだのお返し、深い意味は無い。
「ソーニャサン」
クローカは言って、ソーニャの前に立った。
「ん? 何?」
「体温検査」
クローカは、おもむろに手を差し出すと、ソーニャの頭を掴んで、自分のおでこを彼女の額に当てた。
「ふむ、体温は平熱だね。健康そのもの。任務に支障はないね」
「クローカさん‥‥ここでボクがどんな反応すると思った? 学園ドラマの見過ぎなんじゃないの」
「この間のお返しだよ。深い意味はないよ」
「なーんだ深い意味はないのかよ〜」
ソーニャの突っ込みに、クローカは「エヘヘ‥‥」と離れた。
閑話休題――。
艦内放送が響き渡る。
「間もなく当艦は目標の衛星に到達します。KV隊、出撃準備を整えて下さい」
「よーし出番だ! 行くぜ!」
「『天津白姫』ことクルーエルの初陣です。あなたの初陣、見事に果たしてみせましょう」
傭兵たちはKVに乗り込むと、星々のソラへ飛び出していく――。
「一匹二匹じゃめんどくせぇ! 四、五匹まとめて引導渡してやる!」
武流は飛び出すと、接近して来るキメラに向かってアサルトライフルを叩き込んだ。砕け散っていくキメラに「ひゃっほー!」と声を上げる。
「撃って撃って撃ちまくれ! こいつは敵だらけだ! 撃てば当たるぜ!」
アークは、複合ESM「ロータス・クイーン」を起動させると、管制を開始する。
「キメラ群ゆっくりとですが接近してきます。艦の前を遮るように展開してきます。武流さん、気を付けて下さいね」
「はっはあ! 任せとけアーちゃん!」
「各機、全面から包み込むようにキメラ群が来ます。各方面で迎撃、攻撃を開始して下さい。キメラは数で押してきますので、間断ない攻撃で弾幕を張り、近づけないで下さい」
周辺の警戒と味方の支援を行う。障害物の陰に潜んでいる敵、ジョワユーズに普通に接近する敵だけでなく、周辺の障害物を隠れ蓑にして接近する敵がいないか注意する。レーダーには無数の光点が浮かんでいる。アークは緊張で吐息した。
「とにかく、まずはキメラ群の撃破ですね。進路を切り開きましょう」
「了解アーちゃん。各機、ミサイル攻撃でまずはキメラ群の先陣を叩き潰すわよ! FOX2ミサイル発射!」
なでしこは言って、GP7ミサイルを発射する。450発のミサイルを全弾発射、キメラ群を粉砕する。
「ミサイル発射!」
各機、ミサイルでキメラ群を撃破する。
「ガッハッハ!」
孫六は、09式自動歩槍でキメラ群を破壊していく。
「ジョワユーズには近づけん! ぬう――!」
加速する孫六機は、すれ違いざまにウィングエッジで切り裂いていく。
「アーちゃん、管制よろしく頼むよ」
クローカは、母艦近傍前方寄りに位置し、飛行形態で随伴。前線より艦に接近するキメラを各個撃破していく。
「クローカさん、前方距離100、キメラ群10体来ます」
「了解――」
デブリ間を抜けながら直接索敵、やがて出現するキメラ群にミサイルポッドを叩き込む。
「武流君、兼元君、なでしこ君、キメラの戦闘能力はどの程度ですか。多分、これくらいなら、補給しながらいけそうだけど」
「クローカさん、確かにキメラの戦闘能力はさしたるものじゃないようだけど、衛星からは続々と吐き出されてる。油断はできないわね」
「そうだな。奴ら、無限の回復力を持っていやがる」
「ガッハッハ! まだ指揮官機がいることを考えると、まだまだこれからだな! ウム!」
「こっちは数の多さを生かして、密度の濃い索敵網を形成するべきですね」
クローカは言って、ガトリングで撃墜していく。
アーちゃんからの管制を受けつつ、死角からの襲撃を警戒し、側面等へ回られる前に仕留める。
「深追いは禁物っと‥‥艦から離れ過ぎない様注意しないとね」
キメラを撃破しつつデブリの間を飛び回り、艦周囲を柔軟に移動しつつ、多方面からの襲撃にも対応して動く。
クローカは濃密な弾幕を張り、キメラ群を寄せ付けない。
「ロータス・クイーン起動、データリンク開始。さて、なるべく力を温存して主砲を破壊できると良いのですが‥‥」
遥は言って、クリスマスピュアホワイトの複合ESM「ロータス・クイーン」を起動させる。
「ソーニャさん、ヤフーリヴァさん、ハヤテの皆さんよろしくお願いしますね」
遥は、コンソールに目を落としつつ、レーダーを操作する。
「さて‥‥敵キメラ群、前面に展開しています。総数30以上ですね‥‥各機、まずは各個撃破に専念して下さい。敵衛星主砲へのルートはこちらで計測します」
「よろしくお願いします遥さん」
「お願いします遥君」
ソーニャは前進すると、高分子レーザーガンでキメラ群を破壊していく。
ヤフーリヴァは人型に変形すると、加速していく。キメラのレーザーの射程手前から高分子レーザーガンを放つ。一撃離脱戦法でキメラの攻撃と距離を置き、撃破していく。また、友軍と連携できる位置取りを取り、巧みにキメラ群を各個に撃破していく。
「こちらヤフーリヴァ、キメラを破壊しつつ前進します」
自機を捕捉されないよう敵と正面から戦う仲間たちと外れた位置に潜伏、デブリを遮蔽や奇襲の足場等に利用しつつ、常時潜伏位置を変え友軍との十字放火や同時白兵攻撃を仕掛ける。
それからソーニャ達は、衛星に接近するまでに何度か補給を受けた。
「ジョワユーズ、間もなく射程距離に到達します」
――その時である。
「敵衛星表面に高エネルギー反応! 敵主砲、来ます!」
「構わん。このまま前進」
閃光が闇を貫いた。衛星の主砲がジョワユーズを直撃する。
「やってくれるね」
ソーニャは友軍各機と加速した。
「遥さん、行くよ――」
「了解しました。先手を取られましたが、ここからですね。誘導します」
「みんな行くよ! 二発目は撃たせない!」
ソーニャはハヤテたちと加速する。GP−02を使いデコイ兼用で攻撃。軍KVも多弾頭ミサイルを叩き込み対空砲を撹乱する。
「行けー!」
ソーニャは全弾叩き込んだ。
250発のプラズマミサイルは吸い込まれるように主砲へ向かった。直撃――。
衛星主砲は粉々に吹き飛ぶ。
「みなさん離脱して下さい。ジョワユーズが主砲を撃ちます」
遥は、ジョワユーズと連絡を取り、ソーニャ達に告げる。
モントロン中佐の声が回線に響く。
「良くやったソーニャ。後は任せろ! 全砲門開け! G光線ブラスター砲、G5弾頭全弾叩き込め!」
ジョワユーズから立て続けに撃ち込まれたブラスター砲とミサイルが、衛星を吹き飛ばす。バグアの衛星は、閃光とともに消失した。
――と、爆発の中から、ティターンとワームが脱出して来る。
「人間ども! いい加減やってくれるわ! このまま終われるか! その戦艦、撃沈してくれる!」
ヨリシロのゼウィン・ガルは突進して来る。
「あれが敵指揮官機ですか‥‥ヴィジョンアイの準備は出来ています、交戦する時は一言お願いします」
「遥さんそれじゃよろしくね。お待たせドゥさん、連携いきます」
ソーニャは残り練力を見ながら、加速する。
「一機だけ毛色の違うのが混ざってるって思ってるかい? よく見てごらんよ。もっとへんなのいっぱいいるよ。そう、君の後ろとかね。規格外品、それがボクたち傭兵だよ」
レーザーを撃ち込む。
ヤフーリヴァも後退して間合いを測りつつレーザーで牽制。
「あの人を墜とした実感でも確かめるか…(クス」
「こんな衛星のお守りをするしか能がないんだろうから、尻尾を巻いて逃げればいいのに」
アークが挑発すると、ガルは罵り声を上げて前進してくる。
傭兵たちはガルの前に展開してタロスを迎撃する。
孫六はティターンの前に立ち塞がる。人型に変形し、D.Re.Ss Aを使う。
「邪魔な拘束具を外して、少し本気を出そうか! D.Re.Ss A発動、第一装甲パージ!」
まず挨拶代わりに荷電粒子砲を一発お見舞い。
そのまま機剣で打ち合う。続いて、生命が初期の半分でD.Re.Ss Bを発動。
「真の姿を現せ都牟刈大刀! 第二装甲パージ、抜刀!!」
都牟刈大刀とは天叢雲剣の別名。
クローカも支援射撃を行い、遥とアーちゃんがヴィジョンアイを発動する。
「ぬう!」
孫六は、ティターンの片腕を切り飛ばした。
なでしこもツインブースト空戦スタビライザーにSESエンハンサーver.2で荷電粒子砲「レミエル」を叩き込む。
「おっと、俺らを無視して船を狙うつもりか? 悪いがそうはいかないんだよ。もう少し付き合えよ!」
武流はFETマニューバAを起動、ソードウィングとエナジーウィングでティターンを切り裂く。
「ぐおおおお‥‥!」
ティターンは、ヨリシロもろとも閃光とともに爆散した。
任務を成功させたジョワユーズは、そのままポセイドンの攻撃作戦に合流するのだった。