タイトル:【DR】勝利への追撃マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/05/07 23:17

●オープニング本文


「‥‥どうやら、我々は勝った」
 暗闇の中、メガコーポレーションの幹部たちはスクリーンに映し出されるラインホールドの残骸を見つめていた。
「我々にとって大きな勝利だ。バグアとの戦争は続く」
「噂によると、ブライトン博士はジョージ・バークレーに自害を命じたそうな。どうやら、バグアは生身でもナイトフォーゲルと戦えると言う」
 一人の男がそう言うと、一同の影が揺れる。彼らが反応したのはバグアの驚異的な能力より、ブライトン博士からのメッセージであった。
「ブライトン博士? 一体どこでそんな話を‥‥?」
 男は冷たい光を瞳に浮かべて続ける。
「あくまで噂だよ。それはともかく諸君、喜ぶべきことではないか、戦争は続くのだ。偉大なるバグアに感謝しなくては。彼らの英知なくして我らメガコーポレーションの繁栄はあり得なかった。これまでも、そしてこれからも、この戦争が続く限り‥‥そうであろう?」
 誰一人その男の言葉を非難する者はいなかった。代わりに別の幹部が口を開いた。
「いずれにしても、極東の資源を確保し、今後の戦争継続に弾みをつけたいものだ」
「軍にはシベリアの確保を要請しよう。バグアの残党を退け、シベリアを安定した人類の拠点としたいものだ」
「ふふ、この戦争‥‥簡単に終わってもらっては困る‥‥我々にとっても、バグアにとってもな」

 ヤクーツク、UPC司令部――。
 集まった傭兵達を前に、士官は攻撃の命令を下していた。
「傭兵諸君、ご苦労だった。ようやくこの長い戦いにも終結が見えてきた。バグアも最後の抵抗を行っているが、我々の勝利はほぼ間近だろう。だがこれからが本番でもある。極東を支配下に収めるには時間が必要だろう。それは今後の課題でもあるがな」
 士官は傭兵達を見渡して頷いた。
「この勝利を完全なものにするために、撤退するバグアに対して追撃を行う。油断は禁物だが、敵を徹底的に叩いておくことが肝要だ。諸君らにはアジア方面に撤退するバグアの追撃に向かってもらう。目標は後退する敵HWの一団だ‥‥」
 浮沈艦ラインホールドは落ちた。信じ難いバークレーの抵抗があるにせよ、人類は極東の戦いに勝利を収めつつある。
 だが傭兵たちに休息はない。UPCからは撤退するバグア軍への追撃が命じられたのであった。

●参加者一覧

アルヴァイム(ga5051
28歳・♂・ER
ソード(ga6675
20歳・♂・JG
天小路桜子(gb1928
15歳・♀・DG
ランディ・ランドルフ(gb2675
10歳・♂・HD
依神 隼瀬(gb2747
20歳・♀・HG
常世・阿頼耶(gb2835
17歳・♀・HD
ハイン・ヴィーグリーズ(gb3522
23歳・♂・SN
月村新一(gb3595
21歳・♂・FT
澄野・絣(gb3855
20歳・♀・JG
ナンナ・オンスロート(gb5838
21歳・♀・HD

●リプレイ本文

 極東ロシア戦線は人類の勝利に終わった‥‥。
 だが戦いはまだ続く。生き残った者たちには勝利の余韻に浸る時間も与えられなかった。
 アジア方面に撤退するバグア軍の追撃に、次々とヤクーツクからナイトフォーゲルが飛び立っていく。
 この彼らの姿もその中にあった。十機のナイトフォーゲル。
 空を駆ける音速の機体は、瞬く間に標的との距離を詰めていった。

 レーダーの光点に目を落とすアルヴァイム(ga5051)。
「各機、間もなく目標に到達します。気を引き締めて掛かりましょう」
「了解」
 傭兵達は機体を傾けると戦闘隊形を取って敵との遭遇に備える。
 敵影が視界に入ったかと思うと、すぐにその最後尾に到達する。
「オンスロート機、エンゲージ」
 ナンナ・オンスロート(gb5838)はミサイルの発射ボタンに手を置く。実戦はほとんど初めてだが、ナンナの顔には穏やかな笑みが浮かんでいる‥‥。
「ロビンでの初実戦。試運転‥‥にしては強敵だけど、全力で相手をするだけね」
「(手負いの相手ほど恐ろしい物はない‥‥油断せずに行こう)」
「照準合わせ‥‥、いつでも行けます」
「お金がないから翔幻で何とかするしかないとはいえ、フェイルノートとかロビンとかがうらやましいなあ。けど、地道にやるしかないか」
 ハイン・ヴィーグリーズ(gb3522)、月村新一(gb3595)、澄野・絣(gb3855)、ランディ・ランドルフ(gb2675)らはそれぞれの思いで敵機を見据える。
「ハインさん、皆さん、そろそろ行きます。準備はいいですか?」
 ソード(ga6675)の声が通信機から流れてきて、傭兵達はHWを射程に捕らえる。
「PRMの起動を確認。レギオンバスター発射します!」
 レギオンバスターとは、PRMシステムを起動し消費錬力を全て攻撃へと転換。圧倒的な弾数を誇るカプロイアミサイルを発射するソードの技である。
「ミサイル発射!」
「発射!」
 ナイトフォーゲルから無数のミサイル軍が発射され、HWの集団に襲い掛かる。
 当然ながらHWも回避行動を取るが――。
 直撃したミサイル群が凄まじい放電と爆発を巻き上げ、空中を鮮やかに彩る。
 HWの編隊は急上昇してナイトフォーゲルを振り切ろうとする。
 傭兵達はワームの尻尾に食らいついてミサイルを叩き込む。さらに直撃したミサイルが爆発炎上して火の玉となって炸裂する。
 と、そこでHWは二手に分かれた。大型HWと半数の護衛機、残りの中型と小型に分かれ、でたらめな加速力と機動力でナイトフォーゲルを引き離す。
「そうはいきませんよ」
 アルヴァイムは機体を傾ける。
「ソードさん、依神さん、ハインさん、予定通り大型の追撃に」
「了解‥‥!」
 ソード、依神隼瀬(gb2747)、ハインらもアルヴァイムに続いて、大型HWの集団を追尾する。
「ジャミングを開始します」
 天小路桜子(gb1928)はジャミング装置を起動させると、自身ももう一方の中型と小型の追撃に向かう。
 HWの機動も凄まじいが、傭兵達は何とか食らいついた。
 アルヴァイムは巧みに移動しながら大型を守る護衛機の小型HWにロケットランチャーを叩き込んだ。
「大型を狙います、依神さん、ハインさん、ブーストで一気に接近します」
「了解ソードさん、合図をよろしく」
 ソード、依神、ハインの三機は編隊を組んで上昇、アルヴァイムが敵の背後からD2ライフルを叩き込む間に高空から落下するように大型HWに襲い掛かった。
「今です、ブースト点火」
 三機のナイトフォーゲルが超音速で大型HWに肉薄。
「さてと、すみませんがやってみたいことがありまして。実験台になって下さいね」
 すれ違いざまに大量のミサイルを叩き込んでいくソードたち。
 ソードが放った数百発のカプロイアミサイルは連続して爆発して大型HWを傾かせる。依神が放ったドゥオーモミサイル、ハインのホーミングミサイルも全弾命中して大型HWの装甲を打ち砕いた。
 驚いたように護衛機は方向転換して三機のKVを追尾する。その背後からアルヴァイムがライフルを次々と叩き込む。
 と、大型HWが加速し、五門のプロトン砲が一斉に閃光を放った。護衛機のHWもプロトン砲を連発。
 傭兵達はローリングしながら半ば横に飛び跳ねるような機動で敵の砲火をかわす。

 常世・阿頼耶(gb2835)は正面から突っ込んでくる中型HWに向かって弾幕の嵐を叩きつける。
 プロトン砲を跳ねる様にかわした常世は上昇するHWを追って操縦桿を傾ける。
 敵は数では勝る。ドッグファイトに移行するとワームは雨あられとプロトン砲を打ち込んでくる。
「ドラグーンの自慢というか、翔幻の装甲やら搭載力強化型ないかな。あればほしいんだけど」
 ランディは幻霧発生装置を起動させながら呟いた。掠めるようにプロトン砲の閃光が空を走る。
 スラスターライフルを敵機に叩きつける天小路。逃げる敵が高機動じぐざぐ飛行でライフルをかわす。だが天小路は無理をせずに敵の追撃を断念すると、別方向から飛んでくるプロトン砲をかわした。
 敵の反撃は予想以上で、ランディ、常世、天小路、澄野、月村、ナンナたちは迎撃に追われる事になる。
「こちらを落とそうと言うの? そうはいかないわよ!」
 澄野はマイクロブーストで高速旋回して敵の背後につくとレーザーカノンを打ち込んでいく。逃げるワームはでたらめな加速力で澄野のロビンを振り切りにかかる。追う澄野に側面からHWが突進してくるが――。
 月村のイビルアイズが援護射撃、そのまま敵機の背後を取ると対戦車砲を打ち込む。
「(余り無駄弾を使えないが、今回はこの戦法が妥当か‥‥)」
 イビルアイズを操って敵の背後からガトリング砲を打ち込む月村。
「10秒後に幻霧を使用します」
 ナンナは翔幻の特殊能力を用意しながら仲間達に告げる。飛び交うプロトン砲が機体を掠めるも何とか態勢を立て直して幻霧を発動させる。

「逃がしはしませんよ」
 常世は目の前の中型HWに食らいつくとAAMミサイルを叩き込んだ。直撃を受けて爆発炎上するHW。
 さらに常世は逃げる中型をきりもみ旋回しながら追い、ミサイルを叩き込む。
「火力に性能に搭載力、経験に実力。ないないづくしだけど、バグア共には負けたくないんでね! 少々荒っぽくいく!」
 ランディは翔幻の機体を強引に傾けると、旋回してHWの側面から背後に回りこんでいく。だがこの動きは別の敵機からの砲撃に阻まれた。翔幻はプロトン砲の直撃を受けて激しく揺れた。それでもランディは敵機に接近するとガドリング砲を打ち込んだ。
「やはり激しい抵抗が‥‥」
 天小路はランディの機体を援護するようにレーザー砲を放つと、敵の背後から立て続けに襲い掛かった。旋回するHWを追うことはなく、天小路は援護射撃とジャミングに専念する。
 マイクロブースターで敵機に接近する澄野のロビン。高速旋回するHWを捕らえてレーザーバルカンを叩き込む。もの凄い勢いでレーザーがHWを打ち抜き、敵機のフィールドを貫通して爆発する。
「僚機の邪魔はさせないわよ」
 澄野は高速旋回しながらロビンをHWの死角にぴたりとつける。火を吹くロビンのレーザー砲。
 イビルアイズを操る月村もロックオンキャンセラーを起動させて味方の支援を行っている。少なからず敵には影響を与えている。激しいHWの砲撃は乱れてしばしばナイトフォーゲルをそれて空を切った。
 バルカンを敵機に叩き込んでいたナンナ。味方の支援を受けつつ主に援護射撃を行っていた。
 激しい空中戦に体内のアドレナリンが活性化して感情を揺さぶるが少なくとも面には出さない。
「散開します」
 ナンナは敵機と距離を保ちつつ翔幻の機体を傾ける。

「何ともしぶといことですが‥‥」
 D2ライフルを連射していたアルヴァイムは高機動で回避するHWに食らいついて弾丸を叩きつける。
 そして遂にアルヴァイムの銃撃に屈して小型HWが轟沈する。
 僚機に目をやれば、予想に反した大型HWの反撃を何とか振り切って攻撃に転じているが。
 大型HWも巨体に似合わぬ超スピードで旋回して五つのプロトン砲を傭兵達に打ち込んでくる。
「ここで強い反撃とはね‥‥甘く見ていたわけじゃないけどなあ」
 依神はマイクロブースターを回避につかいながらローリングで大型HWの懐に飛び込むとレーザー砲を叩き込んだ。追撃の小型HWを振り切って旋回する依神のロビン。
「実験は完了。成果はまずまずか‥‥あとはこの大型さえ落とせば‥‥」
 ソードはシュテルンの機体を傾ける。護衛機の反撃も猛烈で、ソードはそれらの対応にも追われる。だがソードのシュテルンは強力で、敵の攻勢を正面から跳ね返す。対空砲エニセイのトリガーを引いて敵HWに反撃を加えていく。
「鍛えに鍛えたこの機体、そう簡単には落ちないよ」
 ワームを猛追してエニセイを叩き込む。そして小型HWは爆発炎上して轟沈した。
 ソードとロッテを組んでいたハインは僚機の死角を庇いながらミサイルを撃ち込む。 HWは加速してミサイルを振り切って逃げる。
「残念ながら、反撃の機会は与えませんよ」
「ハインさん助かった」
「いえ、お見事です」
 バイパーを操りながら大型HWに目を向けるハイン。
「ですが敵大型もしぶといですね」
 と、そこで分かれていた一方の中型と小型HWが合流してくる。
「戦況はどうなっていて?」
「二機の小型HWを撃墜、大型はまだです」
 澄野の問いにアルヴァイムは冷静に答えた。
 傭兵達は戦列を立て直して乱れ飛ぶワームに突進する。
「大型だけでも何とかしたいところですね」
 天小路は味方の支援に回りながらウーフーを加速させる。
 ワームはまだ反撃してくる様子で、中型と小型が突撃してくる。
「今回は逃げないのか‥‥」
 アルヴァイムはディスタンの中で大型を見つめる。
「敵が後退する前に一気に仕留める、ソードさん、ハインさん、依神さんと我で大型を狙います」
「了解アルヴァイム、聞いてみんな? 他の機体は敵機を引き付けて大型への攻撃機会を作るのよ」
 澄野のロビンが僚機の編隊の先頭に立つ。
「了解‥‥!」
「戦術目標と戦略目標を考えれば大型を優先して落としたいからな! 多少のダメージは覚悟の上!」
 ランディ、常世、天小路、澄野、月村、ナンナたちはロッテを組んで敵を引きつける様に大型の周囲を掠め飛ぶ。
 敵ワームの編隊が乱れ、隙が生じたところへアルヴァイムとソード、ハイン、依神が突入した。
 大型HWは意外にも突進してくる、五つのプロトン砲を連射して突破を図る。四機のKVと大型は上昇して空中でアクロバティックな動きを見せる。
 接近したKVは猛烈な砲撃を浴びせる。至近距離からアルヴァイムはガトリング砲を叩き込み、ソードは対空砲を連射、依神のロビン機のレーザーが閃光を放ち、ハインのガトリングが火を吹いた。
 火の玉に包まれる大型HWの巨体が――傭兵達の視界の先で白熱の閃光となって大爆発、消滅する。
「やったか‥‥」
 月村は巨大な閃光を見つめて呟いた。
 束の間、傭兵達は消え行く大型HWの最後の閃光に目をやっていた。
「敵機、後退します」
 ナンナの声が通信機に流れる。
 傭兵達が目を向けると、残った中型と小型HWは編隊を組んで後退すると、逃げを打っていた。
「追撃しますか?」
「いや、やめておきましょう‥‥大型は落としました、一定の成果は上げましたし。これ以上は‥‥」
 常世はアルヴァイムの答えに「そうですね」と肩をすくめるのだった。
「残り錬力、弾薬も乏しく、ダメージも大きいが、ここで落とす1機が明日の勝利の引き金になるかもしれん。少なくとも私はそう信じる!!」
 ランディは追撃を主張したがみなから止められた。ランディ機も損傷している。
「これ以上は無理だな、俺の機体も限界だ‥‥」
 月村はそう言って吐息する。味方の支援を受けたとは言え、無傷ではない。
「ではみなさん、ヤクーツクへ帰りましょうか‥‥ひとまず、この戦いにも幕が下りたというところでしょう」
 天小路が機体を傾けると、一機、また一機と旋回してヤクーツクの方角へ向かっていく。
 大型HWと小型HW二機撃墜という戦果を持って、傭兵達はヤクーツクへの帰路へ着くのであった。