タイトル:【DD】夜明け前にマスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/02/06 22:08

●オープニング本文


 開始された――バグア包囲網破壊。
 南部より進軍するUPC軍は、確実に戦線を押し上げていく。
 デリーまで一気に距離は縮まっていくが、バグア側が黙っているはずはない。
 バグア軍デリー攻撃総司令官ナラシンハ(gz0434)は、マールデウから南進を指示。バグア側の大部隊移動が開始された。
 その巨城――果たしてそう言うべきか――を確認したのは、哨戒に出ていた骸龍だった。バグアの大部隊の後方に、巨大な「壁」が切り立っている。その巨大な壁は、微動だにせず荒野に鎮座していた。そして、その巨壁には、また巨砲が装備されていた。その正体は不明である。だが、これだけははっきりしている。それは紛れもなく一連の戦いの脅威となるであろうと。
 そしてまた、謎の巨城を後背に置き、バグア軍の先遣隊が南下、前進して来る。
 UPC軍としても現在の戦線を維持できなければデリー奪還は難しくなる。
 両軍の思惑が絡み合いながら、デリーを巡る第二幕が上がる。

 UPCデリー方面軍司令部――。
 ULT情報分析官のフローラ・ワイズマン(gz0213)は、激戦の幕が開いた「デリーの夜明け作戦」――Operation Delhi Dawnにおいて、司令部から最前線の傭兵たちを支援するためにここにいる。この戦いがアジアにおいて重要な局面となるであろうことをフローラも感じていた。大ダルダが椿中将のもとを訪れたことは公式発表でフローラも知っていた。東アジア軍はデリーに戦力を注力し、このアジアの巨人を倒すことを直近の最重要戦略と位置付けたのである。
「こちらサハーランブル攻撃部隊! イーグル応答願う!」
 フローラは回線をつないだ。
「こちらイーグル、どうぞ」
「都市のの北方でバグの先遣隊、ワームの集団を迎撃中、キングスレーのカスタムティターンに第四小隊が撃破された! 至急応援を寄こしてくれ!」
「アレン・キングスレー(gz0472)ですか?」
 その時だった、通信がジャミングで乱され、フローラのデスクのモニターにウインドウが開き、ブラウンヘアの男性の顔が映った。
「地球人か。お前は誰だ」
「バグアですか。あなたこそ誰です」
「私はアレン・キングスレー」
「何ですって?」
 フローラはすぐに画面をメインモニターの一角に映し出した。
「少佐! アレン・キングスレーです! 接触してきました!」
「何?」
 少佐と呼ばれた青年が、メインモニターに目を向けると、キングスレーは冷静な表情でいた。士官たちは一同にモニターに注目する。
「噂のバグア人か。ようやく生きているところを拝めたな。その体、どうやって手に入れた」
「初めての対面でもう少しざっくばらんにいかんのかね。傭兵たちの方が話せるな」
「ナラシンハの犬か。何を言いたい」
「何、ちょっと挨拶がしたくなったのだ。ここまでナラシンハを追い詰めたお前たちの努力を称えたい。俺の仕事が増えることになりそうだからな。ところでナラシンハは激昂しているが、奴を侮るなかれ。奴には秘策がある。マハラジャの妄想に取りつかれていても、奴は上級バグア。それなりの準備を進めている」
「随分と気前がいいな。ついでに、その秘策とやらを教えてもらえないかね。あの巨城が何なのか。ナラシンハは何をするつもりなのか」
 すると、キングスレーは小気味よい笑声を上げた。
「そこまでアドバンテージをやることも無いだろう。ヒントは出ているはずだ。それに‥‥私には他にも仕事があるのでね」
「何を企んでる貴様ら」
「差し当たり、お前たちの善戦に横やりを入れさせてもらうぞ。簡単に勝てるとは思っていないだろうUPC? 大ダルダと椿中将によろしくお伝えしてくれ。卿らに武運があらんことを祈っていると。では戦場で会おう――」
 そうして、キングスレーは通信を切った。
「‥‥‥‥」
 士官たちは苦虫を噛み潰したような顔。
 少佐は舌打ちした。
「気に入らん奴だ。何だあの余裕は」
「少佐、キングスレーのカスタムティターンがサハーランブルに接近しています。他タロス、ヘルメットワーム30機余」
 フローラの言葉に少佐はうなるように言った。
「援軍を手配してくれ。奴が出張って来るのは今に始まったことじゃないだろう。今回も押さえる」
「了解しました」
 フローラはすぐさま傭兵たちを手配する。
「こちらイーグル。待機中のデルタ、サハーランブルにワームが接近しています。至急これを迎撃して下さい。敵の指揮官は、アレン・キングスレーです」
 ――かくして、謎の巨城が出現するとともに、サハーランブルで激闘の幕が開く。

●参加者一覧

櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
金城 エンタ(ga4154
14歳・♂・FC
ゲシュペンスト(ga5579
27歳・♂・PN
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA
アーク・ウイング(gb4432
10歳・♀・ER
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751
18歳・♂・DF

●リプレイ本文

「デリー戦も佳境に入ってきましたが‥‥ナラシンハの秘策と言うのはアレなんですね」
 櫻小路・なでしこ(ga3607)はモニターに映るその城の影を見つめていた。
 傭兵たちの振り分けは、陸戦が孫六のシコン、堺のミカガミ、アークのシュテルン、金城のディアブロ。空戦がなでしこのアンジェリカ、ドゥのリンクス、ソーニャ(gb5824)のロビン、ゲシュペンスト(ga5579)のスレイヤーだった。
「正規軍の皆様にお願いしたいことですが‥‥陸戦に山名大樹KV大隊長以下、ミカガミ×8、雷電×8。空戦対応にシャロン副隊長以下、ディアブロ×8、シュテルン×8でお願いしたく思いますわ」
「了解した。シャロン、宜しく頼むぞ」
「空戦ですが、初手に先制で多弾なミサイルなどの長射程武装で一斉射撃。一斉射後、傭兵はそのまま先行で上位の精鋭のお相手をいたします。UPC軍空戦班は、シュテルン隊は初手のミサイルでの一斉射撃を、ディアブロ隊は間髪入れずにダメージの大きい敵の追撃を。シャロン副隊長はディアブロ隊の指揮をお願いしますわ」
「了解よなでしこ」
 僕は‥‥ある上官のため、早く『本物』にならなくてはならないんです!
 金城 エンタ(ga4154)は、口に出しては作戦をあくまでも献策という形で提示する。
「僕は、大隊長指揮の下、雷電8機と共に、カスタムタロス10機から順に撃破すべきだと思います。両軍対峙後、敵の突撃に対して一斉射撃を要請します。突撃の勢いを削いでもらうためですね。直後、側方から僕が突出し、横撃しますので」
「陸戦だな。よし、韋駄天の実力見せてもらおう」
「世界中どこへ行ってもやる事は大して変わらんな‥‥」
 亡霊騎士ゲシュペンスト。
「数の差はそれ程でもない‥‥となると決め手は腕と作戦かな」
 ゲシュペンストは言ってから、今回の敵部隊との交戦経験のある参加者から敵部隊の癖や攻略のヒントになりそうな事を聞いておく。
「実際どうなんだ? キングスレーとシュナイダーの戦い方と言うか‥‥」
 堺・清四郎(gb3564)は、思案顔で答えた。
「キングスレーは実際手強い。奴は弱点らしいものが無い。空でも陸でも万能に戦う奴だな」
「マリアも冷静だしね」
 ソーニャは言った。
「マリアのプラチナタロスも強敵だよ。簡単に挑発には乗らないし。こっちも勇戦するしかないかな‥‥」
 清四郎は、相変わらずの不敵な笑みを浮かべて口を開いた。
「キングスレーのことだ、何か深謀があると思うがそれを考えるのは上の仕事か‥‥」
 来たかキングスレー。横槍を入れてくるというならばそれに全力で答えるだけだ。ここが奴の死に場所とは思えんが、全力で首を取りに行かせてもらおう! アレン・キングスレー(gz0472)‥‥あのヨリシロと果たして決着はつくのか。
「ところで、ミカガミ部隊を借り受けたいのだが、いけるだろうか?」
「ああ、堺だな。ミカガミ部隊はお前さんに預けるとしよう」
 傭兵たちの妹、アーク・ウイング(gb4432)は、可愛らしく唸って呟く。
「ナラシンハに秘策ありか‥‥キングスレーがわざわざ通信で伝えてくるとはね。どんな狙いがあるのかな?」
 と呟きながら首を傾げている。
「まあ、考えるのは、キングスレーたちを追い払ってからだね。アーちゃんはいつもの通り、最終的にはキングスレー狙いで行かせてもらいますね」
 すると、孫六 兼元(gb5331)が「ガッハッハ!」と笑った。
「それにしても、荒野のド真ん中に、あんな馬鹿げた巨壁を築くとは‥‥。如何にも妄執に囚われたナラシンハらしい、まるで奴の心根を体現しとる様だ! だが、じきにワシ等が、その野望ごと粉砕してくれる! しかし、まずはキングスレーだ、奴を倒さねば先に進めん! ワシは陸戦を担当だが‥‥敵の一団が種子島の射程に納まると同時に、開幕一番でストライク・アク併用で掃射してくれる! これで敵の足を鈍らせ、あわよくば一網打尽なり分断なり出来れば御の字だ!」
 ソーニャはシュテルン乗りたちに声を掛けた。
「ボクは空戦だね。シュテルンのみんなにはボクに同調を依頼するよ。全機とは言わないから。4機程度で。一斉攻撃の後、ディアブロに追随する時に、ボクも打って出るよ。基本戦術は、エルシアンが初撃、囮になり陣形を崩し、後続のみんなでトドメ、と言う流れで」
 ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751)は、思案顔で、「さて‥‥」と口を開く。
「散歩した先にあったのは大きな大きなお城でしたとさ。一つ派手に門をけり破りに行くかい? トゥオマジア」
 それにしてもトゥオマジアとは‥‥。
「僕は、初手でのミサイル一斉掃射に自身もK02を使用した後、ミサイルポッドからリンクスのライフルで皆との十字放火、連携で止めをさせる敵を排除。それから、プラチナタロスと交戦中のソーニャさんへ救援に向かいますね。敵機の追撃を狙います。それに、一言、マリアにも言ってやりたいことがありますのでね」
 そうして、山名隊長は出立の号令を下した。
「ではみなよろしく頼むぞ――!」

「全機ミサイル発射」
「FOX2ミサイル発射――!」
 傭兵たちから、ミサイルが一斉に放たれる。
 なでしこ、ドゥ、ソーニャ、ゲシュペンスト達もミサイルを撃つ。
 カスタムタロスとHWからプロトン砲の応射が来る。
「プロトン砲、来るわよ!」
 なでしこは、操縦桿を傾けつつコンソールを見つめる。
 ミサイル群は次々と命中していく。爆炎と轟音が炸裂する。強化人間たちは罵り声をあがて、戦列を立て直す。
「傭兵どもが――! やる!」
「行くわよ! ラスホプ組に負けてらんない!」
 シャロンは、ディアブロを率いて第二撃を打ち込む。
「ダメージを受けたHWから落としていくわよ!」
「みな様! シャロン隊長に続いて!」
「ボク達も行くよ!」
 ソーニャのエルシアンが駆ける。シュテルンが彼女に同調する。
 エルシアンは凄絶な知覚攻撃、高分子レーザーでHWを撃ち落としていく。
「ソーニャがやる! Go!」
 シュテルンが加速し、敵機に追撃する。
 エルシアンの高機動力。アリス常時起動、Mブースター。
 なでしこは、ガトリングでカスタムタロスゴールドプラスの抑えに回る。巧みに距離を保ち、他の敵機と切りはなすように、防御を削っていく。
「シュテルン二機、お願いします!」
「了解なでしこ!」
 なでしこはタロスゴールドプラスと格闘戦に移行する。
 ドゥは、スナイパーライフルを果敢に撃ち込んでいく。カスタムタロスと格闘戦に移行。友軍と連携し、ワームを十字砲火に捕える。
「行くぞトゥオマジア! ファイア!」
 テールアンカー、リンクスナイプで、友軍ディアブロと組んでカスタムタロスを十字砲火に捕える。爆発四散するタロス。
「やるじゃないヤフーリヴァ!」
 シャロンは、言って旋回する。
「中々やるな。ドゥさん」
 ゲシュペンストは、言ってバレルロールで加速する。大火力重視のゲシュペンスト・フレスベルグ。その重厚な漆黒の機体が獰猛な牙を剥く。
「行くぞフレスベルグ‥‥デルタアタックフォーメーション!」
「了解ゲシュペンスト――デルタフォーメーション」
 ディアブロ達がフレスベルグの側面に付く。三機一体で攻撃を掛ける。
 フレスベルグは凄絶なライフルを叩き込む。プロトン砲を回避しつつ、カスタムタロスを撃墜していく。
 ドゥは初めて、マリア・シュナイダーとの回線を開いた。
「シュナイダー、一つ失礼するなら宇宙にでも帰って頂けませんか。正直僕は貴女を猫の散歩途中で挨拶した人程度しか思ってない。それとも戦いという酒しか最早楽しみが無いと?」
「ヤフーリヴァ、その言葉はそのまま返そう。絶望的な状況から、戦い続けてきたお前たちこそ、地球だけじゃなく宇宙でも我々と決着を付けようというのだからな」
「貴女は‥‥」
「あ、金色がいる。でも形がちょっと違うね。ゴールドプラスか。君のはカスタムタロスゴールドクイーンって登録されてたね。綺麗だった」
 ソーニャが言った。
「ねぇ知ってる。君たちはいつだってボクより強くて、いつもボクはおびえている。でも声がするんだ。今、踏み出さなければ永遠に行き着く事は出来ない。境界を踏み越え、太陽をつかむために腕を伸ばし、天を越えろ。永遠なんてない。いつかこの世界も滅びる。しかしボクたちはこの世界を信じ、幸せを求めている。さぁ恐れを抱いて戦おう。その先の世界におびえながら、夢を託し、求めずにはいられない。恐れを越え求めずにはいられない。ねぇマリア。人は世界に似てる」
「私もそれなりに長く生きてきた。地球に来る前に戦ったこともある。人間はヨリシロ候補に過ぎないが、私もお前たちから学んだことがある。エミタと思いの力がブライトン様を退けたのなら、お前たちはバグアの存在に重大な命題を投げかけた。そのことは無視出来ない」
「そう‥‥君もボクの中で――全機フルアタック!」
 エルシアンはアリス、Mブースター、通常ブースト起動突入。ロール回避でGP−7の弾幕とラージフレアで機体を消す。Mブースター、通常ブースト再連続起動。ラージフレアと通常ブーストの旋回、ロール機動を組み合わせた回避技ファントム。
 エルシアンのGP−7、G放電、レーザー、そしてシュテルン全機RPMオフェンスでフルアタック。
 爆炎に包まれるプラチナタロス。機体の向きを変えつつ、エルシアンを追う。
 ゲシュペンストは突進した。一撃必殺の接近戦。宙空変形スタビライザー起動。白い力場に包まれるフレスベルグ。
「伊達や酔狂でこんな装備で空戦に出てきた訳じゃないぞ!! 喰い付け! そして噛み砕け!! 究極ゥゥッ! ゲェェシュペンストォッ! キィィィィック!!!!」
 フレスベルグの連撃がプラチナタロスを貫通する。
「ちい‥‥!」
 マリアは態勢を立て直すと、後退した――。

 エンタは、敵の突撃に対して一斉射撃を要請する。
「私が突出して横撃をぶつけますので、宜しくお願いします」
「了解したエンタ――無理はするなよ」
「承知いたしました隊長」
「行くぞみなの衆! 種子島で敵を撃ち抜く! 巻き込まれるなよ!」
 孫六は言って、シコンの固定兵装、高出力レーザー「種子島」を放った。直線200メートルをレーザーが貫通すると、敵集団が割れる。
「撃て!」
 山名隊長は一斉射撃を命じると、友軍各機は銃撃を開始。
 エンタはブーストで加速すると、敵集団の側面から横撃する。
 速度を乗せたまま、端の敵機にハイディフェンダーで横薙ぎフルスイング。
「武器を絞ってまで得た疾さです! ‥‥負けませんっ!!」
 凄絶な韋駄天の一撃が、カスタムタロスを切り裂いた。
 友軍雷電が牽制する間に、エンタはタロスを一撃ごとに粉砕していく。
「孫六さん!」
「ウム!」
 孫六も吶喊すると、咆哮した。
「遠くの者は音に聞け! 近くば寄って目にも見よ! ワシが銀の鬼、孫六 兼元だ!!」
 機剣主体でカスタムタロスを斬り伏せて行く。一撃、二撃と撃ち合い、後退するタロスに無理に追従せず視線だけを向け、メガレーザーアイで焼き払う。
 アークは乱戦に突入する中、キングスレーを探す。
 長射程のスナイパーライフルD−02で狙撃する。リロードしつつ、戦場を視認する。
「キングスレーはどこにいるのかな‥‥」
 友軍雷電と集中砲火で一機ずつ確実に撃破していく。
 清四郎はミカガミ部隊とともに魚鱗の陣形を組んでバグア軍に突撃を仕掛ける。自身は先頭に立って一番に殴り込む。
「俺たちは矛先だ、奴らの中央を一気にぶち抜くぞ」
 射撃は牽制程度にとどめて一気に接近し、刀を叩き込み、敵に組織的行動を取らせないようにする。
「死にたくなきゃ止まるな! ビビッたほうが負けだ! 行くぞ!」
 カスタムタロスゴールドプラスに攻撃する。
「各チーム! 孤立するなよ! 連携して当たれ!」
 清四郎は言いつつ、ゴールドプラスと打ち合う。
「これから!」
 各隊と連絡を取り合って連携し、突破した後の背後や横を固めてもらい孤立をしないようにする。
 エンタは、確実に敵機を沈めて行くが、ゴールドプラスと激突し激しく打ち合う。
「やりますね‥‥私の韋駄天にこれほどの打撃を‥‥でも負けませんよ!」
 エンタはハイディフェンダーの破壊的な一撃を叩き込む。ゴールドプラスの強化人間は弾き返して、罵り声を上げた。
 そこで、キングスレーが前線に加速して来る。雷電の一機を機刀で叩き潰した。
「奴が来たぞ! 陣形を変形するぞ!」
 陣形を魚鱗から鶴翼の陣形に変更して自分を囮としてキングスレーの注意を引き、ほかのミカガミに雪村で攻撃させる。
「鶴翼の陣形! ここで決めるぞ!」
 キングスレーは鶴翼の中心にいる清四郎に突進する。
 清四郎は今まで戦いで本命にしていた雪村で注意を引き付け、その機刀で間接部分を狙う。
「キングスレー! そろそろ因縁にケリをつけるぞ! いい加減慣れたわ!」
「さすがは堺。成長するな」
 キングスレーはレーザーブレードで雪村を弾き返す。
「僕たちが必要を感じてする行動は‥‥多分、敵もすると思うんです。だからーーー」
 エンタは山名隊長と連絡を取る。
「キングスレーには、近接機体が対峙。索敵などは近い敵の動きを知り易い状態に切り替える筈。主戦場を大きく迂回すれば、伏兵も可能かも‥‥ですから、予想退路への伏兵を仕掛けてはどうでしょうか」
「ふむ‥‥やってみるか?」
 山名隊長は数機を迂回させて伏兵に置く。
 アークはキングスレー機を射程に捉え、回線を開く。
「キングスレー、デリーをめぐる戦いも大詰めを迎えつつあるけど、最後までナラシンハの元で戦うつもり?」
「アーク・ウイング、それは見届けて行くがいい」
「ふーん」
 アークはガトリングを叩き込むと、一気に接近して、練剣「白雪」で破損個所を突く。キングスレーのプロトン砲を受けるが、機体ダメージと練力が許す限り、突き続ける。
「アーちゃん氏! 余り無理は禁物だぞ!」
 孫六は突進する。
「キングスレー! ナラシンハの切り札は、あのデカイ壁か?! 奴はあの壁の向こうに居るんだな?! 幾らナラシンハが上級バグアと言え、あの狂気に囚われた老人は、バグア側ではどれ程の価値が有るのだ? 地球にもバグアにも、害悪にしかならんだろう? 地球人類が、ナラシンハの首へ王手を掛けた今、お前も次の身の振り方でも考えた方が良かろう! まぁその前に、ワシ等がお前を倒して見せるがな!」
 一撃、二撃と弾いて、キングスレーは距離を保った。
「孫六、いよいよ大詰めだ。あの壁を止めることが出来るかな?」
 そこまで言って、キングスレーは戦況を確認して撤退する。
「そうはいきませんよ!」
 エンタは仲間たちと加速する。
 伏兵に敷いていた友軍が身を起こし、銃撃を開始する。
 追撃に加速する傭兵たち。だが、キングスレーたちはすぐさま空に舞い上がると、飛行して逃走したのだった。