タイトル:ハトラスを巡る遭遇戦マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/01/23 20:57

●オープニング本文


 ナラシンハ(gz0434)は、室内を思案顔で歩き回っていた。その様子を見つめるヨリシロ二人――アレン・キングスレーとマリア・シュナイダーである。
 と、ナラシンハ足を止めた。
「奴らは、デリーへ来る」
「というと、人間たちのことかな」
 キングスレーの言葉に、ナラシンハは苛立たしげに睨みつけて口を開いた。
「貴様、楽しんでいるな」
「他人の不幸は面白く見えるものだろう。まして、お前がインドから駆逐されようとしているのは」
 キングスレーが言うと、マリアはくすくすと笑った。
 だが、ナラシンハは笑みを浮かべた。
「くく……ここまでせいぜい遊んでやったが、どうやら人間どもにマハラジャの威光を見せつける時が来たようだな」
「まだそんなことを言ってるのか」
「この肉体『ナラシンハ』の完全無欠の勝利によって、インドの趨勢は一撃で変わる。このインドにナラシンハが生きていることを、臣民に、そして愛すべきランジットに知らしめ、わしは生きながら神となる」
 キングスレーとマリアは、一体何のために呼びつけたのかと聞きたくなったが、その先を制してナラシンハはぎらぎらした瞳を向けた。
「UPCは各方面から集結しつつある。デリーの防衛線を一気に突破する気だろう。お前達はハトラスへ行け。UPCを牽制するのだ。派手に逃げて戻って来い。奴らが脇目も振らずにデリーへ突進して来るように餌をまいて来るのだ」
「そんな子供だましの手に掛かるとは思えんがな」
「そこはお前次第だキングスレー。策士の腕を見せてみろ」
「‥‥‥‥」
 キングスレーは、内心では純粋に威力偵察を行うべきだろうと確信していたが、口に出しては「了解した」と答えた。
 そうして、キングスレーとマリアは退室した。
「私、巻き添えは御免よ」
「せいぜい負けない戦を行うべきだろう。何だ、急に命が惜しくなったか」
「強制されたわけじゃないのに、死ぬことはないでしょう」
「ゲバウ様次第だな。ただ、宇宙へ戻ること叶わぬなら、この時代を見届けるのも一興かもな」
「バグアが負けるっていうの?」
「さてな‥‥人類との共存という選択肢も出て来るのかも知れん。それがバグアの理にかなうなら」
「それは無いと思うけど」
「差し当たり、ハトラスで威力偵察だ。無駄な戦いはせん――」

 ハトラス方面UPC軍司令部――。
 ULT情報分析官のフローラ・ワイズマン(gz0213)は、デスクトップのモニターに映るワームの姿を確認する。
「アレン・キングスレーのカスタムティターンですね。それからマリア・シュナイダーのプラチナタロス。ハトラスからタロスとともに前進後退を繰り返しています」
「メインモニターに出してくれ」
 司令官はフローラに言った。フローラは端末を叩いてメインモニターにマップを出す。
 キングスレーたちは編隊を組んで防衛線の手前を飛行しており、その数は増えつつあった。
「キングスレーか‥‥こちらの動きを探りに来たか」
「増援を呼びますか」
 副官の問いに、司令官は思案顔。ここで戦闘を始めて敵をおびき寄せるのはどうか、と思案する。
 そうする間にも、タロスの数は増えて行く。司令官は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「フローラ」
「はい」
「傭兵たちに出撃の命令だ。キングスレーの思惑がどうであれ、奴を先に叩く。ハトラスを攻撃する」
「了解しました」
 フローラは傭兵たちとのテレビ電話を開くと、ヘッドセットから状況を伝える。
「こちらイーグル。デルタチームのみなさん、ハトラスへの攻撃命令が下りました。端末に情報を送ります」
 傭兵たちは、意外そうな顔だった。
「何だフローラ、ここは待機じゃないのか」
「キングスレーは威力偵察に来るようですね。こちらから先に仕掛けて脅威を取り除きます」
「奴は馬鹿じゃないからな。デリーの敵軍にまだ動きが無いんだ。びっくりの罠じゃないことを祈るぜ」
「少なくともハトラス単独の動きです。キングスレーの自発的な行動なのか、ナラシンハが命じたのかは不明ですが、威力偵察と見るべきでしょう」
「分かった。じゃ、支援をよろしく――」
 かくして、UPCはいよいよ本格的な攻勢に転じようとしていた。そんな中で、ハトラスを巡るドラマが始まる。

●参加者一覧

櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
ソード(ga6675
20歳・♂・JG
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA
アーク・ウイング(gb4432
10歳・♀・ER
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
功刀 元(gc2818
17歳・♂・HD
ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751
18歳・♂・DF

●リプレイ本文

 ふわりと、空気が和んだ。櫻小路・なでしこ(ga3607)。普段からおっとりマイペースな「お嬢様」です。良くも悪くも場を和ませてしまうムードメーカーである。
「今回の目的はハトラスのキングスレー達バグア軍の撃退ですね。それでは、基本戦術としましては、空と陸に分かれキングスレー達バグア軍と対峙します。空戦、陸戦共に各個撃破による確実な撃破をすると。敵の動きに注意し、友軍と連携を取って真意を見極めます。突出、深追いをしない様に注意をして交戦いたしましょう」
 なでしこの独特の穏やかな口調が、場の空気を和ませてしまう。
「なでしこさん、俺達もいよいよここまで来たな。デリー解放作戦が後に続くことになるみたいだ」
 ソード(ga6675)は真面目な口調で言った。
「ようやくだな」
 言って、ソードの肩を叩いたのは堺・清四郎(gb3564)。顔の傷は勲章か、目つきは鋭く、近寄りがたい風貌の持ち主だが、子供や動物好きと言う一面を持つ優しい男だ。彼の趣味が料理と言うのを知る友人たちから時々ジョークのネタにされる。
「インドでの戦いも大詰めだな。キングスレーとの戦いもいったい何回目だろうか? 奇妙なものだ、馬鹿な軍の将官よりもよほど奴の方に好意と尊敬を抱くほどになるとはな。決戦はおそらくデリーだが、ここで前哨戦と行くか」
 アレン・キングスレー(gz0472)――あのヨリシロと決着をつけるのは、このデリーか‥‥あるいは‥‥清四郎はこの時まだキングスレーの思惑を知らない。
「マロリー大隊長、例の如しかな、俺にミカガミ部隊とともに行動をできるように提案をしたい」
「ああ、あんた堺だね。いいよ。ミカガミは持って行きな。頼りにしてる」
「デリーをめぐる戦いもいよいよ大詰めになってきたね。だから、こんな所でキングスレー達にいいようにやられる分けにはいかないからね。がんばるぞ」
 と気合を入れているのはアーク・ウイング(gb4432)。傭兵たちの妹。通称アーちゃん。可愛らしい実年齢以上に幼く見えるが、意外にしっかり者である。
「アーちゃんは陸戦を担当するよ。もち、キングスレー狙いだけど、マリアがいればそっちだね」
 アークとは戦場でしばしばパートナーを組む孫六 兼元(gb5331)は、豪快に笑った。この男、豪快な性格をしており、いわゆる武士であり、切り合いを身上とする小細工をしない傭兵だった。
「ガッハッハ! あいつ、最近もちょっと調子に乗っておるからな! ここらで、あのカスタムティターンくらいは落としたいところだな!」
「威力偵察らしいけど‥‥本当かなあ。キングスレーに決め打ちは危険な気もするんですよね」
「ウム! その辺りは、現場に出てから確認すればいいだろう! ワイズマン氏もサポートしてくれるだろうからな!」
 言って、孫六は腕組みする。
「しかし宇宙から戻ってみれば、キングスレーが攻めて来たか! 奴と刃を交えるのも久しいな! 腕が鳴る!! 威力偵察の可能性と言う事は、向こうからやって来てくれると言う事か。ならば此方は、突出せず迎撃を重視した陣を張るのが上策か! それでは、ワシは陸戦で迎え撃とう! 勿論、最大の狙いはキングスレーの首だ! ガッハッハ!」
 子供のような外見の女性、ソーニャ(gb5824)。幼い時の記憶がない。気づいた時には能力者の研究施設にいた。成長している様子なし。これで大人だそうだ。
「アレンが出てきた。防衛戦ばかりだったからストレス溜まってるのかも‥‥」
 ソーニャは言って、思案顔。
「占領や防衛なら空陸の二面になるけど、今回の場合、素直に二面で受けるかなぁ。ボクなら片方に集中させるかな。移動を考えると当然空だけど。陸戦をみるなら一戦後、ハトラスの敷地に誘ってもいい。ワームは空陸自在だからね。今回は作戦の自由度が大きいからアレンがどう出るか楽しみだよ。ボクの予想なんて当たるとは思えないから黙っているけど、一応、備えだけはしておこう。鎖をとかれたアレン。見てみたいんだけどね」
 すると、インド初参戦の功刀 元(gc2818)が口を開いた。
「アレン・キングスレーと言えば、アジアの上級バグアですよね? 報告書でしか読んだことはないんですけど‥‥」
 元のスローテンポな口調は、外見を裏切る。一見のんびり屋に見えるが、意外にこの少年は肝が据わっているのだ。
「うん」
「鎖を解かれたアレン君ですが、多分ナラシンハ君のもとに収まっているようなバグアじゃないと思うんですよ。これまでにも、ナラシンハ君に言及している時がありますが、キングスレー君はアジア全域で破壊活動を行っているようですしね」
「そうだね元さん。ボクも思うんだけど‥‥アレンは死ぬつもりじゃないかもしれない。どうする気か分からないけど」
「死ぬつもりじゃ無ければ、宇宙へ上がるとか‥‥?」
「え? それは‥‥考えたこと無かったね」
「新年早々寄り道で奇襲迎撃した後、日本に戻ったら今度はナラシンハの部隊? お前達と戦うと退屈しないよ!」
 珍しく感情を高ぶらせて言ったのはドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751)だが。
「と、アレン・キングスレーですかね‥‥それにしても――」
 ドゥは言って、キングスレーに思いを致す。
「あのバグア人は確かに読み切れませんね。長いこと戦っているソーニャ君でも読み切れないのに、僕の予想なんて当たるはず無いですけど。元君が言うように、宇宙って言うのはありかも知れませんね。バグア軍はどうも、噂によると、次々と地球を離脱しているようですしね」
 それは確かに噂に過ぎないが、エアマーニェが登場して以来、バグア軍の動きは慌ただしい。
「宇宙で大がかりな作戦も始まっていますし、月面基地を作ろうって話も出ていますし、戦場が嫌が上でも宇宙へ移動しつつありますし、キングスレーが宇宙を見ていることはあり得ますよね」
「そうなると厄介ではありますよねー。キングスレー君みたいな上級バグアと宇宙でやり合うのはぞっとしませんよ」
 元は苦笑した。宇宙はまだネームドバグアがほとんどいない。キングスレークラスのバグア人は恐らく本星などにいるのだろうと推測される。カンパネラが宇宙に上がって数カ月、バグア人が動きを見せてもおかしくはない。
 そこで、マロリー隊長が言った。
「真面目な話はそれくらいにして、そろそろ発進準備が整ったみたい。レッツひと暴れといきましょう」
 傭兵たちは迎撃に出立する。彼等は生来楽天家であることが多い。困難な状況を、千人に一人の仲間たちとの共闘で生き抜いてきたのだ。それは、失われることのない、彼らの強さだった――。

「兵装1、3、4、5発射準備完了。PRM『アインス』Aモード起動。マルチロックオン開始、ブースト作動――ロックオン、全て完了! 『レギオンバスター』、――――発射ッ!!」
 必殺技『レギオンバスター』――ブースターとPRMを起動。錬力100全てを状況に合わせた能力に使用しミサイル2100発を発射するソードが搭乗するフレイアの空戦必殺技である。
「FOX2ミサイル発射ですわ!」
「ミサイル発射」
「行くぞ、バグア――」
 なでしこ、ドゥ、ソーニャはミサイルポッドを叩き込み、軍傭兵各機もミサイルを撃ち込む。
 対するタロスからはプロトン砲の応射。
 傭兵たちは受け止めるが、激しい衝撃にKVが揺れる。
 タロスの集団は直撃を受けて爆炎に包まれる。
 ソーニャのエルシアンは加速した。アリス常時起動。Mブースター、通常ブースター併用起動多用の高機動戦闘。バレルロール、スリップで敵をかわし突入攻撃。GP−02を撃ち込みレーザーで撃破、離脱する。カスタムタロスプラスが爆散する。
「マリア・シュナイダー、今日も俺は来たぜ。あんたのいる空に思い焦がれてな」
 ソードの挑発に、マリアは笑声を上げる。
「そんな安っぽい台詞に私が踊らされると思うのかソード」
「無論、思っちゃいないがね、俺はしぶといよ」
 ソードは言いつつ、タロストリプルプラスを破壊する。
 ドゥは敵武装射程外にいったん移動すると、友軍とのクロスファイアが可能な位置取りを行う。
「よし、手近な三機でカスタムタロスを包囲、殲滅します」
 マシンガンを叩き込み、スナイパーライフルLPM−1とプラズマリボルバーを叩き込む。どちらとも言えない手応えだが、ドゥは物理攻撃を指示。 
「これでも食らえ」
「さよならバグアさん!」
 カスタムタロスを十字砲火に捕え、撃墜する。爆発四散するCタロス。
「オーケーです、では僕は一時下がります。各自、ロッテを組みつつ、各個撃破に専念して下さい」
「了解ヤフーリヴァ」
 なでしこは初撃のミサイル攻撃以降は、各種カスタムタロスへの攻撃に切り替えていた。
「GP−7、発射いたしますわ」
 標的をロックし、ミサイルを撃ち込み、離脱する。直撃がCタロスを吹き飛ばす。
「アレンは最近、上がってこないね。マリアも好きだからいいけど。マリアはボクをどう思う? KVから引きずり出してズタズタにしたいとでも思ってくれると嬉しいけどね。せっかくだから何かに執着するのもいいと思うよ。君たちも結構しがらみがあって勝手できないみたいだし。今に生きるのもいいよ」
「確かに、ずたずたにしてやりたくなるわね、その台詞を聞くと」
 プラチナタロスが加速して来る。
「待っていたぜ空の思い人」
「言ってなさい人間」
 ソードはブーストを使用し続け高機動戦闘。
「後ろお願いねドゥさん――」
 ソーニャは加速すると、GP7を叩き込む。
 アクロバットに回避するプラチナタロスは数百のミサイルで応戦。
「各機、二機一組みで確実に狙え」
 ドゥは敵の射程に注意を払いつつ指示を出す。
「行きますわよ‥‥シュナイダー!」
 なでしこはスタビライザーとエンハンサーで強化し、M−12強化型帯電粒子加速砲を叩き込む。爆発炎上する華麗なるプラチナタロス。
「行くぜマリア!」
 ソードはPRMを100使い火力を上げたエニセイで八連射。
「ちい‥‥!」
 マリアはかわし切れずに傾く機体を立て直すと、フレイア目がけてプロトン砲を連射した。
 閃光が捉え、凄絶に破壊されるフレイア。
「さすが‥‥! だがまだだ!」
「傭兵ども――!」
 マリアは戦闘の高揚感に包まれ、笑っていた。

「それじゃー始めましょうかー!」
 元は接近するタロスの集団を確認すると、機体の手を上げた。随行の雷電六機が応える。
「では行きますよ!」
 元の合図で各機横に散開してる敵を中央に寄せるように牽制射撃を行う。
 清四郎、アーク、孫六が前進する。
「行くぞ!」
 清四郎はミカガミ部隊と共に鶴翼の陣形を取って的に射撃を加える。
「マロリー隊長僚機を頼む、ミカガミ乗りの腕前を見せてくれ」
「了解清四郎!」
「全機攻撃開始! ファイア!」
 凄絶なアハトが撃ちこまれる。吹っ飛ぶCタロス。
「近接が得意だが‥‥射撃が苦手というわけでないぞ?」
「アーちゃんのターン! 攻撃! 何てね!」
 アークは加速すると、タロスプラスにD2ライフルを叩き込む。接近するにつれガトリングに切り替える。
 タロスのプロトン砲を受け止めつつ、傭兵たちは前進する。
「キングスレー、何やらワシ等を偵察に来た様子だな! ならワシ等の戦いをその身に刻み、報告するが良い!」
「孫六兼元か。またしても俺の邪魔をする気か」
「ガッハッハ! それはワシの台詞だ! 行くぞ! 筒を放つ! 巻き込まれるなよ!」
 孫六は、射撃体勢を整えると、シコンの高出力レーザー種子島を叩き込んだ。200メートルの直線をレーザーが貫通する。爆発炎上するカスタムタロスの集団。
「行くぞ! 突撃!」
「怯むな! 傭兵どもを薙ぎ倒す!」
 キングスレーは珍しく感情を声に出した。
「雷電各機、援護射撃を宜しくお願いしますよー!」
 元は言いつつ友軍と銃撃を開始する。D2ライフルでDFスナイピングシュート使用で叩き込む。ガンスリンガーの精密射撃。
 清四郎、孫六らが格闘戦に移行していく中、前線を突破して来るタロスには元が囮となり、友軍雷電に止めを差せる。DFバレットファストにTFハイサイトでダブルリボルバーによる高速精密射撃を行う。そこへ雷電が集中砲火――。
「各機、抜けて来る相手には各個撃破でお願いしますよー!」
 ――と、キングスレーのカスタムティターンが前進してくる。
 アークは加速突進すると至近距離まで一気に接近し、PRMシステム・改で知覚を最大強化し練剣「白雪」で突く。
「お前の相手はアーちゃんだよ。白雪の一撃を受けてみろ――これでも食らえ!」
一撃後、練剣「白雪」で突き続ける。
「さすがはアーク・ウイング、その勇気には驚かされる」
 キングスレーはレーザーブレードでシュテルンの腕を切り飛ばした。更に至近距離からプロトン砲を叩き込む。
「く‥‥!」
 アークはブーストで後退してガトリングを撃ち込む。
「キングスレー! 我が宿敵よ!」
 孫六は打ち掛かった。古流の野太刀術をKV用にアレンジした「KV抜刀術」――。
 八双――右肩に剣を水平に担ぎ、左半身になり腰を落とした構え。右足で踏み込み、袈裟斬りの重い一撃を与える攻撃重視の構え。斬り下ろした状態から、右車や左車へ移行。
 右車――左半身になり腰を落とし、剣を腰に下ろし、切先を後方に向け水平に構える。右足で踏み込みながら右から左へ、若しくは下から上へ伸びの有る広範囲の太刀筋となる。右から左の斬りから左車、下から上への斬りから八双へ移行。
 左車――右半身になり腰を落とし、刀身を左前腕部で支える様にして腰に抱える様に構える。抜刀状態で、居合いの抜打ちの様な事が出来る構え。八双や右車へ移行。
 KV抜刀術の連撃を叩き込みながら、踏み込んでいく。キングスレーは弾き返しつつ下がって行く。
「せいやあ――!」
 孫六は裂帛の気合とともに前進した。直後、キングスレーは加速してすり抜けざまに布都斯魂剣の片腕を切り飛ばした。
「ぬう――!」
 続いて向き合うは清四郎。
「やはり斬り合いこそがミカガミの真価よ!」
 清四郎はスラスターとアハトで牽制射撃しつつ、ブーストで加速して機刀と雪村で斬りかかる。
 アークが支援銃撃を行い、孫六は側面から打ち込んだ。
「キングスレー! いい加減腐れ縁だがデリーはもうすぐだ! 骨を遺書は書き終えたか!?」
「堺清四郎、それはどうかな」
 キングスレーは孫六と清四郎の攻撃を捌きつつ後退する。雪村の閃光がティターンを貫通する。
 しかし、キングスレーは至近距離からプロトン砲で雪村ごと剣虎の一部を破壊した。
「‥‥これくらいでいいだろう。ナラシンハには十分すぎる」
 キングスレーは言って、部下達に後退を命じる。バグア軍が潮が引くように撤退する。
 ドゥは後退するワームを見送りつつ、呟く。
「あのエースの2人‥‥何を考えている? そしてナラシンハの思惑は‥‥? まだまだここでの決戦は続きそうだ‥‥」