●リプレイ本文
「さあて、いっちょ行きますか!」
漸 王零(
ga2930)は言うと、にかっと笑った。
「シャロン、軍KVについてだが、シュテルンズを地上侵攻に回してもらいたい」
「地上にはアースクエイクがいるけど」
「ああ。編成はA、B、Cに分かれてもらう。A班は大隊長気含む5機、アースクエイク対応だ。B班の3機は我と同行。C班の3機は孫六と同行してもらう」
「シュテルンズの件はそういうことね。了解したわ」
「それから装備なんだが。各編成で最低一機は地殻変化計測器を搭載して欲しい。B、Cの武装はレーザーガトリング砲とH−112グレネードランチャー×2とグリントランスで。それからAは対アースクエイクで、シュテルンの垂直離着陸を利用し、対象の出現と共に飛び立ち釣り上げる様にして地上におびき出し、開いている口にグレネ―ドなどの火器を用い内部から破壊する案を提示する。B、Cは僚機傭兵と連携し、レーザーガトリング砲による牽制、阻害攻撃を中心に戦闘。グレネードは対アースクエイク、もしくは包囲され場合に使用。グリントランスは主に防御用だ」
「オーケー。シュテルンズはそちらの要望に沿う形で手配するわ」
UNKNOWN(
ga4276)は煙草をふかしていた。
「うむ――今回は何もないな‥‥あっ、フローラとデートをせねば」
言って、UNKNOWNはデスクの上のテレビ電話を繋いだ。
「やあフローラ」
「UNKNOWNさん」
フローラ・ワイズマン(gz0213)の顔が浮かび上がる。
「デートができるなら、依頼後、一緒に出かけんかね?」
フローラは笑みを浮かべて肩をすくめる。
「いいですよ。無事に帰って来て下さいね」
「そう言えば、髪を短く切ったのだね」
「心機一転ですから心を入れ替える意味でも」
「なるほど」
「とにかく任務に集中して下さいね。軍もUNKNOWNさんのKVには期待しているんですからね」
そんな会話を聞きつつ、堺・清四郎(
gb3564)はシャロンに声を掛けた。
「デッド・ランといったところか――次はイラン、恐らく相手はキングスレーたちか。アースクエイクで地上の進軍を遅らせようとしているようだがそうはいかん。奴らの裏をかいてやる」
「随分気合が入っているわね」
シャロンは鋭い目つきの清四郎に優しく答えた。清四郎は口許に笑みを浮かべる。
「敵はアースクエイクで地上隊を遅らせ、空に戦力を集める気だ、ならばその前提を覆す。デッドラン――地上をミカガミ隊で突破する」
「アースクエイクが真下から来たら直撃を食らうんじゃないかしら?」
「アースクエイクとは交戦しない。シュテルンズに任せるつもりだ。俺達は一直線に基地を目指す。仲間がいるんだぜ? 連携はする。ミカガミ隊を貸してもらえるか」
シャロンは思案顔で清四郎を見つめて、肩をすくめた。
「分かったわ。じゃあ、ミカガミ隊とはあなたの方で連携して」
それから孫六 兼元(
gb5331)がシャロンに声を掛ける。
「大ミミズまで持ち出すとは、面倒な事だな!(溜息)そんな物で、ワシ等の進軍を止める事は出来んと教えてやらんとな!」
ガッハッハ! と笑う孫六は、続けた。
「シャロン氏! 軍KVを陸空に分けて作戦を展開したい!」
「と言うと?」
「内訳は空戦にザック氏、雷電×10、フェニックス×5、ディアブロ×10! 陸戦にシャロン氏にシュテルン×10、ミカガミ×5だ! 隊長、副長は、其々に軍KVを統括して貰い行動の軸を担って貰えればと思う! また、各傭兵からの要請に於いて、的確な配置も御願いしたい所だ!」
「もちろん要望には出来る範囲で応えるわよ。ラスホプ組は戦局を左右する鍵ですからね」
「ガッハッハ! ワシは陸戦でシュテルンズC班に同行を要請したい! 王零氏が言ったことだがな!」
「ふむ、陸戦多いわね。思案のしどころか‥‥」
シャロンは言って、思案顔。
「ザックさん――」
ソーニャ(
gb5824)は副隊長の青年に呼び掛けた。
「ああ――」
「ボクの方からは、軍KVにI−01の援護を依頼したいんだ。雷電5機程度かな。合図で同調攻撃をお願い」
「そうか。了解した。どんな手で行く」
「うん。エルシアンが初撃、突撃攻撃で囮になり、敵機の陣形を崩し、雷電隊で蹂躙してもらう流れで」
「まあヨリシロが来たら厄介だそうだが‥‥その辺りは雑魚を落とした後で各個撃破で対応するか」
「そうだね。ところで――」
ソーニャはザックに問い掛ける。
「司令官にフローラさんがいじめられてたって本当?」
「ああっと‥‥まあ、何かごたごたしたらしいな。司令官は実戦経験のないフローラをお荷物と考えてるらしい」
「実戦を知らない? ふ〜ん。ともかく、彼女の分析はあてにしていいよ。くぐりぬけてきた修羅場の数が違う。ボクたちと共にね。ボクなんかの言葉じゃ信じられない? 彼女の実力が証明してくれるよ。ね、フローラさん」
ソーニャはモニターのフローラに呼び掛ける。
「司令官も、それだけ今回の作戦にプレッシャーがあるんじゃないですか。私は確かに実戦経験は無いですからね」
「フローラさん頑張ろう。ボクもささやかなる存在を証明しに行きますか。エルシアンとともに」
「気を付けて下さいねソーニャさん」
続いてBEATRICE(
gc6758)がザックに言った。
「ザックさん、私の方では超大型対艦誘導弾『燭陰』での敵基地爆撃を行うつもりです。それから、私の方へ注意を引き付け、敵指揮官の注意の分散、判断の要求など、主戦場以外の面での精神的負荷を狙うこと。また、過分な戦力がこちらに割り振られた場合には、時間稼ぎを行い、他の戦場が優位に動くよう粘るつもりですので‥‥」
「分かった。どの程度の戦力が必要になる?」
「雷電隊を三、三、三、一に分けます。開幕一斉射撃用にK−02を各機に搭載願います。空戦用銃器は各自の慣れに任せますので‥‥。最後の一機は私と同行して下さい、K−02の他、パンテオン、空戦用銃器を搭載でお願いします。三機での連携をとりながら行動。一機のみになったところは他の班のフォローに回るようお願いします」
「そうか‥‥んじゃソーニャと雷電を分け合う感じになっちまうな」
「ボクはいいよ。じゃあフェニックスかディアブロを借りるから」
「そうか? なら雷電はBEATRICEに任せるぜ。連携をよろしく」
「分かりました‥‥ありがとうございます」
「話はまとまった?」
シャロンが言うと、ザックは頷いた。
「大丈夫です隊長」
「ではみんな行きましょうか。あ、フローラ、支援をよろしく」
「みなさんも気を付けて――」
そうして、傭兵たちはアハド=メリト目指して攻撃を開始する。
「さて、地殻測定器の設置場所だが、フローラ、どこかいい場所はあるかね?」
UNKNOWNが問うと、フローラは「少し待って下さい」と言って、各機に設置ポイントを記した地上のマップを送った。
「ふむ‥‥なるほど。ではシャロン、アースクエイクをよろしく」
「任せて」
「おっと、早速敵機が接近中だ――こいつは、ヨリシロか。例のキングスレー」
王零は言って、ライフルを構える。
「フローラ、デートの約束を忘れないようにね」
「UNKNOWNさん、集中ですよ――」
「仕事に打ち込んでいる姿を見ていると応援したくなるね」
すると、シャロンが割って入った。
「ちょっとUNKNOWN、あなたがちょっかい出してたらフローラの気が散って仕事にならないでしょう」
「そんなことは無いよ。フローラ、俺のせいで気が散るかい」
「ぜ〜ぜん」
「ほらな?」
「全く‥‥あなたたちは」
清四郎らミカガミ隊は、地上から楔型の陣形でに基地に一直線に進軍、相手がアースクエイクで足止めする暇なく斬り込む。
「こっからは止まったら死ぬぞ? 怖ければ引き返すか?」
「怖くはないが、本気で猛進するのか清四郎」
「いいか! アースクエイクで安心している奴らの顔面を殴りつけるぞ! 行くぞ!」
清四郎らは加速した。
「堺氏が出るか! 出はワシらも行くとしよう! ガッハッハ! キングスレーに引導を渡してくれるわ!」
――シャロンが率いるシュテルンズがアースクエイクを吊り上げて破壊する。
「地中のミミズは破壊したわ――」
傭兵たちは基地へ突入する。
清四郎が速攻で通信系、電気系、対空兵器を優先破壊していく。
「弾は勇者を避けると言うのは本当だな! みな、包囲されないよう気をつけろ!」
「ではこっちも遠慮なく行くか。堺に遅れるな。フローラ、ところで今日はどこへ食事に行こうかな」
「基地の食堂で、補給物資の中にだっておいしいものがあるかも知れませんよ」
「基地の食堂でデートか、ロマンチックだねえ」
「私たち戦場のど真ん中ですよ」
「なるほど。や――孫六、気を付けろ、キングスレーが来るぞ」
「ガッハッハ! UNKNOWN氏! そっちもプライベートと仕事の両立は忙しそうだな!」
「いや全く、人生万歳だよ」
「ガッハッハ! まだ若いだろうUNKNOWN氏は!」
「年寄りじみているかね」
「ともかく――『童子切』キングスレー! 借りを返してくれるのだろう?! 待ちきれんので、ワシから受け取りに来たぞ!」
孫六の言葉に、キングスレーは軽く笑った。
「そうか、ならば今日で終わりにしよう兼元」
「人類にとって最早、バグアは絶対的脅威に非ず! 退くか朽ちるか、お前はどちらだ?!」
「お前たちはまだ勝ったわけではないぞ。言っておくがにわか仕込みのテクノロジーで本当に我々の艦隊を後退させられると思っているのか?」
「ならば、せめてお前との決着はつけてやろう!」
「キングスレー、またあったな! いい加減見飽きたぞ!」
清四郎はカスタムティターンの側面に回り込む。
「これが噂のヨリシロかね、どんなものかな」
王零はタロスを破壊してキングスレーに接近する。
「ラスホプエースが勢ぞろいか――」
キングスレーは部下を呼び寄せる。
「あのK−111UNKNOWNを封じておけ。後は俺がやる」
「UNKNOWN氏がタロスでは間に合わんぞ」
「その間にお前たちを倒す」
キングスレーは刀を持ち上げると、慣性飛行で加速する。
最初の一撃は王零に。ティターンの斬撃がアイギスもろともアンラ・マンユの腕を切り飛ばす。
「おいおいまじかよ」
王零は後退しつつライフルを撃ち込んだ。ティターンは弾き返しつつ、返す一撃で加速する清四郎の剣虎の腕を切り飛ばすと、プロトン砲を叩き込む。
「怪物が! 沈めやあ!」
雪村を撃ち込むが、キングスレーは回避しつつ剣虎をプロトン砲で破壊した。
「相変わらずの化け物ぶりに磨きを掛けてきたか! キングスレー! いっそ機体を降りたらどうだ!」
「生身ではKVが機動で勝る」
もぎ取った剣虎の頭を投げ捨てると、キングスレーは孫六と王零と向き合う。直後――。ティターンが加速し、孫六と激突する。一撃、二撃と打ち合い、突進した王零がジャイレイトフィアーを突き出す。
ティターンの片腕が飛ぶ。しかし、キングスレーはゼロ距離からのプロトン砲で布都斯魂剣とアンラ・マンユを後退させる。
UNKNOWNがタロスを残骸に変えて前進して来ると――。
「ラストホープ最強の機体か。あわよくば捕獲したいものだが‥‥」
「なるほどね、戦力比は不明か‥‥」
UNKNOWNは言ってエニセイを叩き込んだ。ティターンはそれらを受け止めると、後退する。
「UNKNOWN、この次は捕獲させてもらおう――」
「K−02一斉掃射――!」
空戦でも初撃のミサイルが放たれる。ミサイルとプロトン砲が交錯する。
BEATRICEはレーダーに目を落としていた。
「古来より‥‥戦の始まりには嚆矢と放つと言うものです‥‥」
「FOX2ミサイル発射!」
ミサイル群の直撃が空を紅蓮に染め上げる。
「さて‥‥基地の上に行って爆弾落としてきましょうか‥‥」
一斉射撃後、BEATRICEは雷電隊と一緒に主戦場を回り込んで基地に。
そこへヘルメットワームの集団が突進して来る。
「BEATRICE、お前さんを基地へ送り込む。落ちるなよ!」
「支援をお願いします‥‥」
雷電隊がドッグファイトに入る。BEATRICEは中に飛び込みつつも、回避に専念する。ガトリングと螺旋弾頭ミサイルで応戦する。
プロトン砲の閃光がBEATRICEの網膜を焼く。直撃を受ける。
「く‥‥!」
「BEATRICE!」
ザック副隊長が突撃して、HWを粉砕する。
「いけるか!」
「はい‥‥!」
「味方は基地へ突入したようだ」
「BEATRICEさん、フローラです。UNKNOWNさんが基地内部でタロスを引き付けています」
「そうですか‥‥ザック隊長――」
「よし! HWは押し返した! 行くぞ!」
BEATRICEは距離六百メートルで低空に降下。同行機のパンテオン攻撃と合わせて複合式ミサイル誘導システム利用の燭陰を撃ち込む。直撃! 基地の中枢が吹っ飛ぶ。
――その頃、シスとドッグファイトに突入していたソーニャとディアブロは苦戦を強いられていた。
「チッ、やっぱりシスを止めないと抑えきれないか。フローラさん、漸さんとBEATRICEさんの位置お願い。それにザック隊に攻撃タイミング同調お願い」
「了解しました――」
フローラは位置情報を送りつつ、管制システムを操りザック隊との同調を図る。
「何度でも立ち向かって来る! 今日こそ終わりにしてやるソーニャ!」
シスは言いつつ、ソーニャが気がかりなようだった。それはチャンスだった。
「行くよみんな! 一瞬の好機に掛ける!」
ソーニャはアリス、Mブースター、通常ブースト起動突入。
「I−01ミサイル同調発射!」
エルシアンは反転してミサイルに紛れる。さらにGP−7のミサイル弾幕とラージフレアで機体を消す。
Mブースター、通常ブースト再連続起動。ラージフレアと通常ブーストの旋回、ロール機動を組み合わせた回避技――。
「ファントム!」
GP−7からG放電、レーザーを叩き込み離脱。
「今だ! 撃て!」
「ファイア!」
シスを十字砲火に捕え、軍傭兵たちはミサイルの集中攻撃を浴びせる。
ゴールドタロスが爆炎に包まれる。
「おの‥‥れ‥‥!」
シスは破壊されたゴールドタロスから翼を生やして飛び出してきた。突き上げて来る衝動は限界突破。生身で機刀を振り回すと、突撃して来る。
「撃て!」
「撃って撃って撃ちまくれ!」
「シス、あなたの最後、見届けてあげるよ――」
ソーニャも吹っ飛んで滞空するシスにレーザーを叩き込んだ。凄まじい集中砲火を浴びるアマンダ・シス。そして――。
遂にシスは閃光を放って光の粒子となって消滅したのだった。
決め手だった。シスの死を受けて、バグア軍は逃げ出した――。
戦闘終結後、UNKNOWNはフローラとデート。フローラが残務整理でラストホープへ帰ることが出来なかったので、基地の食堂でレトルトのスープとパスタを取りながら小一時間の食事だった。