タイトル:【DR】獄炎散らす河川マスター:山中かなめ

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/04/25 20:11

●オープニング本文


「レナ川上流に敵だと?」
 ヤクーツクの作戦司令本部に座するヴェレッタ・オリム(gz0162)中将は、その奇妙な報告に目を細めた。
「はい。比較的少数の戦力のようですが、哨戒中の部隊が発見、ヘルメットワームと交戦したとのことです。その時は大した戦闘もなく、撤退したとのことですが‥‥レナ川流域で、少しずつ位置をずらしながら何度となく同じような報告が来ています」
「つまり追い払われても懲りずに何事かをしているのか」
「はい。また、ヘルメットワームと遭遇したポイントに再度の偵察を行ったところ、そのポイントにキメラが配置されていたとのことです」
 報告にきた本部付参謀の言葉にオリムは考えをめぐらす。
 バグアが何かをレナ川に仕込み、その守りとしてキメラを配置したのは間違いない。
 だが、具体的に何をしているのかがわからない。
 ウダーチヌイへの進軍ルートからも外れるから待ち伏せの線は薄い。交戦してもすぐに逃げるのであれば、拠点を構築しているとも思えない。
 だが、この一大決戦の最中に小規模とはいえ、部隊を遊ばせておく余裕はさすがのバグアとてないはずだ。
「他に分かっていることは?」
 考えのまとまらないオリムは参謀に次の言葉を促す。
「配置されたキメラはいずれも炎をまとうタイプだったと‥‥」
「炎だと? こんな極寒の地では‥‥っ!」
 この極寒の極東ロシアで炎のキメラの話を聞くとは思いもしなかった。河川が凍りついて幹線道路になるような土地柄である。そのことに思いをはせた時、オリムの脳裏にひとつの可能性が浮かんだ。
「水攻めか?」
 凍りついた河川は天然の堰となる。
 この地域の地勢として緯度が低い上流から氷が融け始めるので,下流の融解が遅れると洪水が起きると出発前に読んだ資料にあったはずだ。本来は、それは5月中旬頃からの話であり、勝っても負けてもそこまで作戦が長引くこともあるまいと思っていた。
 しかし、バグアが4月の今の段階で凍りついた河川を融かす手段を持っているとしたら?
「なんであるにせよ、放置はできないか」
 オリムは傭兵を呼び寄せると、当該のヘルメットワーム、並びに炎キメラの撃退を命じるのであった。

 「皆様、今回の任務はキメラの討伐と、現地に設置されている加熱装置の発見、破壊でございます」
 神鳴士門(gz0222)集まった傭兵達に向けてモニターのあるポイントを指す。レナ川の上流、バグア勢力圏と人類の勢力圏の真ん中辺りに光点が赤く輝いていた。眼鏡の縁を持ち上げつつ、神鳴は続けた。
 「目的地まではUPC所属のヘリで輸送いたします。皆様はここから――」
 投下ポイントが青く光り、赤い光点と線を結ぶ。線がポイントにぶつかり、赤い光点が輪になって広がる。
 「この付近一帯を探索し、配備されたキメラの討伐と、仕掛けられていると思われる加熱装置を破壊してください」
  神鳴の説明では、この作戦は他にもいくつか独立して行われているようだが、詳細は不明とのこと。それぞれが隠密作戦として展開されており、UPC内部でもその全てを把握しているものは少ないようだ。
 モニタの表示を切り替えると、いくつかの炎を纏ったキメラのデータが表示される。これまでの依頼でも目撃されたようなキメラの姿が表示される。
 「一体バグアたちはどうやってこういうキメラを作るのでしょうか?」
 想定される戦力は十数体。可能な限り数を減らし、かつ加熱装置を破壊する。厄介な作戦だ。
 神鳴は最後にこう付け加えた。
 「しらみつぶし、というわけですね。骨の折れる仕事だと思いますが、よろしくお願いいたします」

●参加者一覧

ケイ・リヒャルト(ga0598
20歳・♀・JG
須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
クロスフィールド(ga7029
31歳・♂・SN
ブレイズ・S・イーグル(ga7498
27歳・♂・AA
聖・綾乃(ga7770
16歳・♀・EL
柊 理(ga8731
17歳・♂・GD
アンジェラ・D.S.(gb3967
39歳・♀・JG
織那 夢(gb4073
12歳・♀・GP

●リプレイ本文

●氷上を駆け抜けて
「ふむむ‥‥」
 聖・綾乃(ga7770)が双眼鏡を構え唸る。密集しているキメラたちとの距離はざっとみて700メートル。しかし、今身を隠している堤防の陰からそこまで、遮蔽物は無い。
 傍らに来たクロスフィールド(ga7029)が煙草を吹かしながら聖に話しかける。
「ありゃ、こいつは近づくのは骨だな」
「そうね、いくら狙撃するにしても限度ってものがある」
 ケイ・リヒャルト(ga0598)もそれに同意する。スナイパーである彼らの卓越した技術をもってしても、全ての敵を接近する前に葬ることは難しい。距離的な問題もあるが、敵の物量が圧倒的であった。
 エリア周辺に集うキメラの数は遠目に見ても十体を越える。その全てに対して気づかれないように狙撃を行うことは、透明人間でもなければ不可能だろう。
「じゃ、行くしかないんだな」
 須佐 武流(ga1461)がそう言うと、隣に待機している少女――織那 夢(gb4073)に向けて手招きする。織那は緊張した面持ちで頷くと、須佐の少し後ろに立った。
「しっかりついてこいよ?」
「は‥‥はい!」
 そんな緊張気味な織那の肩を叩くものがいる。ブレイズ・S・イーグル(ga7498)だ。屈託の無い笑顔を見せ、彼は自信ありげに言った。
「安心しろ。お前らは無事に送り届けてやる!」
 洒涙雨を構える柊 理(ga8731)が体をさすりながらやってきた。極寒の地に吐く息は白い。
「うぅー、冷える‥‥」
「そんなに冷えるなら、さっそく任務開始と行きましょうか」
 アンジェラ・ディック(gb3967)の言葉を合図に、その激戦は幕を切った。

「さぁて‥‥派手に行くぜ! 援護頼んだぜ!」
 ブレイズがそう叫ぶと勢い良く駆け出す。その後を柊、聖、そして須佐と織那が追う。近接戦闘を主体とする五人はペースを合わせつつ敵に向かって駆けた。
 その背後から、狙撃手の三人――ケイ、クロスフィールド、アンジェラが銃を構えて追う。狙撃手たちは思い思いの場所を見つけ、配置につき、銃を構えた。
 敵の一群まであと300メートル。氷上を駆け抜けるブレイズの頬をかすめ、弾丸が飛んだ。それを契機に次々と弾丸が放たれ、敵に向かっていく。
 初撃がキメラの一体を撃ち抜くと、敵は近づいてくる一行に気づいた。一斉に襲い掛かってくる。
「うおぉぉぉぉらぁぁぁぁぁ!」
 気合とともにコンユンクシオを振りぬき、ブレイズが飛び掛ってきた一体を真一文字に切り捨てた。くの字に曲がったキメラの体が視界を右から左へと流れる。
 その背後を柊と聖がカヴァーする。左右は須佐と織那が固めている。キメラ達は塊となって押し寄せてきた。
「ぐあっ!」
 須佐が腕をキメラの纏う炎に焼かれる。しかし焼かれながらもぐっとこらえ、膝蹴りを繰り出して敵の動きを止める。
「おかえしだぁぁぁぁぁっ!」
 獣のように吼えると、須佐は崩れたキメラに手刀を叩き込み、回し蹴りを放つ。ごう、と炎の揺らめきがして、キメラの体は遥か彼方へと吹き飛んだ。飛んでいくキメラの体に、ケイ、クロスフィールド、アンジェラが一斉に放った弾丸がめり込む。蹴りの威力と弾丸三発分の推進力を受け、キメラは氷上に伏し、動かなくなった。纏った炎が瞬時に消える。

 と、スナイパー達の方向に向けて、キメラが数体、その腕を振り上げた。振り上げた腕から炎が飛ばされる。
「ちっ、厄介な奴らだ」
 クロスフィールドが炎を避けつつ舌打ちした。ケイとアンジェラも同様に身をかわしつつ、有効射程を保とうとする。
「つっ!」
 アンジェラが顔をしかめる。炎の弾丸が彼女の肩をかすめた。
「アンジェラ、大丈夫?」
 ケイとクロスフィールドがアンジェラに意識を向けた一瞬。
 ボワッ! キメラが放った弾丸が氷上に着弾すると、水蒸気となって周囲を包んだ。一瞬視界を遮られる。互いの位置を確認するため、密集したところに次の攻撃が放たれた。
「ぐあっ!」
「きゃあっ!」
「くっ!」
 天から降り注ぐ炎が三人の身を焦がした。三人は悲鳴をあげ、ごろごろとその場に転がり、炎を消す。
「このあたしに傷を負わせるなんて‥‥やってくれる!」
 ケイが苛立たしげにはき捨てると立て続けに弾丸を放った。一発、二発、三発。吸い込まれるように弾丸はキメラの脳天、右足、左足を打ち抜いた。
 クロスフィールドが口笛を吹く。その口元には先ほどの炎で点火した煙草がくわえられている。
「俺も負けてられないね」
 ズダン! 特注のライフル、Play The Foxが火を吹く。ケイの撃ち抜いたキメラの隣にいた別の敵を貫き、倒れるのを確認すると、クロスフィールドは白い煙を吐き出してにやりと笑った。
「Dame Angelを舐めるな!」
 アンジェラが自身のコールサインにかけて放った弾丸。それは過たず敵の腹を撃ち抜いた。ゆっくりと崩れ落ちるその身を柊が手にした直刀で炎ごと切り裂いた。
 その横を走り抜ける須佐、織那の二人。二人の手には金属探知機が握られている。
「もう少し‥‥反応、近いです!」
 織那の声に須佐が黙って頷く。二人は風のような速さでキメラの間をすり抜け、目標とするポイントへ向かった。

 ‥‥突然、反応が分かれる。

「なん‥‥だと」
 須佐が吐き出す息とともに呟く。金属探知機の反応は周辺にいくつもある、しかし目の前には何もない。
 反応が自身の足元に位置する場所で、須佐は立ち尽くした。周囲ではブレイズたちが敵を掃討すべく戦っている。
「須佐さん、あれ!」
 織那が指差す方向を見ると、凍りついた川の中に光るもの。ごくり、と唾を飲み込むと須佐は呟いた。
「つまり、目標は川の中、しかも複数ってことかっ!」
「だから‥‥この近辺にこんな大量のキメラが固まっていたって事!?」
 織那も落胆し漏らす。その織那の背中に向けて振り下ろされた赤い拳。
「きゃあっ!」
 背中を打たれ、氷上に華奢な体が叩きつけられる。ぐったりとその身を横たえる織那。その姿に、須佐がキレた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 野蛮な咆哮が天に向かって放たれる。足払いで敵の足元をすくい、バランスを崩したところを天高く蹴り上げる。
「るぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 舞い上がったキメラの体を追いかけて須佐が跳ぶ。敵よりも少し高い位置に飛び上がり、体を回転させると踵を強く打ちつけた。
 ズガァァァン! 派手な音とともにキメラの体が氷上に叩きつけられ砕けた。砕けた炎の熱でわずかに氷が溶ける。
「大丈夫か!?」
「あ、はい! 大丈夫です!」
 氷の上に着地した須佐が織那に手を貸す。その手を取って立ち上がると、周囲を見渡すと、もう一体のキメラがいる。
「ちっ、休ませてもくれないってことか‥‥よっ!」
 襲い掛かるキメラの爪を肘で弾く。須佐は素早く体を捻ると回し蹴りを飛ばした。炎が絡みつき、ズボンの裾を焦がす。
 須佐の背後から、織那が高く跳んだ。二刀を構え、大きく広げた腕を交差する。
「もっと早く‥‥もっと鋭く! これでっ!」キメラの頭上を剣閃が交わると、空中に激しく炎が散った。
「こいつで‥‥トドメだッ!」
 須佐がぐらついたキメラの体に蹴りを放つ。と同時に織那の持つ刀がキメラの足元を切り裂いた。

 戦いは激しく、極寒の地の気温を著しく上昇させていた。

●獄炎散らす河川
 ヒュッ。ズシャッ。剣を振るい、周囲を取り囲むキメラを蹴散らす。柊の額には汗が滲んでいた。その背後では聖が左右の刀を振るっている。二人とも必死に突破口を開こうとしていた。
「このぉぉぉっ!」
 聖の刀が敵を切り裂き、その隙を衝こうとする別のキメラの攻撃を柊が防ぐ。炎の熱に顔をしかめつつも、攻撃を受け流す。
「つっ! 防具がこれじゃなければ‥‥でも僕の盾は砕けない!」
 バックラーを構える柊の背後にさらにもう一体のキメラが迫った。聖がカヴァーに回ろうとするが、間に合わない。
「大人しくしてなさい‥‥」
 風を切って放たれた弾丸がキメラを撃つ。キメラの振り上げた腕がケイの銃撃に貫かれ、だらんと垂れ下がる。
「柊さん、下がってください!」
 聖が駆け寄ると刀を突き刺す。キメラは息絶え、その体を横たえた。ほっと息を吐く聖の顔を見ながら、柊は無線を開く。
「リヒャルトさん! 助かりました!」
「油断しないで。まだ敵は残っているのだから」
 無線で交わされる短い会話。柊の視線に聖に襲いかかろうとするキメラの姿が見えた。
「させない!」
 間に入り、バックラーを構える。ガキン。金属音とともにバックラーがキメラの爪を弾く。バランスを崩したキメラに向けて、直刀を突き入れる。手ごたえは、あった。
「ええいっ!」
 聖の二刀が敵の胸を貫くと、炎の勢いが弱まる。間髪いれず、柊は直刀を引き抜くと、袈裟切りに切りつけた。
 どう、と音を立てて、炎の消えたキメラが氷に倒れた。ハイタッチを交わす二人の顔は血と炎に紅く染まっていた。

「ここは俺達が引き受ける! お前等は先に行けッ!」
 ブレイズが二体のキメラを両手に持った大剣で押さえ込みながら、須佐と織那に叫んだ。走り去る二人の姿を視界の隅に追いやり、彼は敵を睨みつけ、にやっと笑った。
「ぶった斬る! カーネイジ‥‥ファングッ!」
 紅蓮の衝撃が敵を弾き飛ばす。広がった間合いに向けて突進し、下段から大きく振り上げる。一刀のもとに切り捨てられた敵の体を剣の柄で殴り飛ばすと、彼はもう一体に向かって勢いよく大剣を振り抜いた。
「はあっ!」
 裂帛の気合とともに、真一文字に振り抜いた剣が敵を叩き斬る。吹き飛んだ敵の体に向けて、弾丸が二発、飛ぶ。
「援護するわ!」
「そこっ! 行かせないよっ」
 クロスフィールドとアンジェラが周囲を囲むキメラ達に向けて援護射撃を放っていた。負けじとブレイズも大剣を振り回す。身体を染める赤色は、敵の返り血か自らの血か、既に彼自身にも分からなくなっていた。
「やるねぇ」
 クロスフィールドが弾倉を交換しながら呟く。その横ではアンジェラが銃撃を放っている。ブレイズの攻撃を邪魔しないように、それでいて敵の注意をこちらに惹きつけるように、アンジェラは周到に射撃を重ねていた。
「だいぶ数も減ってきたわね。あと少し!」
 呟く彼女の視界には、数体のキメラの姿があった。

●終幕
「よし、全部で八つか。織那、いけるな?」
 須佐の言葉に織那が頷く。二人は金属探知機の反応したがって、それぞれのポイントに爆弾を仕掛けていた。キメラの攻撃は他のメンバーの奮闘により二人には注がれていない――今なら。
 手早く爆弾を仕掛けて、移動する。グラップラーの二人はその素早さを活かし、全てのポイントへ爆弾を仕掛けた。
「須佐さん! こっちは全部終わってます!」
「ああ、俺ももう少しで終わる! こいつで‥‥最後だ!」
 爆弾を仕掛け終わると、須佐は無線で仲間に通信を送った。
「須佐だ。爆弾は仕掛け終わった。撤退するぞ!」
「了解だ。援護は任せてくれ」
 クロスフィールドの声。続いてブレイズの声が無線を通して届いた。
「こんなもんか。ったく手間かけさせやがる!」
 柊と聖からも、了解の声が届いた。頷くと、須佐は織那とともに撤退を開始した。ある程度の距離を稼がなければ、爆発に巻き込まれる危険性があった。そんな二人の行く手をキメラが阻む。
「‥‥須佐さんっ!」
「邪魔だどけぇっ!」
 叫びながら須佐がハイキックを繰り出す。右腕でそれを受け止めるキメラのわき腹を、織那の刀が突き刺した。
「させません! 装置は破壊させてもらいます!」
 体勢を崩したキメラを、須佐が抱える。じゅう、という掌を焦がす音が織那の耳に響いた。そのまま抱え上げたキメラを、須佐は装置の一つがあった方角に向けて投げつけた。
「っらあぁぁぁぁ!」
 放り投げられたキメラは弧を描くと氷上に激突した。激しく水蒸気が舞い上がる。
「いくぞ!」
「は、はい!」
 素早く後退する二人の背中で、ドン、と激しい音を立てて爆発が起きた。

「撤退する! 皆で須佐と織那をバックアップするんだ!」
 ブレイズの言葉に柊と聖も前進し、キメラの攻撃を受け流し、反撃してその数を減らしつつ二人の帰りを待つ。そこへアンジェラから通信が入った。
「皆良く聞いて。二人が戻ってきたらすぐに後退を開始して。閃光手榴弾を投げて敵の目を眩ませる」
「こちら柊、了解しました!」
「‥‥そりゃ面白いことになりそうだな!」
「あっ! 二人が来ましたよ!」
 口々に言う三人の視界に須佐と織那の姿が映る。二人と合流すると、皆は一斉に撤退を開始した。しばらく駆け抜けると、五人の目にアンジェラ、クロスフィールド、そしてケイの姿が見えた。
「ったくしつこいね。こいつらは」
 クロスフィールドが銃撃で追いすがるキメラの眉間を撃ち抜く。ケイも同じキメラの足元を狙って動きを止める。
「いくわよ!」
 アンジェラの言葉に全員が目を瞑る。少ししたあとで、派手な音と激しい閃光が周囲を覆った。
ゆっくりと目を開くと、そこには視界を奪われうろうろとするキメラの姿があった。
「よし、そろそろ起爆するか」
 須佐が手に持った起爆装置のスイッチを押す。他のメンバーも持たされたスイッチを入れる。
 ドン! ドゴォォォン! 激しい爆発と、凍った川を砕く音。加熱装置の仕掛けられたポイントは次々と爆発していった。数体のキメラが爆発に巻き込まれ同時に吹っ飛ぶ。
「作戦成功だな!」
 ブレイズの言葉に皆が満足げに頷く。須佐がミサイルランチャーを構え、ニヤリと笑った。
「もののついでだ。派手に決める!」
 シュルルルル‥‥ズドォォォン! ミサイルが放たれ、生き残ったキメラを中心とした地点に着弾し、爆炎が跡形もなく敵を消し去った。
「す、須佐さん! 川が決壊したらどうするんですかっ!?」
 柊が焦る。須佐は笑いを浮かべて答える。
「火薬の量は調節してあるし、距離もある。ま、大丈夫だろ!」
「は、派手すぎです‥‥」
 聖と織那は目を丸くして驚いている。ケイとアンジェラはやれやれと言った調子で顔を見合わせるとくすりと笑った。
「ハッハァ! こいつはすげえな!」
 ブレイズとクロスフィールドは楽しそうに叫んでいる。全ての爆発が終わり、氷上が静けさを取り戻したことを確認すると、一行は作戦成功を報せるため、降下地点へと向かって歩き出した。

「皆様、お疲れ様でございました」
 神鳴 士門(gz0222)が両手を広げて皆を出迎える。UPC本部からの作戦成功を確認した旨の連絡を告げると、皆の顔に笑顔が浮かんだ。その顔を眺めながら、神鳴は作戦の成功と、皆の無事を喜んだ。
「素晴らしい成果だと本部も喜んでおります。本当に、お疲れ様でした」

 春を告げる風が柔らかく流れ込み、寒さに凍てついた彼らの体をじんわりと暖めた。