タイトル:【厄】終幕・前マスター:矢神 千倖

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/02/11 23:36

●オープニング本文


 ライオット・アロガン中佐は、歯を剥き出しにして怒りを表していた。こんな馬鹿な話が、あって良いはずがない。あってはならないのだ。
 この、急を要する時に限って‥‥。

 かねてより、ライオットが司令官を務めるこの基地の付近にはHWが目撃されていた。恐らくは偵察か何かなのだろうと見当をつけ、基地の方でも警戒を強化していた。哨戒を傭兵に依頼したこともある。
 だが、なかなかHWに出くわすことは出来なかった。とはいえ敵も積極的行動に出てくるわけでもない。
 どうせ大したことはしてこないだろう。
 HW目撃情報が寄せられることにもいい加減慣れてしまい、基地全体の雰囲気がダレていた。ことが起こったのは、丁度その頃だった。
「HW、ゴーレム、及びタロスが多数接近! 武装状況から、明らかな戦意が読みとれます」
 ライオットは司令室にいた。今まで授与された勲章を金細工の施された豪華な額縁に並べ、写真にでも収めようとしていたところだったのだ。
 そこへノックもなしに飛び込んだ兵が発したのが、敵ワーム探知の報である。
「何と。では、出撃可能なKVを全て投入し、追い払ってしまえ」
「それが‥‥」
 司令の指示に、兵は言葉を濁らせた。
 そして続けて出た言葉は、とても信じられないようなものだったのである。
「整備が十分でなく、出撃可能な機体はたったの二機とのことです」
 あまりにも、少ない。
 基地にあるKVは、最悪でも四機は出撃出来るようにしているはずだ。整備さえしっかりしていれば、全部で六機出撃可能な時もある。
 しかしたったの二機では、どう考えても太刀打ち出来るはずがない。
「ええい、どういうことだ!」
「一つには、傲慢、高飛車な司令官殿の煽りを受け、整備の者まで緊張感を忘れてしまった。そういうことであるよ」
 声と共に現れたのは、基地に客人として招かれ、滞在していたスコット・クラリーであった。
 彼の言葉に、ライオットの歯がぎりりと鳴る。
「そしてもう一つは基地が手薄なタイミングを相手が知っていたということだ。スパイのおかげでな」
 ライオットは舌打ちした。敵のスパイがいる‥‥。その可能性は考えたことがなかったのである。バグアのこれまでの行動から、わざわざスパイ活動をしてまでこんな基地一つを落とそうとするとは、少々考えにくい。
 だが、実際にいたとすれば‥‥。いや、それよりもだ。
「基地のKVが役に立たんのなら、傭兵に依頼するより他にない。至急手配せよ」
「はっ!」
 まずはこの状況を脱することが先決。こうなれば傭兵を頼るしかないのだ。
 指示を受けた兵は、敬礼と共に去った。
 その足音が遠くなり、聞こえなくなるのを待ってから、ライオットは口を開く。
「誰が、スパイだというのかね」
 先のクラリーの言葉は、明らかにスパイの存在を知っている人間の言葉だ。
 そして整備が不十分なこの時を狙って襲撃の指示を出したということも。
 誰が、何のために?
「そのスパイのことならよく知っているよ。何しろ、自分自身のことであるからな」
 そう言って、クラリーはライオットに銃を向けた。

●参加者一覧

金城 エンタ(ga4154
14歳・♂・FC
ロゼア・ヴァラナウト(gb1055
18歳・♀・JG
美具・ザム・ツバイ(gc0857
18歳・♀・GD
ロシャーデ・ルーク(gc1391
22歳・♀・GP
ティームドラ(gc4522
95歳・♂・DF
秋姫・フローズン(gc5849
16歳・♀・JG
BEATRICE(gc6758
28歳・♀・ER
D‐58(gc7846
16歳・♀・HD

●リプレイ本文


 ワームの進行を妨げるために飛び回る二つの影があった。
 数の上では明らかな不利を被りつつも、影はそれでも飛び続ける。
 HW、ゴーレム、タロス。いずれも複数だ。
 対して、影ことフェニックスはたったの二機。
「援軍はまだ来ないのか」
「これでもエリートの端くれだ、もう少しくらい持ちこたえなきゃ示しがつかねぇ」
 ヘルメットの中に滲み出る汗に舌打ちしながら、パイロットは身の砕けそうな負荷に奥歯を噛み締めて旋回を繰り返す。
 だがいつまでも持つものでもない。敵の進行ルートを阻むように飛ぶだけで大した反撃も出来ないまま。時間稼ぎが関の山、痺れを切らしたワームの攻撃に何度か身を曝しながらも、飛んでいるのがやっとだ。
「随分と頑張ったものね。その奮闘、無駄にはしないわ」
 撃墜されるのも時間の問題。
 絶望しかけた二人に希望の声を届けたのはロシャーデ・ルーク(gc1391)だった。
「美具らが助けに来たからにはバグアどもの好きにはさせん。状況を知らせい」
 ミサイルをばらまいて牽制しつつ、美具・ザム・ツバイ(gc0857)が通信回線を繋ぐ。
 報告によるとまだ少々の余裕はあるもののこれ以上敵の進行を許すのは危険であること、また直下の市街地に住まう住民の避難は間もなく完了するとのことであった。
「では直ぐに片付けてしまいましょう。其のほうが大変宜しいみたいですので」
 対処すべき敵に目星をつけながらティームドラ(gc4522)は旋回してゆく。
 彼だけでなく、傭兵達の駆るKVのコンソールにはこの街の地図が張り付けられていた。これは住民の避難に時間のかかりそうなところとそうでないところが色分けされたもの。避難が完了していない場合を想定してBEATRICE(gc6758)が用意したものであった。
 この地図を見て位置取りを考えれば、住民への被害は抑えられるはずだ。
 また、被害を抑える工夫はこれだけではない。
「出来るだけ敵ワームを破片に致しましょう」
「それが良いでしょう‥‥。塊のままビルにぶつかると、被害が拡大します‥‥」
 ティームドラの提案にBEATRICEが賛成。他の面々も特に反対はないようだった。
 だが戦闘中であれば、ワームを粉々にするだけの余裕をもてない場合も多い。
 そこで敵の残骸を空中で破砕する役を買って出たのは金城 エンタ(ga4154)であった。
「ではボ‥‥私が、砕いて回ります。フェニックスのお二人も、お願いします」
「ミサイルは‥‥あぁ、まだ残ってるな」
「了解した。散開する」
 大分損耗しているために通常の戦闘には耐えられなさそうな二人の軍人。だが残骸処理ならば彼らでも何とかこなせるだろう。
 配役は決まった。
 

 敵を機種で分けるなら三種。視覚的な認識のしやすさを優先し、各々が当たるワームも、この種類によって割り当てられた。
 その中でHWを担当するのはBEATRICEと秋姫・フローズン(gc5849)の二人。
 数で言えば圧倒的に傭兵側が不利ではあるが、先の美具のかけた牽制が大分効いているらしく、中には煙を吹いているものもある。
「嫌な予感が‥‥拭えない‥‥です」
「悩む余裕はありません‥‥」
 不安がる秋姫。
 HWによるフェザー砲をかわしつつ、BEATRICEが注意を入れる。
 この依頼を受けた時から、秋姫の胸には薄暗い靄のようなものがかかっていた。正体は分からないが、原因なら分かる。きっと、ここでワームを倒せばいいという話では終わらないだろうという予感が、耳について離れない、とある言葉によって掻き立てられているのだ。
 ふと目を伏せそうになった秋姫の首を、レッドアラートが掴み上げる。
 慌てて傾けた翼を、光線が掠めていった。揺れる機体を持ち直し、BEATRICEの言う通りだと瞳に力を込める。
「一気に潰します。援護を‥‥」
 スイッチを次々と切り替えながら、BEATRICEが通信を入れる。そのメットに、いくつものロックマーカーが反射して映っていた。
 了解の声とともに、秋姫はHWを挟み込むような位置へと移動を開始。当然のようにいくらかのHWが彼女を追う。
 だが、そうはさせない。BEATRICEが突き上げるようにスラスターライフルを撃ち込んでやると、HWはあっさりと目標を変えた。
 これで良い。正直に向かってきてくれた方がありがたいというもの。
 ミサイル誘導システム、誘導弾用照準投射装置が起動する。そしてBEATRICEの駆るロングボウから大量の小型ミサイルが吐き出された。
 回避行動に移るHWの群。だがその逃げ道を、秋姫の放った一筋の光が貫いた。
 判断が遅れたか、HWが一瞬動きを止める。これをミサイルの波が飲み込んでいった。

 一方で、ゴーレムを相手取るのはティームドラ、ロゼア・ヴァラナウト(gb1055)、D‐58(gc7846)の三名。
 数で言えばワーム側が一機多いようだ。だが数の不利という意味では、HW班の方がよほどきつい。こちらが後れをとるわけにもいかなかった。
「レーザーで牽制‥‥します。後は、お任せします」
「一機はこちらで引き受けます。‥‥健闘を」
 ロゼアが敵の動きを抑えると、D−58はゴーレムを一機誘ってその編隊から引き離してゆく。
 これに対しゴーレムの方も反撃を開始。光と光が交錯する空は眩しかった。
「では、急ぎ数の不利を解消いたしましょう」
 この合間を縫い、ティームドラがミサイルを放ち一気に勝負をかけてゆく。
 延びる白煙を目で追い、ロゼアもまた光の中に踊りながら敵の下に潜り込んだ。
 巨大なブレードを盾にミサイルの衝撃を和らげるゴーレム達。
 その下方からはロゼアが狙っている。放ったレーザーがゴーレムのうちの一機に集中する。
 プロトン砲をロゼアに向けたゴーレムだが、その脚部がスパークすると、そのまま力を失って落下を始めた。
「く、破砕します‥‥!」
 まだ形が大分残っている。その下にあるのは、団地。下手な倒壊をされては大惨事だ。
 ロゼアはゴーレムに距離を詰める。
 だがレーザーを放った瞬間、ゴーレムの落下軌道が変わった。それだけではない、ブレードを構え、明らかにロゼアを狙っている。
「再起動‥‥そんなっ」
 急ぎ回避行動に移るが、間に合わない。
 死が脳裏をよぎる。
 思わず目を瞑った。
 このまま、真っ二つにされて自分という形はなくなるのだ。
「諦めないでください!」
 スピーカーから金城の声。
 恐る恐る目を開けてみれば、そこには日の光を浴びて輝く青い世界が広がっていた。
「天国‥‥?」
「だから、生きてますって」
 その声が聞こえた直後に、背後で爆音が響く。
 生きている。生きている‥‥!
 急ぎ旋回し、状況を確認するロゼア。
 ゴーレムは既にバラバラになって形を失っていた。
 あの一瞬、援護に駆け付けた金城が翼でゴーレムを斬り裂いたのだ。
 真っ二つになったゴーレムはロゼアを擦り抜け、例の二人の軍人が放ったミサイルによって爆散させられたのである。
「先ほどのスパークで飛行機能が一時的に麻痺したのでしょう。まだ行けますか?」
「‥‥はい。飛べます」
 まだゴーレムは残っている。ティームドラの声に応え、ロゼアは大きく機体を傾けた。
 他方で、一騎打ちを仕掛けたD−58の戦い方は、実に豪胆なものであった。それこそまさに、正面からぶつかる戦い方である。
 レーザーライフルを撃ちつつ距離を詰める。ワームによるプロトン砲だけは最低限の動きでかわし、必殺の一撃を打ち込むタイミングを見計らっていた。
 距離が詰まれば、ゴーレムも攻撃手段を変える。プロトン砲を控え、代わりに大型ブレードを取り出して構えた。
 これを待っていたとばかりに、D−58は小さく息を漏らす。
 スイッチ、出力の切り替え。姿勢、気流の制御。全ての条件は整った。
 ぐん、と加速。勢いに乗ったD−58のスカイセイバーが変形を始める。
 だが敵は待ってくれないゴーレムのブレードが降り降ろされた。
 ガチリと金属の弾ける音。
 人型形態を取ったスカイセイバーの槍がブレードを受け流すようにして突き出されたのだ。
「‥‥踊ります‥‥」
 太陽光に反射する槍の先端が、ゴーレムの肩を捉える。そして武器に取りつけられたブースターから燐光が迸るとスカイセイバーはくるりと向きを変え、二撃、三撃とワームに風穴を空けた。
 空中でがくりと力を失ったゴーレム。
 一気呵成の攻撃に間違いなく機能を停止させたようだ。が、D−58の攻撃は終わらない。
「‥‥まだまだお寝んねには早い‥‥です」
 さらに構えた粒子加速砲から光の束が弾かれる。
 これに貫かれたゴーレムは、自らの自爆装置と動力炉の暴走を重ならせて大爆発。
 空に出来た大きな雲からは、飛行形態へと再変形したスカイセイバーが悠々と飛び出し、味方の方へと機首を向けた。

 今回現れたワームの中で、一般に最も厄介とされているのがタロスだ。
 これの対応に当たるのが、美具とロシャーデ。数では二対二と同等であるが、残念ながら正面からぶつかって簡単に落ちてくれるような相手ではない。
「再生する分厄介じゃな」
 美具が呟く。
 多少の被害ならば自力で修復してしまう能力を持つタロスを相手取るのであれば、かなり大きな火力で攻めるか、複数人で協力して飽和攻撃をしかけるのが定石。
 だが今の状況では、攻撃する度に仕留めるつもりでかからなければジリ貧になるだろう。
「一撃離脱を繰り返し、仲間の合流を待つのも手よ」
「そこは、各々のやり方じゃな」
 彼女らは、彼女らだけで戦っているのではない。今でこそそれぞれが担当する敵の方へ散っているが、ここには多くの仲間がいる。
 自分の力で何とかするのも良い。仲間の手を借りるのも良い。
 どうするか。それは、自分で決めるのだ。
「では行くかの。落ちぬように気をつけるのじゃよ」
「お互いにね」
 そうして二人は散った。
 加速するKVの中、美具は考える。
 持ち得る限りの火力を以て、早急に一機撃破。そして援護に回れば早く片がつくのでは、と。
 飽和攻撃の手段なら、ある。再生する暇を与えず、落とせば良い。
「トランシェダント・ミサイルサーカス。行ってみようかの」
 彼女のKVは、まさにミサイル庫と言っても良いだろう。
 最初にHWへ打撃を与えるために大量に放ったものの、尚まだミサイルは大量に残っていた。それも、マルチロックが効くタイプのものも。
 だからといって、複数の敵機を狙って放たなくてはならない、というわけではない。狙いを一つに絞り、一斉に放つことだって可能。
 にたり、と笑みが浮かんだ。
 しかし先に動いたのはタロスの方だった。美具へ向けたプロトン砲に光が収束するのが見える。
「防御兵装展開!」
 重力波を乱す小型装置が散らばり、タロスの狙いがぶれる。
 この隙に回避行動。元いた位置を怪奇的な色の光が通過した。
 入れ替わりに、マルチではなく多重ロックをかけた小型ミサイルを一斉に放つ。
 隙間などないかのように迫る爆薬の群に、タロスは為す術もない。
 動きが止まった一瞬を、美具は見逃さなかった。
「土産じゃ、持っていくが良いぞ」
 必中の念を込めて撃ち出された高速ミサイルが、ボロボロになったタロスの装甲に突き刺さる。
 結果など確認するまでもなく、いかにタロスといえども木っ端微塵に消し飛んだのであった。
 片やロシャーデは、戦闘スタイルの違いから苦戦気味。大量のミサイルを放って一気に仕留めるのではなく、徐々に削って確実な撃墜を狙うため、タロスの再生能力を前にじりじりと押され始めていたのである。
「効いているはずだけど、なかなか辛いわね‥‥」
 光線を交差させつつも、決定打をお互いに撃ち込むことが出来ない。ロシャーデはいくらかの攻撃を敵に掠らせるも、その再生能力を前に集中力を切らしかけていた。
 今のところ、タロスの攻撃は危なげなくかわせている。だが、ふとした瞬間に一撃を受ければそれを機に全てが崩れさることは容易に想像出来る。持ち堪えるにも限度があるのだ。
 このままではいつまでも持たない。ロシャーデの額に汗が浮かぶ。
 見れば、タロスがまたこちらを狙っている。回避は難しくない。だが、次にどう繋げれば良い‥‥?
 ぎりと奥歯を噛み、機首をぐいと持ち上げる。
 放たれた光線。すぐまた次の攻撃に移ろうと、ワームは砲身を再び構える。
 その時、タロスの背中で何かが弾けた。
 バランスを大きく崩した敵機を目に、これこそ最大のチャンスとロシャーデはレーザーを放つ。
 脚を射抜かれたタロスは、きりもみしながら宙を舞った。
「早く終わったので‥‥手伝いに来ました」
「ありがとう、助かったわ」
 あの瞬間、タロスの背後を襲ったのはHWを退治し終えたBEATRICEだった。
 だがまだ敵は動く。恐るべきしぶとさである。
「こちらも終わりましたので、助力に参りました。援護いたしましょう」
 そこに駆け着けたのはティームドラ。大型ガトリングを撒き散らし、敵の動きを制限してゆく。
 これだけそろえば――。
「まるで虐めのようだのう」
 さらには美具までもが応援に現れる。四対一‥‥。決まりか。
「行けるわ。総攻撃開始よ」
 四機のKVが、タロスを囲む。
 一気に火力を集中させれば、いかにタロスといえどもタダでは済まない。四方から伸ばした火線は、空に浮く巨人を貫き、消し飛ばした。


「何とか終わりましたね。少し厳しい戦いでしたが‥‥」
 敵殲滅を確認し、金城が胸を撫で降ろす。
 街の方にもほとんど被害は出ていない様子。後は依頼達成を報告して帰還するだけだ。
『聞こえるかしら。緊急事態よ』
 仕事を終えて緊張を解いた傭兵達の耳に届いたのは、スピーカー越しに響く女性の声であった。
「随分と久しいわね、レベッカ」
『挨拶は後よ』
 聞き覚えがある。ロシャーデの瞼の裏に、声の主の姿が浮かんだ。
 今回の依頼主である、UPC軍の基地。そこに客人として招かれている、ある軍人の部下。レベッカ・マリーネといったか。
 これまで何度か顔を合わす機会はあったものの、ここ最近は全く姿を見せていなかった。
 だが、少なくとも親しく会話出来る声色ではない。
『私の上司、スコット・クラリー少佐が、基地の司令官ライオット・アロガン中佐を人質に取っているわ。自ら、バグアのスパイであると宣言してね』
「そんな‥‥。じゃあ、あの時の――辛い思いをさせるかもという言葉は‥‥」
 秋姫が唇を震わせる。以前、同じくこの基地から出された依頼を受けた際、彼女やロシャーデは実際にクラリーと対面している。
 その時、クラリーが放った言葉。「次は辛い思いをさせる」とは、このことだったのだろうか。
「目的は?」
 努めて冷静に、ロゼアが続きを引き出す。
『傭兵達との面会、だそうよ』
 この依頼、このままでは終わらない。
 傭兵達は皆一様に、固唾を飲んだ。