タイトル:猫々娘々マスター:矢神 千倖

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/11/20 18:13

●オープニング本文


 にゃんにゃん。
 にゃんにゃんにゃん。
 にゃんにゃんにゃんにゃん‥‥。

「えぇい、うるさーい!」
 いつもなら静かな公園。やや広めの敷地にはちょっとした広場や鯉の住む池もあり、人々の憩いの場として地域の人々に親しまれてきた。
 ある人は恋人とともに散策し、ある人は外周をランニングし、子供たちは広場で走り回る。
 管理人も、この公園が好きだった。
 特に早朝の誰もいない公園がお気に入りだ。広々とした公園へと吹きこむ風が心地よく、いつも季節を運んできてくれる気がしていた。
 だが、今日ばかりはそうもいかなかった。

 にゃんにゃん。
 にゃんにゃんにゃん。
 にゃんにゃんにゃんにゃん‥‥。

 管理人室を飛びだすと、そこには猫耳、猫の手、おまけに猫の尻尾を生やしたミニスカワンピースの女の子で公園が埋め尽くされていたのである。
 モデルとなったであろう猫は三毛にぶちに黒など実に様々だ。
「馬鹿な、そんな馬鹿な!」
 仮に猫娘と称するが、彼女らは管理人の姿を見てもまるでお構いなしである。互いにじゃれ合ったり、そこらに生える草に猫パンチを繰り出したりと呑気なものだ。
 しかしあまりにも異常である。こんな状況、普段なら絶対にありがた――ありえない!
「そうだ、池、池はどうなってるんだ」
 管理人室は公園唯一の出入り口となっている南側にあり、そこからは一本道となって続いている広場しか見えない。池へ行くには広場の東西から北へ向かってドーナツ型に繋がっている道の先にある。公園敷地内の最北端が池になっており、仮に広場東の道を行けば緩やかなカーブを進み、池にかかる橋を渡って広場西側へと戻ってくる構図だ。
 池は管理人のお気に入りだった。それだけに様子が気になる。
 猫娘の脇を通っても、幸いにというべきか、彼女らは何の動きも見せなかった。
(「あれは恐らくキメラに違いない。襲われたらひとたまりもないな。主に、俺の理性が」)
 公園管理人歴15年。齢38歳。それでもまだまだ男である。

「俺の、俺の鯉達がぁぁああああ!」
 北端の池には、やはり猫娘が湧いていた。その手や口には、昨日まで池を悠々と泳いでいた巨大な鯉達。
 管理人が今日まで毎日世話をしてきた、彼にとっては子供も同然な存在である鯉が、猫娘によって食われていた。
 ふっと、何かが管理人の前に飛んできた。
 地に落ちたことで砂に塗れたそれは、紛れもなく鯉の頭だ。
「くっ、鯉に恋して15年。今日ほど悲しく、悔しい日はない! もう萌え萌え猫娘だろうと容赦せん。今に見てろよ、絶対に全滅させてやる!」

●参加者一覧

王 憐華(ga4039
20歳・♀・ER
紅 アリカ(ga8708
24歳・♀・AA
佐倉・咲江(gb1946
15歳・♀・DG
兄・トリニティ(gc0520
24歳・♂・DF
ユウ・ターナー(gc2715
12歳・♀・JG
ヘイル(gc4085
24歳・♂・HD
ヴィヴィアン(gc4610
22歳・♂・GP
ホープ(gc5231
15歳・♀・FC

●リプレイ本文

●猫娘と遊ぼう
「残念ながら、こちらも手いっぱいで‥‥。脅威レベルの高いものなら何とか受け入れて対策を講じたりするのですが」
「そうですか‥‥。すみません、失礼します」
 管理人室の電話を借り、何とかキメラを保護してもらえないかとULTへと連絡した王 憐華(ga4039)が受話器を置いて公園を振りかえる。結果は芳しくなかった。
 広場へと続く小道。そこでは数匹の猫娘が顔を洗ったり追いかけっこしたりして遊んでいた。
「しかし‥‥バグアはなんの為にこの娘達を作ったんでしょうね」
「いくら可愛くてもこれだけ群れると萌えられないものねぇ」
 溜息とともに頭を抱えた王に答えてヴィヴィアン(gc4610)が言うが、おそらく、答えになっていない。
「いかに愛らしいとはいえキメラでは排除せざるを得ない、か‥‥」
「‥‥可愛いケド、キメラなんだよね」
 ヘイル(gc4085)とユウ・ターナー(gc2715)が呟く。
 猫耳、猫手、猫尻尾。そしてワンピース姿の、女の子。これを可愛いと感じられる者にとっては、戦いにくいことこの上ないだろう。
「あ〜勿体無い危険度が低い上可愛い女の子で猫耳って裏社会に商品として出せば売れるとお思うのに‥‥」
 ぶつくさといいながら猫娘に猫缶を与えるのは世史元 兄(gc0520)だ。
 その言葉の意味を理解できない猫娘達は、ねうねうと鳴き声を上げながらすり寄ってくる。
 負けじとヘイルも煮干しや牛乳を振るまい、猫娘達を手なづけ出した。あっという間に二人の周囲を猫娘が囲む。
「ちょっとちょっと、困るよ、早く退治してくれなきゃ!」
 焦れた管理人が声を荒げる。猫娘を掃除するために呼んだはずの傭兵達だが、いつまで経っても一向に働く様子を見せないからだ。
「‥‥あのキメラ‥‥」
 じっとキメラを観察していたホープ(gc5231)が口を開く。
「おぉ、もしや弱点でも分かったのかい?」
「‥‥パンツとかはいてるのかな?」
 その発言に管理人がずっこけたのは言うまでもない。
「‥‥これがキメラでなかったら、うちに一匹持ち帰りたいくらいね。まぁ‥‥どの道無理でしょうけど‥‥」
「きっ、君達、やる気あんの!?」
 紅 アリカ(ga8708)の言葉に、とうとう管理人が怒鳴った。
「犬VS猫‥‥この戦いは負けられない。‥‥犬じゃなくて私は狼だけど‥‥」
 一人やる気を見せていたのは佐倉・咲江(gb1946)。ちらりと覚醒して見せたその姿は、髪が犬の――失礼、狼の耳のようにぴょこっと立った。
 彼女がいなければ、今頃管理人の血管がぷっつんしていたかもしれない。
「さぁて、そろそろ行こうかしらん?」
 アイムールを手に、ヴィヴィアンが声をかける。
 それまで猫娘と遊んでいた面々も武器を取り、立ち上がった。
 そして、そうする必要のある者は、移動を開始する。
「まったく、どうして最初からそうしないんだ」
 唾を吐きそうな態度で言った管理人の脇を通り過ぎたのは、ユウだった。
「小さなコ達だって来る公園。放って置くワケにも行かないし、悪いケド退治しちゃうのだ。でも、かわいそうだと思うの」

●猫娘掃討作戦
「ほら、食べるといい。‥‥よしよし、いい子だ」
 池から延びる池道。西へと向かうその道の入り口で、ヘイルは余った猫缶をその辺の猫娘達に与えていた。
 猫娘の方も全く警戒せず寄り付き、かなり懐かれた様子である。
「‥‥随分と、この娘達がお気に入りなのね」
 東へと続く道を担当する紅も、近くの猫娘をゴロゴロしてやる。
 ヘイルは苦笑しながら頷いた。
 その背後で佐倉が屈伸などして準備運動を、王が武器の点検を行っていた。
 王のその姿はキャットスーツに猫耳など、各種猫娘変装セットを取りそろえ、キメラとお友達になる準備は万端である。佐倉とともに、周囲のキメラとよく馴染んでいる。
 すっと、王が猫槍「エノコロ」を取りだしてゆらゆらと風に晒した。
 キラリ、と周囲の猫娘(と佐倉)が目を光らせ、エノコロに寄ってくる。
「準備出来たから、始めちゃって」
「がぅー」
 ヘイルに向かって、王が呼びかける。
 手を振って応えた彼は、懐から無線機を取りだした。

「ねこねこにゃんにゃんっ☆」
 ねこみみふーどを被ったユウは、やはり猫娘の友達的ポジションを担っていた。
 仲間だと思ったのかどうかは分からないが、その周囲には猫娘がわらわらと集まってきている。
 ホープも一緒になって遊んでいた。その手に、猫娘を撫でる感触が伝わってこないことが少し、寂しかった。
 それにヴィヴィアンは関心を示さず、作戦が始まるまではと小道の方へと移動する。
「あいつ等もお前みたいに猫だったら助ける事出来たのかな?」
 そこでは世史元が本物の野良猫に餌を与えながら語りかけていた。
「‥‥お前に聞いても意味無いか」
 鯉は食い散らかしたものの、人間へ危害を加えたわけではなく、ただ遊んでいるだけのキメラ。殺してしまうのは、少なくとも世史元にとってはためらわれることだった。
 その脇で、一匹の猫娘が派手に素っ転ぶ。
「あ、こいつはチェック柄だ」
 ワンピースの裾が捲れ、黄色と赤の下着が露わになる。世史元は、素直に見たままを言った。
「んふ。サービスサービス♪いい眺めでしょ?」
 仕掛けたのはヴィヴィアンだ。
 猫娘に足を引っ掛け、転ばせたのだ。その意図するところは、達成されたようである。実に眼福。
 立ちあがった猫娘は、ワンピースを押さえて赤面しながら走り去っていった。恥じらいという感情は設定されているらしい。
 今まで餌を食べていた野良猫も、猫娘の倒れた衝撃に驚いて逃げてしまったようである。
「何故ここに?」
「あらぁ、作戦が始まるまで暇だからよ。からかう相手も欲しかったの」
 そうか、と苦笑しながら世史元は立ち上がる。
『こちらヘイル。配置についた。‥‥こら、そんなとこ舐めるな。いや、なんでもない。任務は果たす』
 丁度世史元の腰にぶら下げた無線機からヘイルの連絡が入る。作戦開始の合図だ。
「ふふっ、何をやっているのかしらね」
 それを聞いたヴィヴィアンは、チャイナドレスを翻して広場へと戻っていった。
「‥‥さて、と」
 世史元の役目は、戦闘により逃げようとする猫娘を食い止めること。いわば番人だ。
 作戦が始まれば猫娘はどっと流れてくることだろう。
 戦いたくない、など言ってられなかった。

 に‥‥っ!?

 池では、無線連絡が終わると同時に作戦が開始されていた。
 王がエネルギーガンで猫娘を一匹撃ち抜いたのだ。
「がおー、逃げないと食べちゃうよ‥‥。‥‥食べないけど」
 スカートをたくしあげた佐倉が池へ飛び込む。そしてねこねこなっくるでそこらの猫娘をぽかりと叩いて回った。
 赤いフォースフィールドは衝撃の過半を受け止めたのだろうが、驚くほどあっさりと気を失った猫娘がぷかりと池に浮かび、パニックを起こした彼女らが蜘蛛の子を散らしたように逃げ惑う。
 逃げ道は二つ。西側の池道と、東側の池道だ。
 どちらも辿り着く先は一緒である。
「こちらで追いたてます。そちらはお願いします」
 ヘイルが池道へ向かう。紅ももう一方の池道へと消えていった。
 全ての猫娘が逃げたわけではない。錯乱し、池でおろおろとする個体もちらほら見える。
「ごめんなさい、ごめんなさい‥‥!」
 エネルギーガンから放たれた閃光がフィールドを撃ち抜き、何匹もの猫娘を焦がした。先ほどまで遊んでいた手前、王の心には罪悪感に似たものが浮かんでいた。
「がぅ、池の中の猫さんはこっちで追い込む‥‥」
 池の中では佐倉が駆けまわっていた。スカートを翻し、蹴り技も取り入れたその動きは‥‥眼福だ、などと言っているような状況ではない。水しぶきを纏い、美しく映えた。

「‥‥遠慮しないわ。まとめて片付けてあげる」
 戦いにおいては手を抜かない。紅はただ猫娘を追いたてるだけでなく、銃で、刀で猫娘を片づけていった。
 逃げるその速度では、広場へ着くのもあっという間だ。しかしそれまでに半数以上の猫娘が倒されていたのは、一重に彼女の実力が為せる業だったろう。

 もう一方の脇道を進むヘイルは、紅とは逆に極力手を出さないようにしていた。
 ULTに断られたとはいえ、何とか彼女らを助ける方法はないかと考えていたのだ。
 それ故か、近づいてくるヘイルに猫娘達も怯えはすれど、しかし一目散に逃げようということはしない。
 先ほどまで餌を与えてくれた彼。武器も抜かないその態度に、彼女らも少しずつ距離を詰め、また先ほどのようにじゃれつきだした。
 これから倒さねばならない身の上であるヘイルが困ってしまったことは言うまでもない。

 紅が追い込んだ猫娘達がなだれ込んできたことで、広場でも戦闘が開始される。
 今まで一緒に遊んでいたユウが特殊銃「ヴァルハラ」を取りだし、ブリットストームで一気に数匹の猫娘をなぎ倒した。
「言うこと聞かないコはこうなんだからねッ☆」
 ためらいのないその戦い方は、流石と言えよう。
 一方、釘バットで猫娘の退治に当たったのはホープだ。
 ヴィヴィアンの武器もアイムール――鈍器である。
「うー、なーんか色々とヤバイねー、色んな意味でー」
 そう言いながら猫娘の頭を潰していくホープ。その言葉は、自分に向けたものなのか、どうなのか。
 間延びしたようなその声から、真意を汲み取ることは出来ない。
「にゃんにゃんにゃんにゃんとクソ喧しいんだよ!この雌猫どもがっ」
 覚醒したヴィヴィアンが怒声を上げながら猫娘をぐしゃりと潰した。
 畏怖した猫娘が出口へ向けて駆けだす。
 そのうちの一匹の襟元を、ヴィヴィアンがぐいと掴んだ。
「逃がすと思ってんのか、死ねやオラァ」
 そして、放り投げる。
 逃げ惑う数匹の猫娘を巻き込み、地面に叩きつけられた彼女は、気を失ったようである。

「せめて痛くない状態で逝かせてやるよ。‥‥いい夢でも見ていてくれよ」
 出口到達第一号の猫娘を、手刀が襲う。
 首元にそれを受けた猫娘の意識がぷつりと切れ、走ってきたその勢いを殺しきれず、前のめりに倒れる。
 優しく抱きとめた世史元が武器を突き刺す。猫娘は、意識のないまま、逝った。
 それを見た猫娘の恐怖はさらに増し、逃げ道が塞がれている状況からさらなるパニックを起こしておろおろとし出す。中には強行突破を狙うものもいた。
「通行止めだ。悪いな」
 超機械から発生される竜巻に、猫娘が吹き飛ばされる。木に激突し、落下。逃走は不可能だということを知らしめた。

 広場にはヘイルが到着していた。
 さすがにここまで来てしまっては、手を下さずにはいられない。
「‥‥済まない」
 両手に槍を引き抜き、連れてきた猫娘を貫く。
 驚いた彼女らも逃走しだすが、既に遅い。
「えーい!」
 ホープが釘バットを振り回す。
 そこに紅も加勢。池道から連れてこられた猫娘達は為す術なく倒れていった。

●戦い終わって
 傭兵達の作戦は見事に功を奏し、キメラ討伐は手際よく終了した。
「ほーほっほ完全勝利☆」
 猫娘の亡骸をヒールで踏み、ヴィヴィアンは高笑いする。だがしかし、それだけでは終わらない。
 作戦中、木に登って難を逃れた猫娘がちらほらと見える。傭兵達は公園をぐるりと回って、そういった猫娘達を始末する必要があった。
 その中で、単独での捜索を願い出たヘイルは、自分の担当した池道を見回っていた。
 自分の担当した個所であるから、自分で蹴りをつけたかった。

 かさり。

 風も吹いていないのに、木の葉の擦れる音が聞こえる。
 見上げると、猫娘が一匹、枝に跨ってヘイルを見下ろしていた。
 遠距離武器を持たないヘイル。片づけるには、まず彼女のもとへ行かねばならない。
 木をよじ登り、猫娘に近づく。
「あれ、何してるのー?」
 いち早く捜索を終えたユウがやって来て、声をかける。
「ここに一匹いるんだ」
 応え、ヘイルが猫娘に手を差し伸べる。

 にゃっ!

 抵抗した猫娘がその手に爪を立てる。
 だがヘイルの表情は柔らかく、笑みを浮かべていた。
「‥‥お前は運が良いな」
 抱きかかえ、枝から飛び降りる。
「あら、その子どうするの?」
 ヴィヴィアン他、猫娘を捜索していた面々が集まってくる。
「せっかく生き延びたんだ、何処かで保護しては貰えないか?」
 攻撃されないことを不思議に思ったのか、きょとんとした表情の猫娘を抱えたまま、ヘイルは言った。殺すだけなら枝の上でも出来たことだ。
 王は首を振る。
「ULTが無理なら、無理よ」
「がぅ‥‥」
 かわいそうだけど、といった様子で佐倉が頷く。
 顔を伏せたヘイル。やはり、無理なことは無理だ。彼も分かっていただけに、辛い。
「お前達は何も悪い事していないのにな」
 猫娘の頬を、世史元がさらりと撫でた。
「‥‥供養してあげましょう。私達に出来ることは‥‥それだけ」
 目線を逸らしながら、紅が言う。
 それしか出来ないことに、腹が立っているのだろう。
「結局、殺す、か」
 誰にも聞かれないよう、ヘイルが呟いて猫娘を降ろす。
 そして槍を握った。
 サッと、その手が振られる。
 矛先は猫娘の胸――の前で、止まった。
 手がガタガタと震える。
 これが最後の一匹。先ほどは周囲の環境に呑まれてその武器を振るうことが出来たが、今は何故か、出来ない。
「あら、私がやりましょうか?」
 アイムールを取り出し、ヴィヴィアンが言う。
 だがヘイルは首を横に振った。
「いや、いい。俺がやる」
 決意を固め、ヘイルは猫娘の顔を見た。
 状況を飲み込めていないのか、諦めたのか。彼女はあどけない表情のまま、首を僅かに傾げた。微笑んでいるようにも見える。
「俺達にはこうすることしかできないんだ。恨んでくれて構わん。化けて出たいならそうしてくれ」
 そして、最後の猫娘は地に沈んだ。
 誰も、無理にヘイルの顔を覗き見ようとはしなかった。
「‥‥鯉と一緒にお墓作ったげる? これ名案だと思うんだけどどうかな」
「それいいと思う!」
 ホープの提案に、ユウが乗る。

 後日。
 その公園の一角には、小さな小さな墓が出来ていた。
 管理人が渋々ながらも傭兵達の願いを聞き入れ、作ったものだ。
 当然、それが実際にそこに埋まっているわけではない。だが、その棹石にはこう刻まれていた。

                                                          ――猫娘、ここに眠る。