タイトル:【JL】逃走なうマスター:矢神 千倖

シナリオ形態: イベント
難易度: 不明
参加人数: 15 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/02/19 05:08

●オープニング本文


 ここに、能力者が集められた。
 時刻は間もなく午後5時。季節柄、日もほとんど沈んでいた。
 集められた能力者たちは一カ所にまとまり、そこから丁度20m先に、4つの檻があった。
 檻からは一本の鎖が伸びている。それは檻のすぐ前にある箱に繋がり、箱からはさらに能力者と同じ数だけの鎖が垂れさがっていた。
「では、これより順番にその鎖を引き抜いていただきます。箱から垂れた鎖のうち、一本だけがハズレとなっており、ハズレを抜いた場合、檻に閉じ込められた狩人が放出され、ゲーム開始となります。なお、鎖を抜いた方は、抜いた時点で逃走を開始することが可能となっております」
 アナウンスでゲームの説明が行われる。そう、ここに集った能力者は、ゲームの参加者なのである。
 そのゲームの名前。題して――

 逃 走 な う

 ルールは簡単だ。
 まず、参加者はプレイフィールドとなる遊園地、ジョイランドの中を逃げ回る。それを狩人と呼ばれる黒服の人々が参加者を探し、追いかける。
 狩人に捕まった参加者は失格となり、最後まで逃げ切った、あるいは途中で離脱を申し出た者はそれに応じた賞金を得ることが出来る、というものだ。
 ゲームの途中では、様々な試練が課せられる。これを達成できるか出来ないかでゲーム自体の難易度に変化が出る、という仕組みになっているのだ。

 さぁ、間もなくゲームの幕が上がる。
 賞金か、信頼か、裏切りか、脱落か。結果やいかに。

●参加者一覧

/ UNKNOWN(ga4276) / ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280) / ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751) / 黒羽・ベルナール(gb2862) / 流叶・デュノフガリオ(gb6275) / 相澤 真夜(gb8203) / レイード・ブラウニング(gb8965) / ソウマ(gc0505) / レインウォーカー(gc2524) / ネオ・グランデ(gc2626) / 悠夜(gc2930) / ヘイル(gc4085) / 熾火(gc4748) / 立花 零次(gc6227) / 一二三四(gc6788

●リプレイ本文

●第一の試練
 改めて説明すると、ジョイランド中央広場に集った能力者達は、逃走なうというこのゲームの参加者である。これから始まるのは、その前哨戦といったところか。
 彼らの集う地点より約20m先には、4つの小さな檻が設置されている。その中で直立不動でいるのは、黒服の狩人。檻の前には参加人数分の鎖が束ねられており、その中に1本だけハズレが紛れている。誰かがそのハズレを引いた瞬間、狩人が檻から解き放たれてゲーム開始、となるわけだ。
「――なんだね? この鎖は」
 その場に居合わせたUNKNOWN(ga4276)が、興味津津に鎖へ近づく。人が集まっているので何となく参加してみたが、今一雰囲気が飲み込めていない様子。
「ふむ、引けばいいのかな?」
 垂れさがる鎖の束から一本を選び出し、グッと引き抜く。
「‥‥抜けてしまったが、これはいい、のかな?」
「えぇ。間もなくゲーム開始となりますので、どうぞお逃げください」
 係員の指示で、UNKNOWNが一足先に逃走を開始した。
 次に鎖を引きに出たのは、キョウ運を自負するソウマ(gc0505)。躊躇なく引き抜いた鎖は、アタリ。檻は解放されない。
「運を味方につけた僕は手強いですよ」
 その取っ手を指にひっかけてくるくると回しながら、ソウマは不敵に笑んで逃走を開始。
「運は悪い方じゃないんだけど、一体どうなる事やら」
 続いてレインウォーカー(gc2524)。
「アタリを引きませんように!」
 参加申し込みをしてから重体を負ってしまったというユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)。彼が引いても、ハズレはなし。
 試練はまだ続く。
「さて逃走開始、と。では幸運を!」
 軽々とクリアしたヘイル(gc4085)も、スタコラとその場を離れた。
「じゃあ、先‥‥行ってるね」
 流叶・デュノフガリオ(gb6275)、クリア。夫であるヴァレス・デュノフガリオ(ga8280)に言付け、先に逃走を開始した。どういうわけか、うさぎ――本人曰く、うしゃぎのきぐるみである。
 さらに試練に挑むのは黒羽・ベルナール(gb2862)。
「よしっ! 出出しはいい感じ♪」
 こちらも難なくクリア。
「流石にヒヤっとするもんだなぁ」
 8番目、悠夜(gc2930)も逃走開始。残る鎖は6本となり、ハズレを引く可能性がぐぐっと上がってきている。
「ふっ、まぁ存分に楽しませてもらおう」
 熾火(gc4748)、クリア。
「ユーリ君は、どっちに行ったかなぁ」
 相澤 真夜(gb8203)、クリア。義弟と合流すべく、いそいそと駆けだす。
 さらにヴァレスも、
「よしっ。流叶を見つけないと」
 何とかクリア。
 続いての挑戦者は立花 零次(gc6227)。残る鎖は3本となり、ハズレを引く確率は3割を超える。
「行きますっ!」
 恐ろしくなったか。引き抜いたその勢いのまま走り出す立花。だが、それが功を奏した。
 ガタッ!
 音を立てて檻から狩人が解き放たれる。
「速い‥‥が、こっちだって速さを売りにしてんでね」
 あんな狭いところから出てきた直後だとは思えないような速度で迫る狩人に、ニヤと笑みを浮かべて瞬天速を駆使しつつ逃走を開始したのはネオ・グランデ(gc2626)だ。その圧倒的脚力で、あっという間に狩人を引き離して難を逃れた。
「チッ、やはりか」
 予め身構えていたレイード・ブラウニング(gb8965)も、即逃走。全力疾走する立花がそれに並び、一気に反対方向へ別れることで何とか狩人を撒くことに成功した。
 こうして、逃走なうは始まった。能力者と狩人の、賞金をかけた壮絶な鬼ごっこの幕が上がる。

●逃走なう 1幕
「ユーリ君! 離脱するまでは、おねえちゃんと一緒だよ? がんばろうね!」
 フードコートにて無事合流した相澤とユーリ。怪我をしている彼のことは、義姉である自分が守らねば、というのが彼女の意思だ。
「ごめんね、迷惑かけて」
 本来なら、一緒にこのゲームを楽しむはずだった二人。しかし、予想外だったユーリの怪我。本人がしょげるのも無理はない。
 そこかしこから食欲をそそる匂いが漏れてくる。思わず、ユーリの腹が鳴った。
「あはは、これ終わったら、何か食べに行こーね!」
 おかしそうに笑う義姉相澤。思わずユーリが赤面した。
 そしてそこへ迫る、狩人。
「! ユーリ君! なんかきた‥‥!」
 その気配を察知した相澤がユーリの口を押さえ、息を殺す。が、その足音はコツコツと次第に大きくなってくる。いかに隠れたところで、見つかってしまってはどうしようもない。それに、見つかってから逃げるのでも、遅い。
 まして、ユーリは手負い。先に逃げるべきか。
「!」
 見つかった。
「ユーリ君、走って!」
 相澤、強引にユーリを立たせ、走る。
「駄目だ真夜姉、二人一緒じゃ逃げ切れない!」
 初動が遅れた分、狩人との距離が近い。このままでは二人とも捕まってしまうだろう。
 だから相澤は、ユーリの背中を押した。
「真夜姉!?」
 走りながら振り返る。相澤は、こともあろうにT字路で立ち止まっていた。
「こっちですよ! のんびりな狩人さんめっ!」
 彼女は最初からこうするつもりだったのだろう。ちら、とユーリに笑顔を向けると、彼とは反対方向へ向かって走り出す。
 思惑通り、狩人は相澤をターゲットに定めた。その間に、ユーリは痛む体に鞭打って走る。
 狩人の手が相澤の肩へ伸びる。
「瞬天速は負けないのです!」
 スキルを用い、距離を稼ぐ。が、それも直線的な動きしか出来ない故、狩人の視界からは逃れられない。
 せっかく開いた間も、あっという間に縮まり、その肩が掴まれた。

 相澤 真夜、脱落。

 走り疲れた彼女は荒くなった息のまま後ろを振り返る。彼はきっと上手く逃げたことだろう。
 それでいい。
「うう‥‥私は捕まっても、ユーリ君がいきのこればいいんだもん!」
 グッと拳を握って立ちあがり、相澤は脱落者の控室を兼ねる檻へと連れて行かれた。

 こちらはラビリンスエリア。
 迷路やお化け屋敷といったアトラクションが立ち並ぶ本エリアであるが、この場全体がちょっとした迷路のように複雑に出来ているため、道が入り組んでいる。ただ隠れるためであったら打ってつけな場所だった。
 ここに身を潜めたのは4人。
「潜伏に最適な場所は狙われやすいからな。そこに近づく狩人を監視する方が効果的な筈だ」
 まず、ヘイル。隠れやすいところではなく、見晴らしの良いところを敢えて選び、狩人の早期発見、早めに逃走する作戦のようだ。なるべくならやり過ごそうと考える他の面々と、ちょっと変わったところである。
 次に、ソウマ。彼は陰から陰へと移ることで、ヘイルとは違い狩人との遭遇そのものを回避しようと考えていた。出会わないという妙な自信だけは、ある。
 そしてこちらは二人で一組。レイードと熾火だ。
「よく逃げてきたものだ」
「当然だ。‥‥後ろを頼む。俺は先行し、様子を見よう」
 互いの死角をカバーし合いながら共に行動する。なかなかに良いアイデアだろう。
 少なくとも、先手を取るため、という意味では。
「しっ」
 視界の隅に黒い影を捉えた熾火が、レイードを半ば叩きつけるようにして身を潜める。
 ほんの少し陰から顔を出して、様子を確認。影の正体は、間違いなく狩人だ。
 緩慢な動作で周囲を見回しながら、確実にこちらへ向かってきているのが分かる。
 下手に動けば見つかる。が、動かなくても当然見つかる。
 ならば、逃げるしかない。
「来たぞ、散れ!」
 熾火の合図で一斉に駆けだす。それを見つけた狩人が、恐るべき速度で追いかけた。
 ターゲットとして捉えられたのは、熾火だ。
「熾火‥‥逃げ切れたら奢ってやるからな!」
 別の方向へ逃げたレイードの叫ぶ声が耳に届く。
 ニッと笑みを浮かべた熾火は、速度を維持しながら無線機を取り出す。
「こちらフードコート。狩人1人から逃走中――」
 彼女は悟っていた。これは逃げ切れない、と。
 だからせめて、情報だけでも流しておこう、と

 熾火、脱落。

「あ〜ぁ、協力なんてしようと思うからこうなんだよ」
 相澤、熾火脱落の知らせを聞いた悠夜は、ニヤと笑みを浮かべた。吐いた言葉は、周囲に聞こえないように小さく、小さく。だがその凶悪とも思える表情は、隣にいたレインウォーカーにはだだ漏れだった。
「何考えてんだか」
 思わず苦笑が漏れてしまうのも、無理はなかった。
 ここは中央広場。ゲーム開始地点の近くだ。
 一度この広場から散った彼らだが、狩人が去った直後なら安全だろうとここへ戻ってひとまず身を潜めていた。
 が、もちろん完全に安全というわけでもない。
 彼らの隠れる物陰に迫る、狩人。
「まずは逃走ルートを――来たぁ!」
 狩人に見つかった場合、あるいは見つかりそうになった場合どのように逃げるか、これから考えようとしたところで、見つかってしまった。レインウォーカーと悠夜は慌てて飛び出し、逃走を図る。
「ちっ、こんな所で捕まってたまるかぁ」
 全力で走ればきっと逃げ切れる。レインウォーカーはそう思っていた。いや、実際にそうだったのかもしれない。
 しかしそれは、共に逃げるのが悠夜でなかったら、あるいは一人だったらの場合だ。
「俺はどーしても金が要るんだなぁーこれが! というわけで、あばよ!! レイン!!!」
 こともあろうに、悠夜は並走するレインウォーカーに足払いをかけた。
「なっ、おま――」
 派手に素っ転ぶ。その間に悠夜はさっさと消えてしまった。
 当然というべきか。狩人は余裕綽々で追いついた。

 レインウォーカー、脱落。

 本人にしてみれば、非常に残念な結果であったろう。
「ほう‥‥こういうルール、か」
 その一部始終を見ていたUNKNOWNが、煙草を吹かす。あの黒服に捕まってしまえばアウト。そういうルールだ。
 あまりむやみに姿を晒しておくべきでもないだろう。彼はゲームを続けるべく、吸いがらを処理して立ち去った。

●第二の試練
 ゲーム開始20分。
 ジョイランド内のあらゆるスピーカーから、声が響き渡った。

「逃走なう参加者の皆様へお知らせです。ただいま、絶叫マシーンエリアのコースター前で、困っている人がいるようです。どうぞ、助けてあげてください。成功いたしましたら、逃走成功時の賞金を増額させていただきます。成功出来なかった場合は、狩人が1人追加されてしまいます。繰り返し‥‥」

 第二の試練開始のお知らせ。
 これに失敗してしまえば、このジョイランドを徘徊する狩人が増えてしまうという。
 だがそのために動くということは、それだけの危険を伴う。試練へ向かうかどうか、この判断で運命が大きく分かれることだろう。
「せっかく参加するんですから、楽しまないと損ですよね」
 早速絶叫マシーンエリアへ向かったのはソウマだ。自らのキョウ運を信じ、足早に、かつ慎重に駆ける。
 もちろんと言ってよいものか。試練を受けるのは彼だけではない。
「何だかドキドキしますねぇ」
 立花も、指定された地点へと移動を開始する。
「こちら黒羽! 試練いっくよー!」
 ゲーム開始と同時に絶叫マシーンエリアに潜伏していた黒羽。彼もまた、試練を受けるためコースターを目指す。位置的に丁度良かった。
 さらにネオ、UNKNOWN、悠夜も名乗りを上げる。
「このコースターから撮れる看板の写真がどうしても必要なんです。でも、私たちではどうしても上手く撮れなくて。ですから、能力者の方に是非お願いしたいんです!」
 困っているというのは、つまりそういうことだった。
「なるほど、では、カメラお預かりしますよ」
「じゃ、いってきまーす!」
 動き出した時に距離が近く、先にコースターに乗りこんだのはソウマと黒羽だ。
 ベルと共に、アトラクションが始動する。撮影すべき看板は、最初の大きな下りの真ん中にあるらしい。
 ガタ、ガタと大きく上昇。
「わ、緊張してきた‥‥」
 カメラを握る黒羽の手が汗ばむ。対して、ソウマの表情は涼しいものだ。
 頂点まで辿りつくと、コースターは一瞬止まる。
 黒羽の心臓が、4度躍った。

 二人がアトラクションを出るのと入れ替わるように、ネオら一足遅れた面々がコースターに搭乗してゆく。どちらにしろ黒羽とソウマがカメラを渡してしまえばそれで試練達成なのだが、敢えてなのかどうなのか、その辺を伝えない辺り不親切だ。
 後は歩いて数歩の距離にいる係員のお姉さんにカメラを渡すだけ。
 だがそこに迫る、狩人。
「ぬぁぁ!」
 いち早く気づいた黒羽が叫び声を上げて逃走を開始。
 ソウマもカメラを持ったまま逃げ出した。
 狩人が狙いを定めた相手は、ソウマ。
 それもキョウ運が引き寄せてしまったものなのか。それは、分からない。
 だが、確実に狩人はソウマへ迫っていた。
「‥‥こんな所で躓く訳にはいかないんですよ」
 そんな言葉も虚しく、

 ソウマ、脱落。

 試練達成を目の前にしてのことだった。
 その間に、ネオ、UNKNOWN、立花、悠夜がアトラクションから出てくる。黒羽とソウマが先に逃げたおかげで、今度は狩人に見つかることもなかった。

「逃走なう参加者の皆様にへお知らせです。絶叫コースターエリアにて行われた試練は、ネオ・グランデさんにより達成されました」

 どうやら、直接カメラを渡したのはネオのようだ。

●逃走なう 第二幕
 第二の試練が行われている頃。
 熾火の脱落を経て、次の動きを考えるべくレイードは未だラビリンスエリアに隠れていた。
「まずは、どうにか逃げやすいところへ‥‥」
 そう呟くレイードに迫る、狩人。
「不味い!」
 足音にだけ反応し、レイードは飛び出した。
 その背後からは狩人が迫る。
「くそ、連続でか!」
 先ほど熾火が捕まったばかり。その狩人がまだこの辺りを徘徊していたのだろう。
 逃げる、逃げる。だが――。

 レイード・ブラウニング、脱落。

 それだけではない。
 試練が始まり、人が大きく動くと予想したのか、ユーリがこのラビリンスエリアへ移動してきていた。
「真夜姉が繋いでくれたんだ。なんとか、ちょっとでも長く残らないと」
 決意を新たに、隠れる場所を探す。
 そんな時だった。
「とにかく、隠れ――わっ!」
 角を曲がってきた狩人に発見される。
 慌てて反対側へ逃げるが、怪我をした体では思うように足が動かない。
「来ないで来ないで来ないでーっ!」
 そう叫ぶも虚しく、

 ユーリ・ヴェルトライゼン、脱落。

 試練終了の知らせが入った頃、デュノフガリオ夫妻はキッズランドにいた。
「どうせなら‥‥デートで来たかったな?」
 これまで狩人に見つかることもなく、上手くやり過ごしてきた二人。
 とはいえ、緊張状態は続く。そんな中、流叶の方がポツリと漏らした。
 せっかくの遊園地なのだから、確かに純粋に楽しみたい、という気持ちもあって当然だろう。
「ふふ。じゃあ今度はデートで、ね♪」
 よしよし、と流叶を撫でてやりながら、夫ヴァレスが微笑みかける。

 ちきしょう、ばくはt(インクが擦りきれていて読めない)

 思わず筆者の本音が出てしまったが、容赦していただきたい。きっと読者も同じ気持ちのはずだ! いや、言い過ぎか。
「よし、いこう♪」
「あぅ‥‥見つからない、‥‥よね?」
 流叶が袖を引っ張る。さりげない、いや、きっと狙っている。狙っているに違いない。このタイミングで上目づかいはどう考えt(やはりインクが以下省略)
 それはともかく。にこりと笑んでみせ、ヴァレスが先を歩く。角からちょっとだけ顔をのぞかせ、狩人がいないかを確認。
 そこに背後から迫る、狩人。
「‥‥! 逃げてっ!」
 気配に気づいた流叶が夫の背を押し、駆ける。
 それを狩人が追う。
 二人そろって逃げていたのでは、すぐ捕まってしまうだろう。
「流叶、後は任せたよっ! ほぉらこっちだ!」
 妻を逃がせるのならば、自分が捕まっても構わない。それほどの覚悟で、一瞬ヴァレスが立ち止まり、狩人の気を引いた。
 そして、妻とは別の方向へ逃げる。
 思惑通り狩人を引きつけ、ここからヴァレスの必死の逃走劇が始まった。

●第三の試練
 開始40分。この時点で生き残りは8名。
 確認をすると、UNKNOWN、ヴァレス(現在逃走中)、黒羽、流叶、ネオ、悠夜、ヘイル、立花だ。
 彼らに対し、ここでさらなる試練が告げられた。

「逃走なう参加者の皆様へお知らせです。ただ今、中央広場におきましてジョイ君がパンを作って子供たちに配ろうとしています。しかし、小麦粉が足りなくて困っているようです。ワールドフードコートで小麦粉をもらい、ジョイ君へ届けてあげてください。これに失敗してしまうと、皆様の中からランダムで1名、失格とさせていただきます。繰り返し‥‥」

 第二の試練に同じく、これに挑戦するかしないかが命運を分けることになるだろう。先にソウマが捕まってしまった通りだ。
 これに真っ先に向かったのは立花とネオだ。二人は位置こそ違うものの、ほぼ同時にフードコートへ入った。
 ちょっと遅れてやってきたのはUNKNOWNと黒羽。この4人が今回の試練の挑戦者であり、よく見れば、第二の試練に挑戦した面々であった。
 ネオは、試練でなくてもそうだが、壁に背中を当てて常に周囲を警戒しつつ、小麦粉を手に入れるべく目的地点を目指す。
「こっち、のはずだな」
 差し掛かったのは、十字路。ここをまっすぐ行きたいところではあるが、そう軽く飛び出せるわけもない。
 進行方向は、クリア。同時に視界に入る脇道にも、狩人の姿は見えない。残るは、背を向ける道。
 そっと顔を覗かし、即ひっこめる。そして元来た道を引き返した。
 いたのだ。黒服の狩人が。幸いにして気付かれなかったようだが、このまま突っ切るのは自殺行為。遠回りを余儀なくされた。
 が、その狩人は、獲物を見つけていた。それはネオではなく、
「む? アレか」
 UNKNOWNだ。全力疾走で向かってくる狩人に、焦ることもなく首を捻り、とりあえず逃走を開始する。が、ただ道を逃げるばかりでないのが彼だ。脇道に入ると、持ち込んでいた細荒縄を排水用のパイプなどにくくりつけ、再び逃走開始。もう手が届こうかという距離まで迫られていたが、UNKNOWNの張った縄に、まんまと狩人が引っ掛かって盛大に素っ転ぶ。その間に、UNKNOWNは段差を上手く利用して跳躍。建物の屋根に登り逃げ切った。
 その間に、立花と黒羽は無事小麦粉を入手して中央広場への移動を開始していた。
 狩人は全部で4人だ。その全てがこのフードコートに集まっている可能性も、ないわけではないが極端に低い。実際、このエリアにいる狩人は1人だけ。それも、UNKNOWNが引きつけたことで、試練に参加する他の3名はそれほど警戒する必要は、本当はないのだが。
「ちっ、狩人がいたということは、下手に動けんな」
 そんなことなどつゆ知らず、ネオは警戒レベル最大で小麦粉の受け取りに向かう。
 彼が小麦粉を手にした頃には、黒羽と立花は既に目標の中央広場に到着していた。
 しかし、そこに現れる、狩人。
「うわぁ! 捕まるのはごめんだよ〜!」
 真正面から出会ってしまったのは黒羽の方だった。くるりと背を向けて逃走開始。その隙に、と狙ったわけではないのだが、立花が広場の中央で腕を組んで困ったしぐさをしているジョイ君に背後から近づく。
「どうぞ」
 差し出された小麦粉に、大仰に驚いて見せるジョイ君。ここにいるのは彼だけでなく、小さな子供たちもはしゃぎまわっていた。
 ジョイ君は目の前に設置された調理台。そこにちょんと乗せられたボウルにドサッと小麦粉をブチ込み、そのままオーブンへ。そうして2秒、オーブンを開くとなんとそこには焼き立てのパンが大量に出てくるのであった。
「え、何これ」
 思わずそんな反応を示したのも無理はない。だがこれは時間制限付きのゲーム。はしょれるところはとことんはしょらねばならないのだ。え、普通はしょれないだろうって? いや、オーブンに仕掛けが――おっと失礼。この報告書は全年齢対象。まだ小さなお子様の眼に触れることもあるかもしれない。というわけで、こうしよう。

 ジョイ君が魔法を使ったのです!

 ジョイ君が広場でパンを配り、子どもたちは大喜び。ヨカッタネ!

「逃走なう参加者の皆様にお知らせです。ワールドフードコートより中央広場にかけて行われた試練は、立花 零次さんにより達成されました」

●逃走なう 第三幕
「あぁ、もう‥‥ホント、良かった」
 こちらラビリンスエリア。お熱い夫婦ことデュノフガリオ夫妻はここで合流した。
「うん、なんとか撒けたようで、良かったよ♪」
 相変わらず殺人的な笑顔を向ける夫ヴァレス。
 互いの無事を確認し、二人は近くの陰に身を潜めた。
 小さな声でいくつか会話をし、人の気配を感じ取ったら息を殺す。そんなことが、何度か続いた。

 また、ヴァレスと同じく狩人から逃げ回っていた者がいる。試練の最中、あと一歩のところで逃走を余儀なくされた黒羽だ。試練自体は立花が達成したので、受け取っていた小麦粉はこっそり係員が回収しておいた。
「ふぅ、危なかった‥‥」
 フードコートにとんぼ返り。彼はひとまずそこへ隠れ、なんとか狩人をやり過ごしたようである。
 ごそごそとポケットを漁り、無線機を取り出す。狩人に遭遇、フードコートにて撒いたということを全体に連絡しておいた。
『こちらはヘイル。発見なう、なんてな。‥‥狩人が行くぞ、すぐに離れろ』
 隠れながら狩人の動きなどを観察していたヘイルから連絡が入る。狩人がフードコートへ入ったのを目撃したのだろう。
『ネオだ。狩人が1人うろついている。フードコートからは離れた方がいいだろう』
 試練が始まった時に狩人を見かけていたネオがさらに警告。
 単純に考えれば、狩人は現在フードコートに3人いることになる。
 ではもう1人の狩人はどこにいるのだろうか。

 中央広場だ。
 試練は既に達成され、立花はその場を離れていた。ここにいるのはヘイルと、悠夜。
「へっ、随分と人が減ってきやがったな」
 協力しない方が有利、と考えた悠夜は、無線など持ち込んでいなかった。
 今さらであるが、むろんこのゲームに勝利はあれど、優勝、という概念はない。1人勝ちであろうと、他に勝者がいようと、賞金に変動はないのだが‥‥。
 彼にとって、他の参加者は利用出来る時に利用する道具、のように見えているのだろう。先に脱落してしまったレインウォーカーもそうだった。
 そんな彼に迫る、狩人。
「ケッ、またかよ!」
 足音に気付いた悠夜は即座に逃走を開始。その動きを察知し、狩人が追う。
 だが、運の良いことに上手く脇道に入ったことで即座に狩人を撒くことに成功。
「はぁ、脅かしやがって」

 場所はキッズランドに移る。
 悠夜を見失った狩人は、次の獲物を探し、このエリアへやってきていた。
 わざわざこの場面を描写するということは、読者の諸君には既にお分かりのことであろう。ここに、参加者の一人が潜んでいるからだ。
 実は筆者、毎度毎度参加者の視点から発見され、逃走するというパターンに少々飽いてきた。そこで今回は狩人の視点へ移行し、発見し、追いかける立場からの描写を行ってみたいと思うわけである。という、蛇足。
 さてこの無言の狩人、子供たちがキャッキャと笑い声を響かせるこのエリアを闊歩していると、ふと、何かを捉えた様子。
 メリーゴーランドへ入るための、チケットあるいはパスポート確認用の、係員専用ボックス。そこから伸びる、怪しい影。ボックス自体のそれはもちろん、中にいる係員の影もある。しかしそこに、もう1つ、影が伸びていることを狩人は見逃さなかった。
 歩く。靴音が、鳴る。
 それに気づいてか、どうなのか。ボックスよりちょろっと顔を覗かす男が1人。
 立花だ。
 狩人の存在に気付いた立花は、顔色を変えて逃走。
 それをすかさず、狩人が追いかける。
 立花逃げる。
 狩人追う。
 立花か狩人か、狩人か立花か。その差ぐんぐんと縮まり、やがて――、

 立花 零次、脱落。

「あぁ、もう少しでしたのに」
 肩を掴まれ、がっくりとうなだれる立花。狩人はそれに気を払うでもなく、即座に次の獲物探しへと移った。
「でも久方ぶりの鬼ごっこ。楽しかったです」
 脱落は脱落。
 しかし楽しめた。
 ふっと笑った立花は、大人しく脱落者用の檻へ向かうのであった。

●逃走なう in檻
 さて、これまでに捕まってしまった参加者達にスポットを当ててみたいと思う。
 こちらは中央広場のスタート地点付近に設置された、大きめな檻。まぁ能力者であれば容易く破壊し、脱出出来てしまう程度の強度であるが、そこはやはり予算の都合。参加された諸兄におかれては、そういう体でよろしくお願いしたい。
「ごめんね真夜姉、せっかく逃がしてくれたのに」
「いいの、気にしない気にしない。楽しかったからいいんですっ」
 こちら相澤、ユーリ義姉弟。義弟たるユーリの怪我がなければ、もしかしたらまだ逃走を続けていたかもしれない2人だ。非常に残念であるが、賞金よりも楽しむことを優先して参加していただけあって、その表情は明るい。
 ユーリは若干しょげているが、相澤はその義姉パワーでしっかり励ましていた。

「これでも信用していたんだがな」
「嬉しい言葉だが、まぁ、またの機会に宜しく頼むよ」
 そしてこちら、熾火、レイードのペア。友人同士による参加であった。
 この2人はやや序盤に捕まってしまったために、レーションで狩人の気を引くなどの作戦が実行される間もなかった。非常にユニークな手ではあるが故に、残念である。
「次はしっかりやれ。これからも頼むぞ」
 熾火の声は冷たいながらも、しっかり相手を信頼していることは伝わる。
 良い関係と簡単な言葉で済ますには、少々もったいない。

「まさか、この魔猫が捕まってしまうなんて」
 キョウ運の持ち主、ソウマ。いかに運があろうとも、やはり現実は立ちはだかるものである。
 その横では、友人に裏切られたレインウォーカーが膝を抱えていた。
「こんなゲームで全力で走ったのは久しぶりだけどぉ、酷いなぁ」
 彼を陥れた張本人、悠夜は現在絶賛逃走中である。

 さて、捕まった立花が檻に入れられる。そろそろゲームの方へ場面を移そう。

●第四の試練
「逃走なう参加者の皆様にお知らせです。ただいまラビリンスエリアにて鬼が出現いたしました。ジョイ君がこれの退治に向かいましたが、キッズランドにて武器の光線銃を落としてしまい、退治出来ず困っているようです。どうか光線銃を探し、ジョイ君へ届けてあげてください。失敗してしまえば、狩人が4人追加されてしまいます」

 開始から70分。
 ジョイランド全体に設置されたスピーカーから新たな試練が告げられる。
 この頃、ラビリンスエリアでは鬼(の格好をしたスタッフ)が暴れていた。虎柄のパンツに棍棒、赤い皮膚にツノ。ジョイ君はその目の前まで来ていたのだが、武器がなく立ち往生している様子。

 これに名乗りを上げたのは、悠夜とヘイル以外の全員。つまりUNKNOWN、黒羽、デュノフガリオ夫妻、ネオ。こうして列挙してみると、参加者も随分と減ったものである。

「ふむ、今回も、やってみようか」
 UNKNOWN始動。さっとコートを翻し、キッズランドへ向かう。
 ネオ、黒羽もほぼ同じタイミングで試練のためにと動き出した。

 それより早く行動を開始したのはデュノフガリオ夫妻。これまで潜伏という選択肢をとっていた彼らだが、これが最後の試練ということもあり、参加を決定した模様。
 試練に参加していなかったとしても、夫婦そろってここまで残っていたのは称賛に値することである。
 この夫妻、放送があった頃には既にキッズランドにいたようだ。
「ん、あっち行くの?」
「うん。そっちはもう探したからね♪」
 早速光線銃探しに奔走する夫妻。効率を求めて別々に行動しない辺り、実にねたm(切り取られている)
 進んだ先に迫るのは、狩人。
 そして、おもちゃのような銃を手におろおろする女性。
「あの、もしかしてその銃‥‥」
 ヴァレスが女性に話しかける。その背中からは、流叶がしっかりと様子を観察していた。
「あぁ、良かった。持ち主さんですね。はい、どうぞ」
 特に言葉を続けずとも、あっさりその銃を渡されるヴァレス。後ろにいた流叶にも、同じものがしっかりと手渡された。いったいいくつ持っているんだとか、そんな疑問は野暮である。
 まぁとりあえず、必要なものは手に入った。後はこれを届けるだけなのだが。
「‥‥!」
 流叶が夫の服を引っ張る。背後に狩人が迫っていたのだ。
「に、逃げよう!」
 夫が妻の手を引き、逃げる。
 だが流石狩人。早い。あっという間に距離が迫り、流叶が掴まれそうになる。
 ここで流叶、着ていたうしゃぎ服をパージ。どういう構造になっているんだとか、そんな疑問は以下省略。
 ふわもこだったそのきぐるみの内から現れたのは、そのむちっとしつつもシュッと締まった、ややアンバランスながらも筆者的にはパーフェクトな体型。いや、それだけでは誤解を与えてしまうだろう。バニーガール。そう、うしゃぎ耳に胸の肉があふれそうなレオタード。あぁ、素晴らしい。ヴァレスよ、良い奥さんを持ったな!
 ちなみに、筆者が女性とかバニーガールとか、そういった傾向のものに興味があるのではとか、そういう誤解h(血で汚れて見えない)
「ちょっと寒い‥‥うぅ」
「確かに寒いだろうけど‥‥俺は好きだな♪」
 逃げてる最中にそんなやりとりをする夫妻。ちくしょう爆□□□(修正テープ)
 ともあれ、今ので若干距離を離したとはいえ狩人はまだ迫ってくる。
「仕方ない。流叶、任せたよっ!」
 脇道の方へ流叶を押し、またもヴァレスが狩人を引きつける役に回った。一度振り払ったのだ。また出来ない道理はない。
「うん、御願い‥‥! こっちは‥‥が、頑張る!」
 そうして流叶はラビリンスエリアへと駆けていった。

 丁度その頃。
「ウッハー、追いかけられているなぁ〜。このゲームは個人の方が有利なのによ〜」
 夫妻が逃げる様子を、別のエリアから観察していた者がいる。セリフの内容から分かるであろう。悠夜だ。
 やや高いところに登り、試練が行われるというキッズランドに目を向けてみればその様子がよく分かる。
 ニタ、と笑みを浮かべる彼の元に、狩人は来ない‥‥。

 一方、流叶より早くラビリンスエリアへ到着した者があった。
 UNKNOWNだ。
 捜索した場所が良かったようで、実は夫妻より先に光線銃を受け取っていたのだ。そして狩人に遭遇することなく、このラビリンスエリアへ到着したのである。
「ジョイ君とやらは‥‥あれか」
 鬼を前におろおろしている、鎧を身にまとった鳥のきぐるみ。間違いなくジョイランドのマスコット、ジョイ君だ。
「ほら、これ、だろう?」
 光線銃を受け取ったジョイ君は、両腕(翼?)を振り上げて何か(多分力強さ)をアピールすると、光線銃を手に鬼へ突貫した。
 まるで小学生がランドセルにつける防犯ベルのような音を響かせ、ジョイ君が(どうやったのかは謎だが)トリガーを引く。UNKNOWNの眼には、銃から何かが飛び出したようには見えないが、恐らく後に映像化でもする際に編集が加えられるのだろう。鬼が苦しそうに悶え、倒れる。
 そこへ到着したのは流叶。試練を達成するには一足遅かったようである。残念。
 この時点で試練達成のアナウンスが入る。はず、だったが、それより先にある連絡がスピーカーから流れた。

 ヴァレス・デュノフガリオ、脱落。

「え‥‥?」
 流叶の夫の脱落。妻を残し先立ってしまったようだ。
 力なく崩れ落ちる、かに思えた流叶だが、特にそういうことはなく。
「‥‥何とか、逃げないと」
 試練が達成された以上、ここに長居する道理はない。夫の分まで逃げ切ろうと流叶は早速逃走に戻った。
「おや、あんな格好だった、かね?」
 見ている方も寒くなりそうな格好のまま駆けていくうさぎの尻尾を見送り、UNKNOWNが思わず呟くのも仕方ないことだった。

「逃走なう参加者の皆様にお知らせです。キッズランドよりラビリンスエリアにかけて行われた試練は、UNKNOWNさんにより達成されました」

●逃走なう 終幕
 実際のところ、第四の試練が終わった時点で残り時間は僅か。参加者もだいぶ減り、4人の狩人が獲物を捕えるのも非常に困難な状態であった。要するに、試練終了時点で残っていた者全員が、最後までの逃走を完遂したのである。

「逃走なう参加者の皆様にお知らせです。現時刻を以て逃走なう終了となります。見事逃げ切られた参加者の皆様、おめでとうございます。では、一度中央広場へお集まりください」

 逃げ切った者を紹介しよう。
 まずは、UNKNOWNだ。
「なかなか、いい運動になった、よ」
 受け取った賞金を何に使うかは不明。だが、彼にしてみればここで得た賞金も大した額ではないのかもしれない。

 次に黒羽・ベルナール。
「やったー! まさか本当に逃げ切れるとは思ってなかった!」
 やはり賞金の使い道は決めていないようである。
 とにかく楽しむことを目的に参加していたのだから、どのような結果になっても構わなかったのだろう。

 そして流叶・デュノフガリオ。
「これで、ちょっと美味しい物‥‥食べにいける、かな」
 きっとこれから夫とナイトデートを楽しむのだろう。
 くそう、爆■■■(黒く塗りつぶされている)

 さらにネオ・グランデ。
「作戦通り、といったところか」
 慎重な行動もそうだが、何と言ってもその足が強力な武器となったようだ。
 賞金は是非とも有意義に使っていただきたい。

 続いて悠夜。
「よっしゃ、賞金もらい!!」
 何に賞金を使うつもりなのか。
 勝利は勝利である。どんな使い道にせよ、上手く使ってほしいものだ。

 最後にヘイル。
「‥‥流石に冷や冷やしましたね」
 やはり賞金の使い道は考えていなかったようである。
 が、きっと有効に使ってくれるであろう。

 こうして、ジョイランド全体を巻き込んだ逃走なうの幕が降りた。
 ゲームをクリアした者も、そうでない者も、きっと楽しんでくれたことだろう。
 だが、筆者としては最後に一言だけ、どうしても書き添えておかねばならないことがある。

 リア充b(報告書はここで終わっている)