タイトル:【初夢】天儀と騎龍大戦マスター:矢神 千倖

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/01/12 00:48

●オープニング本文


※このシナリオは初夢シナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません



 LHが海に浮かんで移動できる理由を、ご存じだろうか。
 ‥‥残念ながら、不明だ。この人工島を作りだした人物なら知っているだろうが、しかしその人物は、恐らくこの世にはいない。そも、人物が作りだしたのかすら、分からない。
 だが一部の人間は知っている。
 Last Hopeと今の人々が呼ぶそれは、その昔、天空にあったと――。

「まずいですよ、KVが全く動かないんじゃ話にならない! 何とか、何とかならないんですか!」
 他人が保有者として登録されたKVに搭乗しても、その能力をほとんど引き出せないということは傭兵間でも広く知れ渡った常識である。
 その登録情報はもちろん機体そのものにも保存されるが、それだけでなくメガコーポのしかるべき施設へも送信され、記録されている。許可を得た者ならば施設からの閲覧、また場合によってはデータを弄ることも可能だ。
 例えば、KVの所有権を誰かが売却した際、なんらかの理由で保有者登録情報が機体で削除出来なかった場合などはこの施設を通して情報の削除が行われる。
「バグアはもうすぐそこまで来てるんです、こんな時に、裏切りが出るなんて‥‥」
 もし、その施設を利用出来た者に親バグア派の人間がいたとしたら、どうなるだろう。
 今となっては考えるまでもない。実際にいたのだ。
 その人物により、KVの保有者登録情報は全て、末梢されてしまった。
 それだけでなく、LHにある施設の中枢も爆破されてしまっている。
 保有者登録情報は、この施設と機体そのものとの情報が合致することで認証され、KVの性能がいかんなく発揮されることとなる。
 つまり、施設が破壊された今では、全てのKVがその性能を発揮出来ないことになる。
「あぁもう! 不完全な状態で戦ってもらうしかないのか!」
 苛立ちにLHの若い研究員が頭を掻き毟った。
 だが、今まで黙したままだった、一人の初老の研究員は、目を軽く伏せて今までいた研究室の扉を静かに開いた。
「ついてきなさい」

 立ち入り禁止区域。
 LHの地下は、一部の限られた者でしか入ることを許されていない。
「この島は、その昔こう呼ばれていたんだよ」

 天儀、と。

「今は当時の面影もないそうだが、しかし、その生きた遺産がこの先に、いる」
 はぁ、と間の抜けた返事をした若い研究員は、何が何だかととった様子でとりあえずついて行く。
 その突き当りにある、重々しい扉。
「開けてみなさい。もうすぐ、傭兵達も来る」
 ただ事ではない雰囲気を感じ取った若い研究員は、ごくりと唾を飲んだ。
 わなわな震える手をノブにかけ、全身で体重をかけるようにして押す。
 ギギギ、と軋んだ音を立てて開かれたその先にいたもの。
 鉄格子の先。恐ろしく巨大な牢屋。
 ぬらりと光る鱗、ぎょろりとした目。雄々しく生えた翼。
「ドラ、ゴン‥‥?」
 1匹や2匹ではない。そこにひしめく大量の龍に、その研究員はへたりこんだ。
 そう、極秘に研究され、保存されていたこの龍達を使おう、というわけだ。

●参加者一覧

シーヴ・王(ga5638
19歳・♀・AA
旭(ga6764
26歳・♂・AA
望月 美汐(gb6693
23歳・♀・HD
シクル・ハーツ(gc1986
19歳・♀・PN
ミリハナク(gc4008
24歳・♀・AA
煌・ディーン(gc6462
18歳・♂・DF

●リプレイ本文

●相棒
 傭兵が到着する。
 かつて天儀と呼ばれたその浮島の奥で蠢く、おぞましい数の龍。これが、彼ら能力者の新たな翼となるのだ。
「さぁ、時間がない。急いで自分の龍を選ぶんだ」
 研究員に急かされ、能力者達はじっくり、かつ手早く、自分好みの龍を選び始めた。

 今、龍を物色しているのは六人。その中で、甲龍を選んだのは二人だった。
「シーヴは普段岩龍に乗ってやがりますが、まさか本物の龍に乗るコトになるとは‥‥」
 そのうちの一人、シーヴ・王(ga5638)。彼女の愛機、鋼龍と名付けた岩龍は‥‥やはり今は動かない。
 あれさえ動けば。KVが動かなくなったと聞いて最初はそう思ったが、それは目の前の龍と出会って吹き飛んだ。
 エディン――。月を、あるいは光を司る女神。
 す、とその顎を撫で、気がつけばそう名付けていた。
「久々の大空が戦いで申し訳ねぇですが、宜しく頼みやがるですね?」
 甲龍。愛機と同じ音で呼ぶ龍。シーヴは、すっかりエディンを気に入った。
 もう一人は望月 美汐(gb6693)だ。
「それじゃあよろしくお願いしますよ甲龍さん♪」
 その顔を手で挟むようにして撫でてやると、龍の方から顔を近づけ、望月の頬をほんの少し舐めた。
 人懐こい甲龍だからこそ。まるで犬のようだ。
 嬉しくなったのか、望月のウキウキとした笑顔は絶えない。

 駿龍を選んだ者もいる。
「キメラ‥‥では無さそうだ‥‥」
 シクル・ハーツ(gc1986)はおっかなびっくり、龍に触れようと近づく。
 その指が伸ばされたところで、駿龍はぶぅんと首を振った。
「わっ!」
 グルル、と喉を鳴らすと、龍はシクルの足元に頭を置いた。
「‥‥大丈夫そうだな」
 そっと頭に手を乗せると、龍がほんの少し、顎を下げた。
 頷いた、のだろうか。もしかしたら、シクルの言葉が通じたのかもしれない。
 風となるにはうってつけの龍。それが駿龍だ。
 そんな理由から選んだのは、煌・ディーン(gc6462)だった。
「よし、お前はこれからゼファー。そよ風の騎士だぜ!」
 龍の頬をべしべしと叩きながら、煌は一方的に命名。
 理解出来たのか出来ないのか。駿龍はかくりと首を傾げる。
 少なくとも、煌は一目でゼファーを気に入ったようだ。
「龍か、噂には聞いたことがあったけど‥‥まだ生きていたなんて」
 龍といえば有史どころか億単位の過去に存在した恐竜。そうでなくても、伝説に登場するだけの存在。
 目の前の生物は、旭(ga6764)にとってみれば生きた化石も同然だった。
 実際、そうではあるのだが。
 名は、龍の色にちなんでメルクリウス。水星だ。
 現代にあっても鎧を着て戦う旭。そして生きた化石たる龍。この組み合わせは、異色のようであるが実は何かの必然だったのかもしれない。

 そしてこの中で、炎龍を選んだのは一人。
「わぁ♪ 竜ですわ竜! 本物の竜と一緒に戦えるだなんて幸せですわ」
 攻撃的な姿、びしりとそろった鱗、凶悪な爪、今にも噛みつきそうな荒々しさに、竜好きなミリハナク(gc4008)のテンションはのっけからぶっちぎりだ。
「名前は、メラメラ君ですわ。うん、可愛い名前ですわね」
 可愛いかどうかはともかく。彼女のやる気は人一倍だった。

●大空
「行こう、メルクリウス!」
 真っ先に飛び出したのは旭ら駿龍にまたがる面々。彼らの目標は、目の前に迫ったHWだ。
 今では脅威度もがくりと減ったそれだが、しかし、龍の力が未知数な以上、油断はならない。
「私達が前に出て掻き回すから、その間に攻撃をしてくれ!」
 最も先頭を行くのはシクルだ。
 高速飛行で一気に前へ出ると、駿龍に爪を振りかざさせる。
「おーら、やられるくらいだったら俺のほうからやりにいってやるぜ!」
 HWがぐんと上昇。そこを狙って煌のゼファーが体当たりをかます。
 機械のKVでは滅多に出来ない芸当。大質量との衝突による強制重心移動。
 いかに慣性制御があろうとも、さすがにこれにはぐらついた。
「仕掛けるよ!」
 メルクリウスが吠える。方向転換したシクルの駿龍が、合わせて動く。
 体勢を崩したHWを、駿龍二頭の爪が抉る。
「ふふ、チャンスは逃しませんわ」
 小銃「シエルクライン」を構え、ミリハナクが引き金を引く。メラメラ君から吐き出されたかのようなそれは、HWの装甲にガツガツと穴を空けていった。

「KVに乗る時とは、また違った景色でありやがるですね。風も感じやがるですし」
「風の動きを見るのが大変ですねぇ」
 一方。駿龍や炎龍に比べ動きの遅い甲龍を選んだシーヴと望月は、先を行く面々に追いつくまでの間、普段とは違う空を感じていた。
 手綱をぐっと握り、シーヴは愛用のヴァルキリアで空を斬る。そして胸いっぱいに空気を吸い込むと、エディンの翼を一際大きく羽ばたかせた。
「私が引きつけます」
 そのさらに先を、望月が飛ぶ。
 先に駿龍やミリハナクが総攻撃したHWに、甲龍の爪が突き立つ。
「食らいやがるです!」
 ソニックブームが空間ごと断つように閃き、まずはHWが一体、黒煙を上げて落ちていった。

 駿龍に乗る三人は、最初のHWをずっと相手にしていたわけではない。
 トドメを後ろに任せ、攻撃の構えを見せていた後続の対処へとあたっていた。
 そこには、ミリハナクの姿もある。
「メラメラ君、行きますわよ」
 迫りくるHWに銃弾を叩きこみつつ、距離を取る。しかしスピードではHWの方が断然早かった。
 いただいた、とばかりにプロトン砲に光が収束する。
 しかし、それこそがミリハナクの仕掛けた罠だった。
「ヒャッホー!」
 円盤の上から、煌のゼファーがどすりとのしかかった。
 プロトン砲はあらぬ方向へと発射され、煌の炎剣「ガーネット」がHWの装甲に突き立つ。
 バチリ、とHWがショートしたのを見てゼファーが離れる。
「よく我慢しましたわ。存分に暴れて喰らいなさいな、メラメラ君」
 強力により、ただでさえ発達した肢体をさらに盛り上げたメラメラ君の突撃。
 鋭い爪がHWを引き裂く。
 さらには、ミリハナクの振り上げた炎斧「インフェルノ」。
 めり込んだ刃先から炎が噴きあがり、そこを弱点と見抜いたメラメラ君がその牙を以て食いちぎった。
 HWは、炎に包まれて落ちてゆく。
「! 危ない!」
 煌の叫び。
 振り向くと、そこには損傷したHWが照準をミリハナクに合わせていた。
「――!!」
 回避が、間に合わない。
 いかに彼女とて、プロトン砲をまともに食らってはただでは――、
「ダブル‥‥!」
 大空全体に響き渡る叫び。
 同時に、巨大な影が降り、HWの姿勢が大きく崩れた。
「ドラゴン――」
 影が大きく身を捻り、旋回する。
「キックッ!」
 剣を象る覚醒の証を一際強く輝かせ、旭がHWのど真ん中を突き抜けた。
 影――メルクリウスが、主を回収する。
 その背後で、穴のあいたHWが大爆発を見せた。
「大丈夫ですか?」
 メルクリウスをメラメラ君に並ばせ、ミリハナクに安否を問う。
「えぇ、おかげさまで」
「良かった」
 ふ、と笑んだ旭は、その視線の先に次の相手を捉えていた。

「面倒でありやがりますね」
 立ちはだかる二体のHWに、シーヴは額に浮かぶ汗をぬぐった。
「来ましたね‥‥」
 数は互角でも、力負けする可能性だって十分ありえる状況。望月も内心穏やかではなかったが、しかし、やらないわけにはいかない。
 二人は同時に龍を突撃させる。
 やすやすとやられるつもりはない。そう言うかのように、HWも前進しながらフェザー砲を放った。

 グ、ゥゥウウウウアアアア!!

「掠めた?! わっ、キャッ!」
 望月の甲龍が悲鳴を上げる。足をやられ、出血する間もなく肉が焼きつけられる。
 空を震わす咆哮と共に身をよじる龍に、望月はしがみつくので必死だ。
 ワームにしてみれば、これはチャンス。
 一気に畳みかけようと、今度はさらに威力の高いプロトン砲のチャージにかかる。
「やらせねぇでありやがるです!」
 エディンがHWの一体に組みついた。
 その質量に押され、もう一体との距離が詰まる。
「どんだけ硬ぇか知らねぇですが、斬れねぇコトはねぇです」
 そして、跳んだ。
 危険を顧みず、シーヴはヴァルキリアを手に、もう一体へ。
 着地と同時に、装甲を抉る。
 HWを投げ捨てたエディンが主の回収に接近し、ついでにその爪で装甲を剥がした。
「ふぅ、落ち着いた‥‥。あら?」
 相棒の様子を確認した望月は、気付いた。暴れた割には、傷が浅い。
 それこそが、甲龍の力だった。
「そう、びっくりしたのですね。でも、もう怪我はさせません」
 決意を新たに、望月は甲龍に大きく翼を開かせた。
「こっちだ!」
 装甲を失って墜ちていくHWと入れ替わるように、シクルが合流。体勢を立て直しかけていたHWに矢を射り、注意を引いた。
「三対一なら負けねぇでありやがります!」
 エディンは正面から突っ込み、その爪を振るった。
 大きく揺れるHWが、見境なくフェザー砲を放つ。
「翼を閉じて!」
 望月の叫びに応じた甲龍が翼を閉じて急降下。
 光線をかわし、また翼を広げてHWへ迫る。
「今だ、噛み付け!」
 内容物たるケーブルらしきものをシクルの駿龍がブチブチと噛みちぎる。
 そこへシクル自身が風鳥で内部を焼いた。
 さらに、トドメ。
「甲龍全速突貫です!」
 望月の甲龍が迫る。
 爪が太陽光に反射してギラリと光る。
「かっとばっくたーん!」
 ギン、と金属音が響くと同時に甲龍はぐんと一八〇度向きを変え、尾でHWを叩き落とした。

●騎龍大戦
「望月さん、こちらへ」
「はい、お願いします」
 後退した旭は望月を招き、その場で甲龍の治療に当たった。
 とはいえ、残る敵は三体。
「最高にハイって気分だぜ!」
 ゼファーが躍り出る。併せ、シクルも矢を番えて突撃した。
 大空を駆ける龍。煌の怒声と共にゼファーが爪を振るうが、当たらない。
「もらった!」
 空を貫かんとばかりに放たれた矢はHWにぐさりと突き立つ。しかし、動きを鈍らせるほどには効いていない。
「ちょこまかと、大人しくしやがれです」
 敵のど真ん中に飛び込み、大きく動きまわれないからこそ全てを威嚇するよう宙を往復するエディン。
 HWが三体いるにも関わらず、これでは止まっている龍にすら砲撃出来ない。
 恐らく、やみくも。滅茶苦茶に放たれたフェザー砲を掻い潜り、突き進む龍がいた。
「ふふっ、行きますわよ、メラメラ君」
 射程に捉えたHWへシエルクラインを叩きこみ、ミリハナクは突撃する。
 その強靭な腕が、HWに組みついた。ここぞとばかりに、ミリハナクはHWへ飛び移る。
 そこで。

 ガァァアアアアッ!?

 フェザー砲が、メラメラ君の翼を貫いた。
 力を失い、龍がHWを離して墜ちてゆく。
 ミリハナクは、激怒した。
「‥‥許しませんわ。私のメラメラ君を、よくも!」
 ガツリと斧を突き入れ、抉れた装甲に小銃「シエルクライン」の銃口を差し込む。
 そのトリガーを引いた時の彼女の表情は、筆舌に尽くし難い。
 少なくとも、穏やかなものではなかった。
 墜ちる炎龍と、HW‥‥。
 それを受け止めたのは、旭のメルクリウスと望月の甲龍だった。尤も、甲龍が受け止めたのはHWではなくそこにしがみついたミリハナクだったが。
「大丈夫ですか!?」
 間一髪。甲龍に掴まれたミリハナクへ望月が声をかけると、彼女は笑っていた。
「えぇ、おかげで助かりましたわ」
 再び羽ばたき始めた炎龍に乗り移り、へらりと答えた彼女は再び舞い上がっていった。
「まったく、無茶するお姉さんだね」
 苦笑しつつ、旭はメルクリウスを飛ばす。その後ろを、望月が続いていった。

「あと二体、全員そろった今なら、いけるぜ!」
 ミリハナク、旭、望月の戦線復帰に、煌がぐっと拳を握る。
「旭、合わせよう!」
 シクルの合図に駿龍の突撃。二体のHWが散る。
 そのうちの一体に、メルクリウスが組みついた。
「行くよ、メルクリウス、ハーツさん」
 指示に従い、メルクリウスがHWを離して急上昇する。そして、そこからの急降下。
「トリプル!」
 メルクリウスの蹴りが、HWを叩き落とす。
「ドラゴン!」
 シクルの駿龍がその爪で墜ちるHWを突き上げた。
 これ以上はさせるまいと、もう一体のHWがフェザー砲の照準を合わせる。
「シーヴが相手でやがります」
 エディンに突撃を命じ、突き飛ばす。体勢を立て直される前に、ミリハナクが銃撃し、望月の甲龍が爪を叩きつけた。
「コンビネーション!」
 宙を跳ぶ旭の蹴りが、HWを一体、海へ叩き落とした。あの損傷具合では二度と飛び上がってこれまい。
「煌け、ガーネット!」
 駿龍ゼファーの疾走。高速で残るHWへ接近した煌は、その剣を真横に構える。
 すれ違い。それだけで、HWの装甲はぱっくりと割れた。
「ラスト、もらいます!」
 傷口に、望月の甲龍が尾を叩きこむ。
 金属片をまきちらし、原型を留めぬほど崩壊した最後のHWが、墜ちてゆく。
 ばさ、と羽ばたいて一層高くまで昇った六頭の龍は、勝利を告げる咆哮を上げた。

●龍を見る夢
「ありがとう、あなたのおかげで助かった」
 一人そそくさとLHへ帰還したシクルは、相棒となった駿龍の頬を撫でてやる。
 共に戦ってくれたことへのねぎらい。だが。
「‥‥終わったぁ」
 すぐ、へたり込んだ。
 強がっていたが、彼女は高所恐怖症だったのである。

 他の面々は、せっかくの機会ということで平穏になった空を飛びまわっていた。
「生身でこの高度へは普通来れませんからね。不謹慎ですが役得です♪」
 すっかり元気になった甲龍を駆り、望月はにこやかに風を受ける。
「ふふふ、役得どころじゃありませんわ」
 最高潮にご機嫌なのはミリハナク。出撃を急かされた時とは違い、今ならその鱗や肉、骨格を手で触れて感触を味わうことができる。
 ぺたぺた、ぺたぺた。

 ギャァァァアアアオオオオオァ!!

 ――どうやら逆鱗に触れてしまったらしい。


 これは夢。現実ではない。
 間もなく彼らは目を覚まし、あるいはその身を、あるいは騎士鳥を駆る日々に戻るのだろう。
 しかし、ただの夢ではない。これは夢。これは初夢。初夢なのだから、あるいは――。