●リプレイ本文
「必ず生きて帰る‥‥そう皆‥‥此処に誓おう‥‥Team Phantom、行かせてもらう」
「Team Shadowも行きます。見度と任務を全うしましょう!!」
両チームのリーダーである終夜・無月(
ga3084)、平坂 桃香(
ga1831)が各機へと連絡を飛ばす。時間は早朝六時半、東の空はほのかに明るくなっている。それぞれのチームが目指す目的地に到着する頃には完全に夜は明けているだろう。
「Phantom02、了解だ」
「Phantom03も了解だよ、岩龍は守ってみせる」
「Phantom04、背中のガードは任せて!♪」
「Phantom05、よろしくお願いしますね」
フライトリーダーの終夜を始め、真田 一(
ga0039)、水理 和奏(
ga1500)、フィオ・フィリアネス(
ga0124)、霞澄 セラフィエル(
ga0495)の声を確認し、出発シークエンスへと移行を開始。リーダーに続く形で真田、水理、フィオ、霞澄もそれぞれ瞑想したり、深呼吸したりと一度気持ちを落ち着かせて、出発準備を始めた。
一方Phantomの出発を待つShadowの面々もいつになく緊張した面持ちで、もう見慣れたはずのコックピットコンソールを見つめていた。そしてそんな雰囲気を感じたのか、フライトリーダーである平坂が再度号令をかける。
「敵本拠地に飛び込む危険な任務だけど、私達はどうせ陽動。ガンガン攻撃していきましょう」
「Shadow02、了解っと。モモのくせに、いつになくしっかりしやがって」
「Shadow03も了解だ。俺達で正体を暴いてやるとしようぜ」
「Shadow04、了解。一体誰に感化されたことやら」
「Shadow05も了解です。背中‥‥守らせてもらうわ」
コードネームで呼ぶことで不思議と気持ちを落ち着かせていく須佐 武流(
ga1461)、緋沼 京夜(
ga6138)、オルランド・イブラヒム(
ga2438)、リン=アスターナ(
ga4615)の五人、やがてTeam Phantomの五体の機体が格納庫から飛び立つのを確認して、発射位置まで機体を動かしていった。そしてShadowより後に飛び立つSpottingも面々も、静かにKVに乗り込み始めたのだった。
そして太陽が完全に姿を現した頃、今回の依頼達成の本命部隊であるTeam Spottingの五人は、無事旧オハマ空港をレーダー反応内に捉えていた。
五大湖を経由して北北東から接近する五機+αのKV部隊、目標である距離にしておよそ2500。まだはっきりと肉眼で捉えることはできないが、各自肌で敵の気配を感じていた。
「陽動の効果が薄かったか?」
「かもしれんな、やばい気配がぷんぷんしやがる」
「敵の命令系統が各町毎に独立しているのだろう。もっとも確かめる術はないが」
「それに私達がやるべきは例の砲身の確認、それ以上でもそれ以下でもない」
「そうね、あとはどれくらい敵が残っているのか、ってとこかしら」
目標を前に最終確認を行うUNKNOWN(
ga4276)以下、御山・アキラ(
ga0532)、ホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)、醐醍 与一(
ga2916)、緋室 神音(
ga3576)と続くSpotting部隊。その間にも距離は2400、2300と徐々に迫っていく。
それに伴い敵レーダーからの捕捉を避けるために、五人は機体高度を下げていく。
「ところでUNKNOWN‥‥」
「どうした?」
ホアキンからUNKNOWNにプライベート回線が開かれる。
「出発前の占いの結果はどうだった?」
自らの運命を占いに委ねた男、ホアキンにとって占い結果は気になるところ。これに対しUNKNOWNは自嘲気味に笑って答える。
「次のファイブカードは俺が勝つらしい、残念だったな」
「‥‥興味深い結果だな。是非試してみたくなった」
そして五機のKVはリーダーUNKNOWNの岩龍を中心に、トライアングル形態を維持したまま旧オヘア空港に侵入を開始した。
「こちらPhantom01終夜、陽動を終えこれより五大湖方面経由で帰還する」
「Shadow01平坂、こちらも手持ちの武器はほぼ使い果たしましたので帰還します。Unknownさん、そちらは大丈夫ですか?」
陽が南中へと向かう頃、本作戦のために陽動をかけていたPhantom、Shadow量部隊から撤退の報告がUnknownの元へと入る。戦闘開始から既に約二時間が経過、随行した親衛隊の補給物資もそろそろ底を突く頃合ではある。だが肝心のSpotting部隊はドームの前で以前睨み合いを繰り広げていた。
「亀がドーム周辺を取り囲んでいる。はっきりと確認したわけではないが、少なくとも五対以上、加えて亀一体にゴーレム一体が護衛についているようだ」
「贅沢な護衛ですね」
「全くだ‥‥だが問題だな。その様子だと‥‥まだ問題の砲身を‥‥確認できてない、違うか?」
「残念ながらその通りだ。以前この辺りを偵察した醍醐は、ドーム内に格納されていると見ている」
聞き手である終夜、平坂の脳裏に良くないイメージが浮かぶ。
「となると、侵入しなければならないわけね」
「最も簡単な方法は‥‥爆破か」
ドーム内に格納されているのならドーム内に侵入しなければならない。しかし事はそれ程簡単ではなかった。
「だがそのためには敵陣を崩さなければならない、そこで先程やりあった両チームの意見も聞かせてもらいたい」
僅かな沈黙の後、二人はUNKNOWNの意見に同意する。
「わかったわ十五分‥、いや十分時間を下さい。みんなに聞いてみます。ところで、問題のドームの大きさはどれくらいですか?」
「かなりの大きさだ。野球やアメフトができるくらいだと考えて欲しい」
「須佐さんが喜びそうです」
そして十分後、再び回線が開かれる。
「まずフィオの話なのだが‥‥醍醐と同じくドーム内に格納されているだろうだ。問題の突破法だが、強襲しかないだろうというのが総意だな」
「こちらも同じ。ただ岩龍は足が遅いですから、その辺りが問題です」
そして考えられたのが、親衛隊の一部を使った囮作戦だった。
「水理の推理では‥‥仮に問題の巨大砲身が人類製のものであれば‥‥何か特徴があるのではということだ」
「そうですね、上の方は確証を欲しがっているみたいですし」
「あとは障害物を上手く利用し‥‥武器は適宜持ち替える。こんなところだ」
続いて平坂がShadow部隊の意見を伝える。
「煙幕銃はそれなりに有効、仕留めるなら一体ずつ。そして状況に応じてスキル使用、あくまで基本だけど、こんな時こそ基本に立ち戻るべきだと思うわ」
「なるほどな」
「それと最後に、いいかしら?」
「みんなから一言ずつ言いたいことがあるみたいです」
「こちらもだ」
平坂に同意するように終夜が言うと、しばらくして水理、真田、フィオ、霞澄と順にPhantom隊の面々の声が聞こえてくる。
「機体の力を信じてあげて」
「カウンターを狙っていけ」
「背中、気をつけてね」
「この空の悪意‥‥消し去りましょう」
続いてShadow隊、須佐、緋沼、オルランド、リンの声がSpottinng各員に伝えられる。
「機動力で敵をかく乱、これ悪くないぜ」
「俺達のためにも正体を暴いてくれよ」
「目に見える者、音に聞こえる者、信じてみるのも悪くは無いぞ」
「そして退く時は退くこと」
Spotting各員は冷たいコンソールのコックピットの中で、音声のみの仲間の声に聞き入っていた。
西の空から一機のバイパーが通過する、それが合図だった。
親衛隊の一人が駆るKVにタートル、ゴーレム全ての視線が集まるのを確認し、醍醐が滑空砲をドームに向けて発射。そして弾丸を発射音を背に足に問題のあるUNKNOWNの岩龍が始めにブースト、続いてホアキン、御山、最後に銃を撃った醍醐と緋室がブーストをかけ岩龍の援護に入る。
「目的は砲身の確認のみ、敵には一切構わない。砲身に何か特徴があるはず、まずはそれを見極める」
しかしそれは簡単なことではない、何よりドームの中身を能力者達は知らない、そしてどこに問題の砲身があるのかも判明していない、それでもやるしかなかった。本当に陽動に成功しているのか不明ではあるが、仮に陽動に成功していたとすれば、今後援軍が到着することになる。そして何より今更後ろには引けなかった。
「ロサ、そちらに二機回った。注意してくれ」
「了解、背後の状況は?」
「敵さんがうじゃうじゃ付いて来やがる。止まったら蜂の巣だろうな」
「もっとも止まる気はありませんけどね」
可能な限りの低空飛行で飛来する五機のKV、目標は先程醍醐の滑空砲が作った風穴。高度上直接侵入は不可能、通りすがりに内部を確認することとなる。チャンスは一瞬だけ‥‥
「穴が小さいな、もう少し大きくしたいところだが」
「了解、任せて」
緋室がもう至近距離とも言えるドームの天井めがけて高分子レーザー砲を掃射。高速移動中のため命中はつけられなかったが対象は固定物体、外す理由が無かった。直系五メートルほどの風穴がドーム天井付近にできあがる。だがレーザーを撃った緋室がわずかに遅れを見せた。
「一人遅れさせるわけにはいかんからな」
醍醐が僅かに速度を落とし緋室に合わせる。しかし前を見ると、他三機も速度を落としていた。
「やはり岩龍は足回りに問題があるらしい」
「‥‥らしいな」
「‥‥そういうことにしておこう」
再び陣形を組みなおす五機、しかし下からのタートルワームの砲撃は相変わらず止む事はない。そしてドームの風穴も眼前に迫っている。
「何でもいい、特徴を捉えるんだ」
「‥‥内部にもワーム多数」
「ゴーレムもいるな、数が多すぎる」
「なんか変な緑色のも混ざってないか?」
「自由の女神?」
確証までは得られなかったものの、これ以上の深追いをするわけにもいかない。五人はそのままオタワまで帰還する。
そして彼ら彼女らが見たものが自由の女神砲、通称SoLCであると判明したのは数時間後のことだった。