●リプレイ本文
照りつける太陽、どこまでも続く地平線、見渡す限りの荒野、そして荒野に延びる交差した道。
そんな道路で龍我・蓮(
ga2804)とロナルド・ファンマルス(
ga3268)が依頼人のマスター所有のハーレーに跨っていた。
「多少乱暴に扱っても構わんが、壊さないでくれよ。結構気に入っているんだ」
「あたしも気に入った」
龍我とタンデムを組んでいるMIDOH(
ga0151)は瞳を輝かせて、ハーレーの美しいフォルムを指でなぞっている。
「ハーレーv」
しかし前に座る龍我は無表情でMIDOHを見つめていた。
一方いろいろな意味で乗れなかった愛原 菜緒(
ga2853)は今回一緒に班を組むことになったファルロス(
ga3559)の隣で腐っていた。
「絶対いつか乗って見せるんだから!」
乗っては見たものの足が届かなかったとは言えず負け惜しみを言う愛原。しかし一度ハーレーに跨った姿は全員に目撃されている。
生温かい笑いを浮かべながらマスターは言う。
「ハーレーは逃げも隠れもしない、いつだって乗れるさ。だがシャリアは今も逃げている。よろしく頼むぞ」
「了解」
能力者達は短く答えると、それぞれ担当の方向に向かって進み始めた。
今回能力者達は二組ずつ四組に分かれ、東西南北をそれぞれ一組が担当すると言う作戦をとった。お互いの行動を無線で連絡しあい、マスターにも連絡が取れるようにと電話番号を教えてもらっている。
シャリアがどこに向かったかは不明だが、絶対に見つける。それがマスターと交わした約束だった。
「私にとっちゃfirstmissionなんでね。ほどほどに頑張っちゃうよ。Lets go!」
気合を入れつつ歩を進める潤・アレクサンドル(
ga0177)。ファルロス(
ga3559)とともに北に向かっている。
「本命じゃなさそうだけど念のために、ね」
「そうだな、気は抜けん」
周囲にはスライム型のキメラが出没しているとも言う。仮にシャリアを無事捕獲できたとしてもキメラにやられてしまえば意味は依頼成功とはいえない。
「それにしても似非能力者まで出るなんて、人々のheartがすさんでいるのかな?」
「かもしれんな」
人を見つけては聞き込みを行い、二人は北を進んでいくのだった。
「シャリアの目的は何なのでしょう?」
南に向かう国谷 真彼(
ga2331)と愛原はシャリアの目的について意見を出し合っていた。当初ハーレーに乗れなかったせいでしょんぼりしていたが、やがて答え始めた。
「何処かに行きたいんじゃないかな?」
愛原はヒッチハイクや車を窃盗している可能性も考えていた。しかし、もし本当にそうしていれば徒歩では追いつけなってしまう。
「でも、大丈夫かもしれませんよ」
答える国谷、理由はキメラにある。
「この辺りはスライムが出るとシャリア自身も知っていました。安全策をとっているかもしれません」
能力者では無いシャリアがキメラと対等に戦える術はない。勿論今回のように機転を利かせている可能性もあるが、常時とれる手段となると早々ない。だからこそ国谷の予想である西以外に向かった可能性もあった。
「問題は連れて来ることですね」
マスターはシャリアを捕まえて、しばらく店の掃除をさせるつもりらしい。しかしそのためには無事にシャリアを見つけて何とか連れて来なければならない。一方、シャリアはまともな装備をしていないらしい。
「酸に気をつければなんとかなるとは思うんだけどね」
データによれば、剣でも拳でもスライムには一応効果はある。しかし酸はかなり強力らしい。
「とりあえず不意打ちだけは気をつけないとね」
「だね」
周囲を見回しながら、愛原は答えるのだった。
東へと向かうロナルドとトルフィン(
ga3663)は無言でハーレーを走らせていた。タンデムを組むことも可能だったが、運転役をロナルドが引き受けると、トルフィンはロナルドに確認することなくサイドカーに乗り込んでいた。
視線で「オー、ヤローではなく カワイコちゃんとコンビ組みたかったデス」と訴えると、「女装でもすればいいのか?」と睨み返していた。おかげで二人の間に会話は無い、ある意味言葉が要らないとも言えた。
小銃片手に周囲を見回すトルフィンの手元の無線が急に叫んだ。声の主はMIDOHのようだ。
「応援お願い、シャリアがスライムに襲われているの」
久しぶりに聞いた女性の声にロナルドの顔が活気を取り戻す。前輪を固定し後輪を転がすようにしてUターンすると、そのままエンジンをフルスロットルしたのだった。
一方無線で連絡をしていたMIDOHは西南北とマスターに連絡を済ませるとサイドカーを飛び降り、龍我が対峙するスライムの元まで駆けつけた。
「どう?」
「見ての通りだ」
シャリアの開放には成功したものの、まともな手ごたえを感じられないのか龍我の顔には焦りの色見られた。すでに覚醒し、龍我の腕全体には赤い術式の様な紋章が浮かび上がっているにも関わらずだ。
ただ不幸中の幸いはシャリアが既に気を失ってくれている。龍我はMIDOHに戦闘を交代すると、覚醒を解除しロープでシャリアを拘束した。
そしてMIDOHは強化された小銃「スコーピオン」を手に豪破斬撃を繰り出していた。
「全力でいかせてもらう」
スライムに関する情報は国谷からある程度聞いている、銃でもある程度は効果があるはずだった。そしてMIDOHの放つ銃弾は確かにスライムの身体を確実に四散させていく。
しかしスライムの方も黙ってみているわけでは無かった。スライムの放つ酸はMIDOHの着るフライトジャケットをも穴を開け、肉体に直接ダメージを与えてくる。
「長引けばあたしが不利‥‥」
練力の関係で、長期戦はどうしても能力者の方が不利になる。加えて豪破斬撃を放つほど、MIDOHは自分の首を絞めることにもなっていた。シャリアの拘束が完了した龍我も参戦するが、龍我のスキルではあまりダメージを与えられなかった。
そんな時、遠くからハーレーの音が聞こえてきた。
「HAHAHA!! 正義の味方の登場です」
サングラスを外しポーズを決めるロナルド。一方サイドカーに乗っていたトルフィンはハーレーが止まるとすぐに覚醒し、瞬天足でスライムとの距離を詰めていた。アーミーナイフではダメージを期待することはできないものの、スライムの気を逸らすことは可能だと考えての行動だ。
しかし如何せん攻撃力不足という点は否めない。混戦になっている状況を確認しロナルドはバトルアクスを手に取った。
「私にマカセナサーイ」
重量にものを言わせた斧の一撃は確実にスライムにダメージを与える。そしてやがてスライム退治に成功するのだった。
簀巻きにされたシャリアをサイドカーに詰め込み、龍我、MIDOH、ロナルド、トルフィンが町外れまで来ると、そこでもスライムとの戦闘が繰り広げられていた。
国谷に強化された武器で潤と愛原がダメージを与え、ファルロスが救急セットを使って仲間を癒すという一連の動きでハーレー組が加勢する間もなくスライムを倒している。
「強いな」
トルフィンが素直に褒めると、愛原は嬉しそうに喜んでいる。
「ところでシャリアは?」
国谷が尋ねると、MIDOHがサイドカーを指差す。そこには一瞬だけ目が合い、慌てて目を閉じた簀巻きの男が寝かされていた。
「では、早速マスターに引き渡そう。待ちくたびれているはずだ」
ファルロスに促されるように能力者達は町の中へと入っていった。
その後、能力者達はマスターの計らいで食事をとっていた。あまり豪勢なものとは言えないが、味は悪くない。当初窓際でブラックコーヒーをひとり寂しく飲んでいたトルフィンだったが、愛原に請われるようにして輪の中に入っている。
「マスター、腕いいんだね。BARじゃなくRESTAURANTでもやっていけるんじゃない?」
潤が言うと、マスターは厨房を指差した。そこには先ほど捕まえたはずのシャリアが必死に働いている。
「そいつはシャリアが作ったもんだ。飲み食いした分働いてもらうつもりだったが、テキサスまでの移動費ぐらいここで稼がせてやるのも悪くないと思っている」
シャリアを問いただした結果、彼はロスからテキサスに帰るつもりだったという。しかし途中で路銀が尽き、能力者として嘘をつくというやり方を思いついたと言うことだった。
「でも次からは雇う前に本物かどうか確認しなよ」
MIDOHが言われ、苦笑を浮かべるマスターだった。