タイトル:【MN】カンパネラ始動マスター:八神太陽

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/09/16 04:54

●オープニング本文


※ このオープニングは架空の物になります。このシナリオはCtSの世界観に影響を与えません。
申し訳ございませんが、相談期間中の拘束は通常通りに発生します。事前にご了承のうえご参加ください。

 平成二千九年九月、カンパネラ学園に終業のベルが鳴る。購買部を担当するロッタ・シルフスも電卓を叩きながら、今日の収支を計算していた。
「今日の売上トップはウォッカですねースブロフ、ワインとアルコールが上位独占なのですっ」
 何でも聞いた話では調理実習に使うらしい。決して自分達で飲むわけじゃないと生徒達は念を押していたが、ロッタとしては利益が出るのであれば、使用方法は気にしていなかった。現に高級煙草もそれなりに売れている。ほとんどが先生の使い走りということだったが、売れ行きから計算すれば、教師は全員肺ガンで病院送りされてもおかしくなかった。
「でも最近全体的に売上が落ちちゃってますねーバグアさんもお疲れみたいなのですっ」
 アルコールや煙草が売れる事もロッタにとって悪くは無い事だった。だが利益を見ると乏しい、やはり兵器が売れる方がロッタとしてはありがたかった。そのためにはバグアがもっと頑張り、能力者達を苦しめてもらう必要がある。それがロッタの行き着いた結論である。
「つまりロッタがバグアの味方をすればいいのですね〜今こそカンパネラ君一号を使うときなのですっ」
 天啓を得たロッタは学園の屋上に上がり、密かに改造していた団扇を手にした。ラスト・ホープ自体が狙われるなど有事のために学園自体を動かすためにロッタが独自開発していたカンパネラ君操縦団扇である。ロッタが右手をかざすと学園から右手と右足が生え、左手をかざすと左手と左足が生える。そしてロッタが両手をパタパタすると、生えた両手から団扇が精製され空を飛び始める。
「お金持ってそうなところから壊していくのですよっ」
 カンパネラ学園もとい、空飛ぶ改造ロボットカンパネラ君一号はその後UPCにより未確認飛行物体として補足、能力者達に撃墜命令が下されるのであった。

●参加者一覧

西島 百白(ga2123
18歳・♂・PN
アンジェラ・D.S.(gb3967
39歳・♀・JG
佐渡川 歩(gb4026
17歳・♂・ER
弧磁魔(gb5248
15歳・♂・ST
龍鱗(gb5585
24歳・♂・PN
安藤ツバメ(gb6657
20歳・♀・GP
相賀翡翠(gb6789
21歳・♂・JG
上月 白亜(gb8300
15歳・♀・ST

●リプレイ本文

 太陽の輝く蒼天の空の下、一機の兵器が空を飛んでいた。カンパネラ君一号、ULTの看板娘ロッタ・シルフス(gz0014)の手によって改造されたカンパネラ学園の真の姿である。脳天には平和の鐘、通称カリオンの鐘を改造した大砲台が備え付けられ、左右には太さ五メートルを越えるたくましい腕と脚が取り付けられている。ロッタにお手製の自信作であった。
「とりあえず適当に撃つのですっ」
 操縦者であるロッタ自身、今どの辺りを飛行しているのか理解してなかった。カンパネラ君一号には地図を搭載していていない。特定の場所に狙うような事をすれば、次の場所を補足される可能性が高い、それがロッタの作戦である。要するに地図を入力するだけの容量が無かったわけで、ロッタがそれを認めていないだけに過ぎない。今も適当に砲台を撃っていれば誰かが騒ぎを聞きつけやってくる、それだけでロッタとしては十分だった。戦争が起これば武器が必要になり生産が増える。それだけULTに利益が転がり込んでくる。薄利多売を基本にしているULTにとっても、そこそこ稼げるはずであった。
「ロッタを腹黒幼女とか呼ぶ種族は滅んじゃえばいいのです」
 もう一発平和の鐘キャノンを放つ。白色の光線が地平線の彼方で粉塵と爆発音を上げ、地形を変えていった。それはロッタの日頃の恨みを込めた一撃である。立ち上るきのこ雲を満足げに見つめるロッタ、だが数秒と立たず雲は空に消えていく。七機のKVが突入してきたからである。
「遂に邪魔者が来たのですね、ロッタが退治して見せるのですっ」
 声高に宣言するロッタ、意気揚々と三度平和の鐘キャノンを発射し自分の意気込みを示す。だが前もって本部で聞いた情報に間違いない事を確認した事で西島 百白(ga2123)、相賀翡翠(gb6789)は軽く頭痛を覚えていた。
「何‥‥やってるんだ‥‥あれは‥‥?」
「‥‥何やってんだか」
 両腕で団扇を仰ぎつつ特殊結界UW(うちわ)フィールドを張るカンパネラ君一号、そして屋上で同じく団扇を抱えて踊るロッタに二人は困惑の表情を見せた。
「わざわざ踊る必要ないでしょうに」
 想像以上にシュールな光景を前に言葉を漏らしつつ、上月 白亜(gb8300)が拡声器の準備を始める。
「‥‥ロッタさん、お店に行列ができてますよ。レジに戻ってください」
 戦闘準備を始めつつ、ロッタがどういう反応を示すか能力者達はしばらく様子を見る。そしてロッタの返答は攻撃だった。
「行列なんて作らせておけばいいんですよ〜そうすれば心理的に品数限定アイテムが補充されたと考えた傭兵さん達が勝手に並んで、ついでに何か買っていってくれますからねっ」
「腹黒幼女の異名は伊達じゃないわね」
 思わず呟くアンジェラ・ディック(gb3967)。
「コールサイン『Dame Angel』、目標破壊カンパネラ
ロッタは確保のち、お尻ペンペンにしましょうね」
「そうですね‥‥。では‥‥覚悟してください」
「悪いけど、敵対してる以上は落とさせてもらうよ!」 
 意気込む安藤ツバメ(gb6657)、各々の思いを込めて戦闘が開始された。

「コイツで空戦は‥‥苦手なんでな‥‥」
 愚痴を吐きながらも西島が使うのはK−01小型ホーミングミサイル、ロッタにも因縁のある武器の一つである。今まで何度も追加を要望されつつ、その度にロッタが間引きをし、数の調整を行っていると言われている武器である。
「そんな武器使っちゃいけないのですっ」
 必死に回避を試みるロッタであるが、弾数が多い上カンパネラ君自体の身体が大きく被弾箇所が多い。全部避けきれるものではなかった。
 続いて上月が頭上、平和の鐘に焦点を定める。使用武装はAAM、射程ギリギリから反撃の来ないように警戒しつつの攻撃である。だが平和の鐘というだけあって装甲の高い台砲台は多少亀裂を残しつつも、形を維持していた。
「好き勝手遠くから撃つのは卑怯なのです。だから個数制限されちゃうんですよ〜」
 ロッタが平和の鐘キャノンの砲台を能力者達に向ける。
「だから両方とも、もっと強い武器を持つのですっ」
 目標は最高速で突入してくるワイバーン、龍鱗(gb5585)のKVである。翼をコーティングしたブレードウィングが太陽光に反射し輝いている。
「さすがに‥‥当たってやるわけにはいかない」
 回避は不可能ではないと判断した龍鱗はマイクロブーストと追加補助スラスターをフル活用、機体を横滑りさせる。だが高速で迫るキャノン砲の加速度を見誤ったか、左翼に被弾。速度を抑えられる結果となる。
「ならばガトリング砲で煙幕張りましょう」
 弧磁魔(gb5248)がR−01で追いかけつつ、ガトリング砲を掃射。射程は足りないものの、その間に能力者達は離散。カンパネラ君の狙いを絞らせないように分散する。右に展開したのはアンジェラ、左には龍鱗と相賀へと移動。後続の上月が正面、陸上戦への移行に備えて距離を取りつつ全体の動きを見ていた。彼らの懸念していたのは佐渡川 歩(gb4026)の存在である。テンタクルス改で出撃という天然とも本気ともとれる失態を仕出かしているせいで戦場到着が遅れているが、ロッタに加担すると明言している。到着した時の事を考えると、悠長に構える余裕は無かった。
 近寄る三機にロッタは平和の鐘キャノンを向ける。標的にしたのはアンジェラの乗るアンジェリカ。装備品の量産型M−12帯電粒子加速砲に加え、SESエンハンサーで非物理攻撃力を上げられる事になれば片腕がほぼ確実に破壊されると考えたからである。
「アンジェリカに知覚武器積むのは卑怯だと思わないんですか〜」
「それを言うなら学園を改造するロッタも非常識よ」
 M−12の射程を見計らいながら接近するアンジェラ、行動力こそ少ないが移動は高い。その行動力さえもスタビライザーで補充できる。そこでロッタが狙うのは平和の鐘キャノンでアンジェラを牽制しつつ、接近戦で龍鱗と相賀を倒すというものである。だがロッタの考えとは裏腹に相賀は距離を取って停滞、M−12強化型帯電粒子加速砲の発射準備にかかる。
「学園にゃ悪ぃが、得物を試してみてぇんだ。どんくらいの威力か計らせてもらうぜ」
「威力はロッタも試してるから心配ないですよ〜でもでも連射できないのが問題なのですっ」
 日頃からの営業トークでロッタはM−12強化型帯電粒子加速砲の解説を語る。
「そいつは職業病だな。だけど戦場は甘くないぞ」
 平和の鐘キャノンの砲台は相変わらずアンジェラの方に向いている。言ってしまえば相賀に対しては無防備だった。だがアンジェラを無防備にする方が危険であることには違いない。そして判断が遅れればその分龍鱗の接近を許す事になる。どちらにしろ良くない状況だった。
「それとAランク出しやがれ!」
 アンジェラのアンジェリカとは違い、相賀のS−01Hはそれほど錬力に余裕はない。元々四ターンの充電が必要になる武器であることもあって発射した後、相賀はスナイパーライフルRへと換装。そしてすぐさま次弾を発射する。狙いは団扇を持つ左腕、全く防御効果を持たないと言われているUWフィールドを貫通するのが狙いである。そして巨大な腕は団扇を離す事も出来ずに被弾を余儀なくされた。
「‥‥爽快だな」
 思わず感想を口にする相賀ではあったが、左手から団扇を落とす事までは成功したものの破壊するまでには至らない。だが団扇を落としたことにより浮力が低下、カンパネラ君がバランスを崩す。そこで射程範囲に入ったアンジェラもSESエンハンサーを起動、M−12強化型帯電粒子加速砲でUWフィールドはもちろん団扇を持つ右腕ごと弾き飛ばす。バランスを失ったところを上月が試作型ブリューナクで平和の鐘も破壊、続いて龍鱗がほぼ繋がっているだけとなった左腕の破損を狙う。だが迫ったところでロッタもダブルラリアット、もとい片腕を失ったことシングルラリアットで応戦。巻き込まれながらも龍鱗は左腕を切り落とした。

 浮力を失ったカンパネラ君一号は地面へと着陸を果たす。それに真っ先に反応したのは安藤だった。
「よっと、さて‥‥本番はここからだよ!」
 一度拳を合わせた後、安藤は腰を落とし一撃必殺の構えをとる。【OR】イナズマ発生装置でイナヅマを発生、更にブースト空戦スタビライザーを作動させブーストを点火する。閃光をまとったバイパーが大地に叩き落されたカンパネラ君一号へと直進する。
「ゼロ! ブレイカァァァ!」
 零距離より安藤が繰り出すのは横足払い、くるぶしに付けられたレッドグリルを当てる事が目的である。そして第二、第三の攻撃へとコンボを繋げて初めて完成する連続技であった。だがそれを妨害するように遂に佐渡川が到着する。
「『説明しよう。ゼロブレイカーとは超近距離まで突撃し、一気に最大火力をもって相手を落とす最強の必殺技なのだ』ロッタちゃん、こんなメモ紙が残されてましたよ」
 登場と同時に読み上げたのはゼロブレイカーの解説だった。だがそんな彼の声が聞こえる訳も無く、ロッタはカンパネラ君を前方へと転倒させる。そしてそのまま巨体を活かし、バイパーを押しつぶした。
「バイパーの最高速度なら十分反応できるですよ〜」
 ご機嫌とばかりに再び踊るロッタ、だがすぐに衝撃が襲う。西島の阿修羅によるものだった。
「少しばかり‥‥耐えれるよな?」
 西島が阿修羅を陸戦型形態へと変えて救援に向かう。死角へと移動しつつクラッシュテイルを突きつける。
「さて、狩りの‥‥時間だ‥‥行くぞ‥‥相棒(虎白)」
 痛みに痙攣を起こしたところを、弧磁魔がSO1で蹴り、ドSO1キックを入れて安藤を救い出す。運よく窓の部分に入ったのであろう、彼女のバイパーは原型を留めてはいる。だが既に煙を吐いており、緊急メンテナンスが必要であることは誰の目にも明らかだった。
「さすがロッタちゃん、その無敵巨人カンパネラ君一号を駆使して平和な大陸を作り出すのですね。そこで認められた人類は救援に駆けつけた僕とロッタちゃんの二人、木の実や魚の自給自足の生活をするのです」
 一人夢の世界へと旅立った佐渡川を上月がバルカンで追い払う。そしてアンジェラも着地、機盾「レグルス」を構える。
「もう一度いける?」
 アンジェラの問いに安藤は二つ返事で答えた。
「もし次で駄目なら西島君が決めて」
「‥‥その条件は気が進まない。やるからには決めてもらおう」
「そうだね」
 安藤は静かに息を吐いた。深呼吸をし、丹田に力を溜める。
「問題は敵がこちらよりも大きく、簡単に潰しにかかれる事。言ってみれば、初撃で相手の動きを封じればいいのよ」
「そうだね。一つ考えがある、でも私一人じゃ無理があるな。弧磁魔君手伝ってもらうよ」
 安藤の考えは初撃の横足払いで宙に浮かせるというものだった。一瞬でも浮かす事ができれば次へと繋げられるはずである。
「‥‥そういう事ならば、俺も加勢に入ろう」
 西島も賛同する。そして再び安藤は構え、イナヅマ発生装置を作動させた。
「一瞬でいい、私にみんなの時間を頂戴。それじゃ行くよ」
「三」
 三人が身構える。はるか後方では誰の手にも届かなくなった佐渡川を龍鱗と上月が牽制していた。
「二」
 ブーストに火をいれる。安藤はバイパーの特殊能力であるスタビライザーの計器も確認した。
「一」
 踏み込む地面を確認する。雨は降っていないらしく、手ごたえは十分だった。そして三人が顔を見合わせる。
「零」
 飛び出したのは西島の阿修羅だった。正面から左手に展開、続いて死角へと回り込む。続いて弧磁魔のS−01、右手から側面へと移動し蹴りのタイミングを見計らう。そして最後に正面から、安藤のバイパーが飛び込んだ。
「真ゼロ!ブレイカァァァ!」
 再び横足払いを入れる安藤、ロッタは先ほどと同様に浴びせ倒しで潰しにかかる。だが安藤は足払いを刈り上げる要領で上方に蹴り上げ、弧磁魔のドS01キックもそれに続いた。阿修羅もサンダーテイルをカンパネラ君の内部に突き入れ、続くようにして安藤がデアボリンクコレダー、ホールディングバンカーを叩き込む。
「ブレイク、エンド‥‥」
 派手な轟音とともにカンパネラ君一号が崩れ落ちる。
「ガアァァァァ!」
 阿修羅の虎白とともに咆哮を西島も咆哮を上げる。それは勝ち鬨だった。だがロッタにとっては、野望が崩れ落ちる事を意味する音だった。

「いろいろ買ってくれと言うのは金銭的にも難しいですが、今後も貴公のショップは多く利用すると思うのでこれからもよろしくお願いします」
 壊されたカンパネラ君一号を未練がましく見つめるロッタに弧磁魔は声をかける。
「ただ、こういうのも置いて欲しいという願望はありますけどね」
 ロッタに見えるように掲げて見せたのはリンゴジュースだった。だが一方で相賀はロッタに厳しい一言をぶつける。
「あーあ。ロッタは学園弁償だな」
「いいですよっ、今回は質じゃなくて数で負けたんです。今度はカンパネラ君二号を八体準備してくるのです〜それと佐渡川さん」
「はい?」
 いきなり呼ばれて佐渡川は顔を赤面させる。そしてロッタからの一枚の紙を受け取った。
「カンパネラ君一号の弁償代と二号八体の見積もりです。お願いしますねっ」
 満面の笑顔で迫られた佐渡川にプレゼントをつき返す度胸までは無かったのだった。