タイトル:【NE】錬力禁止模擬戦マスター:八神太陽

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/06/11 08:12

●オープニング本文


 西暦二千九年五月、UPC北方軍グリーンランドにあるチューレ基地にて領土奪還作戦の説明が行われた。陣頭で指揮をを執るのは司令官であるイザベル・プレシアード、今回の作戦は入学式狂想曲、北方ロシア戦線と大勝を収めたため、その勢いに乗り、グリーンランド北方方面へ安全地帯を拡大する(Nothern Extenging)作戦である。グリーンランドには入学式狂想曲以来バグアの増援が来たという報告は無い。そこで残存兵力なら十分チューレ基地、そして協力を約束してくれたカンパネラ学園の勢力だけで十分対応できると考えていた。だがイザベルにも不安がある、最近聞かれる輸送船の行方不明である。原因はよく分かっていないが、最近病院より戻ってきたマックス・ギルバートとトーマス=藤原によるとバグアが最近開発した錬力を低下させる兵器が原因だという。錬力低下は一軒地味な効果だろう、だが一部の武器が使用不可になる他にブーストの使用にも制限がかかる。バグア残存兵力が少ないとはいえ、それで勝てるのだろうかという疑問があった。
 そこでイザベルは本部へと連絡、錬力使用を封印した状態でギガ・ワームに勝てるのかどうかをシミュレートしてもらうことにしたのだった。

●参加者一覧

篠崎 公司(ga2413
36歳・♂・JG
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
ヒューイ・焔(ga8434
28歳・♂・AA
神撫(gb0167
27歳・♂・AA
紅月・焔(gb1386
27歳・♂・ER
リア・フローレンス(gb4312
16歳・♂・PN
アリエーニ(gb4654
18歳・♀・HD

●リプレイ本文

「それでは今からシミュレーションを開始するわ。言うまでも無いと思うけど、シミュレーションだからと言って気を抜かないようお願いするわよ」
「こちらこそよろしく頼む」
 UPC北方軍シミュレート室、司令官であるイザベル・プレシアード(gz0239)がマイクで能力者達に指示を飛ばす。本来なら同室しても問題は無かったのだが、後学のために見学を希望する軍人も何人か出てきたため別室で確認という形になっている。
「それじゃ始めさせてもらうわ。まず各機セッティングを確認して頂戴、空戦から始めるからそのつもりで」
「ギガ・ワームですか、了解です」
 KVとの操作の違いを確認しながら、コンソールを操作しながら篠崎 公司(ga2413)が答える。
「隊列や間合いはみんなに任せるわ。用意ができたら声をかけて」
 ディスプレイ上には距離感を示すためだけの平行線が架空空間上に引かれている。そしてかなり十キロ程離れた地点には微動だにしない架空のギガ・ワームが一機浮かんでいる。
 自分の機体の装備、挙動、細かい操作の最終確認を行い、能力者達は準備完了の合図として挙手する。そして錬力禁止という特殊条件下でのシミュレーションが始まったのだった。

「これより煙幕を展開、確認後突入を頼む」
「煙幕確認‥‥これより突入する‥‥」
「同じく突入します。支援をお願いしますね」
「支援了解。任せておいてくれ」
「さて‥‥どこまで戦えるか」
 対ギガ・ワームでの作戦は、敵機上空への着陸を狙う終夜・無月(ga3084)とアリエーニ(gb4654)を他全機で援護するというものである。弾幕を張りつつ隠れ蓑を作り、援護射撃をしながら敵を注意を引き付ける。そして弾幕役にはリア・フローレンス(gb4312)、直下からの爆撃役に篠崎、ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)、ヒューイ・焔(ga8434)の三名、そして正面からの遊撃として紅月・焔(gb1386)がミサイルで牽制をかける。
「こちら終夜‥‥敵機上空に着陸成功した。‥‥これより砲台破壊にかかる」
「アリエーニ、同じく着地成功。支援射撃を一時停止してください」
「了解、援護射撃を停止。足元に注意してください」
「ギガ・ワーム急速旋回を開始、各機衝撃に備えろ」
 作戦自体は悪くなかった。今回シミュレーションと言うことで先に隊列、敵との間合いを決められたということも一つの要因ではあるだろうが、何より下準備ができたということが大きかった。
「白皇が錬力依存の機体だと思ったら‥‥大間違いです‥‥」
 上方はヒューイが煙幕を張り、篠崎とホアキンがプラズマ弾を落としてを放電現象を引き起こす。実際ギガ・ワームは上から見れば攻撃範囲は広い、相対速度を合わせさえすれば命中させるだけなら難は無い。例え急降下が必要であるプラズマ弾であっても、煙幕に身を稼げば前提条件を満たす事は難しくない。
 だが着陸しようとすれば話は変わる。煙幕を抜けて接近に成功した終夜、アリエーニの二機がギガ・ワームに取り付く。だが一撃を加えると存在がばれたのか、ギガ・ワームは機体を傾けつつ急降下を開始、終夜とアリエーニを振り落としにかかってきたのである。
「一度離脱した方がいい。地面に叩きつけられるぞ」
「下がります! サポートよろしく!」
「ドキッ、聴講生だらけの大演習会、ポロリは‥‥ないね。煙幕装置行きます」
「煙幕確認‥‥離脱します‥‥」
 まだ余裕を見せるアリエーニ、それに応えるようにリアも冗談で返す。だが既にプラズマ弾を放出した篠崎とホアキンはリロードのため、すぐには動けない。だが同時に二人に煙幕を張る必要も無く、ヒューイは終夜とアリエーニの脱出用にリアとわずかに位置をずらし煙幕を張る。離脱と同時に紅月が正面から左翼へと展開、煙幕を破壊しないようにミサイルを撃ち込んでいく。だがギガ・ワームの方も無駄に攻撃を受けはしない。上に乗っていた厄介者が逃げた事を確認してか、ギガ・ワームもミサイル除去に本格的に取組む。
フェザー砲で放出されたミサイルを薙ぎ払い、煙幕を削っていく。
「敵さん、弾幕剥がしに来たぜ。後ろに気をつけてくれ」
 煙幕に潜みつつ距離を取る終夜とアリエーニに紅月が声をかける。
「ブースト効かないんだ。背後には気をつけてくれ」
「錬力禁止だったね!」
「‥‥了解」
 散開する終夜とアリエーニ、だがギガ・ワームも攻撃の手を緩めない。煙幕を剥ぎ取り露呈した二機目掛けプロトン砲の発射準備に入る。発射を阻止するために、砲の根元を篠崎とホアキンがリロードしたプラズマ弾を打ち込む。だが砲を全壊するまでにはいかなかったか、ギガ・ワームはプロトン砲を発射した。
「狙いはアリエーニさんです」
「あたしを狙って来るなんていい度胸ね」
 リアからの警告を受け、センサーを確認するアリエーニ。だが既にプロトン砲は背後まで迫っていた。操縦桿を全力で捻るものの、ミカガミの旋回速度よりプロトン砲の直進速度が上回る。全壊こそは逃れるものの片翼をもがれることとなり、戦線離脱。その後は一機ずつ落とされる形となり、敗北したのだった。

「初めて戦ったわけだけど、アイツやっぱり強いね」
 ギガ・ワームとのシミュレーションを終え、能力者達は一時カフェで休憩を取った。シミュレーターのセッティングを変えるために多少時間がかかるというのが主な理由ではあったが、能力者達としても一度息を入れなおすにはちょうど良かった。
「結論から言うと、火力が足りないようですね」
「ギガ・ワームが最大脅威だった時代は名古屋防衛線から早二年。その間KVも武器もかなり開発されたが、まだ火力は足りないか」
 そう結論を出すのは篠崎とホアキン、だが前線に立った終夜とアリエーニの感想は微妙に異なっていた。
「‥‥今回、撃墜までは‥‥行かなかったけど、‥‥時間稼ぐだけなら‥‥出来ると思う」
「今回みたいに煙幕に身を隠しながら奇襲みたいなことは十分できるよ。問題は緊急回避できないことだけど、そのあたりは的を増やすとかダミー作るとかで何とかなる気がする」
「確かにそうかも知れませんね」
 ヒューイも終夜、アリエーニ両名の意見に賛同する。だがその一方で一つの懸念も口にする。
「でも敵の数が多いと回避も辛くなります。変態‥‥じゃなかった紅月どう思う?」
「俺が変態ならギガ・ワームの固さも十分変態だな。聞いてる事はそういう事ではなさそうだが」
「だね。錬力が無くても的役ぐらいはできるかどうか、それについての感想が聞きたい」
「ふむ」
 しばらく考える様子を見せる紅月、そして導き出した結論はやってみなければ分からないというものだった。
「俺達は機械でもなければ兵士でもない、個々の能力も機体の性能もピンキリだ。できるかどうかは実際にやってみなければわからないさ」
「確かにそうか。リアは?」
「一撃が痛いギガ・ワームとかシャドウとかが相手だと常に撃墜される可能性があって辛いかも知れません。でもゴーレム相手なら、重装甲でまとめると壁ができるかもしれません」
「次のシミュレーションの事ですか」
「そうですね」
 篠崎の質問にリアは小さく頷いて答える。程なくして館内放送がシミュレーターの調整が終了したという連絡が入る。能力者達はそれぞれの飲み物を片付け、再びシミュレーター室へと戻るのだった。

 ゴーレム戦では先程のギガワーム戦と異なり、前線にはホアキンと終夜が立った。援護に回るのは篠崎、ヒューイ、アリエーニのA班、そして紅月とリアのB班が散開したゴーレムの各個撃破するという作戦である。
 敵はゴーレム三体、先程と同様に距離を示す線だけが描かれた空間に立っている。先ほどとの違いは下方向にには線が伸びておらず、地面を示すように平面を描いている。まずはA班である篠崎とアリエーニがスナイパーライフルで敵を誘導、突進してくるゴーレムに射程を見計らいつつホアキンが中心部へとグレネードランチャーを投擲、爆発の乗じてA班とB班も突入。ゴーレムVS2,3機のKVという形を作る。
 だがゴーレムも今回は攻撃的に来るようにAIが調整されている。戦闘機形態に変形し突撃を仕掛けてくるヒューイをゴーレムは手で止める。だが後続のアリエーニがソードウィングでその腕を切り落としにかかる。
「すまないアリちゃん」
「気にしない、急いで離れるよ」
 腕の切断とまではいかなかったものの、攻撃を受けたゴーレムはヒューイ機を落とす。そして離れた所を篠崎がスナイパーライフルでダメージを蓄積していった。順調に攻勢に出るA班とホアキン、終夜のC班。だがB班である紅月とリアは苦戦を強いられていた。
 岩流に乗るリアを後方からのスナイパーライフル要員に徹しさせ、紅月は照準を絞らせないよう高速移動しながらガトリングでゴーレムを攻撃していた。だが固いゴーレムの生命力を早々削りきれるものではない、両の腕に抱えたサーベルを振り回し迫ってくるゴーレムに対して紅月は時にミサイルポットで牽制していたが、ゴーレムはリアの方へと標的を変え突進してくる。
「一撃なら耐えられるわ」
 近接攻撃を決意したリアはサーベルウィングを使うために戦闘機形態に変形、返り討ちするために加速。だがゴーレムの方もサーベルを前面に立て、サーベルウィングでの攻撃範囲を限定させる。躊躇を見せるリア、それでも意を決したように突撃すると、ゴーレムの背後で爆発が起こる。終夜のアグニが命中したところであった。
「‥‥こちら終了‥‥援護に入る」
「ゴーレムならば何とかなるな」
 重機関砲を放つ終夜の横で、ホアキンはグングニルを構えて背後からゴーレムを狙う。そして隙の出来たところをリアのサーベルウィングが一撃を決めたのであった。

「お疲れみんな、参考になったわ」
 戦闘終了後、イザベルは能力者達の労をねぎらった。
「今回のデータ、軍でも有効活用させてもらうわ」
「お役に立てたようで何よりです」
 一礼する篠崎、だが気にしないようイザベルは制する。
「バグアがどんな手を使ってくるかは分からない、でも私達には守るべきものがあるからね。こういうデータの積み立ては何より重要だと私は考えてるわ」
「それはどーも」
 ぶっきらぼうに答える紅月、多少疲れたのか普段程覇気が無い。だが次のイザベルの言葉で再びやる気を取り戻した。
「それとカフェを開放しといたわ。さっきの分と合わせて料金は私持ちにしておくから、反省会するなら使って構わないよ」
 それを聞くと同時に飛び出すアリエーニ、それを追いかけるように他の能力者達もシミュレーター室を後にするのだった。