●リプレイ本文
「ガリーニンの護衛任務も久しぶりだな」というのは、白鐘剣一郎(
ga0184)である。
UPC軍哨戒機が確認した敵数は、そう多くはない。
「侮って不覚を取る訳にもいくまい」
「敵の数は多くないが油断は禁物だろう」
剣一郎の言葉にそう頷くのは御山・アキラ(
ga0532)。
「ガリーニンが無傷なら勝ち‥‥わかりやすくていいね」というのは神撫(
gb0167)。
「さあって! これから始まるのは参番艦が陸上戦艦になるか否か!?」と言うのはホキュウ・カーン(
gc1547)。
軍が用意した物資輸送ルートは囮を交えて3つ。
「これぞギャンブルってね!」
「まぁ、ダミーにしろ本命にしろ、きっちり届けないとな」というネオ・グランデ(
gc2626)もヨダカ(
gc2990)同様、初KV空戦である。
「‥‥けっこう重要な任務だよね」と香倶夜(
ga5126)。
UK3はその巨体故に導入できる戦闘域が限られていたが慣性制御装置を導入できれば、湾内への航行のみならず、陸上へとその活動範囲を一気に広げる事になる。
「ホバークラフトかっ、てくらいの浮上だがあの巨体が浮くとは。慣性制御装置、実に興味深い‥‥」
慣性制御装置を何時かは自分でも研究したい。と言うレベッカ・マーエン(
gb4204)。
「あのでっかいのが? へぇ、それは凄いね」
「慣性制御装置っつーのは、呆れる程すげぇモンですね」
ユウナ・F・シンクレア(
gc3168)やシーヴ・王(
ga5638)、神撫のみならず、余りにも規模が大きすぎてどうもピンと来ない者の少なからずいたが、戦局に大きく影響するのは誰にも簡単に想像できた。
UK3がもっと多くの大規模作戦に参戦していれば違った戦局があったのではないか?
と考えるのは、セリアフィーナ(
gc3083)やシルフィミル・RR(
gb9928)だけではないはずである。
「兎も角、慣性制御装置で参番艦をプロモーション(将棋で言う所の『成る』)させられるよう、頑張りましょう」とセリアフィーナ。
「気を引き締めて参りましょう」という上条・瑠姫(
gb4798)ら、仲間の言葉に、
「大事な大事な積荷ですからね。このガリーニンに当たりがあると思ってキッチリ守りましょう」
「指一本触れさせないつもりで頑張るわよ」
とヨハン・クルーゲ(
gc3635)とユウナもまた力強く頷くのであった。
●
「間もなく哨戒機がHWを発見したエリアです」
哨戒機の情報を元に随行メンバーを3班に分けた傭兵達。
ガリーニンと傭兵らの管制役を勤めるのは、シーヴである。
「レーダーに乱れが出始めやがったです。警戒を」
言葉が終わらないうちに激しい頭痛が傭兵らを襲う。
苦しげに溜息を吐くセリアフィーナに、
「クッ‥‥この頭の中にノイズが走る様な嫌な感じ‥‥キー! 原因には早急に潰れてもらうのダー!」
忌々しげに叫ぶレベッカ。
不安定なレーダーに代わって、目視で敵の数を確認する。
「見つけたのですよ! ドババっとやっちゃうです」
「哨戒機が確認した数より少ないな」
アキラが前方に浮かぶ敵数を数え、報告する。
(「残りは、どこだ? 上か‥‥?」)
「とりあえずは視界良好、敵影も無いな」
どうやら雲間を利用して敵がこっそり近付くのは、不可能のようである。
「それでも警戒は必要だがな」
「まあな」
●
「頑張るのですよ、ナハトファルケン!」と愛機に声を掛けるヨダカ。
早期撃墜の為、CW担当の3機がガリーニンから離れていく。
「そっちはお願いするのですよ!」
HW担当の8名5チームの内、5名3チームが牽制の為にガリーニンを離れる。
回避の為に迂回が必要か? というシーヴの問いに、
「ガリーニン、進路そのまま。速度を落とさず突っ切れ。敵は気にするな」と返す神撫。
「敵はスタンダードな編成ね。油断しないで行くわよ」
「了解だ。よろしく、ユウナ」
ユウナの言葉に頷く、諷(
gc3235)。
(「もっと熱くなるのかと思えば呆れるほど冷静だ‥‥」)
それに自分でも驚くほど思考も簡潔であった。
「――――――――皆殺す」
続いて香倶夜、ホキュウ、
「ミサイル、バルカンパックよし。いけます」
残ったHW担当の内、
剣一郎は敵機と僚機、ガリーニンの間に、
アキラとRRが上方に、
直衛班4名はガリーニンを中心に、予定された位置に機を移動させた。
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団子になっている敵5機に
ホキュウと香倶夜がHWに攻撃をしかける。
その動きに併せて、敵が展開した。
CWの孤立化を図ろうとする傭兵らの意図が判ったのか、位置を目まぐるしく変えていくHW。
「何があろうと食らいつく。それしか能がない」
迅鉄と名づけられた諷のシラヌイが、名に相応しく激しくHWを追い立てる。
だが、
「知覚系威力が減衰してる?‥‥CWの影響か」
ML−3で有効ダメージが与えられず、逆にすれ違いざまにプロトンの一撃を食らった諷。
「さすがに当てるか。だがその程度で落とせると思うな」
ユウナの援護ですぐさま機体を捻って反転をする。
神撫が放ったAAMがHWから逸れた。
「ジャミング下では誘導性が下がるが、まぁ牽制だ。当たらなくてもいいか」
この距離では仕方がないとあっさりとしたものである。
「早々にご退場願いたいね。招かれざるお客さんは」
「この距離なら外さない」
スラスターライフルで弾幕を張り、ブースでHWとの距離を縮める。
「そこを動くなよ。3枚に下ろしてやっから!」
ソードウィングで叩きつけるようにHWを斬りつける。
「行くぜ! CWがいてもこの距離なら、コイツから逃げられないだろうよ!」
ホキュウのホーミングがHWにヒットし、激しいFFの火花を散らせる。
「【セレーネ】。あたしも負けていられないわね」
香倶夜がHWの逃げ道を塞ぐ。
反転するHWの真正面にホキュウが待ち構えていた。
だが、その後ろに、不味いことに直線上にガリーニンがいた。
ホキュウが回避行動を取れば、ガリーニンの直撃は免れないだろう。
「落とさせないさ。ガリーニンの方がレアリティあるんだ」
真のギャンブラーは、何に価値があるかを見極めるのが肝心だ。
と、プロトン砲を受ける覚悟を決めるホキュウ。
トリガーを引き続けるホキュウの眼にHWの砲身が赤く光るのが写る。
直衛班もすぐさま反応する──
「煙幕張るです。(ガリーニンは)回避を!」
シーヴとネオが厚く煙幕を張り、
「本来の使い方では有りませんが、致し方ありません」
「そう簡単にはやらせんよ」
ガリーニンを守る盾になるようにそれぞれの機体をガリーニンの前へとスライドさせる。
「距離が有るので精度は余りよろしくありませんが‥‥攪乱には成るはずです」
瑠姫がホーミングを準備する。
「試作型ミラーアーマーの性能評価試験だ。こい!」
プロトン砲の直撃を受けるホキュウが揺らぐ。
香倶夜がレーザーガトリングを連射し、ホキュウからHWを引き離す。
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CW班は相互の距離や位置を横目で確認しつつ、CWを追い立てる。
HW班がHWをひきつけている間に一気にCWを片付ける算段だ。
「頭痛にはヒスタミンなのです! けん制攻撃発射ですよ〜」
ヨダカがAAMを発射する。
避けたCWにセリアフィーナがロングレンジライフルを発射する。
──が、
「これが外れますか‥‥」
「はわ、ホントに直角に曲がったですよ」
流石、UFOです。と感心するヨダカ。
もっと接近せねばとブーストを発動し、一気に距離を詰めるセリアフィーナ。
レベッカがストームブリンガーBを発動させる。
「ジャミングで低下したセンサーは機体の機動力を上げてフォローだ、ストームブリンガー発動!」
3機は連携してCWの攻撃をかいくぐり、接近する。
「当たるぶっぱは読みなのです! ブラックハーツでごーですよ」
「ターゲットロックオン、シュート!」
レベッカからAAMがCW目掛けて発射され、防御力に劣るCWが一撃で飛散する。
「ふふふ。計算どおり、なのです」
ヨダカが、CWを撃破した。
●
CWを全て破壊した──と安心した瞬間、再び鋭い頭痛が走った。
「敵機、発見。CW1、HW2」
アキラ・RRの更に上、高高度を飛ぶHW。
傭兵らに発見されたと知るや、CWを連れ降下してきた。
アキラが仲間達に短い警告を発する。
「RR、離れすぎないように注意しろ」
「了解です‥‥アキラさん」
背後に現れた守護鬼神ともいえる鬼武者に微笑むシルフィミル。
「いつもように‥‥タイミングを教えてくださいね」
アキラとシルフィミルのコンビが一気にブーストを吹かせて上空へと上がっていく。
「抜かせてはやらん、落ちるまで付き合ってもらう」
アキラのバルカンに激しい赤い火花を散らせるHWの後ろにシルフィミルが回り込んでいく。
「‥‥‥‥抜かせません」
CWが落ちるまではと、バルカンとスナイパーライフルで追い立てる。
だが、HWも必死である。
射軸上にガリーニンや直衛機を持って行こうとする。
「小賢しい」
HWの前にアキラが割り込んでいく。
「なるほど、連携もこなすか。だがその動き、見えているぞ。(ガリーニンを)そう簡単に落とさせる訳にはいかないな!」
剣一郎もまた上空に向かってシュルテン・Gを駆る。
「狙撃は専門ではないが‥‥逃がさん」
ジグザグに動いて交わそうとするHWの尻が、剣一郎のレンジ中央に入った。
「ペガサス、FOX3」
CWの妨害を物ともせず、放った必中一撃がHWを貫ら抜き、爆発する。
「ペガサス、スプラッシュ(敵機撃墜)1!」
同じ失敗は繰り返さないとばかりにブーストを効かせ一気にCWの間合いを詰めるセリアフィーナ。
「狙い撃たせて頂きます!」
アグレッシブフォースを乗せた一撃がCWを貫く。
トドメの一撃、短距離リニア砲を食らったCWが激しく飛散した。
●
残るHW4機は被弾もしくは破損したHWを囮に傭兵らを誘い、隙あらば‥‥とガリーニンを狙う。
「7時方向、敵2接近」
「来たか」
左方向より接近するHWを確認するネオ。
「煙幕を張ります。どうぞ、其方へ」
素早く煙幕装置を操作する瑠姫。
「ヨハン機、フォロー頼みやがるです」
「シーヴ様、了解しました」
指示にヨハンが機を少し前に進ませる。
ヨハンと共にシーヴもD−02を発射する。
残るネオと瑠姫もまた、いつでも援護できるようにトリガーに指を掛ける。
「射程内に入りました。支援射撃を行います、射線にご注意ください」
何時敵増援が来るか判らない状況である。
護衛の直衛班とはいえ、隙あらば墜とすつもりの攻撃である。
接近したHWが慌てて逃げていく。
「だから‥‥‥‥抜かせないと言っています」
シルフィミルのAAEMギリギリを躱すHWにアキラの帯電粒子加速砲が飛んでくる。
「ミサイルにばかり気を取られて‥‥‥‥浅はか。残念、ですの」
被弾し動きが遅くなったHWに、
「チャンス‥‥‥‥ですか。なら、遠慮無く」
フォトニック・クラスターをすれ違いざまに放つシルフィミル。
装甲が溶け落ちたHWにアキラの螺旋弾頭が撃ち込まれ激しい爆発を繰り返して落下していった。
●
敵味方が激しく入り乱れる中、再びHWが1機ガリーニンの真正面に躍り出た。
ヨハンがフレアを撒き、
シーヴがブーストでガリーニンとHWの間に岩龍を割り込ませる。
他の3機が、シーヴ機の抜けた位置を素早くカバーする。
「撃たせる暇なんざ与えねぇです」
「ちょっと早い暑中見舞いだ、食らって砕け散っとけ」
回避するHWにヨハンとネオのAAMが追い討ちを掛ける。
「無様な蠅め。燃え尽きるがいい」
バレルロールからの減速運動。
HWを前に行かせた諷のレーザーライフルがHWの後部を突いた。
エンジンに当たったのか、HWの動きが一気に悪くなる。
そこをソードウィングで一気に機体を切り裂いていく諷。
ユウナのAAMが着弾し、HWが飛散する。
一方、予想外の苦戦を強いられ、後ろを取り取られを繰り返すのは神撫であった。
ロール・ヨーからの一撃を躱され、苦笑いをする。
「やっぱ、単機で落とすのは難しいか。援護が来るまで持久戦だな」
弾幕を張り、HWがガリーニンに向かうのを邪魔をする。
「待たせたな」
諷とユウナが合流し、一気に3機でHWを畳み込んでいく。
追い込まれたHWに神撫の建御雷が止めを刺す。
「これで終わりだ」
墜落するHWが海面に叩きつけられ粉々になる。
被弾したホキュウの援護に向かう剣一郎。
「大丈夫か?」
「結構ダメージでかいな。ついでに言えばミサイルもバルカンも尽きちまったか」
後はガトリングで近接防御か‥‥と苦笑いをするホキュウ。
バイパーの消火装置は正常に作動したようである。
「まずいな。これ以上の戦闘は厳しいかな? ギャンブラーは引き際をわきまえないとな」
ホキュウが下がり、剣一郎が香倶夜とロッテを組む。
「抜けた奴は任せて貰おう」
「これからが、あたしと【セレーネ】の本領発揮! 覚悟しておきなさいね」
香倶夜がAAMを放つ。
回避をするHWの頭を抑える剣一郎。
「【セレーネ】の一撃を食らえ!」
香倶夜の螺旋弾頭ミサイルがHWを突いた。
●
「これで一応片付いたか‥‥ペガサスより各機、ダメージなどによる支障はないか?」
剣一郎が、被害を確認する。
正常な動きを取り戻したレーダーが、周辺に敵機がいない事を示す。
だが、
「増援を警戒。気を抜くなよ」
撃墜したHWから増援を求める連絡が発せられているかもしれない。
大西洋を南下するUK3の誘導電波をキャッチする。
「もう一息だ。無事送り届けるまでは気を抜かずにな」
「やれやれ、なんとかなったか」
「任務完了ってな。後はコイツの修理だな」
ホッと息をつくホキュウ。
安心する傭兵らの気持ちを裏切るように後方を警戒するレーダーに反応があった。
もう一度ドックファイトをするに弾も燃料もギリギリである。
緊張する傭兵らに、UK3の管制が入った──。
管制の指示で、まずガリーニンが降下、着艦をした。
「無事タッチダウン、と」
「終わりましたか。他の方々も無事だと良いのですが」
そう言う瑠姫の眼に別滑走路から慌しく離陸していくUPC軍機が見えた。
***
「地上を走る潜水艦‥‥ちゃんと見せてくれよ」
ガリーニンから降ろされる荷を見つめ、そう呟く神撫。
「G3Pはやはり面白い計画だな、最終的には航宙艦にでもするつもりかね」というレベッカ。
「轟竜號が宙に浮く?」
UK3を取り巻き飛び交う様々な噂の中には、レベッカの言う「航宙艦」もあった。
「その内、ギガワームの慣性制御装置を入手する為に協力しろとかきっと言い出すんだろう」
驚くユウナにそう笑うレベッカだった──。