●リプレイ本文
●手が空いた奴から飯にしろ
「ソナーブイですか。参番艦の死角がこれで補えると良いんですが」
マニュアルを見ながら井出 一真(
ga6977)がいう。
「対潜哨戒に苦節一年。先の試験運用を経て、やっと発売です‥‥‥‥」と古河 甚五郎(
ga6412)が感無量でいう。
「あると便利そうだよな‥‥いい具合にテスト出来ればいいけどな」と賢木 幸介(
gb5011)は興味津々である。
甚五郎に詳しそうだな、という幸介。
「もう任しちゃってください」
ソナーブイの導入が遅れたのは、UK2番艦登場まで海に対するバグアの脅威と言うのは比較的軽いものであった為である。それ故、
「ソナーは闇雲に撒けば良い物ではない。要は等間隔かつ三角測量が可能な様に角度をつけて落とす」という三島玲奈(
ga3848)の指摘は的確である。
きちんとした位置に落さねば意味が無いと担当士官から貰った海図に現在敵味方の位置を書き込み。ベストポイントを計算して書き出していく。
「撒く暇があるんなら攻撃したほうがマシ、って言うんじゃ意味ないしね」というのは鯨井昼寝(
ga0488)。
「何にせよ。ソナーブイの実用化で、これまでより索敵の効率が上がるというのは助かりますわね。いつの時代でも情報があって初めてまともに戦えるのですし」とクラリッサ・メディスン(
ga0853)。
「ふむふむ。敵は今のところ潜水艦1隻と駆逐艦2隻か。従来型の駆逐艦でもヘリ搭載能力ある場合から水中型キメラとかの運用されるかもしれないな」とリチャード・ガーランド(
ga1631)。
キメラが轟竜號を包囲。同時多発攻撃を実行するのではないかと玲奈は予想したが、それについて軍側の見方は別であった。
敵の数が少数であることから轟竜號攻撃を目的とするよりも新規配備されたグリフォンへの強行偵察だろう、という。
「戦場を選ばないグリフォンの完成で公海での戦い方にも変革が生まれそうですわね」とクラリッサ。
従来KVでも水面スレスレ、高度0からの攻撃は出来たが、外洋において空母は針である。
さらに小さいワームともなればAIのフォローがあっても当てるのが難しい的であったが、グリフォンの登場により対艦・潜攻撃方法が革新したのである。
バグアが偵察したくなるもの当然だろう。
「機が熟したから動いた‥‥熟した実は前の虞もあり、か」と守原有希(
ga8582)が呟く。
だがバグアが何時気分を変えて轟竜號撃沈に動くか判らないのも事実である。
「鹵獲型なら改修されてワームやキメラの輸送母艦になっているかもしれないしね」と指摘するリチャード。
甚五郎は、傭兵だけではなく曳航ソナーを補う形で轟竜號艦載機による扇状のソノブイ散布を軍に要望した。
大きな流れとしては、航空各機がソナーブイを投下。
ソナーブイのデータを管制官が纏め、集約されたデータを一度轟竜號に。
それを更にフィードバックする事で索敵網を形成した後、4班に分かれた傭兵等がそれぞれの役割に分かれ行動する。
A班:クラリッサ、リチャード、絣、霞
B班:玲奈、マリオン、アンジェラ、幸介、星嵐、バーシャ
C班:昼寝、シリウス、一真
D班:甚五郎、有希
情報の共有化を含めて傭兵らが立てた行動計画は、完成度が高く。
轟竜號艦長沖田は「軍はやることがないな。(一部警戒を解き)飯にでもするか?」と笑ったくらいであった──。
●音の包囲網
轟竜號が滑走路を広げ、格納庫からエレベータに乗ってKVが運ばれてくる。
誘導員に導かれ、TaxiWayに乗るKV。
管制官から指示を受けクラリッサに続き、リチャードが離陸する。
「青龍でるぞ!」
澄野・絣(
gb3855)のKVが甲板に上がってきたが、中々離陸許可が出ない。
スピーカーから聞こえるガサゴソという音から、管制官は何かを探しているようである。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥梟姫(さけひめ)です」
ぽつり、と絣がいう。
絣の愛機は、難しい漢字が多い。
ロビンの赫映(かぐや)にリヴァイアサンの罔象(みつは)、そしてグリフォンの梟姫(さけひめ)と管制官泣かせである。
「謀叛神『泰牙主』、出ます!」
難読という点ではマリオン・コーダンテ(
ga8411)のディスタンもいい勝負かもしれない。
絣、霞、玲奈が離陸する。
「コールサイン『Dame Angel』、ソナーブイ実地テストに協力。それらを利用して接近する敵群を打破するわよ」
アンジェラ・D.S.(
gb3967)のイビルアイズに続き、幸介のスピリットゴーストが離陸した。
「‥‥自分の信念の前に立ちふさがるというなら誰が相手だろうと退ける」
小さな声で呟いた神棟星嵐(
gc1022)が瞑想を解いて銀の闘気を纏う。
「ブルーゴッテス、神棟星嵐。これより任務を遂行する」
星嵐のミカガミが離陸に続くのは、初陣のバーシャ(
gc1406)のディアブロである。
過去を失ったバーシャに守るものはない。
「私じゃどこまで出来るのかも分からないので、邪魔にならないよう頑張ります」
「とりあえず、ヘマらねえようにっと」
扇状に展開したAB班は、ソナーブイ投下ポイントに差し掛かる。
「とりあえずはこれをここに落としていけばよいのかしら?」
バーシャを始めとしてクラリッサ、幸介の指示で各ソナーブイが投下される。
「位置は不味くないですか?」
ドキドキしながら玲奈に確認するバーシャ。
投下位置に関しては、玲奈はお奉行様である。
「ん‥‥もう30m東にお願い」
玲奈にそういわれてくるくるとワイヤーを巻き戻すバーシャ。
再度ソナーブイを投下する。
「今度はOK」といわれてほっとする。
投下を終えたマリオンの明るい声がスピーカーから響く。
「皆よろしくね〜♪」
艦載機からもソナーブイが投下されデータが轟龍號に吸い上げられると司令官からCD班に出撃許可が下りた。
待っていましたとばかりに昼寝、シリウス・ガーランド(
ga5113)が出撃する。
「シリウス・ガーランド。テンタクルス改、出撃する」
水中KVが周辺を航行している間、轟竜號は浮上・停艦状態という無防備な姿を敵に晒す。どれだけ速やかに敵を排除できるかが勝負である。
「初海戦で海中管制‥‥頑張らんばね!」と有希。
恋人から貰ったぬいぐるみがお守り代わりにアルバトロスとのコックピットで揺れる。
「凄い‥‥音立体図だ」
集められたデータに思わず唾を飲むと有希。
「ふふ、悪くないんじゃない?」
敵潜水艦・駆逐艦の艦底に張り付くように存在するワーム4機を確認し、思わずにやりと笑う昼寝。
玲奈と一真はノーマル画面と切り替えを繰り返し、ソナーブイのデータ精度を、敵位置を確認する。
「ブイの存在に気がつけば、ブイを攻撃してくる奴もいるでしょうしね」
気をつけたほうがいい、と玲奈。
「ま、その辺の索敵はお任せって事で」
攻撃ベストポイントに先手必勝とばかりに突っ込んでいくC班であった。
***
「目標補足! 撃ちまくるぞ!」
プラズマリボルバーを撃ち、接近するリチャード。
そのA班に向かって艦対空ミサイルの束が飛んできた。
回避行動をするKVの尻に向かってファランクスに撃ち込まれていく。
「アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦か!」
アーレイ・バークといえば一艦で対空・地・艦・潜とマルチにこなすイージス駆逐艦である。
どこで鹵獲されたか知らないが面倒な艦である。
「ムルムス、吼えなさい」
お返しとばかりにランチャーを撃つがヌルカの効果で弾道が反れ、海面で爆発をする。
艦の護衛らしきキメラが飛び立ち、改造されたトマホーク射出口からワラワラとCWを放出する。
もう一艦からも射撃式システムに誘導されたミサイルが飛んでくる。
どうやら攻めるに易い相手ではないらしい。
絣のプラズマライフルが、A班進路を阻むCWを散らす。
「上空の敵は任せてください」
空に上がろうとするCWを玲奈のスナイパーライフルの威嚇射撃で頭打ちになった所をリニア砲で撃ち抜いていく。
「これより貴公らを援護する」
星嵐のミカガミが高度を下げランチャーを放ち、
「これから大きいのを落すわよ。下の皆、巻き込まれないでね♪」
グリフォンが着水攻撃できるようにマリオンらが爆雷の雨を降らす。
「もう一度だ!」
グリフォン達はライフルやガトリングで接近し、着水攻撃に移りガウスガンやプラズマリボルバーで間を詰めていく。
「そっちだけみててもダメなのよ」
反対側からガトリングを撒き散らし低空で接近するディスタン、イビルアイズがランチャーを放つ。
一方、バーシャといえば、殆ど必死である。
「無理かも知れない。でも一つぐらいは当たって!」
海面とキスをしないように高度に注意しながらリニア砲を放つ。
弾が反れて水柱が上がる。
「大丈夫、落ち着いて‥‥訓練と同じです」
ターゲットスコープの中心に照準が合うのを確認し、ゆっくりトリガーを引く。
駆逐艦にバーシャの弾が当たる。
「よし!」
思わず小さくガッツポーズをするバーシャ。
クラリッサのエキドナが、デコイに邪魔をされる。
「まったく忌々しいわね」
「‥‥っと‥やっぱり陸上よりは安定性が落ちるね‥‥。でも、不安定な方がやりようは‥!」と不破 霞(
gb8820)と煙幕銃を放つ。
霞が煙から飛び出し、単装砲とファランクスを狙ってショルダーキャノンを放つ。
ならばとリチャードと絣のソードウィングが艦体を斬り裂いていく。
「‥‥やはり練力消費率が高いのね」
これでは着水攻撃の使用回数を制限しなくてはいけないだろう、と絣。
もう一艦が轟龍號からコース変更をして僚艦支援の為にワームを引き連れ、単装砲を放ちながら接近をしてくるのが見えた。
ミカガミがマシンガンを放つ。
「轟龍號からターゲットを代えてくれたのはラッキーだな」
まあ、4連キャノン砲の出番がなくなったけどマンタワームならソナーブイのデータ取りに役立つ、とにんまりと笑う幸介。
「全く‥まあ、やるべき事をとして頑張るしないのだけれど」
ランチャーの射程に入ると同時に再びロックオンキャンセラーを発動し、残り全弾を発射するアンジェラ。
「見たか、これが青龍の力だ」
炎と黒煙を上げる艦にホーミングミサイルや魚雷が次々と発射される。
対潜ミサイルや魚雷がなくなればアサルトライフルやガウスガンで攻撃を繰り返す。
「上の防御が硬かろうと、底に穴を開ければ‥‥っ!」
艦底にもぐりこんだ霞が擦れ違いざまにアンカーテイルを叩き込み、艦の後に飛び出していく。
ぐらりと駆逐艦の艦体が傾く。
「やはり面白い機体だな。特殊部隊向けか?」とリチャードが呟くと同時にビービーと燃料(練力)の残量が少なくなった、とアラームが鳴る。
「くそ、錬力が僅かだ。参番艦への着艦と補給を要請する」
ここまで壊せば撃沈はしていないが、無力化には成功しただろうとグリフォン達が機首を轟竜號へ向けた。
***
「システム・インヴィディア、発動!」
ガウスガンが唸りを上げて、敵潜水艦の一団に襲い掛かる。隙を突き、テンタクルスがガトリングを撒き散らして一気に迫っていく。
潜水艦の底に潜むワームがまず1機、集中砲火を浴び沈む。
すれ違いざまにワームを切り裂くアイアンクロー。
「チッ──」
致命傷を与えられなかったと、短い舌打ちが思わず出るシリウス。
ワーム達は弾幕を張り、C班の追撃を振り切り轟竜號に迫っていく。
「そっちに3機行ったよ!」
D班の二人が後れを取るとは思わなかったが、一気に潜水艦を叩くべく、リヴァイアサンが潜水艦を追い立てた。
潜水艦が追い込まれた先に待っていたのは、テンタクルスである。
「我からのプレゼントだ。ありがたく受け取りたまえ」
「こいつは速いぞ‥‥! 全弾持っていけ!!」
ホーミングミサイル、魚雷が続けざまに発射される。
敵潜水艦からも魚雷が発射されるが到底全弾を防ぐ事は出来ず、その黒い腹に食らう。
動きが鈍った潜水艦にガウスガンが叩き込まれ、ベヒモスが外装を引き裂く。
だが、敵の発射口はまだ生きていた。
爆発を繰り返しながらも潜水艦は轟竜號に向かって魚雷が発射された。
「往生際が悪いですよ!」
エキドナが魚雷に向かって発射された。
迫り来るワーム3機を確認し、甚五郎と有希が前に出る。
「こっからは通さんよ!」
破損したワームに向かってホーミングミサイルが放たれる。火を噴く水ワームに次々とミサイルが当たる。
「残り2機!」
左右に分かれたワームを行かせまいと必死に防ぐ。
甚五郎の放った魚雷をワームのミサイルが粉砕する。
アサルトライフルがワームに当たるが足止めまでに至らない。
甚五郎からの爆雷要請が発せられる。
***
エア・ステップは燃料(練力)食いである。
練力消費量を強化軽減しても回避行動を行えばあっという間に練力食らう。
D班からの支援要請に再出撃である。
「この際、時間が掛かるなら魚雷はいい。燃料とアサルトライフル用の弾を頼む」
「まだホーミングミサイルがあります。燃料を」
今回の作戦は時間との勝負である。2度目の補給は望めない。
全機を倒すのは無理であるが、敵が支援活動を諦めればいい、と補給そこそこにグリフォン達が再び戦域に戻る。
B班も支援の為に補給に戻ってきた。
先に補充が終わった星嵐のミカガミがグリフォンを追いかけるように飛び立っていく。
「こっちには爆雷を頂戴!」
腹に重い爆雷を積み飛び立って行く。
上空に残った玲奈と幸介、バーシャから敵の情報が逐一報告されてくる。
ソナーブイのデータも加わり、ギリギリの投下ポイントを誘導するという甚五郎に応じ、爆雷の雨が降る。
「‥‥流石に大音響下では、小さな音を補足するのは無理か」
爆雷や魚雷が破裂する中、ソナーの画像が乱れ気味である。
ソナーブイが捕捉した敵が消えたり付いたり点滅する。
「計算して出した距離‥‥とはいえ、衝撃は半端ないですね」
甚五郎、有希の両機は海流に巻き込まれたように激しく機体が揺れる。
コントロールを持って行かれないように操作する二人。
だが、ワームの足は確実に止まっている。
「温か! 追いきれっぞ!」
轟竜號からもハープンの支援もあり、戦況は人類側優勢。程なく敵支援部隊は撤退を開始し、戦闘は終了した。
「‥‥無事、護りきることができましたね。何よりです」
帰還した傭兵達が遠く離れていく敵艦を見ながらそれぞれの感想を述べる。
「グリフォンの問題点はエアステップと水中攻撃を連続して使用するための錬力確保だな」
「何れにしろ今回の戦闘がこれからの試金石となると宜しいですわね」
グリフォン、ソナーブイ。
課題も多いが有効的だというのが、概の評価であった。