●リプレイ本文
●見つめる目
──訓練開始の短いサイレンと同時に15人の黒い影が待機していたティルトローター機から次々に屋上に飛び降りた。
その様子を物陰から見つめるのは、ビル南東に位置する御影・朔夜(
ga0240)である。
「こちら御影。敵15名、全員を確認」
程なく『管制室。屋上ドアが破られ、敵5名が建物内に侵入を確認しました』
まだ屋上に10人残っている。と監視モニタを前に2Eで陣取る鏡音・月海(
gb3956)が答える。
『俺からは1人しか確認できないな』
『特に敵の姿を確認する事は出来ません』
朔夜と同じく屋外に配置したオルランド・イブラヒム(
ga2438)と、6階北外階段より上の様子を伺うフィルト=リンク(
gb5706)が答える。
隠密潜行行っているので見つかるはすがない──と思いつつ、敵スナイパーの筒先が自分を照準したのを感じたオルランド。
(『見つかったのか‥お目こぼしか‥‥』)
正面切って戦えば自分達の勝ち目は薄い。
だが、余りにも奇策過ぎれば警備マニュアルとしては成り立たない。
難しい所だ。と言っていた鯨井昼寝(
ga0488)の言葉は深い。
『5名は斥候と思われますが‥』
当初は警戒していたようだが、今は大胆に何かを探しているという。
「見られているのを知りながら歯牙にもかけんか‥流石だな」
傭兵らは敵の通行可能と思われる場所を閉鎖したり、トラップを構築を急ぐ。
──小さな爆発音が待機している傭兵らの耳に届いた。
「監視カメラを壊す気ですかね?」
エレベータ籠内に陣取る古河 甚五郎(
ga6412)の問いに、
『一瞬、電波が乱れただけです』と敵位置を地図にマークしていた月海が答える。
2分経過した所で新たに敵5名がビル内に突入してきた。
敵の先発を1班、後から突入したのを2班、屋上組みを3班と名付け。
1班は西側階段を3名、東側階段を2名はまもなく6階に到達し、それを追うように2班の1人が西側階段、2名が東側階段を下りてくるという。
『残り2名はエレベータの前に‥』
扉をこじ開けたようだと月海が言うと甚五郎も籠のハッチから覗いた所と人影が見えた。と答えた。
●西階段
「天都神影流・虚空閃!」
前衛の敵ファイターは白鐘剣一郎(
ga0184)の一撃をヴィアで受ける流し、重い一撃を反撃する。
獣の皮膚と盾に守られている安則の腕にビリビリとした衝撃が伝ってくる。
(「上には上がいるか‥‥確かに強い」)
敵の強さに舌を巻く剣一郎。
(「ならば‥」)
「食らえ、鋼をも断つこの剣閃の一撃を! 天都神影流・斬鋼閃っ!」
急所を狙う一撃が盾に弾き飛ばされる。
敵スナイパーの1撃で盾ごとファイター兵が吹き飛ばされ、倒れた体に弾の雨が降りそそぐ。
<ファイター兵戦闘不能>
仲間がやられたのを見て、いきり立つサイエンティスト兵を叱咤する緑川安則(
ga4773)。
「無理をするな! 時間を10分稼げれば我々の勝ちだ!」
(「‥‥そろそろだ」)
エネルギーガンで牽制をしていたホアキン・デ・ラ・ロッサ(
ga2416)が、目配せをする。
「新必殺技だ! 思いっきり味わうがいい!」
安則の真音獣斬に続いて、閃光手榴弾が破裂。剣一郎とホアキンがソニックブームを放つ。
敵が一瞬、足を止めた。
「後退する! 弾幕展開! 相互支援のもとに交互に後退し、後退時間を作り出せ!」
安則の号令の下、一斉に援護射撃が開始された。
その隙に負傷者を担いで予定通りに下の階へと後退していった。
●東階段
(「報告どおり2人か‥‥可愛いケツに鉛をたらふくブチ込んでやるぜ、クソ豚‥」)
スナイパー兵を1人連れ、上下からの同時強襲の為、上の階に忍んでいたOZ(
ga4015)。
静かにアサルトライフルを構え、鳴神 伊織(
ga0421)の合図(閃光手榴弾)を待つ。
一番後ろに立つ頭の頭にポイントし、トリガーに指を掛けた瞬間、一番後ろの背の高い男が振り返った。
フルオートで弾を撒き散らすOZとスナイパー兵の前に一瞬のうちに男が現れた。
(「やべぇっ! こいつ、ビーストマンかグラップラーだっ!」)
男の一撃でスナイパー兵の体が沈む。
<スナイパー兵戦闘不能>
「悪くない作戦だが、こちらが監視システムに割り込みをするのは考慮しなかったのか?」
(『く、残念だがしてやられたな』)
(『彼らが探していたのは監視カメラの受送信機ですか‥‥』)
インカムから聞こえてくる内容に思わず舌打ちをする剣一郎と月海。
「いいのかよ、喋って」
「構わんさ。お前らも理由も知らずにリタイアってのは、やだろう?」
「そうかい‥‥ありがとうよ!」
OZが後手に握っていた閃光手榴弾を放す。
階段を包む激しい閃光に紛れ、逃げるはずであった──OZの体が折れる。
「閃光手榴弾ってのは、接近しすぎる敵には効かないんだぜ。こうやって光に背を向ける形になって目潰しにならないからな」
(「こいつが訓練? 冗談だろ‥‥マジ実戦だぜ」)
男が銃を抜くのを見て、倒れた兵を盾にするOZ。
「そういうのは、嫌いじゃないが──」
フェイスマスクの奥で男が笑った気がした。
<OZ戦闘不能>
●攻防
C班は予定通り防衛ラインを下げ、3階フロアでの戦闘に突入している。
同行していたサイエンティスト兵は3階を待たずに戦闘不能に陥っていた。
<サイエンティスト兵戦闘不能>
敵は攻撃力の高い剣一郎や伊織にターゲットを絞って攻撃を加えていた。
敵兵に傭兵Lv70に相当するものが混じっていると聞いていたが、どうやらそれがヴィアを振るうファイターのようである。足場の悪い階段では何発か受けていたが、今では「弾道が見えているのか?」と聞きたい程当たらない。仲間を助けるべく踏み込み一撃を食らわせようとするホアキンや八神零(
ga7992)だが、敵は訓練を受けた兵士である。なかなか隙を見せない。
『銃身が焼きついても構わん! 近づかせるな!』
『持ち堪えるんだ!』
敵はじわじわと西側通路へと迫っていった。
──残り2分30秒。
敵が発炎筒らしきものをエレベータシャフト内に投下した。
白い煙が満たしモニタが不能となる。
ガスの種類が不明である以上、リスクを考慮し、甚五郎らへ移動を促す。
『置き土産といっては何ですが、カメラに繋がっている電源ケーブルを切っちゃって良いですかね?』
敵に管制室が占拠された場合は切るつもりだった甚五郎である。
それでも月海に聞いたのは甚五郎なりの気遣いだろう。
「構いません。これ以上、敵に手の内を見せる訳にはいきませんので」
元々カメラを壊された時の対策は済んでいる。
剣一郎は「可能性が低いのではないか?」と言っていたが、残り時間を考えれば直接2階を攻めてくる可能性が高い。また、昼寝らが懸念していた床や壁を壊しての侵入も十分可能性がある。
月海は思い切ってC斑からホアキンとフィルト、グラップラー兵を2階に下げ、A班に加えることにした。
──残り2分、敵の総攻撃が始まった。
●3B前西側通路
敵の数は5名。
階段で背負っていた背嚢を捨て去り、猛攻を仕掛けてくる敵兵らに伊織らは息切れを起こしかけていた。
「‥‥‥天都神影流『奥義』断空牙」
月詠を鞘に戻す剣一郎。
フラフラになり乍らも何とか伊織と協力してベテランファイターとサイエンティストを倒した所でガクリと膝を着いた──体力の限界である。
<白鐘・鳴神、敵ファイター・サイエンティスト戦闘不能>
「大丈夫かっ?!」
倒れる剣一郎と伊織に声を掛ける零。
リロードする間も与えられないシェルクラインを捨て、紅蓮衝撃とソニックブームを組み合わせ月詠で戦っていた零だったが、ファイターを斬ったフイをつかれ倒された。
<八神、敵ファイター戦闘不能>
「こいつはどうにもな‥」
仲間が倒れ、目の前に立つ敵は残り2名。
背の高い男と背の小さな女──共にグラップラーである。どちらを倒すか?
賭けに出る安則。
「梓ちゃん、みっけ!」
女グラップラーに向かって指を刺す。
安則の思いがけない行動に毒気を抜かれた梓。男に「手出し無用」と言い、フェイスマスクを外す。
「‥よく判ったわね」
「それは愛って言うか──実際問題、この間は悪かったな」
「‥別にいいわよ」
あの手の話は苦手なのだ。とムスっとし乍ら言う。
「だが、梓ちゃんが魅力的なのは事実だぜ! こんなに激しいドンパチが出来るんだからな!」
真音獣斬を梓の左右に放つと同時に瞬速縮地で一気に迫る安則。
安則のイリアスをディガイアで受け止める梓の足元に閃光手榴弾が転がった。
一瞬、動きが止まった梓に瞬速縮地で迫った安則は、身動きできぬよう強く抱きしめ、目を閉じた。
「こんな奇策もありだぜ! 梓ちゃんに勝つには」
梓を抱きかかえた安則の首筋にグラップラーの剣が突きつけられる。
「指揮である副長を捕虜にすれば進軍が止まると考えたのかもしれんが──それはバグアと俺達には通じんぞ?」
静かに梓を放す安則。
「副長と乳繰り合いたいならオフにしな、小僧」
<緑川戦闘不能>
剣一郎と伊織から奪った月詠と鬼蛍が大きく振り上げられた──
●2A、南側通路
屋上から降下してきた敵2名に向かってドアを盾に甚五郎とビーストマン兵が一斉射撃を行う。
<敵エクセレンター戦闘不能>
弾を食らい乍らも窓を破り侵入してきた敵兵に獣突で爪を食らわせる。
その間もガンガンと嫌な音を立て、降ろした防火シャッターが変形していく。
エレベーターホールのトラップを抜けた敵兵がシャッターを壊しに掛かっているのだ。
目の前の敵を排除すべく、すばやいトリッキーな動きで攻撃を仕掛ける甚五郎とビーストマン兵。
敵は担いでいた背嚢を放り出し、本気モードである。
(「グラップラーですか!」)
すばやい動きを見せるグラップラー。
防火シャッターが破られ、飛び出してきたファイターに腹を斬られるビーストマン兵。
多勢無勢、程なくグラップラーに追い立てられた甚五郎もスナイパーの餌食になった。
<古河・ビーストマン兵戦闘不能>
2Aに入り込んだ敵が壁の状態を確認する。
スナイパーが背嚢から爆薬を取り出し、壁に設置をした──
●中央通路
通路に設置されている防火扉を左右ジグザグに開いて障害物として藤村 瑠亥(
ga3862)・ホアキン、その援護に2Eの扉を盾にスナイパー。
その後方、北口通路との交差にオルランド。ヒューイ・焔(
ga8434)は遊撃として中間に位置していた。
「く‥まだ慣れんな」
赤くなる視界に顔をしかめる瑠亥に「来たぞ」と声を掛けるホアキン。
内階段を下りてきたのは味方ではなく敵3名であった。
「近寄らせんぞ」
瑠亥とスナイパー兵の支援を受けて、ホアキンがフェイントを混ぜ合わせた攻撃でファイターに急所突き仕掛ける。
それを邪魔するのは敵のスナイパーである。
壁から出た僅かな部分に正確な射撃を行い、スナイパー兵がまず倒された。
「まともに戦いたくは無いな」と思わず呟くオルランド。
<スナイパー兵戦闘不能>
「感心していないで俺達も行った方が良いだろう」と言うヒューイ。
(「これじゃあジュースの缶を投げても意味ないだろうな」)とこっそり心の中で舌を出す。
4対3、数の上では優位だが、厳しい戦いになるだろう。
スナイパーの足止めをオルランドに頼み、接近する。
それを邪魔するのはエキスパートである。
壁や天井を使いサイクロンの名前に恥じぬヒューイの攻撃にエキスパートが倒れた。
<敵エキスパート戦闘不能>
ファイターとの戦うホアキンの脇をすり抜け、瑠亥が進む。
「見えるぞ‥‥」
オルランドの攻撃で反撃に集中できないスナイパーに向かって、何かに導かれるように一直線に進む。
閃光手榴弾を投擲する瑠亥。
スナイパーは予測通り階段の扉に身を隠す。
「ああ、優秀だ。優秀すぎる反応だ‥‥本当に!!」
もう一投する。
避けると思ったスナイパーだったが、敵が苦手とするクラス グラップラーならばと逆に前に出る事にしたようだ。
手榴弾を使った分、二刀小太刀である疾風迅雷を振るう反応が遅れ、至近から弾を食らう。
<藤村戦闘不能>
だが、それがオルランドとヒューイに隙を見せる形になったスナイパーを倒す決め手となった。
──3対1。
敵ファイターが投降を申請し、中央通路の敵は排除された。
<敵スナイパー戦闘不能、敵スナイパー投降>
●西側通路
「さあ、どっからでもかかってらっしゃい!」
海賊のコスチュームに身を包んだ昼寝が、拳を打ち鳴らす。
派手な音を立て、外側階段のドアが破壊され、敵兵3名が突入してきた。
2B部屋前に立つ昼寝・朔夜に向かって一気に迫るのは、ビーストマンである。
リュス・リクス・リニク(
ga6209)が放つ貫通弾の連射を弾き飛ばすファイターをサイエンティストが支援を行う。
典型的な攻撃パターンである。
だが、迎え撃つリュスらも並みではない。
グラップラー兵を交えて一歩も譲らず、コンビネーションで反撃する。
斬り込む敵を昼寝が捌き、それを朔夜が攻撃する。
激しく敵味方が入り乱れる攻防である。
レベルの上では勝る敵兵だが、傭兵達の士気は高かった。
立ち上る白煙の中で笑う朔夜。
「ハハッ、全く、人間相手に楽しいと思うのは久方振りだよ、本当に‥‥!」
投擲された閃光手榴弾に敵の動きが一瞬止まる。
その敵の後ろを突いたのは、2Cに待機していたフィルトとグラップラー兵である。
リンドヴルムで突っ込み敵兵を蹴散らかすフィルト。
激しい追加攻撃が朔夜から加え、一気に畳み掛ける傭兵ら。
だが、敵3名を倒す犠牲も高かった。
<リンク・グラップラー兵、敵ファイター・サイエンティスト・ビーストマン戦闘不能>
──ドーン!!!
激しい音が2Bの天井が聞こえた。
天井を見上げるリュス。
「壁に近づくんじゃない!」
昼寝の怒号が飛んだ瞬間、グラッップラー兵を巻き込む形で2Aと隣接する壁が爆薬で倒れた。
<グラップラー兵戦闘不能>
3Bの床が破られ、派手に瓦礫が落ちる──
「しまった!」
リュスが二連射で矢を放ち、接近する敵兵を止めようとするが、敵は5名。
激しい体当たりを掛けられ、壁に吹き飛ぶリュス。
扉を閉めようとする敵の腕を昼寝が斬り、押し入った朔夜がデヴァイスターを乱射した。
──10分。訓練終了を告げるサイレンが鳴った。
●評価
S・シャルベーシャ(gz0003)が幹部らを前に報告する。
評価は「やや成功」であった。
「金庫室に入られたにも関わらず、かね?」
「そうです。着眼点も悪くなかったですし、連携も取れていた。それに金庫を奪われたり、破壊された訳でもありませんので」
元々無理がある人数での戦いである。その辺は差し引いても良いだろう。という事であったが、実際の所、戦闘に関しては詰めが甘い部分もあったが「80点」はやっても良いだろうと思うサルヴァ。
「必要なデータは取れましたしね」
にやりと笑うサルヴァだった。