タイトル:【G3P】CEO暗殺αマスター:有天

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/04/17 13:03

●オープニング本文


 暗い部屋の中、背の高い筋肉質の男がイライラとした様子で歩き回ってた。
 その様子を楽しそうに見つめる東洋人の男が言う。
「御機嫌が斜なようだね、ダム・ダル君。そんなにイライラすると体に悪いよ?」
 バグア軍アジア・オセアニア総司令ジャッキー・ウォンに言われ、ぴたりと歩みを止める。

「何故、俺がロシアに出撃してはいけないですか? 納得が出来ません」
 ダム・ダル(gz0119)は、なるべく丁寧な言葉遣いを選んで言う。
 ジャッキーならば下の者が丁寧語を話そうが、命令口調であっても気にしないのは承知だが、こちらが怒っているのを伝えるのには丁度良い方法である。

 ダム・ダルと呼ばれた強化人間について1ヵ月以上、元々の戦士としての本能なのか?
 それともダム・ダルの意思なのか、FRを駆り、戦場を駆け巡りたいと躯の奥底が疼く。

「ロシアの件でUPC軍は今、手一杯の状況です。ロシアの一件が片付く迄九州で大規模な反撃行動は予測出来ない以上、司令である俺が一時的にいなくても安定しているのではないでしょうか?」

 ジャッキーは暫くダム・ダルを見つめた後、呆れたように言う。
「理由を言わないと駄目かね?」
「是非」
「やれやれ‥‥しょうがないなぁ」

 椅子から立ち上がり、伸びを1つした後、ジャッキーはダム・ダルに近付き──おもむろに抱きつくと体中を撫で回して行く。
「な、な、何を‥‥」
 さわさわとジャッキーの指が体を這って行く度に全身に鳥肌が立って行く。
「いい加減にしろ! 幾ら総司令と言え度が過ぎるぞ!」
「おや、気持ち悪かったかね?」
 ケロリとした様子でジャッキーが言う。
「当たり前だ! 男に触られて何が楽しい!」
「やれやれ‥‥まだ判らんかね?」
「何がだ!」
 仁王のような憤怒の表情を浮かべて怒るダム・ダル。

「つまり、君はダム・ダルであった時の意識に負けている部分があるということだよ」
 バグアにとって性別を含めた器の形は諜報活動担当者以外に殆ど意味が無い。
 多くのバグアに取っては「どれだけ上手く兵器を動かせるか」「どれだけの知識を貯えているか」「その惑星においてどれだけの影響力を持っているか」が重要なのだ。
「器から影響を受けるのは構わんが、受けすぎは困るのだよ」
「俺が、器に負けていると‥‥」
「今の所は、昔の主に負けているな。君ならその内、押え込めるだろうけどね」
 ジャッキーはダム・ダルの体から離れるとこう言った。

「君はどの惑星にいても何時でも戦場にいた。本星で指を銜えてココ(前線)をずっと見ていた君の気持ちが高ぶるのも判るよ」
「ならば‥‥」
「だからこそ、君にはやって欲しい事がある」
「なんだ?」
「『G3P』というのを知っているかね?」
「名前はな。奉天、銀河、MSIの3社が動いている秘密プロジェクトという話らしいが」
「北九州工場の一件を感づいたらしい」

 日本有数の工場地帯である北九州。
 その銀河重工の北九州工場を占拠した春日バグア軍は、東京の八王子を頼らずにワームの生産や修理が出来るようになった。
 そして今、北九州にあった海軍らの資料を元に海ワームの独自開発にも着工したばかりである。
 メガコーポレーションやUPC軍がそれに気がついたのだというのだ。

(「お前がどうせリークしたんだろうが‥‥」)
 目の前で笑みを浮かべている総司令ならば充分ありえる話だが、ダム・ダルにとって出撃出来れば大した問題では無い。
「俺にどうしろと?」
「MSIのCEOダニエル・オールドマン(gz0195)が、今『G3P』に絡んで台湾にいるらしい」
「俺にスパイの真似事をしろと言うのか?」
「まさか。台湾は東アジアで一番堅牢な守りを誇る場所だ。君には陽動をやってもらう」
 暗殺担当者が突入する為に敵を引き付ける役割だと言う。
「軍の警戒網を突破して台湾を攻撃しても構わんがね」

●参加者一覧

クラリッサ・メディスン(ga0853
27歳・♀・ER
不破 梓(ga3236
28歳・♀・PN
三島玲奈(ga3848
17歳・♀・SN
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
六堂源治(ga8154
30歳・♂・AA
ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751
19歳・♂・ER
蒼河 拓人(gb2873
16歳・♂・JG
ルノア・アラバスター(gb5133
14歳・♀・JG

●リプレイ本文

『FRによる第一次防衛ライン突破』
 スクランブル要請に応じて8人の傭兵がそれぞれの思いを胸に台湾の空を駆る。
「またFRか‥‥何度聞いても嫌な予感しかしない名前だね」
 蒼河 拓人(gb2873)のミカガミがエンジンを轟かせテイクアウトする。
「ロシアの方が忙しいんだから少しはおとなしくしていて欲しいね」
 ゾディアック『牡牛座撃墜者』の冠を抱くカルマ・シュタット(ga6302)。
「少々強面のお方が居られるようですけど、早々にお引き取り頂かなくてはいけませんわね」
 クラリッサ・メディスン(ga0853)が静かに微笑み乍ら応じる。
「でも何の脈絡も無し堅牢な台湾を奇襲するとはおかしいよ」
 短期決戦に向くFRにHW5機という少数である。
「電撃侵攻する意図なら鯨等を従える筈‥‥露骨な陽動だよな」と雷電の三島玲奈(ga3848)。
 だからと言って領域侵攻をするFRの相手である。
 慎重にならざる負えない。
「HWに、FRか。呼んでもいないお客さんは、早々に退散願いたい物だけどね」
 イビルアイズに搭乗するユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)。
「さて、久々の空戦だが‥‥相手はFRか、相手にとって不足は無い‥‥」
 不破 梓(ga3236)が腕ならしになると不適に笑う。

 台湾の上空は政府の警戒宣言を受けて香港に逃げて行く大型旅客機らがラッシュ状態である。
「周りは戦争しているって言うのに‥‥流石『香港』と言うべきなんだろうな」
 東アジア最後の楽園と言われるランクAの生活水準を誇る香港には通年多くの観光客が訪れる。
「これからの季節、台湾は良い季節なんだ」
 そう言い乍ら眼の周りを緊張を解すように揉む玲奈。
「私の好きな蝶の宝庫台湾をFRの手駒にはさせない」
 片端から瓦礫にしてやる。と静かに闘志を燃やす。

 ***

「中和装置、起動、します」
 ルノア・アラバスター(gb5133)が特殊電子波長装置のスイッチを入れると同時にレーダーが回復する。
「各機、通信状態は、どう、ですか?」
「上々だ。源治の鼻息迄聞こえて来そうだ」
「梓、それはひどいッス」
 同じ小隊の六堂源治(ga8154)が、
「‥‥俺が相手できるんスかね。ま、戦うからには全力ッスけどね」
 と言っていたのを思い出しての軽口である。
「しかし、梓と一緒の依頼に入るのは約1年振りか‥‥時の流れは速いッス」
「ふふ‥‥私もだ」
 梓と源治のやり取りを見て、気負っていたルノアが緊張を和らげた。

 台湾軍哨戒機のデータから予測されるポイントが近付き、その旨をルノアが皆に通達する。
「間もなくFRとの予測接触ポイントです」
 周囲に対する警戒を強める中、雲の流れや形に注意していた拓人。
「FR、コンタクト‥‥蒼河機、エンゲージ・オフェンシブ!」
 スラスターライフルの射程に入った瞬間にブーストを吹かせFRに迫るミカガミ。
 避けようともしないFRに向かってペイント弾を二掃射する。
 これでペイント弾のマークが有る限り光学迷彩は意味を成さない。

 だが、すれ違い様に見たエンブレムに驚く拓人。
「蒼河機、FRは牡牛座! 繰り返す、FRは牡牛座!」
 拓人が示した方向にHWを従え侵攻するFRがいた。
「FR‥‥報告書では、幾度も、見ていましたが‥‥」
 初めてみるFRにルノアが武者震いをする。
「あのエンブレムは‥‥!! 蘇ったって噂は本当だったんスね」
 傭兵らの間に流れる『ダム・ダル(gz0119)が実は生きている』という噂を聞いていた源治。
「‥‥牡牛座だと? 奴は撃破した時に自爆したという話を聞いてたが‥‥‥‥まぁいい、本物ならば希望が一つ叶う‥‥だが、偽者ならば‥‥」
「FRである以上、誰が乗っていようと招かれざるお客さんがお出でですわね」

「ターゲットロック‥‥さあ、踊れぇっ!!」
「おっしゃー!! ミサイルパーティっすよ!!」
 時間差でカルマ、梓、源治が放ったK−02小型ホーミングの束がFRの脇をすり抜けHWを襲う。
『!』
 爆発した熱に反応し他のミサイルが次々に当って、あっと言う間にHW1機が墜ちる。
「ざまぁ見ろ! 驚いたか!」
『たしかに驚いた。面白いぞ、お前ら‥だが、コレは俺に使うべきだったな』
 笑いを押し殺した男の声が突然回線に割込む。
「‥‥牡牛座の紋章、ダム・ダルなのか?」
 敵の声は何度も聞いたダム・ダムであったが、にわかに信じられないのはカルマである。
『次は何を見せてくれる?』
 ダム・ダルの合図に散開したHW4機をクラリッサ、玲奈、ユーリ、ルノアが追い掛けていく。

 ***

「さて、援護屋さんのお仕事を始めようか」
 FRの足止めをするのは、梓、カルマ、源治、拓人の4人である。
「ばら撒くだけでも効果はあろうな‥‥隙は作るから後は任せるぞっ!」
 梓がFRに向かってMSIバルカンRを放つ隙に試作型G放電装置と8式螺旋弾頭ミサイルを巧に使い分け、FRに急接近する源治のバイパー。
「接近戦が俺の信条なんでね。おっしゃ!! 今ッスよ!!」
『下らん‥‥』
 FRの放つ重機関砲がバイパーを襲う。
「源治っ!」
「くっ! まだまだっス」
 激しい白煙をあげるバイパーを必死に操作する源治。
「吼えろバイパーッ!! ブースト空戦スタビライザー、起動!!」
『それで俺から逃げ切れると思っているのか?』
 体勢を整えようとするバイパーにFRが容赦ない2撃加える。
 火を吹くバイパー。
『家畜の分際で主の手を噛もうとするからだ』
 アラームがロックオンの事実を告げる。
「させるかっ!」
 カルマのシュルテンが割り込み、梓がFRに向かってK−02を放つ。
 ホーミングを難無く避けるFR。
 そこに拓人のソードウィングが斬り込んで行く。

『それ程仲間の命が惜しいか?』
「そのエンブレムの意味を、誇り高き戦士を侮辱するな」
『‥‥‥侮辱するも何もない。俺が「ダム・ダル」だ、カルマ』
 名前を呼ばれたカルマがビクリとする。
『ダム・ダルという存在は、強さを求める為に誰よりも強い者と戦う事を望んだ。それについては、この「俺」も然り』
「ふざけるな。ダム・ダルは戦えない相手に鞭を打つ相手じゃなかった」
『それは俺が対等だと勘違いしていたに過ぎないからだ。──だがカルマ、お前は特別だ。俺はお前を認め、ウシンディは俺が名を与えた』
「俺のウシンディを気安く呼ぶな‥‥」
 そうか、とダム・ダルは言った。
『本当ならこんな「戯れ」等必要無いが、時間潰しに遊んでやる』
 すぅ──FRが誘うように上昇した。
「行くぞ、ウシンディ‥‥あれは敵だ」

 ***

「FRが纏めて瞬殺に来るんだろうが、そうは問屋」
 敵は同数と判断したHWがロッテを組もうとするのを玲奈のスナイパーライフルD−02の連射が邪魔をする。
(「右の反応が遅い」)
 遅れているHWをレーザーガトリングに切り替えて追い立てていく。
 玲奈に追い立てれていくHWを待ち受けていたのは、ルノアの岩龍である。
「落ち着いて‥‥大丈夫」
 スナイパーライフルRでじっくり狙い、ヘッドアップ・ディスプレイの中心にHWが入ると同時にトリガーを引く。
「‥‥当って!!」
 深追いはせず一撃一離脱を心掛けるルノア。
 ルノアをターゲットにする暇を与えまいと執拗にHWを追い立てる玲奈の雷電に、ついにHWの装甲が負けて炎を上げる。

 そんな玲奈に別のHWが照準を合わせるのを見て、ユーリがHWの目の前をすり抜け、牽制する。
 飛んで来るプロトン砲を躱し乍らHWが分散するように引き離していく。
 上昇するユーリを追い掛けて、腹を見せたHWにクラリッサのシュルテンがG放電を食らわせる。
 FFがふっとんだ所に周り込んだユーリがスナイパーライフルD−02放ち、大穴が開く。
 それに畳み込むようにもう一撃を加えるユーリ。
 だが、それに向かって「それ以上はやらせぬ」と別のHWが割り込んで来る。

 接触スレスレの至近距離で行き交うHWの中、K−02ばりの大量のホーミングが飛んで来るのを見て慌ててロックオンキャンセラーを指導させるユーリ。
「敵も味方も関係なしか!」
 何か違う。と感じ乍らもその不安がなんであるか判らぬままHWとKVが入り交じり、激しいドックファイトを繰り返す。

 ルノアも囮になるように短距離高速型AAMでHWを牽制し、吊られたHWを周り込んだクラリッサが、
「この【アズリエル】を甘く見ていると、ヤケドを負いますわよ」
 スラスターライフルで足止めをしている所にユーリがソードウィングで斬り込む。
 機体を大きく切り裂かれてバランスを崩したHWにクラリッサが止めを刺す。

 ***

「源治、生きているか?」
「消火装置が働いてくれたッス。まだまだやれるッスよ」
『女、他人を心配している場合ではないぞ』
「ちぃ‥‥厄介な。PRM起動、耐えろよっ!」
 後ろを取られた形になった梓はPRMを再稼動させ、必死に堪える。
 シュルテンの真上に被い被さるように接近したFRが高度を下げ、ガリガリと装甲が擦れる音がする。
『このままだと海面とキスをするぞ』
「不破君、隙を作るので逃げて下さい!」
 ブースト噴かせてFRに突っ込んで行くミカガミ。
「Granz‥‥未来を輝かせる光となれ!」
 ソードウィングによる攻撃ではなくグランツを全弾発射する。
「どうだ!!」
 全弾着弾するもFRは気にした様子もない。
『弱いな、お前』
 ブーストで迫るFRがミカガミの尻にミサイルを叩き込んだ。
 ミカガミに追加攻撃を仕掛けるミカガミから火が上がる。

 ***

 クラリッサの8式螺旋弾頭を食らってもたつくHWにユーリのソードウィングが装甲を切り裂いて行く。
 裂かれた装甲の隙間からHWの操縦者が仰臥の顔を浮かべるのが見える近さの乱戦にけりをつけたのはユーリのもう一撃だった。

「いい加減に帰れ! この!!」
 一方、シーザスを繰り返し、HWの後ろを取った玲奈が3.2cm高分子レーザー砲を放つ。
「FRはどうなっている?!」
「4機とも大破に至っていませんが激しく損傷しています!」
 悲鳴に近いルノアの返事に玲奈は武器を試作型リニア砲に切り替える。
「墜ちろ!」
 ルノアが落としたラージフレアに怯む最後のHWを撃ち落す。
 HWを全機墜とせば帰るだろうと思っていたFRはその気配を見せず、新たな得物を求めて4機に向かってくる。ユーリが止めようとスナイパーライフルを放ち、クラリッサがG放電装置を放つ。
 だが、目の前に迫るFRは攻撃を受けたのに殆どダメージを感じさせずにいる。

 それを見乍ら玲奈が必死に頭を働かせる。
 傭兵らの間に実しやかに流れて来る噂の中にダム・ダルが春日司令に座ったと言うのがあった。
 司令用に強化されているのか?
 それともブラフなのか?
 操縦桿を握る手にじとりと汗を掻く。
『次はどいつだ?』
 後方にいるルノアだったが鼻先で獣に舌舐めずりをされたように感じ、身震いをする。
 ポイントされていると言うのにダム・ダルの声は余裕に満ちていた。
(「こいつ、間違いなくバグアだ。なら‥‥奴の一番弱いルノア(岩龍)が狙いか?」)
 盾や的になるHWを残しておけば良かったか? と短く舌打ちし、玲奈がルノアの前に静かに機体を割り込ませる。

「相手なら俺がするよ」
 厄介な事になったと思い乍らユーリのイビルアイズと、
「悪いけどバグア相手に1対1で正直に挑むつもりはないわね」
 クラリッサのシュルテンが進み出る。
「勿論、私も参加するよ。尤もバグアに名乗るような名前はないけど──ね!」
 玲奈が言葉が終わらない内にレーザーガトリングを放つ。
 それに対してFRのお返しはバイパーを沈めた重機関砲である。
 400発の弾がレーザーの弾を食らい付くすのは一瞬だった。
 レーザーでは食らい足りないと襲い掛かる弾を散開してやり過ごす。
「あれ、どうやらリロードができるようだね。厄介だな」
「ルノアさん、台湾軍の本隊は後どの位掛かりますか?」
「後、2分です」
「ちょっと厄介ね」
 FRをクラリッサが引き付けている間にユーリがFRの後ろに付く。
「ぼちぼち息切れですか? こっちはまだピンピンしているけど」
『流石の俺も台湾軍を相手にする暇はないが、お前1人位は殺せるな』
 そう言うとなんなくインメルマンターンでユーリの後ろにつき直すFR。
 冷たい汗がユーリを襲う。

 ──だが、時が傭兵らに味方した。
 FRの無線に香港の工作員からの連絡が入るダム・ダル。
『残念乍ら時間のようだ。次はもう少し歯ごたえがある連中を揃えておけ』
 そう言い残すと北上して行くFR。
「‥‥嫌味な奴だな」
「向うもこっちが本気でFRを倒すつもりがないのが判っているからだろう」
 そしてFRも傭兵らを本気で殺すつもりはなかったのだろう。
「陽動、って点を考えたら俺達の負けって事ッスか?」
「そうだろうな。侵攻って考えば間違いなくFRを追い返したのは事実だけどな」
 KVも派手に弾を受け、コックピットを飛び跳ねた破片で傭兵らも怪我を負ったが、次の作戦に出られないと言う程ではなかった。
「つまりいいように遇われたって事ッスか? なんか無茶苦茶失礼な奴ッスね」
 鼻息荒く源治が言う。

「‥‥で、カルマや玲奈は、どう思う?」
「どうって?」
 ダム・ダルと戦って来た2人に訪ねる。
「あのダム・ダルは『洗脳された本物』か『ヨリシロ』のどっちだ。って事だ」
「私は『ヨリシロ』だと思う」
 私の知るダム・ダルとは掛け離れすぎだと玲奈。
 カルマは暫く考えた後、俺も『ヨリシロ』になってしまったと思う。と答えた。
「ヨリシロ‥‥噂に聞いていたけどイケスカねぇッスね」

 新しい牡牛座を継いだバグアを倒し、ダム・ダルを解放してやろう。
 そう誓う傭兵らであった──。