タイトル:少女と花とガドリングマスター:有天

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 2 人
リプレイ完成日時:
2008/03/27 07:53

●オープニング本文


「『少女と花とガドリング』? ‥‥ガドリングってあの『ガドリング』砲ですよね?」
 インドにあるダルダ財団が抱える子会社の一つ、映画館へのフィルムを卸している小さな制作会社の会議室、企画室長のパナ・パストゥージャは、目の前に座るS・シャルベーシャ(gz0003)が持ち込んで企画書を見つめ、怪訝そうな顔をする。
 先日見た映画のサンプル映像は腕を切り落とされた女子高生がマシンガンを装着し、復讐に挑むというかっとんだものだった。
 スプラッタ映画のようなその映像を思い出したパナの眉間に珍しく縦皺が下りる。
「ホラーは兎も角、スプラッターはどうかと‥‥」
 インドというお国柄、余り激しい内容は敬遠される傾向がある。
「大丈夫だ。もう少し健全な内容だ」
 事務所に遊びに着た娘がリクエストしていったアイデアを基にしたのだという。
「UPCの配給にセーラー服が入っているんでな。その辺で思いついたんじゃないか?」とあっさり言うシャルベーシャ。

 ──あらすじは、こうである。
 インドの北部国境近くの一人の少女が両親と共に平和に暮らしていた。
 ところがある日、バグアが攻めてきて両親は殺されてしまう。
 少女は遠縁に当たる反バグアを掲げるレジスタンスの親戚に引き取られることになる。
 少女は能力者になり、バグアと戦うことに決める。
 新たな家族、レジスタンスの友と共にバグアと戦う少女。
 だがレジスタンスはバグアに目をつけられて、ワームの猛攻撃に会う。
 組織は壊滅状態になり、最後は少女の乗るKVとワームのガチ対決になる。
 辛くも勝利した少女、だが自身の乗るKVもまた大破してしまう。
 まだ動くワームを見た少女は、大破したKVから這い出し、KV用のガトリングを引きずり乱射。
 ワームに止めを刺す。
 少女に残ったのは、家族を再び失うという大きな悲しみ。
 だが、少女は力強く新たなる一歩を踏み出す。

「‥‥その少女(能力者)がセーラー服を着ているんですね」
「まあ、そういうことだ」
「花というのは?」
 少女が可憐だという代名詞だ。というシャルベーシャ。
「いくつか質問があるんですけど?」とパナが言う。
「何だ?」
「能力者ってガトリングを抱えて乱射とかできるんですか?」
「まあ、無理だな」
 そんなことが出来るのならとっくにどっかのメーカーが作っているだろう。と、あっさり言うシャルベーシャ。
「本体の重量と弾や電源の重量、それに加えてモーターが回転した時の反動を考えれば、的に当てるどころかまともに支えることは、俺だって出来やしないぞ」
「じゃあ‥‥」
「そう、ノリだ」
「‥‥なるほど。しかし、そうなると今まで以上にアクションシーンは激しいものになりますね? 今回も能力者たちが協力してくれるのでしょうが‥‥」
「どうした?」
「歌と踊りですよ。マサラムービーといわれるボリウッド映画には必要不可欠要素ですが、今回は無理かなぁ‥‥」と溜息を吐くパナ。
「まあ、両親が殺されたシーンで嘆く少女が歌うだろうし、レジスタンスたちと出会ったシーンで群舞をさせられるだろう。それにラストシーンも少なくとも少女は歌わせられるだろうしな」
 その気になれば何処にでも入れられるだろうというシャルベーシャ。
「まあ、事は現場で打ち合せだな

●参加者一覧

小川 有栖(ga0512
14歳・♀・ST
金城 エンタ(ga4154
14歳・♂・FC
アヤカ(ga4624
17歳・♀・BM
ファルル・キーリア(ga4815
20歳・♀・JG
Letia Bar(ga6313
25歳・♀・JG
ルミナス(ga6516
20歳・♀・ST
クラウディア・マリウス(ga6559
17歳・♀・ER
阿木 慧斗(ga7542
14歳・♂・ST

●リプレイ本文

●ボリウッド迷走
「キーッ、30分のフィルムじゃ入らない!!」
 髪を掻きむしるパナ。
「パナさん、短気は損気ですよ」と言い乍ら紅茶を差し出すのはアキト=柿崎。
「そうですよ。『目指せ、本土(LH)上陸』なんですから」
 そう言うのは歌の指導をした瑞浪 時雨。
 何処をカットするべきか、頭の中が迷宮入りしたようである。

「まあ、戦闘シーンは大幅カットだろうな。初戦は演出面もそうだが、脚本通りだとUTLから苦情が来るかもしれん」とS・シャルベーシャ(gz0003)が呑気に言う。
 無謀とも思える自己犠牲行動を取りKVを大破させる者が続出した為、最近、UTLは傭兵らに対し、今迄全額立て替えていた修理費に対して一部負担や大破した時の代替え機の提供の拒否の方針を打ち出している。
「他は?」
「姉とヴリトラの死ぬシーンだな」
 演出面でも問題があるが、これも『自己犠牲』と評されてもしょうがないかもしれん。片方は映画が盛り上がるので、残しても良いとは思うが。とシャルベーシャ。
「なかなかLHでの上映と言うのは難しいですね」と溜息を吐くパナ。
 斯くしてインド国内用とLH用の2本のフィルムが作成されたのだった。

●CAST
 ヴェーネ ‥‥‥クラウディア・マリウス(ga6559
 リーダー ‥‥‥ルミナス(ga6516
 アーヤ  ‥‥‥アヤカ(ga4624
 サティー ‥‥‥小川 有栖(ga0512
 オッドアイ‥‥‥金城 エンタ(ga4154

 ヴリトラ ‥‥‥阿木 慧斗(ga7542

 アーティ ‥‥‥Letia Bar(ga6313

 ヴァレリア・キャニング‥‥ファルル・キーリア(ga4815


●『LH版』少女と花とガトリング
 ──テロップ。
『この作品はフィクションであり、
 実在する組織、人物、機械、その他につきまして
 実在と大いに異なる場合がございますので、御注意下さい』

<<平和な生活の崩壊>>
<ヴェーネと家族の歌:幸せなる日々>

 ヴェーネと姉が部屋に飾る花を積む為に庭に出る。
 急に陽射しが翳る。
 ふと、見上げるヴェーネ。
 空一杯に広がるギガ・ワームからHWが大量の放出されて行く。
 慌てて姉と共に家に入ろうとするヴェーネだったが、突風に思わず目を閉じる。

 ヴェーネの目の前に1機のHWがいた。
 突然の事にぽかんとHWを見つめるヴェーネ。
「逃げなさいっ」
 姉がヴェーネを突き飛ばすと同時に放たれた光線が家に直撃し、爆発する。

 ヴィーネが気が着くと瓦礫化した我が家。
 ──そして両親の骸。
 両親の骸に縋り、号泣するヴェーネ。
「パパ、ママ、いやぁーっ」

 行方不明の姉を探すヴェーネ。
 知合った背の高い男からレジスタンスの話を聞く。
「レジスタンス?」
「そう、あそこなら色んな情報が入るって話だよ」
 ヴェーネは男から教えてもらった店を探し、レジスタンスに接触した。

<<レジスタンス>>
 ヴェーネより少し年下に見える少女(サティー)がレジスタンスのアジトを案内して行く。
 ドアをノックすると入室を許可する女の声。

 レジスタンスのリーダーは若い女性だった。
「君が新人か‥‥私は生きて還ってくる優秀な兵士を好む。くれぐれも私を失望させないでくれ」
「よろしくお願いします」
 ヴェーネはリーダーに挨拶をする。

「この部屋を使ってね。同室の子ももう戻って来ると思うけど」
 部屋に案内されたヴェーネ。
 相部屋の人物は、少女なのだろう。
 可愛らしいキャラクターグッズやアイドルの写真が飾られていた。
 空いているベットに座り、目を閉じるとそのまま体をベットに預けるように倒れ込む。
(「お姉ちゃん」)
 ここで姉の消息が本当に判るのだろうか?
 不安と寂しさがヴェーネの気持ちを暗くさせた。

<<ヴェーネ、旧知に会う>>
「ただいま〜っと」
 元気よく赤毛の少女がドアを開けて入って来る。
 びっくりしたヴェーネは涙を拭う事も忘れて顔を上げる。
「アーヤちゃん?」
「ヴェーネちゃん、無事だったんだね!」
 にっこり微笑むアーヤに抱き着くヴェーネ。
 ぷっつりと緊張の糸が切れたヴェーネは思わず泣き出してしまう。
「私、どうしたらいいの?」
「落ち着いて‥‥何があったの?」
 幼馴染みのヴェーネの頭を撫でるアーヤ。

 両親の事、行方不明の姉を探す為、レジスタンスに入った事を話すヴェーネ。
「そう‥‥今、あたしが言えるのは、ヴィーネちゃんが信じる道を突き進むしかない‥‥って所じゃないのかな?」
「信じる道?」
「そう、諦めずに信じて進めば、きっとお姉ちゃんにも会えるよ」
 にっこり笑うアーヤ。
「元気を出して☆ ほら、笑顔笑顔☆ 笑ってないと、シワができちゃうわよ〜☆」
 昔と変わらぬアーヤの笑顔に勇気づけられたヴェーネ。
「ありがとう、アーヤちゃん。ずっと一緒にいてくれる?」
「あたしはいつもヴェーネについていくよ。だって、親友じゃない☆」

 アーヤの勧めで受けた能力者の適性試験の結果、適合者と判るヴェーネ。
「おめでとうと言っていいのかな? これで私と同じになっちゃったわけだ」
 共にバグアと戦う事を誓う二人。

<ヴェーネとアーヤの歌:共に戦おう>

<<祝勝会>>
 敵基地の破壊に成功し、祝杯を上げるレジスタンス。
 初戦乍ら良い動きをしたヴェーネにレジスタンスの仲間が声を掛ける。
「あなたは中を案内してくれた‥‥」
「私はサティー。サイエンティストの能力者です」
「ああ、私と同じなんですね」
 と、ヴィーネが言う。
「私は皆と違って研究ばかりですけどね〜。今は、KVのガトリングを手持ちでも撃てるよう、改造してみているんですよ〜」
「僕はヴリトラ。よろしくね」
「ええ、よろしくね」
 ヴェーネが笑顔で応える。
「えへ、お姉ちゃんって呼んでいい?」
 アーヤが机の上で自慢のダンスを披露して宴は増々盛り上がる。

<レジスタンスの群舞:勝利>

 ヴィーネを見つめていたリーダーは誰にも聞こえぬよう溜息を吐き、静かに宴席を離れる。

<<暗躍する陰>>
『人間との生活はどうだ?』
「甘過ぎて吐き気がします」
『‥‥もう暫くの辛抱だ。お前の働き、期待している』
 壁に写る異形の影──。

 ──レジスタンスのアジト。
 計画していた奇襲作戦が失敗し、多くの怪我人を出すレジスタンス。
 物陰から怪しい笑みを浮かべて見るヴリトラ。
 怪我をしたアーヤに付き添うヴェーネ、手には焦げたベレー帽が握られていた。
 リーダーを見つけるとベレー帽を手渡すヴェーネ。
「オッドアイさんから救援班の指揮を託されました」
「そうか、御苦労」
「御苦労って、それだけなんですか?」
『作戦の失敗は、当地域の住民を危険にさらします。救援を出して作戦失敗、は許されません』
 そう言い乍らも救援班を作ってくれたオッドアイが、これでは報われない。
「言ったはずだ、私は生きて還って来る兵士が好きだと。オッドアイには還らなかった。それだけだ」

 ──バグア基地。
「終焉の序章にするには十分だな」
 壁に写し出されたレジスタンス達の姿に高笑いをするアーティ。
「勿体、無い程の舞台が整いましたね」
 アーティの前に跪く竜人の姿。
「ふふ。蟻を踏み潰すには少々大仰過ぎる気もするが‥‥」

<アーティと竜人の歌:闇に蠢く>

 アーティがマントを翻す。
「さぁ、遊びの時間だ。行くよ、お前達っ!」
 アジトから飛び立っていくHWの大軍。
<バグアの群舞:絶望を与えよ>
 真っ黒なHWが基地から発進する。

<<HW強襲!>>
 レジスタンスのアジトにサイレンが鳴り響く。
 傷の癒えないアーヤを肩で支え、避難しようとするヴェーネ。
 目の前を紫色の光線が過り、通路が一瞬にして消え去った。
 壊れた壁から人とも怪物とも知れぬ降下部隊が降りて来るのが見える。
 アーヤが空いた手でヴェーネの銃を使い、敵を撃つ。
「あたしはいいから早くKVに!」
 アーヤに諭され、格納庫に向かうヴェーネ。
「アーヤさん、こっち!」
 サティーが瓦礫で作った障壁の向うから手を振る。
 ──紫色の光線が二人の見た最後の光景だった。

 レジスタンスからの救援信号を受け、UPC軍の基地からKVがスクランブル発進する。
「私も参加させて下さい!」
 オペレーターのヴァルが指揮官に言う。
「私も昔レジスタンスに居たんです!」
「では、施設の構造が判るな?」
「はい!」
 同行を許可されたヴァルが格納庫に向かう。
 一度だけ合った少女を思い出すヴァル。
『軍も結構楽しいわよ?』
 軽い気持ちで誘ったヴァルに首を振るヴェーネ。
『ごめんなさい、私はここでみんなと戦うって決めたの』
 真剣に応えるヴェーネの顔を思い出す。
(「死なせはしない」)
「ヴァレリア・キャニング、出ます!」

 格納庫に出来た穴から黒いHWが着陸し、赤い光線が一旋し、KVを焼く。
 装甲が溶け、白煙が上がる格納庫に、中からアーティが現れる。
「まさか指揮官自ら乗り込んで来るとはなっ! 貴様を倒し、私達の未来を奪還するっ」
 リーダーが抜刀し、アーティに切り掛かる。
 それを剣で受けるアーティ。
「助勢します!」
 駆け付けたヴェーネが超機械を構える。
 息の合ったコンビネーションを繰り出す2人。
「なかなか足掻くじゃないか、人間! ‥‥面白いぞ!!」
 ヴェーネに気を取られたアーティの剣を弾くリーダー。
「貰った!」
 そのまま剣を振り下ろす。
 だがアーティの腕が変形し、鱗が刀を止める。
「残念だったな、人間」
 もう片方の腕もまた変形し、鋭い爪がリーダーの脇腹を抉る。
「か、はっ!」
 血が顎を伝って落ちる。
「リーダー!」
「‥‥大丈夫だ」
 膝をつき乍ら気丈に振る舞うリーダー。
「でも!」
「隙だらけだよ! お前!」
 槍のように伸びたアーティの爪がヴェーネを襲う。

 床に滴り落ちる大量の血と血に滑って落ちたマスク。
 アーティの爪は、ヴィーネではなくリーダーの腹を抉っていた。
 リーダーがヴェーネを庇ったのだ。
「いつ見ても我等には理解しがたい行動だ。まぁいい。何にせよ、お前達の希望はこの地に埋もれる‥‥」
 二人に関心を失ったアーティが踵を帰す。

「え‥‥お姉ちゃん?」
 リーダーの素顔を見て困惑するヴェーネ。
 ふっと微笑を浮かべるルミナス。
「ごめんね‥‥今まで‥‥言えなくて‥‥ごめんね‥‥‥また、一人にしちゃうね‥‥」
「そんな、嫌だよっ折角会えたのにっ」
 アジトのあちこちが爆発する。
「‥行きなさい‥‥行ってあなたの未来を‥‥勝ち取って‥‥」
 ヴェーネの腕の中で安らかな顔をして逝くルミナス。

<姉の死を嘆くヴェーネ:悲しみの歌>

「お姉ちゃん、私、勝つよ。絶対に。だから見てて」
 涙を拭うヴェーネの前に凄みのある笑みを浮かべて立つヴリトラ。
 ヴリトラの姿が竜人に変わる。
 鋭い竜人の爪がヴェーネを襲う。

 キン!
 鋭い金属音が響く。
「あなた、このまま死んでいいの?」
 ヴリトラの爪を剣で受けるヴァル。
「ヴァルさん!」
「バグア、許さないわ。私達の痛みを知りなさい」
 竜人に向かって銃を撃とうするヴァル。
「待って、彼はヴリトラよ!」
「何ですって!」
 目の前の竜人を見るヴァル。
「この姿‥‥ビーストマン?」
 バグアなら倒せば済むが、能力者となれば別である。
「この状況で助けるのは無理よ!」

<ヴリトラとヴィーネの歌:真実は何処に>

 倒すのに易しと思ったのか、ヴェーネを集中して攻撃する。
 コーナーに追い詰められるヴェーネ。
「死ね、人間!」
 突き出されるヴリトラの腕。
「止めて、ヴリトラ! あなたは人間よ!」
 ビクリと一瞬、止まる。
「‥‥ヴリトラ?」
 轟く銃声──。
「大丈夫か!」
 ヴァルと共にアジトに駆け付けた兵士の弾がヴリトラの体を貫く。
「庇った?」
 竜人から人に姿が変化していくヴリトラ。
「僕、は、ああ‥‥‥‥そうか。馬鹿だな、僕は人だったんだ」
 安堵の顔を浮かべ死ぬヴリトラ。
 ヴリトラを呆然見つめるヴェーネ。
「そんな‥‥」
「これがバグアとの戦いよ。彼に救ってもらった命、こんな所で無駄にする気?」
「‥‥私は、私はっ!」
 KVに向かって走り出すヴェーネ。
「バグアを許さない!」

<<死線を越えて>>
 KVを嘲笑うかのように黒いHWが空を舞い、次々とKVを撃ち墜としていく。
「あっははは‥‥! 温い、温過ぎだ! お前等、もっと私を楽しませてみせろ!」
 KVも負けじとHWの数を減らしていくが、黒いHWがKVを墜としていく数の方が早い。
「これ以上好きにはさせません」
 ヴェーネ機が突撃用ガトリングを放ち乍ら黒いHWに突っ込んで来る。
「あの娘‥‥クックッ、中々やる!」
 黒いHWを気迫で押すヴェーネ機。
 装甲が剥がれ、内部がむき出しになる黒HW。
「墜ちろ!!」
 そこにミサイルを叩き込むヴェーネ。
 だが所詮、性能の差は黒いHWの方が数段上である。
「良くやったよ、お前」
 黒いHWから放たれたフェザー砲がKVを直撃する。
「きゃぁっ」
 炎を上げるKV、片方のエンジンが爆発し、出力を保てず降下する。
「消火装置ON!」
 必死に体勢を立て直しを図るヴェーネ機、なんとか着陸しようと試みる。
 木を倒し、進んで漸く止まる。
 墜落は免れたが機銃はバラバラになり、翼が折れ白煙をあげるKVは二度と空を翔る事はないだろう。
「‥‥辛くも、といった所か。だが勝利には違いない。楽しい戦いだったぞ。ん‥‥?」
 大破したKVから這い出すヴィーネ。
(「まだ動く、まだ‥‥まだHWは墜ちていない。お姉ちゃん、みんな、力を貸して‥‥」)
 折れた操縦桿を銜え、両手でガトリングを支えるヴィーネ。
「‥‥その執念、見事だ。だが、そこまでだ」
 アーティがフェザー砲のスイッチを押す前にガトリングが火を吹いた。
 薬莢が激しく飛び散り、砲身は回転の摩擦で熱くなって行く。
 肉の焦げる痛みと激しい衝撃に腕がちぎれるのではないかと思うヴィーネ。
 だが、歯を食いしばり砲を黒いHWに向け続ける。
 弾を撃ちつくし空転するガトリング。

「ここまでか‥残念だよ、お前がどこまでいけ‥‥」
 船内に大きな火柱が立つ。
 機体が揺らぎ、黒いHWが爆発する。
 力が抜けたヴィーネが地面に座り込む。手から落ちたガトリングは、回転を続けていた。

<<終章>>
 またも家族を亡くしたヴィーネ。
 姉の墓の前に佇む。
 だが死を嘆く姿ではなく穏やかだが決意を秘めた表情を浮かべていた。
「お姉ちゃん。私、頑張るね。みんなの分も強く生きる」
 そう言うとそのまま墓を振り向く事なく前に進むヴィーネ。

<ヴィーネのソロ:未来、進む先に>

 視線の先には真新しいKVとヴァルの姿。

<希望の歌:ヴィーネの歌に合図にタムがスタートする。リズムに乗って全員による歌とダンスがスタートする>

 ──エンドロールが流れ、エンディングテーマが流れる。
 そして画面は暗く反転した──