タイトル:呉運送 肉饅大食大会マスター:有天

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/22 15:46

●オープニング本文


 近代に入って日本や中国をはじめとする東アジア圏では、新暦の1月1日を正月として祝うのが一般化しているが、ここ中国ではまだまだ旧暦(春節)の祝いをする。
 新暦の祝いも年々派手に成りつつあるが、春節は別である。
 年が明ける2008年1月7日の深夜0時と同時にバンバンと爆竹がなり、龍や獅子が舞う。
 例え、それがバグアとの戦時下であっても。

「『不謹慎』言われるかも知れないアルが、逆ネ。中国の人、春節を祝うと力が出るネ」
 ぽっちゃりとした体を揺らして『中国大陸全土ならば何処でも安心、安全、安価でお届け』を自負する運送会社「呉運送」のオーナー呉大人がオペレーターに言う。

 呉大人曰く、春節の景気付けにイベントとして「大食い大会」を催すのだと言う。
「参加者から全員参加費3000C貰って、孤児院に寄付ネ。勿論、ウチの他にも企業協賛あるアルから1、2、3位に商品は出るアル」
「‥‥それに参加する人を探している?」
「そうアル。一般参加者も参加するアルが、能力者部門も作ったアル。一般の人、能力者を超人と思っているアルよ。撃たれても死なない、間違いアルね。これを機会に能力者に対する御認識を改めるがいいアルよ」

 斯くして呉運送主催の肉饅大食い大会に一般市民との交流を目的に参加者(能力者)が斡旋されたのであった。


 参加制限:年齢性別制限無し
 参加費用:3000C
      上位入賞者3名に粗品あります。
 肉饅の特長:重量500g/1個(直径15cm高さ10cm)
       椎茸、白菜、タケノコ等の野菜がたっぷり練り込まれた肉汁たっぷりの餡が入っている。

●参加者一覧

MIDNIGHT(ga0105
20歳・♀・SN
小川 有栖(ga0512
14歳・♀・ST
鯨井起太(ga0984
23歳・♂・JG
御影 柳樹(ga3326
27歳・♂・GD
リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
王 憐華(ga4039
20歳・♀・ER
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
ミオ・リトマイネン(ga4310
14歳・♀・SN
絢文 桜子(ga6137
18歳・♀・ST
ハルトマン(ga6603
14歳・♀・JG

●リプレイ本文

●FoodFight in 香港
『レディース・エンド・ジェントルメン! いよいよお待ちかね、メインイベン‥きゃ!」
 公園広場に作られた特設ステージの上で深いスリットと胸元がセクシーに開いている赤のチャイナドレス姿の王 憐華(ga4039)が登場一番、ケーブルに引っ掛かってステージ上で派手に転ぶ。
 観客席からどっと笑いが起こる。
『あはは‥そうそう、笑う角には福来る。大笑いをして楽しんで下さい。能力者たちによる大食い大会です!』
 憐華の掛け声と共に激しくドラが鳴りゲートから能力者が入場して来る後ろで龍が舞う。
 大きなモニタに出場者たちが写し出され、1人1人紹介だ。

『本日優勝候補の1人、Ms.MIDNIGHT。今回の参加理由は「お腹一杯食べられるから」‥正直!』
 黒いワンピース姿のMIDNIGHT(ga0105)にマイクを向ける。
「MIDNIGHTさん、何か秘策でもあるんでしょうか?」
「食べ始めると‥‥血液が‥消化器官へ集中して‥‥手足が冷えるので‥寒さ対策‥‥‥」
『なる程、さすが大食いで鳴らしたMIDNIGHTさんならではの対策ですね』
 感心したように憐華が言う。

『続きまして今日のゴスロリ服は吉と出るか? Ms.小川』
「どうぞよろしくお願いいたします。今日はイベントを言い訳に美味しい肉饅を食べにきました〜♪」
 ぺこりとお辞儀をする小川 有栖(ga0512)は、黒いフリルたっぷりゴスロリ調のワンピースである。ヘッドドレスからペチコート、厚底の編み上げブーツまで全て黒である。
「小川さん、今日の意気込みはなんですか?」
「今日は本場の肉汁たっぷりの肉饅、楽しみですね〜♪」
 今日の為にちょっとガムを噛んであごを鍛えてみました〜。と笑う有栖。
 可愛いという歓声に答えるようにくるりと一回転してみせる有栖。

『続きましては、美しいご飯文化を世に伝える為やってきた米の伝道師おむすびマンことMr.オッキー』
「アイ・ラブ・米!」
 白飯が山盛りされたご飯茶碗を高々と上げる鯨井起太(ga0984)。
 黒羽二重、五つ紋付き羽織袴と正装である。
「鯨井さん、目立っていますね」
「やあ、やっぱり正月は正装でしょう。最近は一年が経つのが早いと思っていたが、一ヵ月ちょっとしか経っていないのに、もう正月になってしまったかとびっくりなんですが」
「はぁ‥‥?」
「今回はご飯の大会じゃなくって残念ですが、おかずの肉饅も大好きです」
「おかずですか?」
「そうです。大好物のご飯を持ち込んでおかずとして肉まんを食べます」
「それだとお腹が膨れませんか?」
 これだから素人は困ると言わんばかりに笑う起太。
「この世の全ての食材は米と共に食べることで、その美味さを何倍にも膨らませるんです」
 米と肉饅の絶妙のハーモニーについて喋り続ける起太。
「えー、話が長くなりそうなので、次に行きます」

『さて、続いては一番の優勝候補、Mr.御影』
「僕は御影 龍樹。今回は勝たせてもらうさぁ!」
 御影 柳樹(ga3326)は、市松模様の浴衣で参加である。
 袖を捲り上げ、逞しい力瘤で観客にアピールする。
「カリフォルニアでの大食い大会のリベンジを心に秘めての参戦だそうですが?」
「ハイさぁ。なので今回はちょっと本気で行こうと思うさぁ」
「今回は浴衣ですが、理由は何かあるのでしょうか?」
「一杯肉饅さ食べて苦しくなったらすぐ帯を緩めれるようにしたし‥‥」
「なる程さすがですね」

『続きましては‥‥Ms.カミーユは渋いです。隣のMr.嶋田とは勿論別の意味ですが』
 背中に昇龍と鳳凰がキラリと光る「茶威尼射図不恵栖帝刃瑠 羅武」と書かれた真紅の特攻服。額に巻いた長白鉢巻には輝く「肉」の文字で決めるリュイン・カミーユ(ga3871)。
「リュインさん、今日は秘策があるそうで?」
「大事なのは勢いだな。勢いというものは非常に大事だ。勢いで飯三杯いける。我は他の者に比べてさほど大食ではないと思うので、雰囲気を楽しむのも良かろう」
 マイクを奪い取ってのマイクパフォーマンスも忘れないリュイン。
『夜露司駆!』

 一方、日本の伝統芸能獅子舞フル装備なのは登録名:嶋田ことUNKNOWN(ga4276)である。
(「龍なんぞに‥‥負けん」)
 顎を鳴らすコミカルな動きとアクロバティックな激しく舞い踊る獅子舞いに観客達が喝采を贈る。
 何時しか熱が入り、観客気の方に迄降りている。
『Mr.嶋田、カンバーク! 嶋田さんのステージは観客席じゃ無いですよ』
 憐華の言葉にどっと笑いが上がる。
 UNKNOWNは観客の間を抜け、舞台に駆け上がる。

『続くのは、やっぱりビジュアルばっちりミニピタセーラー服でチャレンジ。Ms.リトマイネン!』
「よろしく御願いします!」
 ミオ・リトマイネン(ga4310)が勢い良く頭を下げたはずみに小さくピリっと音がする。
(「あちゃー‥‥切れた?」)
 だらりと冷や汗を掻くミオ。

『続いては赤いロングチャイナのMs.絢文』
「頑張ります、よろしく御願いします」
 ぺこりと頭を下げる絢文 桜子(ga6137)は長い髪を頭の高い位置で左右御団子に結い、シニョンカバーで飾っている。靴はドレスに併せた同色のシルクにビーズをあしらったパンプス姿。憐華と一味ちがった可愛らしいチャイナ姿である。

『そして本日の最年少エントリー、Ms.ハルトマン』
 白いジャージにスパッツと黒いスカートを重ね着をしているハルトマン(ga6603)。
「どうも、うちの名前はハルトマンいいます。すごく食べるので追加で牛1頭分の肉を用意してた方がいいの」
「強気です。今大会、参加者一番の強気かも知れません!
 さて、この9選手どんな戦いを見せてくれるのでしょうか?」

<場内アナウンス>
『観覧席のお客様に御案内申し上げます。
 本日参加者達に提供されます肉饅は、大会の収益金が収められます児童養護保護施設の子供達が作成した物です。大食い大会が終了後、観客の皆様にも1人1個ですが配られますので最後迄席を立たずに御観覧下さい。尚、お気に召した場合は会場内の販売所にて購入する事が出来ますのでご利用下さい』

●実況と解説
 ─スタートの合図代りの「いただきます」という掛け声の元、各選手一斉に巨大肉饅に手を伸ばしています。

「皮もふかふかしていて、お・い・し〜♪ 餡も野菜の甘味とお肉の味がバランスよくて美味しいです♪」
 ニコニコ笑い乍らやはり一口大に千切って食べる有栖とハンカチを膝に広げた桜子箸で切ってゆっくり上品に食べている。
「この椎茸と肉汁の旨味がたまりませんわね。野菜もふっくらとして馴染んでおりますし‥‥」

 ─お嬢様ぁ〜と叫びたくなる上品な仕種です。そんな絢文選手は水を取らずに攻める様です。一方、大会当初から量を食べるのでは無く肉饅を味わいたいと言っていたMIDNIGHT選手、丁寧に味わい乍ら食べていますが常人の7倍のスピードです。
 ─選手達も考えていますね。下手に水を飲むと腹が膨れますから、あくまでも水は口を湿らす為だけのようですね。
 ─御影選手は体が大きい事を優位に責めの姿勢です。一口か二口で、ほとんど丸呑み状況です。
 ─他の選手には真似の出来ない戦法ですね。一気にかぶりつくと熱い肉汁で口の中を火傷しますからね。
 ─黙々と戦いを挑む中、一風変わった選手がいます。オッキー選手です。オッキー選手他の選手が早くも2個目に手をだしている中、語っています。1口肉饅を食べる度に米を3口食べ、更に語る。
  あ、そんな中、絢文選手が早くもギブアップです。
 ─普通の女性ならこの肉饅1個で1食が足りてしまうだけの重量感がありますからね。
 ─続いてミオ選手がギブアップ。タレをつけ、頑張って来ましたがミオ選手がギブアップ。
  おおっと、ここで男性陣には嬉しいお年玉だ。
  ミオ選手のスカートのホックがとんでスカートが落ちた。可愛らしい縞パンはサービスです。
 ─それよりぽっこり膨れたお腹が気になりますね。
  かなりせり出ていますが、大丈夫なんでしょうか?
 ─選手達は大会前後に医師に依る診察がありますので、大丈夫だと思います。
  ここでどうしたヤン姿乍ら「借りて来た猫」のように大人しかったカミーユ選手。
  突然立ち上がって‥覚醒しいているぞ?!

 金色の髪靡かせたリュイン、グルメ解説者のように突如肉饅を語りだす。
 ─語る語るぞ、カミーユ! だけど肉饅を頬張るペースは落ちない。まさに神(カミーユ)業。
 ─そうですね。

 実況の親父ギャグを受け流す解説者。
「そしてこの挽肉! 荒過ぎず細か過ぎず肉汁が程よく。これはまさに──辛味が全然足りん!」
 熱いパッション、唐辛子や豆板醤をよこせと審判達に詰め寄る。

 ─おおっと、ここで女王様が降臨した。そう言い乍らもペースが変わりません。
 ─世の中にはマヨラー、お酢ラー、辛味ニストと呼ばれる人種がいますが、カミーユ選手は辛味ニスとなのかもしれませんね。
 ─しかしすでに10個の肉饅が消費されリタイヤ者がいる中、異彩を放っているのは嶋田選手です。シシマイを被ったまま、黙々と食べています。
 ─独特のパフォーマンスですね。ただ彼の場合、口元と手元が見えませんから不正行為が行われても判りませんので審判も彼には注目している様です。

 見えないシシマイの中で汗を掻いているのはUNKNOWN。疑われるのも重々承知、其れ故偽名での登録である。汗の理由は単に懐に隠した肉饅が熱いからである。
 UNKNOWNは隠し持っていた袋に他の出場者のペースを見乍ら肉饅を食べるフリをして放り込んでいたが、蒸かし立ての肉饅は10個も集まれば充分蒸れる。
 肉饅は後でこっそり孤児院にでも差し入れれば良かろうと思っていたが、かなり熱い。
 双眼鏡で審判(役員)達がバードウォッチングよろしく覗かれているのには流石に疲れて来る。
 11個目の肉饅を袋に入れ、ベルトに挟もうとしたところで汗に指が滑る。
 ポトリと床に落ちる袋。

 ─嶋田選手の足下に袋が落ちた模様です。どうやら肉饅が入っている様です。
 ─不正行為ですね。こういうお祭りに不正行為はいけません。正々堂々戦うべきです。
 ─それだとカミーユ選手のように覚醒しているのも不味いのでは無いですか?
 ─あれは作戦ですね。覚醒は能力者の個性ですから能力者同士自分の個性を生かし、チャレンジしているのでOKです。
 ─現在、嶋田選手に事情を聞こうと審判達がステージに‥おおっとここで嶋田選手、逃走だ。
 ─いやぁ、楽しそうですね。
 ─覚醒しているのか追い掛ける審判達を軽々躱しく嶋田選手、捨て台詞を残して立ち去って行く。
  まるで怪人の様でしたね。
 ─是非、ここは高笑いを残して立ち去って欲しかったですね。
 ─一方騒ぎに関係なくオッキー選手はまだ語っています。

「肉汁がご飯の中に染み込む事によって新たな世界が、今この茶碗に中に生まれた!」

 ─本当に彼は米が好きなんですね。
  最近、若者の米離れが進んでいますが、オッキー選手を見習って欲しいですね。
 ─と、ここでカミーユ選手15個目で手が止まっている。
 ─流石に飽きた様ですね。
 ─ここでどうやら無念のリタイヤだ。
  そんな中、善戦しているのはハルトマン選手です。125cmと小柄乍ら善戦している。スカートをかなぐり捨てスパッツ姿のハルトマン選手。伊達にビックマウスでは無かった事を立証している最中です。
 ─危険ですね。目が泳いでいます。怪しいオーラが滲み出ていますよ?
 ─医師が壇上に上がりました。どうやらドクターストップか?
 ─すでにハルトマン選手は18個、9kgの肉饅を食べています。さすがにこれ以上は危険でしょう。
 ─本人はまだ続けられると審判と医師にアピールしていますが‥‥惜しくもハリトマン選手、ドクターストップです。
  さあ、ここからMIDNIGHT選手と御影選手の一騎討ちです。
  二人ともすでに20個の壁を越えています。
 ─人間業では無いですね。

「ここでお二人にインタビューをしたいと思います。MIDNIGHTさん、お腹がかなり苦しそうですが、大丈夫ですか?」
 マイクを二人に向ける憐華。
「まだまだ‥‥大丈夫。一杯食べると‥‥よく‥間違われる‥妊婦さんに‥‥ロスの大会では‥‥23個‥今回は‥‥もっと食べる‥つもり‥‥」
「というとお二人は、因縁の対決と言う事ですね?」
「僕もベストを尽すだけさぁ」
「そうですか。御影さんには観客席の中か応援に『リキシ』コールが上がっていますが?」
「ありがたいことさぁ。でもなんでリキシなんだろう?」
 ふと触った腹を見て、苦笑する柳樹。
「あ、あれ? これじゃお相撲さんって言われても仕方ないかな‥‥?」
「RIKISI(力士)ですか、この辺も日本のお相撲は見ると聞きますからね」
 インタビューが続く中、ミシ、ミシと嫌な音が聞こえたと思った途端、スチールの椅子が崩壊する。
「どぅわぁ!? いててて‥‥」
 役員達が新しく持って来た長椅子に樽のように膨らんだ腹を摩り乍らのそのそと座る御影。
 誰もが思った、人間程々が一番だと。

●結果
 1位:御影 柳樹
 2位:MIDNIGHT
 3位:ハルトマン
 4位:リュイン・カミーユ
 5位:小川 有栖
 6位:ミオ・リトマイネン
 7位:絢文 桜子
 8位:鯨井起太
 記録無し:嶋田

 上位3名に大食いを讃える賞状と賞品「レザーハンチング」「幸運のメダル」「名店の菓子折」のいづれかと副賞として特製肉饅10個が贈られ、惜しくも入賞出来なかった者達には参加賞として肉饅2個が贈られた。
 そして──他の追従を寄せつけない圧倒的な強さを誇った3名のフードファイターに新しい称号が与えられたのであった。

●大食い後を濁さず
 大道芸人がジャグリングを披露しているを横目に見乍ら会場をぐるりと見て回るミオや桜子。
 春節の祝いの間、会場では漫才や京劇や歌謡ショー、中国各地の踊りや珍しい民芸品の即売等が行われるのだと言う。
 会場に置かれた募金箱に金を入れているMIDNIGHTと出会う2人。
「MIDNIGHTさん、募金ですか?」
「そう‥‥少ないけど‥孤児院の寄付に‥‥なるって言うから‥‥」
「じゃあ私も募金しますね」
「わたくしもレシピまで頂いてしまいましたからねぇ」
 ミオや桜子が募金箱にお金を入れる。

 そして夕焼けが照らす香港の小さな孤児院の入り口に「年賀 本日中にお食べ下さい。読み人知らず」と書かれた肉饅入りのビニール袋が置かれたのであった。
 子供達が大喜びをして肉饅にぱくつく姿を確認すると黒ずくめの男は一つ残した肉饅に口をつけた。
「‥‥‥旨いな」
 こうして大食い大会は幕を閉じたのであった。