タイトル:列車男と蝗男マスター:有天

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/02 01:59

●オープニング本文


「『列車男と蝗男』?」
 インドにあるダルダ財団が抱える子会社の一つ、映画館へのフィルムを卸している小さな制作会社の会議室、企画室長のパナ・パストゥージャは、目の前に座るS・シャルベーシャ(gz0003)が持ち込んで企画書を見つめ、怪訝そうな顔をする。
 いつにもまして陽気に見えるS・シャルベーシャを見つめ、溜息を吐く。
 シャルベーシャがパナの前に怪しげな企画を持ち込む時、それはシャルベーシャの機嫌がかなり悪い時である。
(「‥‥‥全く、手間が掛かる男だな」)と思っても、それはそれ、パナも大人である。
 実際、真面目な顔をして真面目な企画を持って来る時もあるが、不機嫌なシャルベーシャが持ち込んで来る企画は、大体大衆に受けるのだ。
 友人として望んでいけない事なのだが、いつもシャルベーシャの機嫌が悪いといいのにと思ってしまうパナである。
「さしずめ列車好きの男が、彼女をバッタ男から守るんですかね?」
「ふ、惜しいな。戦うのは車掌だ」
「は?」
 ダルダ財団が兵器開発で儲けた金で鉄道産業に参入するかという噂があるのだという。
「だが、それがどうして車掌とバッタが戦う話になるんですか?」
「情報源が、ダルダの末孫だ」
「アレか‥‥本当に小さい子供には好かれますよね」

 正月にダルダ一族の集まるパーでィでパナのスーツで鼻を噛んでくれた少年を思い出し、苦虫を噛み潰したような顔をするパナ。そして何かを思い出したようにやはり苦虫を噛み潰したような顔をするシャルベーシャ。

「‥‥兎も角、アレがダルダ親父(祖父)に鉄道を願ったらしい」
「涙が出る程、ブルジョアジーで身勝手な話ですね。買い付けをされる鉄道社員の身になってやれっていうんですよ」
「まあ、な。ダルダの親父の本音が何処にあるかは知らないが、経営不信の第3セクターに出資と言う形なるらしい。だが、問題なのは末孫に誰か日本の鉄道は変形ロボになると吹き込んだらしい」
「そいつは‥‥」
「ああ、飛行機がロボットに変身するのだから列車だって変形していいはずだとさ。夢があって良い事だが、子供の勝手な夢の為にMSIで列車をロボットにしたいと言われるのは困るのさ」
「つまりそれは‥‥‥」
「そうだ。ガキのお守りの為にフィルムを作るということだ」
「勘弁してくださいよ〜」
 頭を抱え、机に突っ伏すパナ。

「そういうな。考えようによっては、MSIのスパコンでCG処理が無料でできる(かもしれない)ぞ」
「え?」
 顔を上げるパナ。
「今日の俺は、MSIの開発室代表なんだよ。子供の気紛れでKVの開発中止になるのは困るのさ」
 シャルベーシャは言葉を続ける。

「今回のあらすじは、こうだ。インド初の国産列車。これを悪の宇宙人が狙って怪人を送り込んで来る。それを阻止するのが車掌だ」
「運転手じゃないんですか?」
「運転手は電車を運転中だ。敵は走行中の電車を脱線させようと企んでやって来て、食堂車のウェイトレスに発見される。怪人はウェイトレスを人質にしてしまうが、それを助けるのが能力者である車掌だ」
「すごい、無理矢理ですね」
「まあな。列車の屋根に登ってアクションをする訳だが、怪人は空からやって来たヘルメットワームで逃げていく。それをKVが追い掛けていく‥‥もちろんCGだが」
 ラストは車掌はKVを駆ってヘルメットワームを退治して、めでたしめでたし。と言う事らしい。

「まあ出る役者のノリ次第で車掌とウェイトレスが恋人にしてもいいだろうし、一応怪人はバッタ男のスーツを用意しているが、怪人の人数が増えてもスーツは間に合わないだろうがキャプチャーという手もあるし、ウェイトレスが増えても車掌の仲間の能力者が増えてもいいだろうしな」
「まあ、阿呆らしい迄にボリウッドの王道ですが、何があっても電車ロボ阻止なんですね」
「当たり前だ」
 きっぱりというシャルベーシャ。
「激しい戦闘シーンがあるようですが‥‥やっぱり低予算なんですよね?」
「当たり前だ。それにお前ん所はメイドーンで儲けたはずだろう?」
「何ヵ月前の話をしているんですか? とっくに他の映画の制作費に当てちゃっていますよ」

 インドの映画産業と言えば、年間に製作される本数は世界一である。
 派手な音楽と激しいアクション、ちょっぴりお色気シーンと一見無意味に見えるしっとりシーンが有名なマサラムービーを算出するボリウッドである。

「また能力者にでも頼みますか? 上手くやれば『対バグア』のプロパガンダ映画な訳ですから余り嫌がられないと思いますし‥‥‥」とパナ。
「そうだな。まあ、細かい事は現場で打ち合せだな」
 人さえ集まれば、なんとかなるだろう。とシャルベーシャは何時にな真面目な顔をして言った。

●参加者一覧

銀野 すばる(ga0472
17歳・♀・GP
小川 有栖(ga0512
14歳・♀・ST
水鏡・シメイ(ga0523
21歳・♂・SN
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
鈴葉・シロウ(ga4772
27歳・♂・BM
智久 百合歌(ga4980
25歳・♀・PN
槇島 レイナ(ga5162
20歳・♀・PN
絢文 桜子(ga6137
18歳・♀・ST

●リプレイ本文

●CAST
 車掌(マヤ)         ‥‥ 鈴葉・シロウ(ga4772
 ウェイトレス(プリィーティ) ‥‥ 絢文 桜子(ga6137
 ルームアテンダント(ジュヒー)‥‥ 槇島 レイナ(ga5162
 能力者1(ランバー)     ‥‥ 銀野 すばる(ga0472
 能力者2(アールティ)    ‥‥ 小川 有栖(ga0512
 新聞記者(ニーラム)     ‥‥ 智久 百合歌(ga4980

 怪人蝗男(ティッダー)    ‥‥ 水鏡・シメイ(ga0523
 謎の男(アスラ)       ‥‥ UNKNOWN(ga4276


●列車男と蝗男
<<秘密基地>>
 暗い何処かの地下神殿のような雰囲気を持つ広い空間が写し出される。
 シタールの響きを纏い、仮面を被った悪の首領の姿が浮かび上がる。
 首領の後ろには、バグアの勢力図が掲げられている。
 薄闇の中、地球外と思われる不思議な機械が並びモンスターのように見える。
「ふっ‥‥脆弱なる地球人よ。この星は既に我らのモノだ。人類よ――我らの前に平伏せ」
 バサリとマントを翻し首領の投げた銀のナイフがインドの位置に突き立つ。
「‥‥行け、怪人ティッダー! インドを恐怖に陥れよ!」
「畏まりました。このティッダーにお任せ下さい」
 銀の鬣を持つ蝗男 ティッダーが闇に浮かび上がる。後ろには蠢くような戦闘兵が蠢く。

<悪の踊り:シタールやスライドギター、ディルルバにタブラといったインド独特のメロディにトランペットとドラム、サックスのリズムが加わる。激しいライトの動きと首領の歌に併せて蝗男と兵士達が踊る力強い男踊り>
「ビールも土産に必ず持ち帰りますのでご安心を」
 頭を下げる蝗男であった。


<<ポクシラージ急行>>
 インドの大地を示す落ち着いた緑に塗られた車体。インド初の本格的旅客車輌のお披露目とあって、駅のホームは報道陣や招待客らでごった返している。
「凄い人だな。こんな時バグアが来たら、どうするのだね?」
 チケットを確認していた車掌のマヤにフロックコートを着た男が訪ねる。
「御安心下さい。当列車は最寄りのUPCの基地と交信できるシステムを搭載しています。イザと言う時は、軍がすぐやって参りますので御安心下さい」
 全身黒ずくめの男の後ろに控える長い銀髪の男が馬鹿にしたように鼻で笑う。
「それに能力者もおりますので御安心下さい」

 ──ゴトゴトと揺れ乍ら列車が進んでいく。
「最高級列車の旅って言っても貨物は、やっぱり貨物ですね〜」
 VIP警護の為に貨車に積まれたKVを見つめるアールティ、KVの付き添いである。
 任務のついでにパーティに参加して良いと言われているので、サリーでおめかしである。
「あ、いけない。パーティが始まっちゃう」

 ──アールティが豪華な旅客車輌に入るとルームアテンダントの口上が始まったところである。
「本日はポクシラージ急行をご利用いただきありがとうございます。当列車は‥‥」
(「良くつかえないで、すらすらと言えるな〜」)
 と、変な所で感心するアールティ。
「‥‥長旅になると思いますがお客様を退屈させないように努力致しますのでよろしくお願い致します。申し遅れました、私は当列車の案内役ジュヒーと申します。宜しくお願い致します」
 パチパチと乗客達から拍手が起こり、パシャパシャと新聞記者のニーラムがカメラのシャッターを切っている。

<国産列車の踊り:乗務員達が明るく楽しい列車の旅を歌い上げる。乗客達がくるくると回り、サリーやドレスの裾が舞う華やかな女性達の踊り>
「ふぅ‥‥目が回っちゃったわ。KVの点検でもして頭を休めようっと」
 上気した頬をパタパタと手で仰ぎ乍らアールティが貨車へと戻っていった。


<<人質と爆弾>>
 楽しいダンスが終わり、人々は一息吐く為にラウンジに移動する。
 そこではウェイトレスのプリィーティが、客達に飲み物を配っていた。
(「氷が無くなりそうですね。追加しておかなくては‥‥」)
 賑わうラウンジからそっとプリィーティが離れる。
 乗客の立ち入り禁止区画に向かおうとする銀髪の男を見掛け、声をかけるプリィーティ。
「お客様。そちらは機関部になりますので、お客様の立ち入りを御遠慮しています」
「立ち入り禁止か‥‥だからこそ、用がある」
 怪しい雰囲気を漂わせ笑う銀髪の男。
「さぁお前達、虫けら共と遊んでやれ‥‥‥ショータイムだ!」
 男の影から戦闘兵が湧き出るように飛び出して来る。

<蝗男の踊り:悪の踊りのアレンジバージョン。蝗男が人間を嘲笑う歌と踊り>
 銀髪の男が蝗男に変身する。
「ああ、なんということでしょう! 大事な列車に!」
 プリィーティが悲鳴を上げる。
「殺しはしない。お前には利用価値があるからな」
 腕を掴まれたプリィーティは蝗男に引き摺られて行く。
 ラウンジを占拠した怪人達は客室へと向かう。
「地を這い、泥を啜り‥‥虫けら共よ、我らの贄となれ」
 高笑いをする蝗男。

 モップで応戦していたジュヒーは、プリィーティが人質にされた事を知る。
「しまった、プリィーティが!! こうなったら白馬の王子にお願いしなきゃ」
 ジュヒーは、戦闘員に折れたモップの枝を叩き付けると一目散に車掌室へと向かう。
 当のマヤは、幼馴染みのニーラムと3時のお茶を楽しんでいる所だった。
「車掌さん、車内に怪物が現れて‥‥お願い、プリィーティを助けて!」
 ジュヒーにプリィーティの窮地を教えられたマヤは、車掌室を飛び出していく。

「はぁ、せっかくのバカンスが台無しね」
 客室に侵入して来た戦闘員と鉢合わせしたランバー。
「傭兵の性よね。こんな事もあろうかと、ドレスの下に1枚着てて良かったわ」
 パッとドレスを脱ぎすてるランバー。
 覚醒したランバーは、ローラーシューズを駆って通路を塞ぐ戦闘兵を気散らかしていく。
 その隙を突き、マヤが覚醒する。
「変身!!!」
 突き出した左腕が光り輝き、覚醒したマヤは白馬の王子ならぬ頭が白熊の、白熊男へと変身した。
 それを見たニーラムも加勢すべく覚醒する。
「取材の邪魔しないでっ! 締切あるのよ?!」
 ニーラムの回し蹴りが戦闘兵に決まり、白熊男が槍を振う。
 攻撃を避けたはずみにニーラムが蹴倒した戦闘兵に気がつかずに踏む。
「あら、ごめんあそばせ♪」
 フロックコートの男が、冷たい観察者の目で見続ける事に誰も気がつかない。
 形勢不利と判断したのか?
 蝗男がプリィーティ引っ張っていく。
「ここはあたしにまかせて早く怪人を!」とランバーが叫ぶ。


<<危機一髪!!>>
「近づくな。それ以上近づけば、この女の命は無いと思え」
 プリィーティを盾にマヤを牽制する蝗男。
 蝗男の蹴りでマヤが車輌の外に落ちかけ、悲鳴を上げるプリィーティ。
 間一髪、マヤの右手が車輌に掛かっている。
 だが手が滑り──。
「BAD ENDはまだ早いわ。ファイトぉ!!」
 ニーラムがマヤを掴み、車輌へと引き上げる。
「さあ想い人の救出よ! 助っ人料Dinner3回ね♪」
「う‥‥」
 己の財布の中身を思い出し、目の前のニーラムがどれだけ食べるのかを想像し青くなる。
 でも、ふかもこの毛皮で青いかどうかは、不明である。

 ──ランバーが平らげた戦闘兵を縛り上げていたジュヒーの目が大きく見開かれる。
「爆弾ですって?!」
「そうさ、この列車は爆発する。お前らが幾ら頑張っても時間になれば爆弾が爆発するのさ」
 ジュヒーは、シューズのヒール部分で力一杯戦闘兵を張り倒すと大急ぎで車輌の点検を始める。
 トイレにそれらしい怪しい爆発物を見つけるジュヒー。
 だが、下手に触れば爆発の危険性がある。
 一か八か‥‥ジュヒーは乗務員控え室に向かうと車内放送のマイクを握った。
「当列車に軽微ですが機械の故障がありました。お客様の中で機械修理が得意な方はいらっしゃいませんか? いらした場合はお手数ですがお近くの乗車員にお声をお掛けいただけます様、お願い申し上げます」

 ──屋根に上がった蝗男が楽しそうに言う。
「車掌は死んだかもな」
「いいえ、彼ならばどんな難敵をも打ち砕くでしょう! 希望はあるのです!」
 気丈に蝗男を睨むプリィーティ。

<希望の歌:プリィーティの独唱>
「全く、その通りさ!」
 屋根に上がるマヤとニーラム。
「しつこい虫め‥‥もう少し遊んでやりたかったが、どうやら時間のようだ」
 蝗男が指を鳴らすと、戦闘員が上がって来る。
「下っ端は私に任せて。‥‥でも予定以上だから助っ人料加算☆」
「団体割引きで御願いします」
 ニーラムの言葉にぺこりと頭を下げるマヤ。
「考えておくわ♪」
 屋根を走り、戦闘兵を蹴散らして進むマヤとニーラム。
「そんな時間があるかな? この列車と運命を共にするがいい。さらばだ、虫けら共」
 蝗男は、プリィーティを突き飛ばす。
 屋根から落ちかけるプリィーティを慌てて支えるニーラム。
「大丈夫か?」
「はい」
 その隙に飛来したヘルメットワームに乗り込む蝗男。
「ニーラム」
「ここは任せて、幼馴染の仲じゃない。でも助っ人料は別だから」
 爽快に笑うニーラムの言葉を聞かなかった事にするマヤ。
「逃すか!」


<<爆弾解体>>
 車内放送に応じて協力を申し出た人物がサイエンティストと知り、本当の事を話すジュヒー。
「故障はお客様を混乱させないための嘘‥‥本当は、この爆弾の解体なの。時間が無いけどお願いできますか?」
「私にお任せください! 時限爆弾を解除します」
 アールティは覚醒し、髪が銀色に変わっていく。
 刻々とカウントが減るタイマーを心配そうに見つめるジュヒーの傍らで、愛用の道具を客車から持って来て静かに床に並べていく。
「これから解体作業に当たります。危険ですからなるべく乗客達を遠くに移動させて下さい」
 アールティは、そう指示し、独り爆弾の解体に集中する。
「良かった。このタイプなら間違えずに電気の流れをカットするだけです」
 配線を切って行くアールティ。
 残りは赤、黄、黒、白、緑の5本となる。
「1本は本物で、他はダミーじゃなくトラップ‥‥。間違えて切るとドカン‥‥」
 カウントは10秒を切る。
「‥‥どれも上手く偽装しています。たしか今日のラッキーカラーは、ピンクでしたね」
 覚悟を決めたようにアールティはニッパーを配線に当てる。
 5、4、3‥1‥‥ パチン。
 軽快な音を立てて、緑の配線を切ったアールティであった。

 ──貨車でアールティが爆弾から取り出した信管を玩具にしている所にマヤがやって来る。
「KVは、出れるか?!」
「勿論ちゃんと点検は終わっていますよ〜。でも壊したらインド料理をおごっていただきますから!」とアールティ。
「う‥‥またか。なるべく壊さないように気をつけるよ」
 給料日迄
食事はサモサだけになりそうだと心配するマヤ。

 貨車の上部が開き、風が流れ込んで来る。
「このままじゃあ離陸出来ませんから、線路を上手く利用して加速、ブーストジャンプして下さい」
 髪を抑えたアールティが操縦席のマヤに声をかける。
 右手を上げてマヤが応じる。
 人型KVがゆっくりと上体を起し、立ち上がる。
 装輪の回転速度が上がり、白煙が上がる。
 KVはタイミングを併せて貨車から飛び下り、そのまま線路の直線を加速していく。
「今だ!」
 力強くジャンプをすると同時に変形、ブーストを噴かせて離陸する。
 空高く駆け上がっていくKV。

「いた‥‥!」
 逃げるワームの確認するマヤ。
「1機でこのヘルメットワームに勝てると思うか?!」
 ヘルメットワームから発射される光線を必死に躱すマヤ機。
 だが、機動性にも優るヘルメットワームに後尾を取られる。
 被弾を覚悟した瞬間、火を噴いたのはヘルメットワームであった。
 ニーラムがUPC基地に連絡し、緊急用要請した友軍機からの攻撃である。
「騎兵隊の到着だ!」
 友軍機と連動し、攻撃をするマヤ。
 だが、ヘルメットワームも攻撃を激化し、友軍機は次々と被弾してしまう。
「ハ! 残りは車掌、お前だけだ!」
 笑う蝗男。
「? どこだ?!」
 マヤ機を見失う蝗男。
「ここだ!!」
 太陽を背にヘルメットワームの前から人型変形したKVが落下して、ヘルメットワームを踏み付る。
「馬鹿な、空中変形だとっ!」
 さらに攻撃する為に跳躍し機体を捻り、反動を利用した激しいパンチがヘルメットワームの機体を凹ませる。再び跳躍をするKV。
 ヘルメットワームの光線をくぐり抜け、迫るKV。
「この星は、貴方達が勝手をしていい星じゃない! 食らえ、これが俺たちの熱い魂だ!!!」
 マヤのツインドリルがヘルメットワームを突き抜ける!
「バカな‥‥‥この私が‥‥‥虫けらごときに‥‥‥」
 ──一瞬、全ての音が消えた。
 次の瞬間大爆発音が轟かせ爆発するヘルメットワーム。

 丘の上からフロックコートの男は忌々しげに空を睨むと、くるりと身を翻し、姿を消す。


<<大円団>>
 最寄りの駅に緊急停車した列車、ぞろぞろと乗客達が降りている。
 そこにKVが降りて来る。
 何事かと見つめる乗客達。
 風防が開き、マヤが顔を覗かせると手を振り、走って寄って来るプリィーティ。
 マヤに飛びつくプリィーティを優しく抱き締めるマヤ。
「わたくしを、何よりも皆様と平和を護って下さりありがとうございます!」

<喜びの踊り:マヤとプリィーティを中心にした喜びの踊り。駅にいる乗客を巻き込んでの激しい踊り>
 空には虹色のスモークを描き飛ぶKVの編隊。ニーラムが二人の姿をカメラに撮る。

 ──薄暗い部屋に仮面の男。
「奴ら、能力者の力。そしてあの、奴らの玩具‥‥。脆弱なる愚かな地球人ども。この星は‥‥既に我らのモノ、だ」
 背には怪人の幼態が蠢く生体プラントが怪しく並ぶ。
 空に大きな鳥のような黒い機体の影が落ちる──。


<<エンドロール>>
 激しいダンスミュージックがスタートする。
 映画に登場した全ての人物が、敵も味方も関係なく踊る。
 何時しかメインテーマに音楽が変わり、クレジットが流れている。
 脇にNGシーンのクリップが流れる。
 ステップを間違え苦笑いをする者やソロの練習をする者。
 長台詞でうっかり言い間違えたり、思わず本物の乗客とぶつかりそうになって転ぶ者。
 出待ちでサックスを吹いている者に併せて歌う者、ペンタブを握りしめCGの光を書き込んでいる者やツインドリルを持ったミニチュアKVで遊ぶ者等、様々な姿が写し出されていく。
 そして画面は反転し、映像が終了した。


 ──後日。たまたま末孫と同席しフィルムを目にしたダルダの長の好意に寄り、フィルムは一般上映する事が決まった旨、能力者達にパナからの手紙が届いたのであった。