●リプレイ本文
●顔合わせ
協力を申し出た傭兵達の反応は様々である。
「業界時代の恩人が、刑事物畑でしたっけ」とシミジミとする古河 甚五郎(
ga6412)。
「そうなんですか? 意外ですね」
てっきりコメディ専門なのかと思っていた、と言うパナ・パストゥージャ(gz0072)。
「頼りにしていますよ」
「低予算、任せてください。セットは系列作から流用、CGモデリングもPR映画のを改造ですよね」
「お、また映画かね? また音楽をやらせてもらおう」
ふらりと事務所にやってきたのは、UNKNOWN(
ga4276)である。
あとはダンスのレッスンも、だな。と協力を申し出る。
「また参加させてもらいますよ。勿論、今回も映画文化大賞受賞を目指すんですよね?」
‥‥答えは聞いていませんけど、と言うソウマ(
gc0505)。
クールに決めているが、ハートはメラメラと、役者魂が燃えていた。
「あ、僕自身の勉強になりますんで、メイクと衣装の手伝いなんかはやらせてもらいますよ」とちゃっかりである。
UNKNOWNと共々、映画を匂いに連れられてやって来たとしか思えない発言であるが、映画好きというのは大体そういうものである。
「またも映画出演のチャンスですわ。今回も楽しく、美しくがんばりますわ」とセクシーなボルドーカラーのドレスに身を包んだミリハナク(
gc4008)。
「ハリミナクさん、お久しぶりです。また、今回も期待していますよ」。
「お話を盛り上げる為に立派な悪役を演じてさしあげますわ。シリアス系みたいですから、怖くて怜悧な企業の犬を演じてみせますわ、ええ」
笑わない私はちょっと怖いんですのよ。うふふ‥‥、と怪しく優雅に微笑むハリミナクだが寒着や武装も自前で準備する気合の入れようである。
「なんにしろ他の方が映えるようにがんばりますわ」
●踊る時、踊れば、踊りましょう
現場で台本に修正が入るのはよくあることだが、ほぼ全頁と言うのは珍しい。
理由は簡単である──当初の台本では、主人公は暗殺請負人であったが、指名を受けたS・シャルベーシャ(gz0003)の都合がつかなかったからである。
主人公が刑事変更になり、KV戦シーンは大幅にカット、予定していたヒマラヤシーンも中盤から序盤へと変更になった。
リハーサルとコンテを見ながらイメージを膨らませ、スコア(楽譜)を仕上げていくUNKNOWN。
「ふむ‥‥ここはこういう感じ、か」
楽譜ではイメージが湧き難い部分は実際に楽器を演奏し、メロディを確かめていく。
「UNKNOWN様、一休憩させては如何ですか?」
ポットを片手ににっこりと微笑むInnocence(
ga8305)。
インドではメジャーではないが歌手活動もしているので主題歌を歌う予定である。
「確か、待ち合わせがあるといっていたと思うが大丈夫なのかね?」
「大丈夫ですわ‥お兄様がお迎えに来てくださるので」とにっこりとする。
「お待たせしました、Innocenceさん」
ひょっこりと顔を覗かせるアジド・アヌバ(gz0030)。
「アジドお兄様‥‥今年もよろしくお願いいたしますわ‥」
赤いランガードレスに纏い、床に三つ指をついて深々とお辞儀をするInnocenceにつられるように挨拶をするアジド。
「お爺様に失礼になりませんように‥‥ランガードレスを着ました♪」
にっこりと微笑むInnocence。
「ところで、大ダルダはこちら(事務所)には来ないのかね?」と言うUNKNOWNの質問に「貴賓室にいるが、宴会にはお付きの目を掠めて参加する」と返答するアジド。
「宴会‥‥あるのなら参加‥‥しようかな?」
そう話すのは、サイズ直しをした衣装を持ってきた流叶・デュノフガリオ(
gb6275)。
「ちょっとばかり大ダルダって人に会ってみたいかな‥‥ってどんな人なんだろうね」
先日、会った際には「気さくな老人」という印象だった、と話すUNKNOWN。
「ただ‥‥」
「ただ?」
「女性は若干、注意が必要かもしれないかな?」
説明を受ける流叶が、ややその美眉を顰める。
「う‥‥まぁ、年寄りのやることだし多少は目を瞑る、けどさ‥‥」
まぁ楽しい宴会なれば、良いと思うよ。と少々悩む流叶にパナが衣装の追加を頼みに来る。
悪役のミリハナクが身に着ける華やかなドレスのデザイン画を見せるパナ。
「ん、これを?‥‥期間、は‥‥2日だと!?」
一番最初に見せられたミリハナクの自前+αだったデザイン画よりパーツが増えている。
「主役2人が黒のスーツと地味なので、その分追加にしました」
襟元は豪華な毛皮があしらわれ、ウェストをガードルで絞り込んだ細いウェストと豊かな腰周りを強調したセクシーな戦闘用ドレス(スカート部分の前ボタンを外すと苦無が多数下がっている)である。
スカートを脱着式にするのいいが、フェイクファーではなく本物の毛皮を縫い付けるのは高い技術が必要だ。
まだまだ服のサイズ直しの予定が入っていたが、
「‥‥分かった、何とか作ってみるよ」
これは徹夜かもしれない、と思う流叶に手伝いを申し出るソウマ。
「デュノフガリオさんはそちらをお願いします。こっち(直し)は僕が担当しましょう」
小道具の『苦無』は出来上がっているのか? とパナに尋ねるソウマ。
まだだ、という答えに「じゃあ、ついでに僕が選んじゃって良いですかね」と嬉しそうに言うソウマだった。
ああ、そうだ、とついでを思い出したパナ。
どうやらパナが側にいる限りエンドレスに仕事が、発生するようである。
「‥‥カップル役ですか?」
「チャイ店の前を通過するだけの通行人(モブ)なんですけどね」
「カップル‥‥仲良しさんですからお手てを繋いでもよろしいのですかしら‥‥?」
大丈夫ですよ、とパナに言われ、
「お兄様‥‥わたくしもがんばりますの‥‥」
ぐぐっ、と握りこぶしを握るInnocennceだった。
●大いなる自然
「‥‥‥‥‥‥寒い‥なんで俺、ここに居るんだろう‥‥‥‥‥‥っくし!」
思わずしたくしゃみが瞬時に凍るのを見てしまったのは、ユーリ・ヴェルトライゼン(
ga8751)である。
刑事達を道案内する地元山間民族役で参加である。
風を通さない構造になっているが、都会で生活するユーリにとっては寒い代物である。
能力者も覚醒すれば−5度まで裸でも凍傷にならないが、撮影隊は天気が崩れるのをひたすら待っている状況である。
既に天気待ち8時間である。
覚醒して待てばあっと言う間に練力が尽きてしまうだろう。
衣装の上に防寒コートを着ていても寒いだけなので待ち時間の間、周囲にコーヒーやバター茶を用意したり、菓子を配ったり、炊き出しとADの真似事をして手伝いをしていた。
シュンシュンと熱く立つ湯気を見ながら、大規模作戦で極寒の地ロシアも体験しているが、ヒマラヤもまた、とんでもない所である、と思う。
乾燥しきった空気の為、焼き菓子一つ食べるのも、口の中で唾液を充分出すまで食べれない始末である。
(自分の好奇心が恨めしい‥‥)とつくづく思うユーリ。
「ラグナにも苦労かけるね」
涼しくて嬉しそうにしているラグナの顔をもにょもにょとマッサージをしながら溜息を吐く。
実際、トリブバン国際空港空港では危うくラグナが差し押さえになるところであった。
(インド国内でのんびり撮影隊がヒマラヤに入れるようなルートは既に存在しない)
理由は簡単、予防接種の添付書類が足らなかったからである。
インド、チベット、ネパールといった国々では、先進国では「ほぼ絶滅した」狂犬病や蚊を媒介とするフィラリアやマラリアが蔓延しているのであった。
慌ててラストホープし、書類をFAXしてもらって事なきを得たが、空港に1匹だけ置いてきぼりになったら「珍しい」と誘拐されかねない所だった。
「本当に一緒に来れて良かったよ〜‥‥って、うー。寒い‥‥」
忙しそうに走り回る現地スタッフに「スタントでも何でも良いんだけど、何か手伝える事はない?」と尋ねるのであったユーリだった。
●ブラックホール・タイム
忙しい撮影現場での唯一の楽しみといったら食事である。
「ユーリさん、手が止まっていますよ!」
ムンバイに戻ってもしっかり炊き出しに借り出されるユーリ。
「皮目はパリッと、身はふっくら」
例え、握る際に外してしまう皮だが鮭は皮の香ばしさが身に移っているからこそおにぎりが美味しくなるのだと、こだわりを見せるのは、秋姫とアメリアのマネージャー業務の合間に炊き出し担当している守谷 士(
gc4281)だった。
「そこ! 漬物もちゃんと持ってきておいて!」
たらこを七輪で焼いている士指導の下、全員衛生手袋着用で大量のおにぎりと味噌汁を作っている最中である。
厳しく炊き出し担当を指導しながらチラリと横目にナックルの位置を確認する。
(必要がないかもしれないけど、何かあった時に備えないとね)
材料が揃えば、ひたすら握るだけである。
「よし‥‥お前なんか、握ってやる!」
気合を入れてキャストとスタッフ分のおにぎりを握り始める。
米の炊ける香りに惹かれるのは、米食い民族の特徴かもしれない。
「すごいですね〜」と機材を抱えた甚五郎が通りかかる。
ハイスピードで握っていく士に、
「よ、おにぎり王子!」という掛け声が掛かる。
「任せて置いてください!」と嬉しそうにサムズアップで返す士であった。
徹夜で衣装の補修をする流叶が、一段落ついたから、とやはり炊き出しを手伝いにやって来た。
「炊き出しお疲れ様、と‥‥なんか手伝う事あるかい?」
「味噌汁の出汁取りをお願いします」
大量のオカカと煮干が流叶の前に置かれる。
「‥‥頭と内臓を取るのに覚醒して作業をして良いか?」
出汁が濁るから煮干の処理には拘りたいのは、主婦としての本能だった。
流叶の苦労あって──
「味噌汁‥‥おお、良い出汁が取れている! これは美味しいね」
出来上がったおにぎりと味噌汁を机に並べて呼び込み開始である。
「梅! おかか! 鮭! たらこ! ツナマヨ! なんでもござれだよ!」
士の声にゾロゾロと腹を空かせたスタッフが並ぶ。
「さあ、皆様食っておくんなせぇ!」
おにぎりと味噌汁、漬物を素早くセットして居並ぶブラックホールの胃袋を持つ者達に配っていく。
「はいはい、まだ沢山ありますよー!」
●映画「激走!」
<<テロップ>>
<<『これはフィクションです。映画内に登場する団体及び宗教、企業、人物、技術は架空のものであり、実在する全てのものに一切、関係・関連ございません』>>
<<捜査本部にて本部長と対立する秋姫とアメリア>>
常に冷静な秋姫が怒りを目に、
「貴方達と一緒にいる理由はないわ。私たちは勝手にさせて貰うわ」と言って部屋から出て行く。
相棒のアメリアは、形ばかりの敬礼をして
「ごめんね〜、それはできないよ〜」と行って秋姫の後を追いかける。
警察署の出口で秋姫に追いつくアメリア。
「ちょっと待ってよ〜」
──伸びやかに澄んだ声、マハーバーラタの一説が流れる──
──清らかな賛歌とは裏腹に重圧感のあるリズムが聞くものの不安感を煽っていく──
<──レコーティングを終えたInnocenceが大きく息を吐き出す。
<──「はふう‥‥これでいいですかしら」
<──レコーディングとはいえ人前で歌を披露するのが久しぶりである、と言うInnocenceだが、自分でも良い出来だと思うのか、どこらしか誇らしげであり、満足げでもある──>
<<監査を追いかけ、ヒマラヤにやってきた秋姫とアメリア>>
なれない吹雪に立ち往生している所に、子ヤギを抱えた山羊飼いが通りかかり、偶然助けられた。
「ここで生活している俺でも吹雪の時は、出歩かないよ」
コイツが迷子になったんで帰りそびれたけどね。
凍え死なないように懐に入れた子ヤギの頭を撫で乍らバター茶を勧める山羊飼い。
「でもあんた達、結構危なかったね」
2人が通っていた道は、巡礼の道で、寺の許可なく入れば、信心深い者から殺される所だった、と言う。
「あ、それなら大丈夫だよ〜。私達は能力者だから〜」
「能力者、噂では聞いた事があるけど、悪鬼と戦う為に神様から力も貰ったんだってね」
「いや〜、別に神様から力を貰ったつもりはないけど〜」
悪鬼というのは合っているのかな? と助けを求めるように秋姫を見るアメリア。
(この調子だとバグアとかも、きっと知らないよ〜)
「まあ、似た様な者ね。人に悪なすモノを悪鬼というなら私達はその為に特別な力を持っているもの」
ところで、この人を見かけなかったか? と1枚の写真を見せる秋姫。
「ああ‥‥この人なら、2時間ぐらい前に見たな」
手がかりである。
山羊飼いが、1時間もすれば天候が回復すると言う言葉通り、先程の吹雪が嘘のように治まっていた──
面倒見の良い山羊飼いのおかげで監査を見かけたと言う場所まで案内してくれる事になったが、
「奴っこさん、道を知っているのかな〜?」
他の目撃情報から監査が一直線にある地点を目指しているのが分かる。
「何かこの先にあるの?」
山羊飼いは、この先は人が通れるような道がない、と言う。
「この先は崖だよ。下に行く道もあるにはあるけど『山羊の道』だよ」
俺達には通れるが、都会育ちの人には通れない、と言う。
「でも貴女達は、行くんだろう?」
頷く2人。
「もたもたしていたら奴を逃がすわ」
「大丈夫、さっき言っただろう。『山羊の道』があるって」
彼は空を飛べる訳ではない。この場所で空を飛んで良いのは、神と神の使いだけだ、と男は笑った。
<<男の案内で、道なき道を通り、監査に追いついた秋姫とアメリア>>
「行け、ラグナ‥‥」
人の足ではもたつく新雪の道を物ともせず矢のように監査に向かって走っていく犬。
監査を崖っぷちまで追い詰めた犬の足がぴたりと止まった。
耳をピクピクさせ、一生懸命聞き耳を立てる。
「──何か、聞こえる‥‥」
山で生活する山羊飼いの耳にも何かが聞こえた。
突如、谷間から現れたのは真っ赤なパピルサグ。
「デーウ(悪魔)!」
「なんでこんな所にKVなの〜? まさか本部長の応援〜?」
備え付けられているバルカンが獲物を探すように動く。
「‥‥違う、あれは敵です!」
パピルサグの上に黒い毛の襟飾りが着いた赤いドレスの女(ミリハナク)が立っていた。
秋姫とアメリアがSMGを素早く構える。
「ふーん? そんなモノで私の改造KVに対抗しようというの?」が嘲るように言う。
「遊んであげたいけど、私にも仕事があるのよ」と手に持っていた小銃で監査を蜂の巣にする。
全身から血を流しボロ屑のように倒れる監査に慌てて駆け寄る秋姫とアメリア。
虫の息の中、会社に騙されたのだと告げる──
「会‥ゃか‥‥逃ぼ‥資金だと‥使って‥‥い‥な‥‥‥か、家ぞ‥‥く‥‥」と何処かのロッカーキーを手に握らせる。
「しっかりして!」
「悪事を働いた犯人は逃亡の末に死亡。貴女達はここで退場ですわ、おつかれさま」
パピルサグのバルカンが3人を狙う。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ。俺はたまたま‥‥」
「目撃者は、邪魔なのよ♪ そこのわんちゃんはキメラの材‥‥何?」
ゴ、ゴ‥‥
雷のような音がした──神の住まうヒマラヤの、神の助けというべきなのだろうか?
銃の発砲音で新雪が雪崩が発生したのであった。
「背中を山のほうに向けて、体を低く、小さく!」
ユーリの叫びごと、3人を巻き込んでいく。
「運の良いっていうのかしら?‥‥まあ、生きていたらの話だけど」
ミリハナクを収容すると何処かへ飛び去って行くパピルサグ──
──リズムは激しさを増し、激しく切れのあるドラムの一音がインドラの雷のように響く──
<<タイトル「激走!」という文字が大きく映し出される>>
──バイオリンを主旋律に据えた壮大な叙事詩を思わせる交響曲に軽やかなサックスの響きがポイントと鳴り、厚みを加えるメインテーマ──
<<雪の中から這い出してき犬と男。そしてアメリア、秋姫と続く>>
──風音だけがゴウゴウと音を立てている──
──雑踏のざわめきが楽しげなハーモニカを主旋律としたメロディと重なる──
<<バザール上空から中へ>>
活気溢れるバザールには正月近いという事もあり、人数も多い。
仲良さげに手を繋ぎ歩く恋人や買出しの人々。
そんなことは関係ないと、子供たちが人波の合間をすり抜けるように駆けていく。
子供たちを映していたカメラが、今度は古い造りの建物を映す。
ドアの前には「定休日」と書かれた札が下がっている。
カメラはドアをすり抜け、薄暗い店内へと入る──
店内には1人の男の姿──
一箇所だけつけられた天井灯に疲れた様子の中年の男だけが浮かび上がっている。
手元のカップは長い時間、人を待っているのだろう。
チャイの泡が乾ききっていた──
<<更に暗い、隠し部屋に潜むようにして男の様子をモニタ越しに見つめる男達>>
「敢えて、ウチの組織‥‥ケルベロスを紹介する。刑事達は最後まで諦めず、いかなる手段でも逮捕つもりでいるようでしたが、己の若さと時間のなさを自覚している。正義だけでは裁ききれない。そう、万が一、自らが及ばずとも‥‥とその覚悟を託したようにみえた。そうこの人(依頼人)は話しました」
煤汚れたエプロンをつけた男(ピジョン)は、そう話すとリモコンを操作してモニタ画面を切り替える。
関係者の写真や関係箇所が映し出されていく──公的には依頼人の家族を、濡れ衣を着せられた監査を殺したと言われている刑事達が点数稼ぎの為に自分達を逮捕する為の囮に用意した可能性は低い、と話す。
「企業の方は幸い別件でマークした証拠があります」
大きなビルが映し出される。
「依頼としては久々の大物です。番犬の三つの首のどれで喰らいつくンでしょうか‥‥」
そう影に潜む男に向かって呟いた──
<<ムンバイのオフィス街、監査が勤めていた会社周辺で聞き込みを繰り返す秋姫とアメリア>>
次の手がかりを求めて車を発進させようとアクセルを踏んだ途端、車が暴走し、消火栓に追突する。
野次馬が集まり、騒動になっている様子をじっとで物陰から見つめる女(流叶)が短く舌打ちをする──
「ちっ、運の良い‥‥」
「あれ〜? 今のは〜‥‥」
「知っている人がいたの?」
秋姫の言葉にアメリアが頷く。野次馬の中に監査の部下であった流叶がいた、と言う。
「もう一度、彼女に会う必要があるみたいね」
<<閑静住宅街にある流叶のアパート。流叶の在宅時間を狙って訪れた2人>>
一瞬、驚き乍らも2人を招き入れる流叶が紅茶を勧める。
「安心して‥‥毒なんて入っていないから‥‥」
暫くの沈黙の後、秋姫が切りだす。
「‥‥私達がここに来た理由は分かっているわね」
「私を逮捕しに来たんでしょう? 先生を逮捕した時のように、なんの証拠もなしに──」
「証拠はあるよ〜」
「アメリアと私を狙った現場で貴女を見たわ」
「二人とも警官だから、恨みを買うのは仕方がないけど〜。エスカレートして関係ない人を巻き込むような事をしたら、ちょっと許せないかな〜?」
返答次第ではただでは置かない、とアメリアが凄みを帯びた、肉食獣をイメージさせる笑みを浮かべる。
「‥‥公僕だったら、何をして良いなんて思っている貴女達に言われたくないわ。人殺しの癖に!!」
「黙りなさい」
静かに聞いていた秋姫が冷たく、鋭く、そして厳しく言った。
「貴女の上司を死なせてしまったのは、確かに私達の落ち度です」
吐き出すように溜息を吐いた秋姫が、監査が会社の誰かに騙されて、資金を流用をわざと見逃し、それがバグアに流れていたのだ、と告げる。
「彼はその事に気がつき、身の危険を感じて姿を隠した。でも、それすら誰かの罠だった‥‥と私達は考えています」
「‥‥‥そんな‥‥でも、だったら誰が?」
「監査に命令していた人だから、役員の内の誰なんだろうけど、まだ不明なんだな〜」
「心当たりは?」
「ないわ。でも‥‥‥貴女達が言う事が全て本当だったら‥全てが、終ったら出頭するわ」
3日後、引継ぎ処理の為に時々監査を頼まれていた会社に行く予定があり、その際、調べてみる、と言う流叶。
流叶のアパートを後にする2人──
「いいの〜?」
「今、逮捕しても役員の情報は手に入らないわ。少なくとも彼女は、これ以上邪魔もしないだろうし、それに、逃げないわ」と苦笑いする秋姫。
「『本部』が当てにならない以上、人手は少しでも多いほうが良いわ」
<<何処かの倉庫、棚には年代別、科目分類された帳簿の数々が並ぶ>>
小さな事務机に向かう流叶が周囲に人影がない事を確認し、携帯のカメラで帳簿の一部を写していく。
「こんな時間まで熱心だね」
急に声をかけられ、びっくりする流叶。
「ああ‥‥お疲れ様です」
「熱心なのも良いが、時間も時間だ。今日は帰ったほうが良い」
見れば時刻は23時を回っていた─気仙
社を後にした流叶が人通りのない地下道を歩いていく。
後ろからヘッドライトを点けない車が静かに接近する。
急な加速で軋むタイヤの音に流叶が振り向いた瞬間、
──ボン、と鈍い音──
車に弾き飛ばされる流叶。
翌朝、流叶の轢き逃げ現場に立つ2人──
遺体は片付けられていたが、所持品があたり一面に散乱している。
「口封じ、やられたね〜」
「死人に口なし‥‥そう犯人は言いたいところでしょうが、彼女はちゃんと私達との約束を守ったようですよ」
流叶からのメールをアメリアに見せる秋姫。
帳簿の写真の添付されていたが、本文は数字が羅列されているだけである。
「何、これ〜?」
「それを調べるのが私達の仕事でしょ?」
<<古い雑居ビルや倉庫が立ち並ぶ港湾近い倉庫街、1つの大きな倉庫に車を寄せ、秋姫とアメリアが降りてくる。その姿が何処かに設置されたモニタに映し出されている>>
錆びた外階段を上がる2人。
屋内に立ち込める魚の臭いに「うへ〜っ」という顔をするアメリア。
魚の加工工場である。
秋姫は、作業する作業員らに目もくれず奥の部屋へと進む。
ノックをしようとする秋姫に棚に置いてあったガーネシャ人形が『そのまま、どうぞ』と声を掛ける。
<<狭い部屋。1つだけある小さな窓には薄汚れて曲がったブラインドが取り付けられ、背より高く組まれたスチールラックにはサーバーが置かれ、所々にアニメのキャラクター人形が置いてある>>
「お姉さん、また厄介事に首を突っ込みましたね」
大きな椅子に座った学生(ソウマ)が、呆れ顔で、クルクルと椅子を回転させながら秋姫とアメリアを出迎えた。
秋姫も「何故来るのが分かったのか?」等と無粋な事は言わなかった。
目の前に居る少年を取り逃がしたのは、1度や2度ではなかった。
「秋姫の知り合い〜?」
「アメリア、見た目に騙されないようにね。彼はこう見えても凄腕のハッカーなのよ」
何度か秋姫に逮捕されたが、証拠不十分で不起訴になっている、と言う。
「黒猫は気まぐれ、誰にも捕まえられない」
と眼鏡を外し、ニヤリと笑う黒猫。
「尤もクールに見えても熱い‥‥そんなお姉さんだから、報酬関係無しに手伝いたくなるんですけどね」
黒猫に流叶のメールを見せる秋姫。
「僕の所に来たのは正解ですよ」
コンピュータのドメインだという黒猫。
「早速、訪問と行きましょうか♪」
<<黒猫の部屋に取り付けられた赤いランプが点灯する>>
「‥‥ここが見つかったようですね」
セキュリティホールの隙を突き、難なくファイヤーウォールを突破した黒猫であるが、逆追跡用のトラップが仕掛けられていたようだ、と言う。
アメリアが階下を覗くと黒服の男達を引き連れたミリハナクの姿が見えた。
「逃げて、お姉さんッ!」
「何言っているの〜、頭が良くても一番子供なのは、貴方でしょ〜?」
一緒に逃げるべきだと譲らないアメリア。
「子供だからと言って、何もできないなんて思わないで下さいッ!」
素早くキーを叩き、工場の所々に仕込んだトラップを発動させる黒猫。
高圧電流が流れるチューブが突然外れて、火花を散らす。それを見た作業員達が慌てて逃げていく──
ミリハナクが右手を上げると、後ろに控えていた手下が無反動砲を構えて発射した。
事務所が直撃を受けて、機材が倒れてくる。
アメリアが黒猫の腕を引っ張り、
「危機一髪ってね〜。子供はちゃんと大人のいう事を聞くべきだよ〜」
黒猫を胸で抱きかかえるアメリア。
「子供もたまにはいいかも‥‥♪」
アメリアの胸と腿の感触に顔を赤くする黒猫。
「なつくんじゃない!」
アメリアのチョップが黒猫の頭に炸裂する。
あたたッ、冗談なのに、と頭をさすり乍ら埋まったキーボードを掘り出して再びトラップを操作する。
天井から加工した魚を吸い上げる大きなパイプが落下する。
「ここはもう持たないから、僕は退散するよ」
ひょいと小さな窓を開けると飛び出していく。
「ここ、3階〜!!」
窓枠の外側に取り付けられたケーブルを滑車で滑っていく黒猫。
「じゃあね、お姉さん達〜♪」
「脱出装置‥‥流石、抜け目ないわね」と言う秋姫に対し、
「ねえねえ〜。やっとあの子、『お姉さん達』って言ったわよ〜」
やった〜♪ と笑うアメリア。
「‥‥そこは、今、違うでしょう?」と溜息を吐く秋姫。
黒猫の滑り降りたケーブルは追撃防止の為に切れるようになっていたのだろう。
宙ぶらりんな形で外壁を揺れていた。
「脱出ルートは、正面突破だけ。‥‥覚悟はいいかしら?」
「私達らしくっていいじゃない〜。行こうか〜、相棒〜」
秋姫は冷ややかな氷の微笑を、アメリアは野獣の微笑を浮かべて事務所を出る。
デッキに出てきた2人の姿を見つけてミリハナクが残酷な笑みを浮かべる。
「お出迎え態々ありがとう、というべきなのかしら?」
「バクアに組した貴女達を出迎える私達じゃなくって地獄の獄卒よ」
「「遺言はもういいかしら?」」
秋姫とアメリアがSMGを両手に構えると──仁王立ちしたまま、ミリハナクと部下に向かって一斉にフルバーストで発射する。
仲間が倒れたのを気にせず、黒服が階段を無視して二人の居るデッキに飛び上がった。
──敵も能力者か強化人間だ。
二人はアイコンタクトをすると、それぞれがデッキの左右に分かれて応戦に当たる。
交換カートリッジを蹴り飛ばされたアメリアが野獣のように笑う。
「弾がなくても、こういう使い方ができるのよ〜!」
SMGをトンファー代わりに振り回すアメリア。
隙が出来た黒服に二人同時のハイキックが炸裂する。
「多勢に無勢、何をやっているの!」
ミリハナクがスカートのスナップを外すと、ずらりと苦無が並んでいる。
「わぉ、スゴイね〜」
「その減らず口、倍の大きさに広げてあげるわ」
苦無を目にも止まらぬ早業で投擲するミリハナク。
それを弾く秋姫とアメリア。
「こういう時、銃は不便ね」
「弾も切れちゃったしね〜」
顔を見合わせた2人は黒服の顔面に叩き付けると、足に固定していたタガーを抜く。
「タガーの二刀流ねぇ。なんでも一緒の仲良し、双子ちゃんって‥‥貴女達って、とんだ甘ちゃんね。私のバヂ・ガ・クパ(鎖鞭)でしっかりお仕置きよ」
変幻自在に軌道を変えて2人に襲い掛かってくる鞭。
掠める鞭先が服を切り裂いていく。
「白い肌に赤い血が良く映えるわね。泣き叫んでくれると、もっと最高なんだけどっ!」
「悪いけど、変態には付き合っていられないよ〜」
「同感よ」
同時攻撃を仕掛ける2人。
足技と組み合わせタガーを激しく繰り出す2人とミリハナクの息を吐かせぬ攻防が続く。
鎖鞭を避けた足で、鉄骨を駆け上がり、上部から仕掛けるアメリアに連動し、ミリハナクに足払いを仕掛ける秋姫。
それを飛んで躱すミリハナク。
「貰った!」
「甘いわよ」
後ろに回ったアメリアにミリハナクのエルボーがみぞおちに突き刺さる。
ミリハナクの動きが止まった隙に一撃を加えたのは秋姫だった。
「甘いのは、どちらかしら?」
肩に食い込んだタガーを見つめ、ニヤリと笑うミリハナク。
そのまま頭突きを秋姫に加える。
軽い脳震盪を起した秋姫を蹴り倒す。
「大丈夫?!」
息が整わないアメリアに抱きかかえられる秋姫を見ながら、ゆっくりとミリハナクが刺さったガターを抜き去り、放り投げる。
2人の目の前で傷があっという間に塞がっていく。
「今の、ちょっと、効いたわよ」
「活性化‥‥」
「ちょっと、分が悪いかな〜」
「うふっ、このお返しはきっちりしてあげるわ」
バヂ・ガ・クパを振り上げるミリハナク。
2人に向かって振り下ろされる鞭先が、一瞬、軌道をずらしたのを秋姫は見逃さなかった。
「なっ‥‥?!」
秋姫の手に握られたもう一本のタガーがミリハナクの胸を深く突く。
何が起こったのか分からない、という顔をして、どぅとミリハナクが真後ろに倒れた。
「やったね〜、さすが私の相棒だよ〜♪」
抱きつくアメリアに「ええ‥‥」と答える秋姫。
(今のは‥‥?)
<<何処かの倉庫の屋根の上、ピジョンが双眼鏡で黒煙が上がる倉庫を見つめている>>
「地獄の魔犬、悪を狩る狼、司法の犬‥‥
我等の三つの顔のうち、依頼人が選んだのは、人知れず刑事を支える法の僕‥‥
憎しみと復讐では何も生まない‥‥そう考えるのは時代でしょうかね」
何時の時代でも何を選ぶかは依頼人次第だ、と言うと側に居た男は立ち上がり狙撃に利用した銃をケースにしまう。
<<複数のパトカーが列を成し、サイレンをけたたましく鳴らし、倉庫へと向かって行く>>
黒猫には報酬は支払ったのか? と男が尋ねる。
「ええ、たっぷり、とね。今頃、最高裁判所と警察本部、TV局、ネットに情報が流れている頃ですよ」
本当に猫みたいに抜け目のない子です、と肩を竦めてピジョンが言った──
──にゃ〜おん♪ 猫の鳴き声が、ムンバイの青い空に響く──
──華やかなシタールのメロディーが流れる。
リズムを刻む手拍子が始まり、出演者全員のダンスである。
自然と体が動くそんなメロディーに乗り、軽やかで伸びのある歌声が場内に響く──
・CAST
女刑事:秋姫・フローズン
女刑事の相棒:アメリア・カーラシア
監査の部下:流叶・デュノフガリオ
黒猫:ソウマ
ピジョン:古河 甚五郎
山間民族の男:ユーリ・ヴェルトライゼン
通行人:Innocence
企業の裏掃除担当者:ミリハナク
<──UNKNOWNが穏やかで紳士らしい笑みをたたえながらも絶対的で圧倒的な存在感で、──>
<──『うむ、そこは照れずに』と指導した賜物である。──>
<<出演者名のテロップが流れていく>>
ダンスが終わった後も画面は続く──
クラクションや雑踏、街を賑わいを感じさせる音が館内に響く。
カメラは第三者の眼となり、汚い裏路地を練って一つの建物に吸い込まれていく。
一般的な民家の玄関を通り、居間、更にその奥にある小部屋へと続く。
厚いカーテンが幾重にも重なった暗い部屋に老人と黒いスーツの男──
ゆらゆら揺れるランプと蝋燭の炎が二人の顔に影を落す。
「――歩兵が象に噛みついたようです」
男が歩兵の駒のを取り上げ、象の駒を倒す。
静かに見つめる老人が鷹揚に頷く。
「こちらは馬を動かしてみましょう」
老人の手が伸びを馬を動かす。
男達の目の前に、ボードの上には鮮やかに彩られたの駒が並んでいる。
チャントランガに興じているのか?
否、興じているのは幾つもの人の運命──。
「――計画通り、に。予測誤差はまだ2%といったところです」
画面は更に暗く、静かにフェイドアウトした──
黒い服の男:UNKNOWN
●クランクアップ
「「「「「「カンパーイ!!」」」」」」
「終ったー! 皆お疲れー!」
グラスを上げるスタッフ達の間に「お疲れ様でした」の声が飛び交う。
押しに押した撮影は深夜に及んでいたが、狭い事務所の中はクランクアップを祝う人で溢れていた。
大きな花束を貰った主役の秋姫とアメリア、ミリハナクにも次々と声がかけられる。
「相変わらずキている女王様は素敵でしたよ」
「それって微妙な褒め言葉よ」と笑うミリハナク。
「お疲れ様〜」
「おつ‥かれ‥様‥‥でした」
スタッフに「良かった」と褒められる秋姫とアメリア。
演じてみてどうだったと言う質問に、自分とは正反対の性格の役柄に「恥ずかしかった‥‥です‥‥」と両頬を赤くして消え入りそうである。
逆にアメリアは「楽しかったよ〜機会があったらまたやりたいな〜」と楽しげである。
「あ、二人ともお疲れー! 素敵だったよー!」
スタッフを掻き分け両手にグラスを持った士がやってくる。
「‥‥ありが‥とう‥‥ござい‥ます‥‥」
「改めて、お疲れ。はい、秋ちゃん飲み物。ついでにアメリアにもあげる」
「私のはついでか〜、酷いな〜」
あははっ、と笑うアメリア。
「でも今回‥‥守谷さんと‥‥アメリアさんがいなければ‥‥主役なんて‥‥とても‥じゃないですが‥‥勤まりませんでした‥‥」
「確かに良いマネージャーだったよ〜」
あの時は、終ればタオルやパーカーが、すっと出てきて。喉が乾いたなんていわなくてもお茶が出てきたお姫様待遇だった〜、と言うアメリア。
「アメリアがまた映画に出たらお姫様待遇してあげるよ」
ザワ──一瞬、歓談が止まり。スタッフ達が入り口の方へと駆けていくと入って来た老人に深々と礼をする。
大ダルダの到着である。
「ああ、良い。良い。そのまま、そのまま‥‥」
私服だが、後ろからSPと思われる人物が着かず離れず着いてくる。
「初めまして、流叶・デュノフガリオと言います。一応此れでも傭兵、ですね」とスカートの裾を持ち、優雅に挨拶をする流叶。
「ランジット・ダルダじゃ。よろしくな、Ms.デュノフガリオ」
「お噂は兼ね兼ね‥‥」
「ほぉほぉほぉ、どんな噂やら。警戒せんでよろしいぞ。パートナー(夫)殿に殺されたくないのでな」とウィンクする。
「奴は来ないのかね?」
宴席には大ダルダと共に参加するだろうと思われたサルヴァだが、いない事が気がついたUNKNOWNがアジドに質問する。
兄を誤魔化している、という返答を聞いて苦笑する。
仕出しされている料理は、インドの風土料理がはやり多い。
「このアルキーマナンというのは結構これだけで腹に溜まりますね」とひき肉とジャガイモが入ったナンに「調子にのってこれだけ食べてしまうと、他の料理が食べれない」と評価する甚五郎。
あ、お土産に包んでもらってもOKですよね? とちゃっかり聞いていた。
「はぁ‥‥このチキン。ラグナにも食べさせてあげたいな」
「でも、熱い撮影所にいるよりは冷蔵倉庫の方がラグナの為になりますって」
モグモグとタンドリーチキンを食べているソウマがユーリを慰める。
ムンバイの本日の最低気温は20度なので、熱中症予防に撮影所近くの花や野菜を保管する倉庫に預けられていた。
「お爺様、明けましておめでとうございます」
丁寧に大ダルダにお辞儀をするInnocence。
「相変わらずアジドと仲良しさんかの?」
「はい♪」
そう言いながら首を傾けながら、年末の事を思い出したInnoceceがポッと頬を染める。
「ところで映画は楽しめたかの?」
「はい。お爺様も出演されたのですよね?」
「うむ、ちょい役じゃがの。息子達はわしが『子会社の映画に、それも、悪役で出てどうする』と文句を言っておったがの」
パナの会社がダルダ系列であるという事を初めて知ったInnocence。
お酌の手を止めて、「お爺様も映画を作りますの?‥‥凄いですわ‥‥‥‥」と言う。
「ほぉ、ほぉ、ほ。驚いたかの?」
「ええ、勿論ですわ」
こうして色々あったが、無事映画は完成したのであった──。