タイトル:異形の胎児たちマスター:うしまる

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/12/02 08:10

●オープニング本文


 UPC正規軍。
 各地での傭兵の活躍で陰に隠れがちになる彼らであるが、その存在は人類の護り手としてなくてはならない者たちである。
 その正規軍に所属し、北米基地で任務に就くKV地上部隊。
 人類とバグアの勢力が常に凌ぎを削り、彼らの侵攻を幾度となく食い止めてきた歴戦の部隊でもある。
 世界有数のメガ・コーポレーションの一つ、ドローム社が開発したリッジウェイで構成されていた。
 今回の任務もバグアの地上部隊の掃討。彼らがこなしてきた任務の中でも、有り触れたものであった。
 彼らが此度相手にするのは、ゴーレムだった。ヘブライ語で『胎児』を意味する名だが、それに照らし合わせるのなら奇形児と呼べる存在だろう。
 そのどれもが、人の形をしていなかったからだ。正確には、人の体に別の存在を掛け合わせたような姿をしたものだ。
 そして戦闘能力も高かった。既に三機のもの味方が破壊され、大地の一部と化しているのがその証拠だ。
 KV部隊の一角を担う、二機のリッジウェイ。両機が手にするガトリング砲とライフルが、絶え間なく銃弾を吐き続ける。弾丸の行く先は、地上に鎮座する鋼鉄の塊があった。
 脚部を無限軌道に換装され、更には全身を強固な装甲で覆った鋼鉄の巨人。その堅牢な装甲が銃弾を殆ど無効とし、僅かに傷をつけた程度に留まった。
 銃弾が尽き、新たな弾薬を込めようとしたとき、ゴーレムが徐に右手を掲げる。巨大な砲身のそれは、ガトリング砲を手にしたリッジウェイに照準が合わせられる。
 口腔の奥から輝く、赤い禍々しい光。光は轟音と共に、一発の砲弾となって放たれた。次に大気を震わせたのは、砲口に狙われた巨人の胴体に大穴が穿たれる音だった。
 リッジウェイの装甲など無きに等しいといわんばかりに、光弾はコックピットを撃ち抜く。機体は着弾の衝撃で後方に大きく吹き飛び、そのまま沈黙した。
 生半可な火力では太刀打ちできないと判断した片割れのパイロットは、ビームコーティングアクスを手にしてゴーレムに迫る。
 ゴーレムは今度は左手に持つ、レーザーガトリング砲の引き金を引く。高速回転する砲口が放つ光の雨は、土埃を巻き上げながら接近してくるリッジウェイの気勢を殺ぐように全身を撃つ。
 振り翳していた武器は破壊され、施された厚い装甲を灼いていった。
 脚を破壊されて動けなくなった獲物にゴーレムは向き直り、背中に背負った六つの口を持つ巨獣が牙を剥く。
 一斉に撃ち出された六つの巨大な牙は、リッジウェイの巨躯を原型が留めないほどに蹂躙し、屠った。
 遠方で響く爆音を受けながら、高速で地上を疾駆するゴーレム。右腕をそのまま槍へと改造し、四つの足を持つその姿は、馬に騎乗した中世の騎士のようにも見える。
 巨大な槍が、陽光を浴びて妖しく輝く。その光に魅せられたのは、ガトリング砲とシールドで武装したリッジウェイだった。
 騎士は左手に携えたレーザー砲を煌かせながらガトリング砲の弾幕を掻い潜り、槍を構えて猛然と肉迫する。
 突進してくるゴーレムに対してリッジウェイは光の弾丸をシールドで防御し、槍すらも防ごうと万全の防御態勢を整える。
 だが、パイロットの思惑は死を以て裏切られる。
 凄まじい加速力とゴーレムの膂力を受けて放たれた刺突は強固なシールドを易々と貫通し、胴体をも穿った。背部から抜けた銀の穂先は、薄らと朱を纏っていた。
 巨大な鉄塊を穂先に突き刺したまま大地を駆けるゴーレムは、ゴミを払うように槍を振るって地に落とす。機体は微動だにせず、ただの鉄屑と化していた。
 最後の一機となったリッジウェイには、更に奇怪な巨人が迫っていた。
 その姿は巨人というよりも、人の姿を辛うじて保った甲殻類のようなものだった。四足という点では先のゴーレムと同じだが、こちらは両腕までも兵器のものにすげ変えられていた。
 機体を低く保ち、投影面積を可能な限り狭くして地上を駆ける。更には両腕に施された楯を前面に展開して、リッジウェイが持つガトリング砲の銃弾を受け流す。
 そして懐に潜り込むと、両腕の楯が割れた。巨大な鋼の鋏となった腕がリッジウェイの太い両腕を挟み込み、力ずくで根本から引き千切った。鮮血の如く、火花が飛び散る。
 戦闘能力を失ったリッジウェイだが、異形の巨人に慈悲などなく、肩に備えられた砲身を展開して一条の光を放つ。
 無情の光は装甲を灼き、パイロットをも蒸発させてリッジウェイは崩れ落ちた。
 そこで大型モニターのスイッチが切られ、映像は終わった。
「以上が、今回君たちに相手をしてもらう目標、ゴーレムの特殊仕様機だ」
 モニターの横に立つ男性教官が、会議室に集められた能力者たちに説明を始めた。 
 再びモニターに光が入ると、彼らが今居る基地を中心とした周辺の地図が映される。
 青い光点が基地であり、その遥か東には赤い光点が灯る。それが目標となるゴーレムを示していた。
「現在、目標は数機のヘルメットワームを伴いながら当基地へと進路を向けている。到達するには、然程時間はかかるまい」
 基地を破壊することもな。
 自嘲気味にそう付け足すと、教官は説明を続ける。同時にモニターの映像が変わった。
 そこは基地内に設けられたカメラが映す、KVの格納庫だ。多くの機体が装甲を外されて整備され、あるいは新しい四肢や装甲を取り付けるべく修理されていた。
「申し訳ないが、我が基地のKV部隊は全て修理中、もしくは点検中だ。そして先の戦闘で撃破されてしまったため、基地の防衛能力は皆無に等しい」
 後半の言葉には教官の苦渋が滲んでおり、噛み締められた歯が小さな悲鳴を上げる。
「故に、諸君らには基地に到達されるより前にゴーレム部隊に攻撃を仕掛け、その全てを撃破してもらいたい」
 モニターが再び地図を映すと、基地の青い光点とゴーレムの赤い光点の中間に印がつけられる。
 其処は視界が開けた荒野で、人口密集地からも離れた場所でもある。戦場にはうってつけといえる場所だろう。勿論、バグアにとってもいえることだが。
「これ以上、奴らの跳梁を許す訳にはいかん。必ず仕留めてくれ」
 教官の想いを受けて、能力者たちは戦場へと駆けていった。

●参加者一覧

リチャード・ガーランド(ga1631
10歳・♂・ER
高村・綺羅(ga2052
18歳・♀・GP
威龍(ga3859
24歳・♂・PN
ヴァイオン(ga4174
13歳・♂・PN
雑賀 幸輔(ga6073
27歳・♂・JG
井出 一真(ga6977
22歳・♂・AA
守原有希(ga8582
20歳・♂・AA
紅 アリカ(ga8708
24歳・♀・AA
ドッグ・ラブラード(gb2486
18歳・♂・ST
ウラキ(gb4922
25歳・♂・JG

●リプレイ本文

 風が吹き荒ぶ荒野。
(「なんだあれは‥‥見た事が無い型だ‥‥」)
 彼方の敵影を見やってウラキ(gb4922)は胸中で呟いていた。
 低空で飛んでいる中型HWにさして変わりはないが、三種のゴーレムはこれまでにあまり見られないタイプの物だった。それぞれ一定の距離を置いて並び、前方にHWを二機づつ従えて進軍してきている。
「なんて極端な改造のゴーレムだ‥‥あそこまでいくと別物ですね」
 井出 一真(ga6977)が驚いたように言った。
「人と馬、人馬一体というやつかなあ」
 ケンタウルス型を指して言うのはヴァイオン(ga4174)。
「敵も色々な特殊型を織り交ぜているねえ。まあ、バグアのことは俺達にはわからないけどさ」
 リチャード・ガーランド(ga1631)が言った。
「うむ。よくもまぁ、次から次へと様々な兵器を繰り出してくるものだ」威龍(ga3859)が頷き、ジャミング中和装置を起動させながら言う「とりあえず、きっちりと片付けて使い物にならない事を証明してやろうぜ」
「そうだな。今後の戦いのためにも、速やかに殲滅したい」
 頷いて雑賀 幸輔(ga6073)。
「奴等にはここで朽ちてもらいましょう」
 守原有希(ga8582)が熱剣を抜き放って言った。
 十機のKVはそれぞれ戦闘システムを起動すると散開し、歩を進める。敵も能力者達に気づいたか、徐々に加速してゆく。
 戦闘が、始まった。


 距離が詰る。やがてそれぞれの射程に入った。ケンタウルスとアースクラブが一気に加速しグランド・ベースの六連装ロケット弾ランチャーが火を吹いた。二十四発のロケット弾が撃ち放たれ六機の中型HWから総計七十二発のフェザー砲が撃ち放たれる。同時に飛び道具を持つKV達もまた一斉に火器を解き放つ。
「さて、幕開けだ、吼えろGarm」
 戦場南方、ドッグ・ラブラード(gb2486) の駆るS‐01HGarmのツングースカ機銃が咆哮をあげた。強烈なマズルフラッシュと共に弾丸を嵐の如く吐き出す。井出機阿修羅もまた二機のHWを狙いスラスターライフルで激しく弾丸を飛ばした。
「さぁて、道化の円舞曲を踊ろうか‥‥!」
 雑賀機が円を描く軌道で加速、前進する。
 北方。威龍機ウーフーはグランドベースをロックサイトに納め誘導弾を放った。さらにガトリングナックルを用いて北側の中型HW二機へと弾幕を浴びせかける。守原機イビルアイズはロックオンキャンセラーを発動させて重量波を乱し威龍と同様北のHW二機へ鋭くバルカンを撃ち放つ。リチャード機が前進し、高村・綺羅(ga2052)機もそれに合わせて前に進んだ。
 中央、 紅 アリカ(ga8708)のシュテルンは右手に構えるアハトをケンタウルスへと撃ち放った。蒼のレーザーが宙を焼いて飛ぶ。さらに左に構えるスラスターライフルを取り回し中央のHW二機を狙って弾幕を張る。ヴァイオン機DH‐179=S・Crowも中央のHWを狙い、スナイパーライフルの引き金をひく。回転するライフル弾が勢いよく飛んだ。
 鉄と炎、蒼と淡紅の光、両軍へと激しく飛び交う。フェザー砲、まだ距離がある。雑賀、リチャード、綺羅の三機はそれぞれ光の嵐を掻い潜って抜けた。大地に突き刺さる七十二の閃光が荒野を爆砕し土砂を噴き上げる。レーザーがケンタウルスの腹を撃ち抜き、弾幕の嵐がHW達を穿ってゆく、グランドベースへと誘導弾が炸裂し爆発を巻き起こす。威龍機へと二十四連のロケット弾が蛇のようにうなり、宙に煙を引きながら集中して襲いかかった。
 威龍は射撃に素早く反応した。操縦桿を倒して機体をサイドに捌いている。しかし、火線が鋭い。敵も威龍の回避機動に合わせて来ている。初めの数発はかわしたが、やがて捉えられてロケット弾がウーフーの肩に炸裂した。猛爆が巻き起こる。激震がコクピットを貫いた。よろめいた所へ次々に十数の砲弾が突き刺さり装甲を消し飛ばしてゆく。コクピットから覗く視界は紅蓮だ。威龍機、損傷率四割一分。
(「なかなか重い‥‥!」)
 威龍は歯を食いしばって操縦桿を操り機体の転倒を避ける。
 南方、井出機とドッグ機から弾幕を浴びせられ中型のHWが次々に煙を吹きだした。うち一機が激しく黒煙を撒き散らして早々に墜落する。ウラキ機ゼカリアは残った片割れのHWへと狙いを合わせる。
「敵機捕捉‥‥ファイア!」
 轟音と共に主砲三連。巨弾が唸りをあげて飛び、全弾命中。大爆発と共にHWを木っ端に打ち砕いた。アースクラブは前進するとドッグ機へと狙いを定めレーザー砲を猛射した。猛烈な破壊力を秘めた閃光の嵐がGarmへと襲いかかる。ドッグ機、盾とディフェンダーをかざし、ブーストを点火させ、突っ込む。破壊の光がドッグ機を呑みこんだ。激震と共に装甲が吹き飛んでゆく。しかし、損傷率二割四分。ドッグ機S−01H、タフな造りだ。まだまだいける。閃光を突き破ってS−01Hが歩を進める。
 中央。ケンタウルス・ゴーレムが彗星の如き速さでその身一本の槍の如く紅機へと向けて大地を蹴り突進してゆく。雑賀機はバルカンを放ちつつ円周軌道を取っていたが、その動きに反応し、ブーストを点火させた。横手よりソードウィングで突撃をかける。ゴーレムが駆け、ディスタンが駆ける。風が唸りディスタンの駆動音が一層激しく鳴った。高速でゴーレムとディスタンが十字に交差せんとする。激突間際。ゴーレムは四肢を俊敏に駆動させ、ふらりと掻い潜るようにして翼の一撃をかわした。速い。
 ケンタウルスは乱れた軌道を修正しつつ、紅機へと肉薄。突撃の勢いを乗せて豪槍を捻り込むよう回転させながら突き出す。紅はPBMシステムを全開にした。シュテルンが後背より光の残像をのこしながら横にスライドする。穂先が空を切る、かわした。
「‥‥ただ突っ込んでばかりじゃ芸がないわね。それを支えているその足、もらうわ」
 紅アリカは呟き、シュテルンはハイディフェンダーを抜き放った。


 北方。リチャード機と綺羅機はブーストしグランドベースに肉薄せんとしている。駆ける二機へとHWはフェザー砲で光の弾幕を張りGBは再びロケット弾を撃ち放った。威龍機、先の猛撃による損傷は軽くはないが、ここで後退する訳にもいかない。先行して突撃する二名から随伴のHWの脅威を排除すべくレーザー砲を構えながら突進する。守原もまたバルカンで射撃しながら前進する。HWの駆動部を狙って動きを止めたいが、構造がよく解らない。あれは一体、どこがどういう働きをして飛んでいるのだろう? ピンポイントの狙撃と制圧射撃、同時には難しい。優先すべきは連携か。HWの動きを阻害すべくその鼻先へと弾幕を張る。
 HWからのフェザー砲の嵐がリチャード機を次々にかすめてゆく。突進しながらも大半はかわしているが、偶に入る命中打が痛い。綺羅機へはさらに二十四連発のロケット弾が飛んだ。少女は冷静に火線を見据え、ミカガミを低く機動させ、ロケット弾の嵐を掻い潜ってゆく。七割程度をかわすも残り六発、正面、直撃コース、避けきれない。左の腕をかざしてブロックする。大爆発が巻き起こった。
 それとほぼ同時に二機のHWから焔が吹き上がった。守原機の射撃だ。HW、避けない。先の射撃でその鋭さは把握されている。かわせぬとあらば撃ち尽くすまで。爆炎を吹き上げながらもHWは猛射を続ける。リチャード機と綺羅機の損傷率が増加してゆく。綺羅機、片腕が先の爆発で千切れ飛んでいる。本体への損傷は抑えたが片手が使用不能になった。威龍機が間合いを詰め構えたレーザー砲から閃光を爆裂させた。六条の閃光が牙となってHWの装甲に喰らいつき、穿つ。次の瞬間、凄まじい爆裂が巻き起こりその巨体が四散した。
「もう何番槍か解らんが、リチャード、行くぜぇ!」
 リチャードが裂帛の咆哮をあげ、ミカガミがグランドベースへと躍りかかる。蒼く輝く眩い光が、長大に伸び宙を焼き焦がした。レーザーブレード、内臓式雪村だ。ブーストの速度を乗せ、さらに近接マニューバを起動しグランドベースの腹を目がけて体当たりするように切っ先を繰り出す。ゴーレムが身をよじる。避けきれない。入った。腹の装甲を抉り斬りながら青光が抜けてゆく。
 その攻防の間に陰に回った綺羅機は肉薄すると、右手一本でレーザー砲を構え至近距離から蒼光を解き放った。閃光が爆裂しゴーレムの左腕からレーザーガトリング砲が弾き飛ばされる。


 紅機、ハイディフェンダーをかざし、その脚を狙って後背から斬りかからんとする。しかし、ケンタウルスは足を止めずに円を描くように駆け去ってゆく。速い。追いつけない。距離が離されてゆく。左のスラスターライフルを向け猛烈な弾幕の嵐を浴びせかける。ケンタウルスは素早く軌道を切り返すが紅はガンサイトから外さず精密に捉え続けた。猛烈な弾丸の嵐を受けてケンタウルスの脚部から火花が吹き上がる。
 ヴァイオン機はブーストを点火させてHWへと突撃をかけている。二機のHWが迎え撃つようフェザー砲を解き放った。漆黒のアヌビスは突進しながら閃光の嵐をことごとくかわす。距離が詰る。大地を蹴りつけて跳躍し、背からバーニアを吹かせて空を駆ける。空中戦。すれ違いざまにKVチェーンソーを振るった。HWの装甲が深々と抉り切られ、茨の如き電流が洩れる。次の瞬間、大爆発を巻き起こして失速し大地に激突した。
 ケンタウルスの後背へ、雑賀機ブースト機動で迫る。紅機の攻撃で速度が落ちている。追いつく。ケンタウルスは体を翻して向き直り、槍を構えた。翼よりも槍の方が間合いが広い。ゴーレムは雑賀機へと前脚を振り上げ、踏み込み、地響きをあげて豪槍を繰り出す。ディスタンは僅かに斜め前方に機体を沈ませながら踏み込んだ。コクピットの斜め上方をこすりながら槍が通り過ぎて行く。抜けた。雑賀はさらに愛機を一歩踏み込ませると、機体を捻り、翼をぶち当てた。翼刃の先が装甲に入る。硬い。改造を重ねたディスタンのパワーに物を言わせて押し切る。猛烈な火花を撒き散らしながら駆け抜ける。ゴーレムの装甲を深く抉り切った。


 既にHWは撃墜されている。井出機は四脚の特性を活かし、地を這うように低く阿修羅を突進させた。前進するドッグ機、再びアースクラブからのレーザー砲が襲い来る。ドッグはブレス・ノウを発動させると、盾を構えて防御しつつ、脇からグレネードを撃ち放った。アースクラブ付近の大地に砲弾が炸裂し爆裂を巻き起こす。アースクラブは鋏を折りたたんで盾の如くにかざし、爆風と飛び散る破片から身を守る。後方、ゼカリア。ウラキは機体を横に移動させつつ砲塔を回し徹甲散弾を装填する。
「相手が悪かったね。僕のは‥‥盾を砕く弾だ!」
 ウラキは裂帛の気合と共にサイトに蟹を模したゴーレムを納め、発射ボタンに親指を叩きつける。轟音と共に長大な砲身から焔が吹き上がり、無数の散弾が飛んだ。命中。アースクラブの盾で覆いきれない箇所を散弾の雨が穿ってゆく。


 威龍機、レーザー砲を猛射しHWを穿つ。守原機はHWへと向かって跳ぶ。空中戦。ブーストで加速し、背からバーニアを吹かせてフェザー砲の嵐を突き破る。肉薄するとHWの傷口を狙って剣の切っ先を突き通した。そのまま抉りながら払い抜ける。後方で爆発が巻き起こった。
 グランドベース、リチャード機へと向けてバズーカで猛射する。ミカガミは素早く駆動して光弾をかわした。綺羅機はレーザー砲を捨てると、近接マニューバを機動し、ビームコーティングナイフを抜き放って跳びかかる。レーザーバズーカを持つ手の破壊を狙う。ゴーレムは素早くバズーカを構えなおし、素早くナイフを持つ腕を払ってかわす。
「このっ‥‥壊れろってんだ戦車モドキが!」
 リチャードは気合の声を発しつつレッグドリルで蹴りを放つ。ゴーレムの装甲に螺旋の先が食い込み火花を散らした。両機の猛攻をグランドベースは無限軌道を用いて後退しながら捌く。
 中央。フェザー砲をかいくぐってさらにヴァイオンが飛び、チェーンソーを振るって残りのHWも撃墜する。
「‥‥さて、どちらがナイトに相応しいか白黒はっきりさせようじゃないの」
 紅機がハイディフェンダーを構え、足を止めたケンタウルス・ナイトへと突撃する。ゴーレムは槍撃のカウンターを放つ。紅は剣で穂先を逸らしてかわしつつ突っ込む。
「行くわよ、黒騎士(ブラックナイト)!」
 距離が詰る。烈閃。巻き起こった剣撃の嵐がゴーレムの装甲を瞬く間に削り飛ばす。強い。よろめいたゴーレムへと雑賀機が猛然とチャージし、やはりソードウイングでズタズタに切り裂いた。
 ケンタウルス・ゴーレムとて並みでは無い。痛打を受けつつも槍を振り回して薙ぎ払う。しかし、紅機も雑賀機も剣で受け、あるいはかわす。雑賀機にはかすりもしない。足を止めて殴り合うには分の悪い相手だ。
 やがてシュテルンとディスタンの猛攻の前にゴーレムは背骨にあたる部分を叩き折られ、ついには紅の剣で串刺しにされて爆裂と共に大破した。
 南方。アースクラブがドッグ機へと迫り巨大な鋏を突きだす。Gramは盾でがっしりと受け止める。
「盾は、お前の専売特許ではない」
 剣を振りかざして反撃の一撃。アースグラブは鋏で受けんとする。ドッグ機は剣を手放すと素早くグレネード砲を抜いた。至近距離から砲弾を撃ち放つ。自機もろともアースグラブを爆裂に包みこんだ。
 ドッグ機が煙を裂いて飛び出す。間髪入れずにウラキ機が弾幕を叩き込んだ。アースグラブは四脚で素早く飛び退いてそれをかわす。
「SESフルドライブ。ソードウィング、アクティブ!」
 井出が操縦桿を倒しながら吠える。荒野を阿修羅が素晴らしい速度で駆けてゆく。
「突撃!!」
 四脚の獣が咆哮をあげて蟹型のゴーレムへと襲いかかった。矢の如くに飛び込み、背の剣翼で斬りかかる。交差ざま、刃がアースグラブの胴に入り、それを半ばから抉り切りながら抜けた。凶悪なまでの破壊力。アースグラブの身から漏電と爆裂が巻き起こる。
(「‥‥いけるか?!」)
 井出は鍛えたあげた愛機を素早く切り替えし、方向を転換させるとその特徴的な尾を振り上げた。
「SESオーバードライブ! クラッシュテイル、ドライブッ!!」
 唸りをあげて尾の先端が飛ぶ。ゴーレムは鋏で受けんとする。遅い。否、阿修羅が速い。ガードを突き破って尾が突き刺さり、猛烈な電磁パルスをアースグラブの体内で発生させた。爆裂が巻き起こる。撃破だ。


 北方のグランドベースは持ち前の装甲の厚さで粘ったが他所を片付けた傭兵達が駆けつけ十機のKVから集中攻撃を受けて沈んだ。
 かくて、侵攻してきた三機の特殊ゴーレムと六機の中型ヘルメットワームは撃退され、基地は体制を立て直すための幾ばくかの時間を得る事に成功したのだった。

 了

(代筆:望月誠司)