●リプレイ本文
「まぁ‥‥衣服を盗んでいく何者かが‥‥」
ほぉと、すっと目を細めその依頼文に目を向ける。鷹司 小雛(
ga1008)は微笑を浮かべると、
「バグアの仕業であっても人間の仕業であっても、困った子ですわね。お仕置き、して差し上げないと♪」
にこやかに参加ボタンを押していた。
☆始まりの時間☆
「久しぶりの依頼だがよろしく頼む」
リエルの屋敷を訪ねると、応接室に通され、ノーラが応対をしてくれた。そんな姿を見て、Cerberus(
ga8178)は挨拶をする。
そんな中UNKNOWN(
ga4276)は屋敷の主リエルに挨拶をしていた。
どうやら、迷い猫を迎えに来た事を告げに来たらしい。例え社交辞令であっても、礼を弁えていると捉えることの出来る行動に、目を細めつつもリエルは「よろしく頼みましたよ」っと、ポーンと金色の子を放り出すことを告げる。
「お嬢さんを借りていくよ?」
そう言って片目を瞑って見せる態度をただ見ているだけ。一応の保護者の承諾を得た事となった。
リエルとのやり取りにより屋敷を放り出されたノーラは、仕方ないとばかりにわたわたと行き先の地図とチケットを取り出し、この度手伝ってくれるもの達へと見せた。
全部で6人。この度初依頼となる御沙霧 茉静(
gb4448)は、ぐっと拳に力を入れるほどの意気込みである。
そのチケットをすっと抜き取るUNKNOWN。
歩くように促しつつ、ノーラの肩を抱き、
「道に自信がない場合だが、私も旅をするが世界の道を全て知るわけではない」
そういいながら、前もって呼んでいたのだろうタクシーが待ち受けている場所まで歩いていく。慌てて他の者もついて行くが、置き忘れたノーラの荷物を慌てて回収したりする。
「その時は――道を聞く、だよ」
そういいながら、流れる仕草で彼女を車へと先に乗せ、皆に他の車両へ乗るよう促す。後ろには、きちんと他に2台用意されていた。
「ここまで」
抜き取ったチケットを運転手へ見せると、ほらね? っと、片目を瞑って見せた。
「積極的に動ける奴がうらやましいな‥‥」
他意のないエスコートにすらCerberusは羨ましく感じていた。どうやら、自分が取る距離が、難しい、そう感じているらしい。
☆探るべきことと、用意すべきこと☆
施設にたどり着いた一同は、まず広いことを実感した。どうやらこの施設、4つに大きく分かれるらしい。ホテル・デパートを始め、リゾートで欠かせないカジノ(ここはドレスコード付きとなにやら高級志向だが)、そしてここのメインである温泉である。極東の地とは違い、ここではまず水着の着衣が必要な旨がパンフレットの注意書きに書いてあった。一先ず、支配人の話を聞くのと、荷物を置く場所の確保にともない一同はホテルへと向かった。
そんなことよりもと、UNKNOWNは、ノーラや他のものを連れてまずはデパートへと。
「まずは水着を選ぶかな?」
そう言って見繕い始める。Cerberusは囮に使えそうなものをと2・3点見繕えば、一人品物を見定めるUNKNOWN。既に水着を用意していた鷹司や朧 幸乃(
ga3078)達にも勧めるが、生憎のってくれるものは居ない。そうか、といいつつどうやら自分の水着を選んでいるらしい。さり気無くと、上に羽織るパーカーも購入したとき、恥ずかしげに試着室から顔を出したノーラに気付くと、そっと近寄って見ようと。
「ん、可愛いんじゃないか?」
そう囁くように言うと、ノーラは顔を真っ赤に染め上げ「買ってくるの‥‥」と呟いた。
現状を把握すべく、支配人を通していろいろと事情調査を行っていた。Cerberusはリストアップさせるための材料として、現在の被害状況や被害時間帯などを入手していた。統計を取ると、どうやら昼間よりも夕刻の辺りが頻繁に起きているようである。
「材料は集まった。あとはどう料理するかだ」
☆キュートでラビィーなスタイルを☆
やはり潜入調査が一番との判断となり、朧は外周を主に気をつけるとまずは外での調査を、他は内部に客として紛れ込み調査を行うこととなった。鷲羽・栗花落(
gb4249)と御沙霧は、ノーラの案内には気をつけてとの事前情報があったためか、率先して地図を見てくれていた。
鷲羽は現地のスタッフに一般客を装い噂などを聞きこんでいた。もちろん、相手に気取られないようにさり気なさは忘れていない。服装もビキニブラにデニムのホットパンツ、半袖のパーカーを着込み、いかにも楽しんでいる客である。ふと、対象になりそうな人を見つけては、
「事件の噂聞いたんだけど、大丈夫?」
っと、少し困った顔を見せて聞いてみたり、なぜそんな事を聞くのかと尋ねれらたら、
「盗まれた場所とかわかる? 荷物はそこに置きたくないし」
反対に中へと切り込んでいく。
鷹司の容姿は、凄かった。まさしく出るとこ出て、引っ込むところ引っ込んでいるのだ。普段は着物の装束で隠されているその姿が、この度はワンピースタイプの水着により惜し気も無く曝しだされている。もちろん、行き交うもの達の視線を釘付け、である。窮屈そうに納まった胸の谷間には、ナイフ「リィナ」があるのだが、何しろその豊富な胸元により奥深く隠されているので気付かれていなかった。普段している眼帯も、あまりにも目立つといけないからといって外し、覚醒状態を保っている。
まぁ、この容姿なら、どんなことをしても目立つ気がする‥‥
そんな彼女を後ろで羨ましげに見ているノーラ。ちょっと自分の胸元やお尻をパーカーで覆うような仕草をしきりにしていた。
外を警戒していた朧はある程度確かめると内側へと戻って来た。そして、入れ替われりでCerberusが外を見回りする。中に入ってきた朧はタンキニタイプの水着を着用。ふわりとパレオを纏い、その下に武器を隠し持っていた。仕込んでいるのは盾扇とアーミーナイフ。そして、上へと羽織っているのは大きめなパーカー。下にゲイルナイフを仕込んでいる。
温泉の淵でゆったりと寛ぐものへと紛れ込み、観察を怠らない。
いくら調査に来たとはいえ、温泉に入る用意をしたノーラは、目を輝かさずにはいられなかった。湯気が上がるお湯が、彼女を誘惑していく。
「遊んでいいよ」
警戒はこちらがしているからと告げると、満面の笑みでパーカーを放り投げ、ぱしゃぱしゃとお湯の中に入っていく。
そんな様子をサイドの椅子に腰掛け、専門書を開きながら、UNKNOWNは涼んだ顔で見守っている。こっそり仕込んでいる無線機に耳を傾けながら。 ノーラと共に入っていくのは御沙霧。一緒にお湯を掛け合い、まるで水辺で遊ぶようなはしゃぎ振りだ。
そんな様子を視界に納めつつ、Cerberusもまた、警戒を怠らない。
ふとこちらを見る視線に気付き、手を振ると、はしゃいでいたことに恥ずかしくなったのか、途端に顔を赤く染める。そんな彼女をパシャリと自前のカメラに納めると、再び満足気に本へと視界を落とす。
撮られた事を知り、直赤くなるノーラを御沙霧は、声を掛け遊ぼうと促す。しょんぼりとした彼女の肩にそっと手を添えて。
☆鈴は鳴るのか☆
囮は更衣室で盗むものに対してきちんと仕組まれていた。各自が囮用に用意した衣服には、しっかりと鈴の髪飾りを括りつけ、奪おうとしたら音が鳴るように仕込んである。更衣室方面には常に気を払いつつ、また、無線機から流れ出るよう計らっている。マイクスピーカーも忘れていない。
そんな中、朧がミラーにて合図を出してきた。どうやら、怪しい物影が更衣室へと入っていたようである。
「‥‥来たな」
UNKNOWNはそう呟くと、何気ない仕草でその場を後にする。御沙霧は引き続きノーラの周辺で警戒に当るよう、心構えた。そっと、遊び道具に見えるよう持ってきたエアーソフト剣を手に握り締める。鷲羽は異変に気付くとスタッフの方へ行き、騒がずにいつでも避難できるように指示を出していた。鈴の音が、無線機を通して伝わってくる。Cerberusはそれを聞き取ると、更衣室へと足を向け、目立たぬように急いだ。
更衣室では人影が。女性用更衣室なのに明らかに男性と見られる人影が複数存在した。一番初めに入った鷹司はそっと様子を見つつ、そのものが本当に犯人かどうかを見極めようとする。
りーんと、涼やかな音が聞こえる。それにより確定をつけ、踏み込む鷹司.やや遅れて、朧たちも駆けつけて来た。
手を伸ばし、勢いよく引き込むと、地面へと押し倒した。
「おイタが‥‥過ぎましてよ?」
鷹司が胸元から出したナイフ、リィナをそっと首元へと押し当てた。押し当てられた者は、頬の横をつーっと流れ出ると、ぽたりと透明の雫が床へと落ちた。
丁度胸を地面へと押し付け、腕を後ろ側へと片手で捻り上げ、足を絡ませる形で押さえ込みをかけている。締め上げているのだ。
「確保完了、逃げられると思うな」
そう、他にいたもの達を外から回ってきたCerberusがタックルで押し倒した後手錠で捉え、朧が投げたナイフで足元を脅し捕まえたものもいる。UNKNOWNはゆっくりと笑みを浮かべるとさも楽しそうに捉えられていた者達を順番に自慢の荒縄で縛り上げていった。
どうやら、このたびの犯人は一般の人物だった、らしい‥‥
犯人を捕らえ、支配人へと連絡するノーラ。彼女はあっという間に捕まえた事に驚きつつ、余った時間で遊べるねと、大変お気楽に笑っている。リエルのお使いを果たした事により、年末年始のリゾート貸し切りが決まったので、大変なご機嫌だった。
犯人を締め上げると、意外な事実がわかる。どうやら、この者たち、全ては警備員だったらしい。狙ったのはいつも女性のものだったのだが、それだけだと変質者の噂が立ち込めるので時折男物も狙っていたとのことだったのだ。
いやはや、どちらにしても変態には変わらないのだが‥‥
「結局、ただの変態だったみたいだね」
そう漏らした鷲羽の言葉には、呆れの音が含まれていた。
☆報酬は、何がお好きですか?☆
折角来たので‥‥遊ばないのは楽しくないとばかりに残りの時間を過ごすこととなる。
既に警戒の必要はなくなったのか、各自思い思いに温泉や飲食などに身を委ねつつ、ノーラもさもご機嫌に温泉を堪能していた。
「その水着似合っているぞ。平静さを保つのが困難なくらいにだ。アイスかパフェか食べたいものがあればおごろう」
いつもより、帽子を深く被りつつCerberusはノーラへと声を掛ける。
それじゃぁとばかりにパフェを頼むノーラ。Cerberusはそんな様子を微笑ましげに珈琲を飲みながら眺めていた。
そんな彼女を鷹司は温泉へと誘う。彼女の抜群のプロポーションに息を呑みつつ、ノーラは――うんっ――と、満面の笑顔で連れ立つ。
もし、ここで鷹司が気付くことが出来ていたならば、この惨事は回避できていたのかもしれない。しかし、既にそれは、この依頼を見たときからその思惑は始まっていたのだと思う。
ノーラが一人になった時、風が、横切った気がした。
すっと、跳ね上げる髪の感触、そして‥‥首と背中にあった、布地の感触が、消えたのだ。
「ひゃっ!?」
「おっと」
それは、本当の危機一髪。
黒い布地が零れる白い肌を曝け出そうとした時、大きく温かい感触が柔らかな双方を包んだ。
「○△□☆!?!?」
その感触に、そして横から漂う紫煙の香りに思わず気が動転する。
ふわっと、肩から掛けられたのは、白いタオル。そっと胸元を覆う用に包むと、次の瞬間視界が急に高くなる。
「さて‥‥行くとしよう、うん」
ノーラを胸に収めるように抱きかかえたUNKNOWNは至極満足げにその場を去る。
一体何処に消えたのか、そんなことはわからずに。まぁ、更衣室に送り届けるだけだろうが。
取り残されたのは、黒い布地のみ。
それを見て鷹司は油断していた実態を把握した。
またもう一人‥‥
サイドテーブルで珈琲を飲んでいたCerberusは、微かに見えた白い肌に、珈琲をテーブルへとご馳走していたのだった。