タイトル:地下水路探検隊・発足マスター:雨龍一

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/03/23 23:10

●オープニング本文


 その日、僕たちは不思議なものを見た。
 きらきらに輝くカード。
 何かな‥‥そう思って拾ってみると、それはとても硬く、意外にも重いものだったんだ。
 そしてそこには得体の知れない文字が書かれていたんだ‥‥

「ねぇ、ここに物が落ちていなかったかな」

 その声に振り返る。
 そこにいたのは大きな大きなヒト。
 目はとても大きく、今にも転がり落ちてきそうで‥‥
 そして、差し出されたてはとてもとても皺があったんだ。
 ひしゃげた鉛筆みたいに細くって、青くなった爪がそこにちょこんと乗っている。
 とっても怖くなって、僕たちは思わず走り出したんだ。
 一生懸命走って、いつもの部屋を通り過ぎて‥‥
 そして明るい太陽の下へとたどり着いたんだ。


 外に出ると人心地したんだけど‥‥
 何故なんだろう。
 とっても不思議なんだ。
 そういえばね‥‥







 あの水路は確か誰も利用していなかったはずなんだけど


 アノヒトハナンデイタンダロウ


 僕らだけの、あの秘密の基地で‥‥

●参加者一覧

鳳 湊(ga0109
20歳・♀・SN
ファファル(ga0729
21歳・♀・SN
不破 梓(ga3236
28歳・♀・PN
寿 源次(ga3427
30歳・♂・ST
三島玲奈(ga3848
17歳・♀・SN
大川 楓(ga4011
22歳・♀・GP
百瀬 香澄(ga4089
20歳・♀・PN
諫早 清見(ga4915
20歳・♂・BM

●リプレイ本文

●聞き込み
「発見されたのは丁度、彼らの秘密基地と呼んでいる付近だったようです」
 支部に着くと、担当者が子供たちの頭をぐりぐりとしながら話し出した。
「ぼ、僕、本当に見たんだ! あんなに目がぎょろぎょろしている人、初めて見たんだよ!」
 そう興奮して話す少年が今回の依頼人であるようだ。
「久しぶりだな、少年。お姉さんたちに詳しく話してくれないだろうか」
「あ、こないだのお姉さん!」
 少年の目線まで腰を落として声をかけたのは百瀬 香澄(ga4089)、前回、少年たちのお願いを聞き届けた事があった。

 少年たちは秘密基地を中心にいつも遊んでいたらしい。前回キメララットが出たため、しばらくは親たちに止められていたものの、やはり、そこは好奇心旺盛な子供。秘密基地遊びを押さえ込むのは不可能だった。親の目を盗み、コソコソと二人遊んでいたらしい。
 キメララット自体はそんなに潜伏していなかったのだろう、前回の掃除以来見かけることはなかったらしく、そして彼らも、それ以上奥へと進む事もなかったのだ。
 しかし、話は数日前へと遡る。
 少年たちが秘密基地からそろそろ帰ろうかとしたときだった。
 基地から少し奥に行ったところに、普段見かけないキラリと光るものを見たのだ。
 何なのだろう‥‥そう思い、手にとったそれは、意外とずっしりしており、両手いっぱいの大きさで、少し冷たく、硬いものだった。
 不思議に思って覗き込んでみると‥‥

「そこに、男が来たんだな?」
「そうだよ、こんなに眼のぎょろりとした人だったんだ」
 少年が手を丸め、自分の目にあてる。大きさが正確か否かはともかく、とにかくおかしな奴が居た、という事だけは確実だろう。少年たちは一目散に逃げ出してきて、ひとまず無事だ。しかし、だからといって放っておく訳にもいかない。
「まあるかいてちょん、まあるかいてちょん‥‥」
 即興で口ずさみ、子供の横に屈むのは三島玲奈(ga3848)だ。謳いつつ、紙を広げ、鉛筆を手に取る。口ずさむ歌に合わせ、少年は紙を覗き込んで、あれこれと人相に注文をつけていく。
 ものの数分で、人相書きが描き上がる。
「ふむ。人間にしては少し妙とも思えるが‥‥」
 人相書きを覗き込み、寿 源次(ga3427)が首を傾げた。
「ね、秘密を解く鍵かもしれないし、そのカード借りていいかな?」
 少年の目線に背を合わせ、諫早 清見(ga4915)が問い掛ける。
「ちゃんと返してねー?」
 諫早の手に、そろりとカードが置かれる。
 傭兵達が来る手筈になっていたからだろうか、建築会社の職員も、カードを無理に取り上げるような事はしなかったらしい。それは、少年が所有権を主張している事からも解る。
 カードを受け取った諫早は、カードを裏返し、明かりにかざし、様々な角度から眺めた。
 世の中にはカード型の通信機等もあるが、どうもそういった風には感じない。が、それ以上に眼を引く、意味不明の文字。
 百瀬や三島も興味深そうに、カードを覗き込んだ。
 少数民族の文字というような可能性もあるが、現在の世界情勢を考えるに、最も危険、かつ最初に思い浮かぶのは、やはり、バグア関連だ。地下にキメラが居た事も考慮に入れれば、その可能性を一番警戒せざるを得なかった。

●地下水路
 水滴のしたたる音を聞きながら、不破 梓(ga3236)が先頭を歩く。
 彼等は、事前の打ち合わせに従い、二班で手分けしての探索に当っている。先頭を行く不破は、ポニーテールを揺らしながら、警戒感も露に、しっかりとした足取りで先へと進んでいた。
 事前調査は他に任せ、装備等の点検はばっちりだ。当然、気力もみなぎる。
 ただ困ったのが‥‥
「そちらの様子はどうですか?」
 後ろで、鳳 湊(ga0109)の声がする。別に、彼女の事に困っている訳ではない。彼女が声を発する相手は通信機の先にいるファファル(ga0729)なのだが‥‥要するに、彼女達が強く希望した、通信機の全員への配布は叶えられなかった。
 一斑に一つずつ、という事で、鳳とファファルの二人が手にしている。
「む、また部屋だな」
 ぴたりと、足を止める。
 ‥‥と、最後尾に付けていた寿が一歩前へ出た。
「俺が行こう」
 外見上、彼等は職員、及びその護衛と言った風体で、寿自身の考えもあって、まずは彼が部屋の外に立ち、中の様子を伺う。手にしたランタンを掲げて小部屋を照らす――物音や気配は、特に感じられない。
「何も無さそう、だな」
「じゃ、次へ行くとしよう」
 百瀬の言葉に、寿が頷く。
 その格好はまさしく水道調査に訪れた職員そのものである。あるのだ、が。心なしか、というより、殆ど雰囲気が変わっていない。普段から作業着で過しているので、当然と言えば当然な気もするけれど。
 それにしても――と、彼は、少し考えを巡らせた。

 この小部屋は、一体何の為に作られたのか。
 そもそも、建設時に一緒に作られたものなのかどうかすら、怪しい。ここは地下水路だ。ある程度の小部屋はあってもおかしくないが、それにしても数が多い。
 距離も長い水路で明かりが無く、妙に多い小部屋。
 それもこれが、仮に後から作られたものだったとしたら、どう考えてもおかしいじゃないか。
「うーん‥‥」
 諫早が首を傾げた。
 彼等が聞き込んだ限りの職員が言うには、詳しく知らないという事だった。こういう大型事業では、末端の人間一人一人が、計画や事業の全体像を全然知らない、というような事態が往々にしてあり得る。
 こればかりは、後から改めて調べ直すしかない。
 まずは、不審者の正体を調べるのが先決だ。秘密基地を護る為にも、目前の問題を解決しなければならない。
「ここは問題ありませんね‥‥どうかしました?」
「いや、はやくあの子達を安心させてあげないとな、って」
 注意深く辺りを見回していたファファルの問いに、諫早が応じた。
「ふむ‥‥そうか、そうだな」
 クールな彼の表情が、少し綻ぶ。小さな子供の事となると、つい、優しい気分になってしまい――と、自分の緩みに気が付いて、彼は表情を引き締めた。
(今のところ気配はなし‥‥か)
 ランタンで周囲を照らしながら、彼等が歩を進めて行くのにあわせ、地下水路に、紙を合わせた音が、ばしばしと木霊した。鳴っているのは、お笑い人心の聖剣、ハリセンだ。三島が地下の深さを測る為に鳴らしている。
「家から学校までの専用地下鉄が欲しい‥‥子供の頃、遅刻する度にそう願ったの」
 ハリセンもそうだが、それ以上に彼女の格好は不思議だ。体操着にブルマ、しかし今居る場所が地下水路とは、あまりに異質。あまりに奇怪。百戦錬磨の傭兵であろうと、地下水路で突然ブルマ姿の女性を見れば、それはもう一瞬怯む事は間違いない。
 もちろん、彼女の姿はきちんと計算された機能的なものなのだが、そんな事に気付けない程のインパクトだった。
 眼の前で通路を照らす大川 楓(ga4011)が、ひょいと首を捻る。
「通学が大変だったの?」
「今でもそうだけどね」
 苦笑いして、三島がハリセンを揺らしていた。

●眼の大きな人
 多少の雑談は交わされるが、基本的には、彼等は黙々と探索を続けた。時折交わされる会話は、連絡――つまり調査情報の交換が殆どだった。
 地下水路は音が響く。
 故に、聞き耳を立てて異なる音を探る。

 カラン‥‥

 乾いた音に最初に気付いたのは、一斑の百瀬だった。
 彼女が聞きなれたこの音は‥‥缶だ。どこかで空き缶が跳ねた。
「こっちだ」
 小声で指差す彼女の後を、一斑が付いていった。

 一方、二班でも、ファファルが微かな音に気がついた。
「しっ」
 口に指を当て、皆の注意を喚起する。
 人の歩くような音が、聞こえたのだ。
(どこだ‥‥?)
 手振りに促され、耳へと意識を集中する。もし、子供達の言うその人が歩いていたのだとすれば、物音が途切れる事は無い筈。
 このままじっと聞き耳を立てていれば、音が‥‥聞こえた。
 それも、かなり近い。
 飛び出す彼女が水路の角を曲がる。その先に、奴は居た。大きな目玉を顔に乗せ、懐中電灯を手に歩いていた。
「あなたは誰ですか?」
 堂々と、特に身構えてはいない振りをして、彼女は声を掛けた。
 驚き、呆気にとられた顔で、男は後ずさる。
「あ、すみません。私は水質調査をしている者ですが‥‥ここで何を?」
 礼儀正しく、いかにも調査員といった物腰で、更には微かな笑顔までオマケする。相手は少なくとも人間の形をしているのだ。実際に人間であってほしい。そう思う。
「貴方はいったいここで何を?‥‥いえ、ここには色々と危険もあるという事を聞いているので‥‥」
 ファファルに続き、大川が問い掛ける。
 しかしそれを確認する時間は、与えられなかった。
 理由は解らない。だがそう判断する理由が何かあったのだろう。男は身を翻し、背を向けて一目散に駆け出した。それも、かなりの速度で。
「あ、待てっ!」
 その背中を、二班が追った。

 この『音』は、一斑でも感知していた。
 水溜りを散らしながら駆ける音が時折聞こえ、それも少しずつ近づいて――そして、向こうから現れた。
「ん‥‥?」
 寿が、すうっと目を細めた。逃げてきた、という事は確実だ。だが彼等は、出会い頭にはまず会話による接触を図ろうと事前に打ち合わせている。要するに敵意むき出しに襲い掛かるような真似はしていないのだから、それでも逃げたという事は、つまり、訳アリだ。
 当然――逃げる。
 彼等の姿を見るなり男は来た道を振り返るが、遠くから一斑の走ってくる音が聞こえる。男は別の道目掛けて飛び込み、再び駆け出した。
「追おう!」
 ホルスターから拳銃を引抜き、鳳が後に続く。
 既に追っていた二班の姿が見えた段階で最後尾の脇道へと駆け込み、二班を誘導した。男は疲れているのか、速度も落ち始めている。それでも皆が攻撃を加えないのは、向こうからの攻撃が無く、ただ逃げ回っているだけだからだ。
 出来れば捕まえて、その理由を確認すべき‥‥誰もがそう考えている。
 追いすがる一斑の先頭は、不破だった。
 だが、通り過ぎていく道を見て、その行き先に気がつく。
 崩落危険区域。
 劣化が激しく、場所によっては崩落の危険性のある区域だ。
「おい、待つんだ! そっちの道は――」
 不破の大声が届いた。男はちらりと後ろを見やり、不破が叫んだ筈の警告を耳にしていた。だが、その間、彼はよそ見をしていたのだ。走る速度もそこそこに、ひび割れた壁に肩をぶつけ、尻餅を付く。
 そんな彼を捕えようとして、皆が、覚醒もして速度を上げた、まさにその時だった。
 ぐらり、と壁が揺れた。
 一瞬の出来事だった。
 不運だったとしか言いようが無い。ばらりと外れたコンクリート壁は周囲の壁を引きずり、はては天井にまでひびを波及させ、男は一瞬にしてコンクリートに飲み込まれていく。
 飛び退いた傭兵達の足元にまで小さなコンクリ片がばらばらと弾け、下水が盛大な水しぶきを上げて辺りを濡らす。
 やがて崩落は止まり、男が居たと思しき場所には、破片の山が大きく重なるだけだった。

●調査報告
「光がこんなに恋しいものとはな」
 ――とは、寿の第一声。
 皆コンクリート埃に顔を汚し、地下水路から顔を出した。
 あの程度の瓦礫等、どかそうと思えばできる。だが、一度崩れたという事は、いまある瓦礫をどかした時に、再び崩落が始まらない、とは言い切れない。
 止むを得ず、彼等は一度地上へと戻ってきた。
「昔から、下水には何かが潜んでいる、という都市伝説はよく聞くが‥‥まさか現実のものになるとはな‥‥」
 肩の埃を払い落とし、不破が溜息をついた。
 結局、相談の結果、瓦礫処理は専門家である業者によって行われる事になった。皆がであった「彼」には、様々な可能性が考えられる。もちろん、人間を模したキメラである可能性も。
「カードの調査にも、暫く時間掛かるみたい」
 難しい顔をして首を捻ったのは、三島だ。
 ブルマを脱ぎ、地下水で濡れたブルマをぎゅっと絞っている。
 結局調査は振り出しかと言えば、そうでもない。調査の結果は近々知らされるだろうし、瓦礫が取り除かれれば、彼の正体も解る。水路の奥に潜む謎は、その報告を待って解決に当れば良い。
 ただ問題は‥‥
「えーっ! 入っちゃいけないの!?」
 地団太を踏んで悔しがる少年だ。
 これだけの事があった以上、暫くは絶対進入禁止だ。いや別に、普段なら入って良いとかそういう訳ではないのだけど、今だけは、絶対に駄目だった。
 もう暫くの間は、鬱憤が山積するばかりだろうな‥‥そう思いながら、傭兵達はシャワーへ向った。今はとにっかく、埃だらけの身体を綺麗にしたかったから。

(代筆:御神楽)