タイトル:Hot spring trip−Nマスター:雨龍一

シナリオ形態: イベント
難易度: 普通
参加人数: 28 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/01/21 00:53

●オープニング本文


「わっわ! ここ、本当に貸切りしちゃっていいの!?」
 そういいながらはしゃぐノーラ・シャムシエルは、リエル・イヴェール(gz0090)から見て本当に年上なのかいつも疑問に上がる。
 ここ、巨大スパ王国は先日ノーラに頼んで不穏な噂を調査したところだった。
 ドイツの北部に位置するこの場所では、昔から療養施設が多い。ここ、スパ王国ももちろん療養型施設のひとつである。リゾート施設というだけあり、ここにはありとあらゆる施設が隣接していた。
 ホテルを始めとして、デパート、カジノ、そしてメインである療養施設・温泉である。 ちなみに、ここでは日本の温泉施設と違い、男女共に水着着用を義務付けられているので羞恥な事はご勘弁願いたい。
 ノーラにせがまれて来たものの、ここ最近戦地へと赴いていたことに少し疲れを感じていたのは事実だった。暫しの間‥‥そしてこの新しい年を明けるのにも良いのかもしれないと、感じてみた。
「しかし‥‥我々2人では何かと面白くないかと思い、募集出しておきましたから」
「ほえ?」
 リエルの思いがけない言葉に、ノーラは疑問を持った。
 募集を‥‥かける?
 いったい何のことなのだろうか。
「いえいえ、UPCに掛け合いましてね。少額で構わない旅行プランを出してあげたのですよ」
「――うわぁ‥‥貸切の癖に‥‥」
「失礼な‥‥少なくとも、移動費ぐらいしか取りませんよ」
「そりゃ、そうよねぇ‥‥」
「で、俺と2人より楽しいでしょ? あなたにとっても」
「ほえ? 2人だったの?」
「‥‥何でもありません」

●参加者一覧

/ 篠森 あすか(ga0126) / セシリア・D・篠畑(ga0475) / ロジー・ビィ(ga1031) / 鷹代 朋(ga1602) / 篠崎 公司(ga2413) / 篠崎 美影(ga2512) / マクシミリアン(ga2943) / エマ・フリーデン(ga3078) / 愛輝(ga3159) / 宗太郎=シルエイト(ga4261) / UNKNOWN(ga4276) / 荒巻 美琴(ga4863) / 水無月 魔諭邏(ga4928) / 不知火真琴(ga7201) / 砕牙 九郎(ga7366) / Cerberus(ga8178) / リュウセイ(ga8181) / 百地・悠季(ga8270) / 飯塚・聖菜(gb0289) / 美崎 瑠璃(gb0339) / 美環 響(gb2863) / 鷹代 アヤ(gb3437) / 澄野・絣(gb3855) / エル・デイビッド(gb4145) / 橘川 海(gb4179) / 水無月 神楽(gb4304) / 宇佐美 唯梨(gb4336) / ハート(gb4509

●リプレイ本文

「この度は素敵なツアー、ありがとうです」
 ぺこりとお辞儀する不知火真琴(ga7201)にリエルはたいした事ではないですよと静かな笑みで会釈する。そんなリエルを不思議そうに見つめつつ、ノーラ・シャムシエルは一緒に遊ぼうね! っと真琴を歓迎のハグで出迎えていた。

「お、お? なんでリエル曹長がこんなところに‥‥って、これはお誘いするチャーンスっ!」
 美崎 瑠璃(gb0339)はリゾート施設に来れるというだけで舞い上がっていたものの、実際到着してみると依頼にてお世話になったリエルが居ることに大変喜んで居た。虎視眈々とチャンスを窺いつつ、リエルの動向を追跡することにしたようだった。

「お、温泉って温泉プールだったんですかぁ!?」
 到着して案内を見た宗太郎=シルエイト(ga4261)は、己の迂闊さに頭を抱え込んでいた。いわゆる日本の温泉感覚でいたため、彼は男女別に考えていたらしく、プールという環境で混浴という事実に困惑したのだった。同じく驚愕しているのが一人。
「Spaって療養施設だったんだね?」
 遊園地のようなものだと思っていたんだけど‥‥と、橘川 海(gb4179)は事実を知って呆然としていた。
「お、海じゃないか〜。奇遇だな、お互い楽しもうぜ!」
 そんな海にリュウセイ(ga8181)は気付いた。友人たちと共に参加していた彼女は中々の団体様である。わしゃっと頭を撫で上げると、海も嬉しそうに挨拶を返してくる。
「あ、海! 水着買いに行くわよ!」
 早速とばかりに百地・悠季(ga8270)が海を引き連れ、デパートへ向おうとしていた。隣には黒髪の少女、澄野・絣(gb3855)と謎に包まれた少年エル・デイビッド(gb4145)も一緒に。
「九郎、お前も行くぜ?」
 そんな女の子ばかりに荷物は持たせておけないぜ! と、ばかりに張り切るリュウセイは、どうするかなーっと、考えていた砕牙 九郎(ga7366)に声をかけ、半ば引きずる様に同行をさせたのだった。

「しっかし、10000Cでこんないい場所に2泊も出来るとはなぁ‥‥」
 鷹代 朋(ga1602)は田中 アヤ(gb3437)と手を繋ぎながら招待された場所のよさに、感心していた。なんだろう、2人で泊まるという事に、妹にばれると大変だなぁと思いながら。

 朧 幸乃(ga3078)は、そっと訪れるとともに、前回の依頼で被害が出てなかったことに一人安堵を抱いた。あの依頼で、何か施設に支障が出てないのかが気になっていたのだ。ほっとするとともに、この施設をゆっくり見てなかったことに気付く。
「少し、楽しんでも‥‥いいかな?」
 そう思って、足を店が立ち並ぶデパート街へと向けたのだった。

「あ、UNKNOWNさん!」
 ノーラは、一人静かにやってきた男を見つけると駆け寄っていった。以前、この施設を調査するのを手伝ってくれた人物であるが、同時に、ノーラの水着の紐を狙った犯人だとはノーラは知らない。ピンチの所を助けてくれた人物であるという、そのような認識を持っているのだ。
 そんなUNKNOWN(ga4276)もノーラを見ると、見つかったかという顔をして優しくハグをと頬に挨拶のキスを落とす。
「まあ、夜にでも、だ」
 そうやって微笑む姿に、ノーラも笑顔でまたねと微笑んだ。


◆1日目・昼◆

「ん〜、まずは水着購入だってばな」
 デパートをまず訪れたメンバーの中に九郎はいた。まずはとばかりに自分の水着を共にきたリュウセイと選び買う。その次に、団体でよろしくとばかりに集まったカンパネラご一行様と合流とのことになっていたのだが、ふと目に着いたものがあった。
「お、ノーラさんに似合いそうだな」
 そんなことを思いつつ、中華料理の材料の購入を終えたリュウセイに呼ばれ、足早にその場を後にした。

 悠季と澄野は海の水着を選ぶのに必死のご様子。そんな澄野の水着を海が選び、わいわいと合わせてみたり、互いに譲り合ったりしている。
「‥‥うん、無理です」
 そう言った澄野の視線の先には大層セクシーな水着。悠季はそんな澄野を見つけ、
「着てみたらいいんじゃない?」
 っと、少し悪巧みの笑みを見せる。ぶんぶんと首を振って否定する姿に海もまた、楽しそうに笑っていた。
 そんな彼女達の買い物をお荷物よろしくとばかりのリュウセイと九郎は眺めていた。互いに褒めあう姿は、本当に微笑ましい。

「え、エル君がいないよ!?」
 エルがいないのに気付いたのは、一通り買い物を終え、スパに行こうかと思った矢先だった。
 皆が探し回っている中、当の本人はというと‥‥
「‥‥あれ? 皆どこ?」
 どうやら、自分がはぐれたのを気付いていなかったらしい。生憎、どこに皆がいるかわからずにエルはそのまま迷子センターへと身を寄せる。
 なんとも‥‥この年になって迷子のお呼び出しがかかるとは思わなかった一同は、店内放送の導きにより、無事再会を果たすことが叶ったのだった。

 篠崎 公司(ga2413)は妻の篠崎 美影(ga2512)とその義妹に当たる荒巻 美琴(ga4863)と共に慰安旅行と称して参加していた。
 連れられるままデパートへとショッピングへ。彼は荷物持ち担当でありそうだ。どうやら美琴の友人も参加するとの話を聞いたのだが‥‥
「篠崎さん!」
 声がして振り返ると、そこに居たのは水無月 魔諭邏(ga4928)ともう一人の人物だった。
「あぁ、これは水無月さんではありませんか」
 ニコニコと会釈をすると、新たに紹介したい人がいるんですと、隣に居た人物を指し示した。
「ほら、神楽。自己紹介をしなさいな」
 勧められるがままに一歩前に出る水無月 神楽(gb4304)。
「水無月神楽です。姉がよくお世話になっていると聞いています」
「これはこれは、賑やかになるでしょうね」
 そう言って微笑む公司の態度に美影はちらっと見つつも、こちらもよろしくとばかりに挨拶を返していた。



「これ、タンスの肥やしになってたんだよ、ね」
 篠森 あすか(ga0126)はそっと持ってきた荷物から水着を取り出すと、少し愛おしそうに抱きしめた。クリスマスから付き合い始めた彼、愛輝(ga3159)に見せるため、そっと取り出してきたのだ。みなと一緒とはいえ、初めての旅行で、心がドキドキする。
 流石に、いきなりは恥ずかしいのか、身につけたビキニの上に、パレオを巻いて。

 Cerberus(ga8178)は自らの姿を見て、暫し考えていた。スパで息抜きをと思い参加したのはいいのだが、鏡に写った自分の姿を見て、傷跡が多いのに気付いたのだ。
「裸を気にした事は無かったが改めてみると酷いものだな」
 銃創、切傷、刺し傷‥‥そっと頬へと続く傷をなぞる。全ては能力者になる以前についた傷、しかし‥‥ここ最近気になって仕方ない彼女は、この傷を見てどう思うのだろうか。

「あー、その‥‥なんだ‥‥水着、似合ってて可愛いんじゃないかな‥‥」
 少し照れくさそうに頭をかきながら鷹代はぽつっと呟いていた。そんな彼の様子にアヤは嬉しそうに微笑む。くすぐったい幸せが、胸に溢れてくるようで‥‥そっと手を掴むと勢いよく走り出していた。

 着替え終わったセシリア・ディールス(ga0475)は、真琴、ノーラと共にロジー・ビィ(ga1031)の元へと向った。
「‥‥あ‥‥水着紐‥‥取れて‥‥」
 歩いてる途中、セシリアの言葉に慌てて胸元を覆うと、
「‥‥ないですよ。勿論」
 そんな事を無表情で言ってくる彼女に涙目ながら睨みをきかせる。
「ふふ‥‥絶好のピコハン日和ですわッ☆」
 眩しそうに太陽を仰ぎ見つつ、ロジーは気合の入った様子でビーチボール片手にもう片手にはお気に入りのピコハンを掲げてスパへと立ち向かっていた。遅れてきた真琴達を見つけると、
「ノーラとセシリアの水着は初めてですわね! ‥‥皆さん中々の体型v」
 っと、すかさずノーラに抱き付き、そのままあちこちを確認するように‥‥
「ろ、ロジーさん!?」
 慌てるノーラを見つつ、一通り確認し終えると、にっこり笑顔で――中々の成長振りで――と囁き、真琴と連れ立ってプールの中へと駆け出していった。
 突然のボディタッチで驚愕のあまり硬直するノーラ。そんな彼女を見つけたのは、九郎だった。見つけたので挨拶を‥‥と、声をかけたのはいいのだが、
「ぶふぉっ!?」
 振り返ったノーラの姿を見て、思わず九郎は動きが止まった。それはデパートにて、こんなの着てくれるといいなーと思って眺めていた一着の水着、白い紐状のビキニ。流れる金色の髪に阻まれ、後姿で確認できなかったものの、振り返ってみると中々の‥‥
「あら、九郎さん‥‥どうか、したの?」
 きょとんと首を傾げるものの、九郎は真っ赤な顔のままぶるぶると首を振って慌てて逃げ出したのだった。
 そんな九郎を迎えたリュウセイは一人、ノーラの側に行かなかったことを正解と感じていた。
――絶対鼻血だしそうだもんな!――
 そんなこと、口に出してもいえないと思いつつ、後ろから声が聞こえ振り返った。
 そこに現れたのはカンパネラ御一行様。褌一丁宜しくっ! のリュウセイとは違い、先程デパートで購入した可愛らしい水着に身を包んでいる。
「これなら、平気だ‥‥」
 そんなことを漏らした事に気付かずに、リュウセイはにこやかに彼女達を出迎えたのだった。

「ど、どう‥‥かな‥‥?」
 篠森は、更衣室を出ると待っていた愛輝に身に纏ったパレオをとって聞いてみる。恥ずかしげに、頬を染め、下から様子を窺うように見つめる。それを見た愛輝はどこを見て良いかわからなくなり、視線を泳がせた。普段見慣れているはずの篠森の姿が、どうやら眩しすぎて直視することが出来ないらしい。
「愛輝‥‥くん?」
 反応が返ってこないことに不安に思い、心配そうな顔で見つめてくる篠森に気付くと、慌てて現状を否定する。
「あ、い‥‥いや、だ、大丈夫です! そ、その‥‥」
 そういいつつ、視線は宙を泳いで‥‥
 足を、滑らせた。
「愛輝君!!」
 そんな愛輝を心配して、体勢を支えようと様子を窺うも、どうやら転んだ際に後頭部をぶつけたらしく、眩暈がしていた。そして、
「うっ!」
 しゃがみ込んできた篠森の姿を間近に見た事により刺激が強すぎたらしく、鼻血まで‥‥
「ちゃんと横になってなきゃっ!」
 無理やり押さえつけるように自らの膝に愛輝の頭を乗せ、膝枕を強要する篠森。そんな彼女の行動に困惑しつつも、少し幸せを感じ愛輝は、
「す、すみません」
 そう、お礼を呟いていた。

 音がしたので、ちょっと気にかかった真琴だがこんな状況下であり‥‥
「あ、お邪魔しました〜」
 二人が気付いたときには、既に姿を消していたのだった。


 一泳ぎを終え、そっと水から身体を引き上げると、遠くからリエルが溜息をつきつつ歩いてくるのが見えた。彼に話すチャンスとばかりに、宗太郎は慌てて傍に行くと、
「あの、ケー‥‥いや、なんでもないです」
 暫し不穏の空気を感じ取ったリエルに睨まれ、途中で言い淀んでしまった。
 しかし何故だろう‥‥なにやら胸がざわざわとくすぐったいような、背筋が悪寒にさいなまれて‥‥
――まさか、恋!?――
 そんなお馬鹿なことを思いつつ、宗太郎は、再びリエルと声をかけるチャンスを窺っていた。

「楽しんでいるか? 疲れているならアイスでも食べるか?」
 真琴たちとはしゃぎ疲れ、暫し休息をとベンチへ移動したノーラにケルベロスは声をかける。あっちで売ってたんだと、そっと差し出されたソフトクリームと、3段重ねのアイス。どちらがいいか問われると、そっとソフトクリームを受け取りありがとうと、笑顔で返した。
 その笑顔に、思わず帽子を深く被り、こういう切り口しか出来ない自分にケルベロスはそっとため息をついた。

 大胆にこの日のために購入した黒ビキニでアヤは朋とともにプールサイドに座っていた。そっと足をお湯に絡ませ、水しぶきを上げる。スーっと、気持ちよさが出て、にんまりと微笑むと、アヤはおもむろにお湯の中に入り、
「えいっ!」
 ゆっくり気分を味わう朋目掛けお湯をかけ出した。
「アヤ!?」
 そんなアヤの行動に驚くも、彼女の目が悪戯に輝いてるのを見て自らもお湯へと飛び込む。
 そして、ふたりは回りを気にせず、互いの世界に入りお湯の掛け合いを始めたのだった。
 そんな二人を和やかに見つつ、自分の露出度の高さに遠慮をした飯塚・聖菜(gb0289)はこっそり片隅で手足を伸ばしていた。そんなに遠慮は必要ないのはわかっているものの、これでも少しは気になる様子で‥‥
 そんな風にゆったり浸かり組もあちこちにちらほら見られる。そんな中美環 響(gb2863)も浸かり組であった事は間違いないであろう。ハート(gb4509)は一人、ゆったりとそんな様子をプールサイドの椅子から眺めているだけに過ぎなかった。


「ご一緒しませんかっ!」
 朧が1人、ゆったりと浸かるようにとプールに入ってたときだ。海がビーチボールを片手に大きな声で叫んできた。そんな声に驚きつつも、柔らかく微笑みこくりと頷く。
「わ、わっ! そしたら一緒に遊びましょうよ!」
 笑顔で腕を掴むと、そのまま他のメンバーのところへと引っ張っていく。
「あ、危ないですよ?」
 朧は驚きつつも、ほんのりと嬉しそうに笑っていた。まるで、憧れていた学生の1人になったようだなっと、誘われるままに輪に入りながら。

「エル君、その背中‥‥」
 一遊び終えた後、澄野はエルの背中に気付く。なんだろうと思って他の者も覗きみると、そこには鎖を引きちぎっている翼の生えた黒い犬が描かれていたのだ。
「これ? えーと、趣味? あ、ちなみに狼じゃなくて犬ね♪」
 微笑みと共に告げられるも、その白い肌には大変不釣合いのように一見見えた。しかし、
「おお、カッコイイな!」
 バンとその背中を叩きながら称賛をおくる邪気の無いリュウセイに一同も笑みを浮かべたのだった。


「‥‥ケーキ君! 私にも今度ケーキを作ってくれませんか!」
 宗太郎は、もう後がないとばかりに叫んでいた。彼の思いはただひとつ、リエル曹長のケーキを、ケーキを、ノーラだけじゃなく自分も食べてみたいということだけだったのだ。リエルは横目でそんな宗太郎を見ると、すっと足を動かした。その途端大きな水しぶきが舞い上がる。
「がふっ!?」
 大きく息を吸い込んで水が入ってしまったのであろう、宗太郎は水を吐き出すものの、それを視界の隅にとどめ、大きく息を吐いたのであった。


◆1日目・夜◆

 一人ポーカーに興じるUNKNOWN。次の手を考えるように、そっと煙草を咥える。そこにやってきたのはロジーに連れられたノーラだ。二人はすっかり意気が合ったらしく、ロジーのからかいに、ノーラは頬を膨らましながらも楽しそうに歩いてくる。マクシミリアン(ga2943)もまた、カジノに興じていた一人であるが、普段見につけなれないタイをし、ブラック・ジャックに夢中になっていた。
「ここでダブルダウンするって男前じゃない? ‥‥そしてバスト‥‥。散り様もまた清々しいなあ、俺ってば」
 手元にあるチップが、彼が勝ち進んでいることを物語っている。彼もまた、やってきたノーラたちに気付くと、軽く手を上げ挨拶をし、再び勝負の世界へと舞い戻っていった。
 同じくカジノで楽しむハートは自らの容貌にて様々な視線を集めている。主にバニーたちが集中しているらしく、ほんのりと幸せ気分に浸りつつ、ルーレットで勝負をし、勝ったり負けたりを繰り返していた。
 傍に来たノーラを見咎め、少し怪訝な顔をしたUNKNOWNは自分のテーブルをロジーに預け、そっと席を立った。行った先は、カジノの横にあるブティック。ノーラと連れ立った彼は、店員に一言言うと、軽く店内を見回し一着のドレスを渡し着るように促した。少し困惑しながら言われるままに着替え現れると、素早くノーラの髪を結い上げる。
「――ギャンブルは色気をださんとな」
 そっと囁き、再びロジーに彼女を渡すと、「それにしてもドレス姿のノーラ‥‥可愛らしいですわね〜」そういって飛びつかれた。そんな様子を横目に、再び目の前の勝負へと興じ始めた。
 違う卓で同じくポーカーに興じていたのは美環である。にっこりとカードを配してるものの、手元を見ると、どうやらかなりの負け越しのようで‥‥細々といった感じが垣間見えていた。
 再び現れたノーラを手招きで呼び寄せると、
「僕がお教えしてあげますよ」
 そう、席へと招きポーカーのコツを教え始める。まぁ、負け越しているものの説明など、はっきりいって信用無いものなのだが、ノーラはニコニコと説明を聞き興じていた。
「さて、ここで全財産を賭けて勝負に‥‥」
 そう言った美環は、自分に配られたカードを見て、小さくガッツポーズを取った。このカードなら! そんな思いが全身を駆け巡る。なんと言うチャンスなのだろうと、
「真の勝負師は自分で勝ち負けのコントロールができ、絶対に負けられない勝負では、絶対に負けないのです!」
 その場に出したのは、ロイヤルストレートフラッシュ。
 今までの負けを全部取り返すかの如く、舞い戻ってくるチップたち。
「勝利の女神は、僕にはついていますからね」
 そう美環に見つめられ、ノーラはわけもわからずに微笑みを返していた。

 そして、人知れず潜り込もうとしていた21歳未満の宇佐美 唯梨(gb4336)。彼女はカジノ目的で参加したらしいのだが、生憎ここは年齢制限が厳しい場所。
「せ、せめてお客じゃなく!」
 その言葉に雰囲気だけだぞと了承してくれたのは、貸し切っているからだったのだろう。彼女自身のバニー姿も有り、見習と称してゲームは無しの雑用手伝い。
 お客で来た筈が、すっかり雑用係として働くことになってしまったようだ。



 最初に疲れすぎたのだろう。カンパネラ御一行様の部屋は夜も楽しもうと集まったのはいいが、昼間プールにてはしゃぎすぎた為か、まぶたとまぶたが仲良くなっていた。そんな彼女達の様子を見つつ、朧は一人みなの洗濯物や、広がった衣類などを片付ける。思いもかけない誘いにより何やら当初の予定とは異なった行動となっているものの、賑やかさが、とても嬉しかった。


「愛輝君‥‥」
 そっと自分の枕を抱え、篠森は愛輝の部屋を訪ねていた。扉の前で、緊張しながら待ってみる。昼間、強く頭を打ったから‥‥それが心配で、そう自分に言い聞かせながら枕を胸に抱いて。
「篠森さん‥‥」
 扉を開けた愛輝は、そんな姿の篠森を見て、可愛いと感じた。静かに招き入れると、怪我の具合はどう? っと、心配そうに撫で上げてくる。大丈夫だと言っても、心配だとの一点張り。
「それでしたら‥‥」
――僕の側に居てくれますか?――
 そっと囁いてみると、こくんと頷くのを見て安心する。そっと肩を抱くと、二人は寄り添い‥‥
「‥‥一緒に、寝てもいい?」
 そっと共に、手を繋いでいた。
 疲れ果てていたのもあり、幸せの中、互いに眠りついたようだった。
 不意に目覚めると、篠森は隣の愛輝の頭を優しく撫で上げる。どうやら、熱は引いたようだ。そんな事にほっとして、額に恥ずかしながらキスを落とした。



◆2日目・昼◆

「そういえば、友達がどうとか言ってたけど‥‥どうなったんだ?」
 朝からデパートへと出かけていた鷹代は、考えてみたらずっと俺と一緒にいるなぁと、思いつつそっと隣にいるアヤに尋ねてみる。
「あ。ふふっ、彼氏さんかなっ?」
 そんな声に気付き二人振り返ると、
「あ、海ちゃん!」
 どうやらアヤの友人らしい。他にも悠季や朧、エルに澄野、リュウセイ、九郎といった団体で行動していたらしい。暫し談笑をすると、それじゃっと、別れの手を振る。
 向こうもお土産を購入に来たらしい。挨拶は済ませたとばかりに、鷹代の腕を取り、気になった店へと連れ立つ。
「お、おい?」
「ふふ、朋の洋服も見るんだよ?」
 そんなアヤの様子に、そっと頭に財布の中身を浮かべる。大丈夫、今日は一杯入れてきたはずだと思いながら。
 ふと足が止まり、気もそぞろに歩いてたため、少しつんのめる。
「‥‥どうした?」
 止まった先には、可愛らしいアクセサリーショップが。そこには小さく光る、蒼い石の入ったペアリングが目に着いた。
 そっと鷹代はアヤの肩に手を置くと、
「あれに‥‥しよっか」
 そう囁いた。その言葉に、アヤは嬉しそうに目を細め頷いたのだった。

「お母さんに、いいのないかなぁ〜」
 そんな風に店先を眺めていると澄野もそっといいものが無いかと見繕い始める。
「ん〜、こんなのどうだってばよ」
 俺も探してあげるとばかりの九郎が、そっと持ってきたのはお守りにもなりそうな、幸せのシンボル、クローバーのキーホルダー。海は嬉しそうに目を細めると、早速買いに走る。
「き、気をつけなさいよ? 海〜」
 そんなお転婆な様子に、悠季は心配そうに声をかける。リュウセイもまた、転ばないように見つめるも、当の本人は気にもしていないようだった。
 一同から少し離れて、ボーっとしている様子のエルを朧は何処かでまた行方が分らなくならないかと心配していたのだった。

「おや?」
 公司は水無月たちに気付くと、まずその容姿に驚いた。魔諭邏は最初から女性だということは知っていたのだが‥‥
「え‥‥、神楽さんって女の子?!」
 美琴もその事実を知って驚愕のあまり大きな声を出してしまった。
「わたくし一度も”弟”とは申しませんでしたよ?」
 そんな二人の様子に魔諭邏が嬉しそうに話すのを見て、神楽は確信する。昨日の挨拶時に性別をあえて言わなかったのはこの反応を楽しむ為かと。
「全く気付きませんでしたよ。確かに魔諭邏さんが”姉”としか言ってませんね」
 公司のその言葉に、美影は少しため息をつく。
「お二人とも上手くやりましたね」
 二人に対し、改めてにっこりと微笑む美影を見ると、どうやら最初っから彼女は気付いてたらしい。聞けば――男女で腰の骨格に違いがありますから、動きも自ずと違ってくるんですよ――とのことだ。
「胸のサイズは勝ってるのに、なんか負けた気がする」
 ちょっと自分の胸元を見てがっかりする美琴。そんな彼女を少し視界の隅に納めつつ、神楽はこの人物達にそっと視線を走らせた。
「姉さんも僕と好みは同じか‥‥(既婚者の上にライバル、いや同類が他にもいるのか)」
 小さく囁いたその言葉は、公司の下には届かなかった。しかし、どうやら美琴と美影には届いたらしく、
「あらら、美琴だけでなく‥‥。人気者ですね、公司さん♪」
 そういって公司の腕を美影は絡めとっていた。そんな強気な発言は、さすがに妻の座は自分のものだと確信しているからであろうものだった。

 スパの一部では、マッサージルームが設けてあった。そこを利用していたのはUNKNOWN。そっとマッサージをしていてくれた女性の腕を掴むと、自らが横になっていたベットへと身体を押し倒す。悪戯な微笑のまま、驚く彼女へとキスを落とし、ご馳走様とばかりに、羽織っていたローブを置いて去った。どこへ行ったのかと思うと、自らの医学書を片手にスパサイドへ。空いた椅子を見つけると、そこで静かに暫しの休息を取ろうと横たわっていた。

 午後にはセシリアと真琴はデパートに来ていた。はしゃぐ真琴に引きつられ、セシリアも目に止まった物の前だと動かなくなる。見つけたのは、大変奇抜な置物だ。そんなセシリアを見て、真琴は共通の友人を思い浮かべる。確かに、彼女であればコレを大変喜んだろうと。あのセンスは‥‥ある意味強烈であるかも? そんな事を思いながら、可愛いアクセサリーを探しに、二人はまた歩き回ったのだった。




◆2日目・夜◆


 宗太郎はBARに入るとノーラを見つけ、声をかけてきた。
「‥‥良いご友人を、お持ちですね」
 きょとんと首を傾げて見せると、端で飲んでるリエルの方へと視線を走らせるのを見て、理解する。どうやら、宗太郎は彼に色々と‥‥なるほど、彼が疲れて見えるのは気のせいではないようである。そっとその場で会釈をし、彼は果敢にも再びリエルへと挑んでいった。
「――ん? どうしたかね?」
 苦笑して見つめているノーラにUNKNOWNは微笑を返すと、嬉しそうに目を細めるのを見て軽く首にキスを落とした。瞬時に赤面するのを軽く笑い、マスターにカクテルを見繕ってくれ、と注文を入れる。
 差し出されたのはいつの間にかバーテンダーへと姿を変えたケルベロスが作った彼女の名前のカクテルだった。
「口どけまろやかなヨーグルトの甘味とオレンジジュースの酸味があわさったモノだ。俺にとってノーラはこんな感じだな」
 そんな言葉に思わずきょとりとするも、ノーラは嬉しそうにそのカクテルを受け取った。
 そんな横で、UNKNOWNは2杯目のウィスキーをストレートで飲み干す。
 真琴もお勧めをマスターに頼むと、綺麗な色をしたカクテルを差し出された。きゅっと飲むと、口当たりが爽やかで、ほんのり甘いのが広がる。
 会話は弾む。それは、昨日や今日のことであったり、またはこれまでのことであったり。マクシミリアンは端で一人飲む飯塚に、
「よう、飲んでるかい? なかなか洒落たBARじゃないか? まあ乾杯といこうや」と、席を一緒にし暫しの歓談を楽しみながら、
「キルシュをいだだけるかな? ああロックで」
 そしてノーラは隣でビールを飲むロジーや真琴とも会話が弾み、そんな彼女達を眺めているのもまた笑みが浮かんでくる。大人たちのBARは暫し別の空気を作りつつ、何よりも心地よい疲れと共に喉を潤していった。

「コイバナしよう!」
 そういきり立って話し出したのは、興味津々の年頃の海だ。ふふっと、かすかに笑ってみせる悠季はなにやらすでにいるものの余裕をかもし出している。
「え、何か捏造するべきですか?」
 ふんわりとしていた澄野にはどうやらまだまだなご様子で、自分の経験がないから何か話を作ろうとまで考え始めていた。
「ねぇねぇ。朧さんは誰かいないの?」
 無邪気に聞いてくる海に朧はそっと淋しげに微笑を返す。何かを感じ取ったのか、悠季は仕方ないわねぇといった感じで自らの話を始めだした。
「あたしは、すごいわよ?」
 彼女が語りだしたのは、まだ女学校に通っていたときの話だ。どうやら、選り取りの勧誘、そして百合まで発展しそうな熱烈な視線を常に浴びていたらしい彼女は、それでも壁の華だったときもあるのよと、優しく微笑んだ。
「まぁ、今は最高の相手がいるんだけれどもね」
 そうやって惚気も忘れないところはさすがである。
「そういう、海ちゃんはどうなの?」
 一番人の話を聞いてくる海に、澄野もどうなのかが興味を持った。
「え、あたし?」
 そう、聞き出そうとしたときだ。
「おっ邪魔するぞ――?」
 リュウセイと九郎が手に色々な物を持って参上したのだ。
「あ、今は駄目なのっ!」
 そう言って押し返す一同に、リュウセイは。
「ん? コイバナか!? 誰が誰を好きなんだ!?」
 にやりと浅黒い肌に歯を光らせ聞き込もうとしてくる。
「女の子の特権なんですっ!」
 そういって海が全力で二人を追い出すと、三人の視線を浴びる。そんな展開に何故だか心が落ち着かなくなり、問い詰めもされていないのに口走ってしまったのは、彼女のいいところなのか、それとも‥‥
「わわ、リュウセイさんは違いますっ! 全然、そういうんじゃなくて!」
 まだまだ、成長途中の興味津々のお年頃のようであった。


「遊び疲れたかな? それはいい事だ」
 いつもなら‥‥早々に酔いが回らない彼女もはしゃぎ疲れたのだろう、そっと肩に凭れ掛かってきたのをそのままに、優しく頭をなでてやる。
――私はこれで―― そう言ってくすりと目配せをしつつロジーは部屋に待つセシリアのところへと帰っていく。どうやら、お荷物は任されたようだ。


「デパートでの戦果は如何でして?」
 部屋に戻ったロジーはセシリアと二人ワインを片手に語らっていた。セシリアが見てきたというデパートの状況を聞きつつ、買ってきた物の説明をしてもらう。
「ねぇ、セシリア‥‥『特別』って何でしょうね」
 ちょっと、淡く微笑みながらロジーは唐突に話し出す。セシリアはそんなロジーを見つめていた。
「セシリアもあたしにとって特別。でも少し違う『特別』も最近知りましたわ‥‥」
 『特別』それがロジーにとってなんなのだろうと、セシリアは少し考えていた。そういえば、彼女はクリスマスの時も不思議な行動をしていたと、そんな事を思いつつ。
「‥‥私には、良く、分らないです‥‥」
 自分にも、いるかもしれない。だけれどもまだ、分らない、と思いつつ。ワインを片手に、彼女の語る特別について、耳を傾けていたのだ。


「‥‥自分で飯作らなくていいって‥‥楽だなぁ‥‥」
 思わずしみじみと呟いた言葉にアヤが笑みを零す。そっと買ってきたお酒を――朋用なの――といって差し出す彼女が、可愛かった。
「あ、あのね?」
 そう言って差し出されたのはジッポライター。どうやらお年玉代わりというのだが朋は喫煙をしていない。不思議そうに見つめ返すと、――持っていたら、役に立ちそうだから――そんな彼女の気遣いに嬉しくなる。
「そうそう、酒飲んでもいいって言ったけど程々にな?」
 ここではいいけど、そういってアヤの様子を見るも、鷹代は何だか少し顔を赤らめているアヤの顔にドキリと胸が高鳴った。そっと抱き寄せると、閉じた瞼の上に、そっと‥‥


「寝れない、な」
 ケルベロスは、一人外へ出ると懐にしまっていたハーモニカを取り出した。入り口の側にあった、岩に腰掛けるとそっとメロディーを奏で出す。
 上ずった気持ちを押しとどめるように、静かに、静かに‥‥
 動き始めた感情が、暴走しないようにと念じながら。

 一人静かに部屋から窓を見上げていたエルは何やらこの旅行でおきた出来事をぼんやりと考えていた。そっと首を覆っている黒革に手を当てる。目が少し、真剣な色を醸し出すも、そっと閉じる。窓辺にそっと身を預ける様に、一人静かに‥‥

 再びウィスキーを片手に、そしてそっと耳元に囁くように歌を口ずさむと、僅かに身じろぎつつ、どうやら意識は夢の中へ。
 他の者も、自分の限界量へと達したのだろうか、姿は見えない。そっと優しく抱え上げると、UNKNOWNもまたBARを去ることにした。


◆3日目・朝◆

「ほえ?」
 緩やかな暖かい光が眩しくって、そっと目を開ける。そこは確かにホテルなのだが‥‥周りを見回してみると、自らの荷物は無い。
「!?」
 慌てて部屋を見回すにも誰もいなく、そっと昨夜と変わらないままの服に安心していた時、カバンの中の携帯が鳴り響いた。
 『ノーラさん‥‥そろそろ支度をしてくださいね』
 電話の主はリエルであった。慌てて寝ていたベッドから飛び起きると、急いで部屋を飛び出した。それでも気になる部屋番号を、そっと眼で確認、再び迷惑を掛けたのだと、心で謝罪をしつつ。なんとなく、心が痛んだ。

「充電、かんりょーっ! また明日っから元気に頑張るぞっ♪」
 明るく、元気に跳ね回る美崎。どうやら彼女は存分に楽しむことが出来たらしい。
 参加者が揃ってるかどうかを確認すると、その場に居なかったのはUNKNOWN一人。早朝に発ったらしい。バニー姿でカジノの雑用に紛れ込んでいた宇佐美も、何やら報酬を多めに授かったらしい。まぁ、下手にカジノで摩るよりもいい経験になったのだと、思いたい。
 リエルはそれらを確認すると、一人ため息をついていた。