タイトル:ダンボー仮面VS泥棒猫マスター:雨龍一

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/01/16 01:52

●オープニング本文


               年越し決戦!
          ダンボー仮面VS泥棒猫

「なによ‥‥この張り紙は」
 ノーラ・シャムシエルは事務所に有った一枚の紙を見て、怒りを覚えていた。
「なんで? なんでダンボーが先に名前来るわけ?」
 あぁ‥‥あなたの見ているところは違うのですね‥‥
 そんな様子で、スペイン戦線を終え、一段落して今はノーラの事務所に遊びに来ているのだが‥‥
「ねぇ、あなた少年預かってたんじゃなかったの?」
 ソファーで優雅に珈琲を飲んでいるエレーナ・シュミッツにノーラは詰め寄っていた。
「あぁ、あの黒髪耽美少年、カノン君の事ね? ふふ、可愛かったわよ?」
 彼女が現在預かっているとの話のカノン・ダンピール。軍だけの調査じゃわからないからと、所長の方にまで依頼がきていたのが不思議である。
 あの所長。一体何処まで顔が広いのか‥‥ノーラが知らない仕事‥‥一体何処まであるんだろう。
「‥‥あなた、いつの間に少年に走ったのよ‥‥」
 そういえばと、エレンが年上が好きだったことを思い出した。所属していた軍の上官など、好みだったのではないだろうか。
「あら? 私は走ってないわよ? ただ、かっこいい人なら誰でもいいし‥‥」
「くぅっ」
 あなたは違うでしょ? そんな風に言われているようで妙に痛い。
「‥‥相変わらず男に慣れてないのかしら?」
 その反応を見て、エレンはノーラの男性に対しての行動を思い出す。良く、過度に触られたり、誉められたりすると、パニック気味になることを。
「‥‥そんなこと、ないと思う‥‥」
 少し、気まずそうに視線を逸らしながら、ノーラはぼそっと呟いた。そんな様子を見ると、少しは変わってきているようである。
「ふーん‥‥」
 ちょっと悪戯気味に見ると、案の定ノーラは突っかかってくる。
「な、なによ‥‥」
「いえ、べっつにー?」
 根本的にこの娘、変わらないらしい。なんだろうか、同い年の癖に、妙に可愛げが有るのだ。
「うう、だから、少年はどうしたって言うのよ!」
 ノーラは自分が立場が悪くなったのに気付いたのだろう。慌てて話を切り返してくる。
「あぁ、カノン君はね‥‥ちょっと‥‥」
 そう言ってエレンは、少し気まずい笑みを浮かべたまま押し黙った。
 その姿に、ノーラはそっとエレンを包み込む。
「――聞かないわ。安心しなさいよ」
「――ありがとう」
 こういう時、ノーラは途端に優しくなる。見捨てられた子猫を見逃さないように、どんな些細なシグナルも、感じ取れるように。そっと全部を包み込み、安心させようとするのだ。
「――で、この紙なぁに?」
 話題を逸らしつつ、にっこりと本題を持ってくるのは流石だ。裏の仕事を任されないにしても、表の仕事はこの子でほとんど回る。ここの所長、ナットーが言っていたのを思い出す。
「――気付かなくていいのに」
「――嫌でも気付くわよ、ばぁか」
 さすがにこれをごまかすには、堂々と置きすぎていたことに、エレンは苦笑を漏らした。ノーラも、騙すんならうまくやってよとばかりに、額にこつんと拳を落とす。
「えっとね‥‥ちょっとお願いがあったんだけど‥‥」
 エレンが説明しようとしたその時だった。

「依頼だ、諦めろノーラ君」
 突如現れたのは、この事務所の主。ナットー・ウィリアムズ。何をしているんだか、良くわからないぼさぼさな容姿で咥えタバコのまま歩いてくる。 
「しょ、所長!? いたんですか!?」
「おいおい、俺がいないって、いつ言ったんだ?」
「だ、だって‥‥いつもフラフラいないから」
 ノーラの慌てぶりを見て、ナットーは呆れずにいられなかった。
「ばかもんっ! 来客のときは大抵いるだろう」
 ぱこーんといい音が響き渡る。手に持っていた書類がノーラの頭へと直撃したのだ。
「むぅ‥‥叩きましたね!? その一撃で脳細胞が一体何万個死んだと!」
「寝言は寝ていえ。君の細胞、いくつ死んでも変わらないだろう」
 食ってかかるように文句が言えるほど、場馴れしてきているノーラに、ナットーは呆れつつ一言下す。
「そんなことないです! ‥‥で、依頼って何やるんですか?」
「うむ、それなんだがな?」
 むぅっとしつつも、ここは仕事と。割り切りが早いのが取り柄というほどの、切り替えの速さに、側で見ていたエレンは笑いを噛み殺すのに一苦労した。
 ノーラが仕事モードに切り替わったをいいことに、ナットーはエレンのほうに、詳細を語るのを促す。
「ふふふ、ごめんなさいね? ノーラ」
 そう言って微笑むエレンが事の詳細をノーラに説明始めると、見る見るうちにノーラの顔色が変わってくる。
 それを、さも楽しそうに眺めるエレン。
 まったく持って、食えない女である。


「‥‥何で厄介物を持ってくるのよ」
 ようやく説明が終わる頃、ずっと下を見つめていたノーラが、震える声で呟いた。
「だって‥‥他に都合よく動いてる人、いないじゃない?」
 当然でしょ? と、ばかりに笑うエレンにノーラは詰めより、
「くぅ! ば、ばかぁ!!」
 がうっとばかりにクッションを投げてくる。
「馬鹿といった方が、馬鹿なのよ‥‥泥棒猫さん」
 やすやすとそれを受け取り、投げ返すエレン。それは、受け止め損ねたノーラの顔にボスッと当り‥‥
「ぐがぁぁぁ!! ダンボー娘がっ!」
 悔し紛れに叫んでみるのだった。

●参加者一覧

水鏡・シメイ(ga0523
21歳・♂・SN
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN
Cerberus(ga8178
29歳・♂・AA
百地・悠季(ga8270
20歳・♀・ER
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
八葉 白雪(gb2228
20歳・♀・AA
榊 菫(gb4318
24歳・♀・FC

●リプレイ本文

 百地・悠季(ga8270)は取り出したスケジュール帖に目を通すと、ため息をついた。
 そっと隣で準備をしている女性へと目を向けると、これから起きることを思い浮かべる。
 ある意味災難であろう、これからについて。
――まぁ、自分が存分に楽しませていただくけど。
 そう気持ちを切り替えると、とても悪い笑みを浮かべたのだった。


<新年会へと>

 今宵は新年会であるから、そういう言葉に騙されてノーラはエレンと共に少し外れた界隈に来ていた。そこで待ち受けているのが、今回の依頼。あの、エレンが持ち込んだ、一枚のチラシが発端であるのだが。
 そんな二人を入り口で待ち構えているものがいた。UNKNOWN(ga4276)だ。どうやら彼は、この依頼に関る人物らしいのだが、いつもの彼らしくなく、なにやら心配そうに見つめてくる。
「2人とも気をつけて、な」
 そういって、いつもの挨拶のハグとキスを贈る。
 控え室の前には百地と榊 菫(gb4318)が控えていた。それぞれ本日のノーラとエレンのマネージメントを担当している。
 UNKNOWNは2人が控え室へと消えていったのをみると、帽子の縁を少し下げ、嬉しそうに企みの笑みを浮かべたのだった。



<開幕:傭兵達の集い>

「さて、ダンボー仮面VS泥棒猫」
 そう言って、あたりを見回す。会場の、ステージの周りに集まっているのはどうやら傭兵達らしい。そっと片目を瞑り、唇に人差し指で指し示しながら、こう聞き問う。
「見たいかね? 彼女達の色々、を」
 その言葉によって盛り上がる会場、どうやら‥‥最初から企まれていたらしい計画に、二人は乗せられたようである。
 会場の、ステージの上に掲げられていた段幕には、こう一言‥‥
『新春傭兵慰問ショー』と、書かれていたのは気のせいで無いだろう。


<第一勝負:巨大カルタ取り対決>


「第一の勝負、俺が取り仕切らせてもらおう」
 Cerberus(ga8178)がマイクを取ると、舞台に光が差した。
 床一面に広げられているのは、巨大カルタたちだ。様々なイラストと、大きく一文字ひらがなが書かれている。
「それでは、選手入場」
 両脇からそれぞれ女性を伴い、二人が入場して来た。
 衣装は、紋付はかまである。どうやら、この姿での勝負‥となるようである。
「両者、準備はいいか? ならばはじめるぞ」
――日本通のエレンが有利かもしれないが――
 そんなことを思いつつ、Cerberusは読み札を読み上げていく。

「ふふ、さすがに私が有利ね」
 エレンの漏らした呟きにノーラはキーっと、怒り出す。
「な、なによ! 少しは知っているからって!!」
「ふふ、冷静になれない方が、ま・け・よ♪」
 茶目っ気たっぷりで微笑みながら、エレンはノーラを押しのけ――まぁ、さすがに軍人と探偵じゃ体力的に勝負あったりなのだが――次々と読み上げられる札を取っていった。
 ノーラは、一応取ろうとするものの、他の札に躓いたり、着慣れないはかまに振り回され、どうもうまくいかない。

「一体何をやっているのか‥‥」
 段々と着崩れていく着物の襟を正そうとするノーラを苦笑しながら見つめつつ、Cerberusは「この勝負、あったり」そう、確信していた。

<第二勝負:クイズ対決>

「続いては、クイズ対決! 担当は私、水鏡が務めさせて頂きます」
 そう言って現れたのは、台とセットになって現れた水鏡・シメイ(ga0523)だった。どうやら、これが今回のステージらしい。
 水鏡の手には、なにやらスイッチらしきものが見られるが、まぁ‥ロクなことが無いのかもしれない。
 下に敷かれたマットは、何か光沢が見えるが‥‥それも、気にしないでおこう。

 そして、現れたのは‥‥男性諸君が喜ぶような、新春番組ならではの格好である。そう、水着だ。エレンは淡いエメラルドグリーンのパレオつきワンピースを、ノーラは紅いビキニを着用だ。
「それでは、題一門!」
 クイズが始まった。答えていくごとに、明るめの音楽がなりひびく。
 二人は、中々スムーズに答えるもので、質問を繰り出している水鏡は何やら面白くなさそうである。そして‥‥
「続いての問題です――」
 その問題が出たときだった。

ブー

 激しく鳴り響くブザー音。
「え!? え!?」
 戸惑っているのは、ノーラだ。
「ふふっ‥‥残念でしたね、ノーラさん」
 水鏡の顔が、怪しく煌めいた。
 そして、押されるスイッチに‥‥
「きゃぁ!!??」

 ノーラの、足元が傾きだした。
「いやいや、ここまで持たれてしまいましたからね。一気に行ってしまいましょうか」
 その言葉通り、急激に下がっていく足元に、ノーラはバランスを崩す。滑り、落ちていく‥‥

 軽い衝撃音の後、ノーラは、下に敷かれたマットに落ちていた。クッション作用が働いたらしい。
 しかし‥‥
「な、なにこれ!? くっついてくるぅ〜〜!!」
 起き上がろうと、腕に力を入れると、ぬちゃっと変な音が聞こえる。ぬるっとした感触に、嫌悪が溢れ出る。
「きゃぁ!?」
 立ち上がろうと力を入れると、ぬるっと滑って、胸から落ちてしまった。痛いと思いつつ、起き上がろうとしたとき‥‥
 水着の布が‥‥

「○×△☆!?」
「ノーラ!?」
 エレンが高台の上で、心配そうに見ていると黒い影に覆われる。どうやら、すんでのところで救われたらしい。黒いコートが、覆い被さっていた。
 ほっとしたのも束の間、今度は何故かエレンの方の高台の角度が、徐々に変わっていっていた。
「え!? 水鏡さん!?」
 横へとしっかりとしがみつきながら、慌てて司会者の方を睨みつけると、水鏡は満足そうな黒い笑みを浮かべていた。


<第三勝負:コーディネート対決>

「さて、私の出番‥‥かな?」
 そう言って現れたのは、帽子を深く被ったUNKNOWN。
「続いての勝負は、コーディネート対決、だ」
 続いて会場に現れたのは、数々の服と試着室代わりのワンボックスカーテン。
 それぞれこのたびマネージャーを務める百地と榊がサイドに立ち、またしても水鏡ご推薦水着を着用させられたノーラとエレンが立ち並ぶ。

 それでは‥‥と、お題をあげ、それぞれが会場においてある服を組み合わせて着ていくのだが‥‥

 UNKNOWNはそっと手持ちのカメラ【OR】Reica M3を片手に、着替え出てきた彼女達に声を掛ける。

「まずは、ポーズだ」
 そう言って、パシャリ。
「もう少し笑顔で」
 また、パシャリ。
「少しボタンを外して」
 はーいって‥‥いあ、やりすぎ、パシャリ。
「うむ、いい笑顔だ」
 明るい色で、パシャリ。
「バニーな君達も見たいな、可愛いだろうからね」
 コスプレですか、パシャリ。
「よし、もう少し裾をあげて」
 ミニスカートではやめてね、パシャリ。
「いいじゃないか、惚れてしまいそうだ」
 ‥‥パシャリ、と。

 次々と写真に収めていったのは、実に様々な衣装だった。シックなスーツからロリータ、そしてコスプレまで、中には際どいのも収めていた気がするが、気のせいであろう。
 満足そうに、カメラをしまいこむと会場に向け、一言。
「さて、観客の投票により決めよう」
 会場から、「写真は発売されるのか!」との問合せに対し、
「――私の趣味、だ」

 また秘蔵コレクションが増えたようだった‥‥


<第四勝負:料理対決(ふぐ料理は駄目です)>

「4番勝負はお料理対決、品目は肉じゃがです」
 ここまでの色物とは打って変わり、司会を勤めるのは着物姿が綺麗な白雪(gb2228)だった。
 しかし、水鏡の戦略により、ここの勝負でも2人は水着を着せられていた。その上に、エプロン姿である。
 御料理番組、宜しくとの軽やかな音楽。そして、並びだされた食材と、運び込まれたキッチン。何故かこっそり3台あるのは、気のせいであろう。
 まずは材料選びからと、肉じゃがの解説をし、項目ごとに材料を選ばせていく。
 項目は全部で5つ。お肉・野菜・出汁・お酒・調味料・隠し味。それぞれ選び出し、作り上げていく。

 まずは、そこからの採点だった。
 エレンが選んだのは、牛肉、じゃが芋、人参、玉葱、カツオだし、昆布だし、日本酒、醤油+みりん。流石は日本通である。和食もしっかりと押さえていた。
 ノーラは、というと‥‥
 豚肉、じゃが芋、人参、玉葱‥‥までは良かった。しかし‥‥
 続いて選んだのはワイン、水、カレー粉、チョコレート‥‥見事カレーの材料であった。

 漂ってくる、醤油とカレーの匂い。
 互いに料理の手際は中々のものであるが、残念。選択肢の時点でマイナス要因が‥‥

 そんな時であった。
 ふらりと現れ、3つ目のキッチンへと着くものが。UNKNOWNだ。身に纏ったひよこエプロンが妙に可愛い。
 何を考えたのか、素晴らしい手際の良さ、そして綺麗な包丁捌きと共に肉じゃがが完成されていく。
 二人が、ようやっとできましたという時に、綺麗に盛り付けられた器をもって審査員へ。
 審査員席に居たのは水鏡とヨグ=ニグラス(gb1949)だった。その二人に、
「はい、あーん」
 そんなことを言いつつ、口にまで運び入れる。
「! んまいのです!」
 頬を赤らめ、満足げなヨグの頭を一撫ですると、二人の料理を一口ずつ味見し、
「ふっ‥‥まだまだ修行が必要だな、2人とも」
 そう言って、いつのまにか舞台の上から消えていた。

 ごほんっと、小さく咳払いした白雪は、にこりと笑って、再び勝負を始める。
「お二人にちゃんと食べてもらって下さいね」
 その言葉に、我に帰った2人は、審査員席へと行き、口元へと料理を運んでいく。どうやら今回は、年下相手にどうやって食べさせてあげるか‥‥それも審査のポイントらしいのだ。

「お味は如何ですか?」
 二人の審査員が両方の料理を口にしたのを確認すると、白雪はドキドキしながら結果を尋ねる。
 二人はそっと互いを見合わせると、
「勝者、UNKNOWN!」
 今回の勝負、どうやら第三者の出現によって、狂わされた結果となってしまったようだった。

<第五勝負:水上ノーロープデスマッチ>

 それは、会場がいきなり変わっていた。
 現れたのは、何処かの屋内プール。そして、そのプールに浮かぶのはウレタン製の島だった。5メートル四方の四角い島から、左右に幅1メートルの道が伸びている。どうやら、それが選手入場の花道らしい。現れたのはまたまた水鏡のご推薦水着からチョイスされたビキニなのだが‥‥問題は他に見つけられた。なんと猫耳帽子、猫尻尾、肉球グローブ、肉球ブーツに肘・膝当てつきで現れたのだ。

「猫耳猫尻尾がキタですよーっ! あとでカノン兄様に写真送ってあげよ♪」
 嬉しそうに声を上げるヨグ。ひゃっほー♪っと、眼を輝かせる。

 そして、ここで繰り広げられるのが‥‥

「新春五番勝負、最後の対決は水上ノーロープデスマッチだ! これで心置きなくキャットファイトしてくれ!」

 そう言い放ったのは、この勝負の司会者辰巳 空(ga4698)だ。
「ゴー・ファイト!」
 その掛け声と共に、にゃんにゃんよろしく状態で、リング上にあったウレタンの柱を掴み、2人は戦いを開始した。
 猫グローブのため、中々安定しないものの、尻尾を左右に揺らし、立ったり、しゃがんだり‥‥時にはバランス崩して倒れこんだところに圧し掛かってみたり、なんとも‥‥男性諸君がご馳走様な展開が繰り広げられていく。
 30分1本勝負とのこともあり、二人の目は最初から真剣である。

「おおっと、ここでエレン選手がノーラ選手の上に!」
 司会者の言葉通り、倒れこんだノーラに、エレンが上へと覆いかぶさる。むぎゅっと、腕を持ち上げられ、海老反り型にノーラはフォールドされる。さすが、普通の探偵とは違い、非能力者でも軍人である。しっかりと腕を取ると、自らの腕で挟み込む形で、そして‥‥足は、膝に引っ掛けるような状態でノーラを押さえ込んだ。

「ぎ、ギブ‥‥」
 あまりにも綺麗に押さえ込まれたため、ノーラはギブアップを訴える。そして、終了のゴングが鳴った。

「勝者、エレーナ・シュミッツ!」

 この宣言と共に、繰り広げられてきた戦いが、幕を閉じたのだった。


<慰労会>

「な、なによこれ!!」
 ノーラがまんまと騙されたのを理解したのは、打ち上げと称した慰労会であった。
 数々の料理が、このたびの企画に賛同してくれた謎のスポンサーより届けられた中、マネージャーとして裏方に専念していた百地がどうやらカメラを回していたらしい先程の勝負をテレビで流したのだ。
「ふふ。いい出来じゃない。中々綺麗に取れているわ」
 満足毛にジュースを飲む百地たちに、ノーラはこれが企まれた事を理解したのだ。
「く、くやしいぃ!!」
「まぁまぁ、ケーキでも」

 苦笑しつつCerberusがノーラにレアチーズケーキを取ってきてやる。エレンにはと、ショートケーキを取ってやるのも忘れない。本来なら自腹を切ってでも‥‥と思ったのだが、流石にスポンサーが大きいと齎されたものも、多大な量だった。

「ふふ、もう一勝負いってみる?」
 煽るようにノーラへと声をかける百地。どうやらまだ企みがあるらしい。
 むぅっと膨れる様に今までかかわってきた8人+1人を睨みあげると、
「もう、絶対にやらないもんっ!」
 ノーラの声が、部屋の中いっぱいに木霊したのだった。

 送ろうか、とのCerberusの言葉にノーラはまだすることがあるからと断りを入れた。せめて会場の外までは見送るわと、その言葉に頷き暫し会話をしながら。
「おやすみ、ノーラ。また、会うときまで」
 Cerberusはそういうと、熱い視線でノーラを見つめた。
 きょとりとするノーラにそっと、ハグすると、頭を撫で上げ、額に落す。
 それは、お別れの挨拶。
 ふわっと、その挨拶に笑みを浮かべられると、それによって更に深く被りなおし、ほんの少し幸せになりながら去っていくのだった。

 会場に残ったのは、特に何も無く。
 エレンとの勝敗結果を一人見つめる。完敗。まぁ、一つに関してはノーカウントとなったものの、惨敗だった。
 いくら企てられた事といえ、こんな自分が情けなく、そっと膝を抱える。
 そこにあった、手付かずのワインを呷り、呆然と外を眺めていると、雪が降ってきていた。



 夜もふけた頃。UNKNOWNはそっと窓辺でもたれかかっている彼女を抱き上げた。

 ふわりと浮かんだのは金の糸。
 軽やかに、彼は運んでいく。
 そっと寝具へと運び込むと優しく、優しく糸を撫で上げる。
 疲れ果てた金の糸をゆっくりと休めるように。
 落されたのは、優しい雨。
 そっと染み渡るように、降らされていく。
 そして――



<夢の境にて>

「!!」
 慌ててみを起こすと、そこには見慣れた景色があった。
「ノーラ、さむーい」
「あ、ごめん!」
 隣には、昔からの友人が毛布を奪うように、包まさっている。
 空き瓶が散乱しているのが目に入った。あぁ、この友人と昨晩は飲み明かしたんだったと、昨夜の記憶が蘇る。
――夢?

 長い長い夜が今、明けようとしていた。