タイトル:捜査官ポールの決意マスター:雨龍一

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/01/01 03:46

●オープニング本文


 ここ最近起きていた謎めいた事件は、倉庫街の一件よりなりを潜めていた。
 あの時、傭兵達の手助けをノーラを通して受けたポールは無事、左遷を免れ今もまた捜査官としての仕事に身を注いでいた。
 きな臭い匂いが薄い中、彼は機として以前の三件の事件について、詳細を調べていた。
 あの、きな臭いウロボロスの刺青を思い出しながら。

 最初に見つけたあのバラバラ事件から、既に月日は3ヶ月を経過してた。集めた資料、参考人、事情聴取を取ったものの、この事件に関わろうとするのは何故かポールだけとなっており、他の者たちは遠巻きに見守っているのが現状である。

「はぁ、また人手不足なのか‥‥」
 この関連の事件だけではなかった。ここ最近どうも捜査官達自体が積極的に捜査に参加しない、そういう現象が起きているのだ。
 それは‥‥確か最初の怪奇殺人事件があったときから‥‥
「しかたない。俺だけじゃ駄目だからまた知恵でも借りるとするか」
 手に取った電話は、短縮ダイヤルによって相手先へと繋がる。
『はい』
「あ、俺、ポールだけど」
『‥‥ケーキならいらないわよ』
「な!? な、何があったんだ? ノーラ!」
『‥‥うるさいわねぇ。関係ないじゃない‥‥』
「ま、まて! お前の力が必要なんだよ!」
『‥‥どうせまだまだ駆け出しのひよっ子ですよーっだ。ふん。だれーも、あたしのことなんて‥‥』
「な、何があったか知らないが、とりあえず俺の手伝いを頼みたいんだ!」
『‥‥ケーキはいらないわよ』
「うっ‥‥しかたない‥‥。今回は別のもので‥‥」
『‥‥わかった。話を聞くわ‥‥』
「よし。今晩ナターシャの店に行く‥‥それまでに人を集めておいて欲しい」
『‥‥どんな人が御望みなのかしら?』
「‥‥潜入捜査だ」
『‥‥了解』

 電話が切れると、ポールは安堵のため息をついた。幼馴染のノーラの様子が気になるものの、現在頼れるのは彼女と、彼女の事務所の連中だけである。どうやら、自分の所属する警察署ではどうにもならないようである。
――何かが、裏で動いているようだ。
 仲間も期待できない今、この事件を暗礁に乗り上げさせない為、ポールは自らの足で捜査へと踏み込むことを決意したのだった。

●参加者一覧

ロジー・ビィ(ga1031
24歳・♀・AA
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
アンドレアス・ラーセン(ga6523
28歳・♂・ER
周防 誠(ga7131
28歳・♂・JG
シン・ブラウ・シュッツ(gb2155
23歳・♂・ER
八葉 白雪(gb2228
20歳・♀・AA
立浪 光佑(gb2422
14歳・♂・DF
零崎 弐識(gb4064
24歳・♂・FC

●リプレイ本文

<Strat>
「いらっしゃい‥‥奥に通しているわ」
 ポールがナターシャの店を訪れると、いつもと違いパンツ姿のノーラが出迎えていた。少し機嫌も悪いらしいが、取り合えずとばかりに店の奥へと案内される。
「よぉ」
 ビール片手に手を上げたのはアンドレアス・ラーセン(ga6523)。既にポールとは顔なじみになっている。他にも、以前に出会ったロジー・ビィ(ga1031)や、白雪(gb2228)、ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)に立浪 光佑(gb2422)、周防 誠(ga7131)が軽く会釈をしてくれた。顔を見回すと、初見は2人か‥‥と、考えているとノーラがポール用にビールを運び込む。そういえばここ、BARだったかと、それを受け取りつつ苦笑を漏らした。
 一人は白雪の横に座っているシン・ブラウ・シュッツ(gb2155)、どうやら研究について興味があるらしい。もう1人は赤髪の男、零崎 弐識(gb4064)。一見へらへらしてそうに見えるが、話を始めると目つきが変わっていた。
「ポールじゃなくてもすっきりしませんわ」
 そういって、ドーンと机を叩いたロジーに思わず苦笑してしまった。普段おっとりな彼女がここまで共感してくれるとは、正直思っていなかったのだ。アンドレアスも肩を組み、左遷が無くてよかったじゃないかと言ってくれる。
 依頼を通してではあるが――仲間――そんな言葉が思わず浮かぶほど温かく感じていた。
「それで、今回君たちに頼みたいことなんだが‥‥」
 改めてとばかりに切り出すと、ノーラがテーブルに資料を広げ始めた。それは、今まで関わってきた事件の関係者リストと、主な施設・団体についての詳細である。
「これが、今まで関わってきたところのリストです。これより、今までの事件を掘り下げていっていただきたいのです」
 ツンと少し冷たい感じで説明するノーラ。どうやら仕事モードに入っているらしい。その様子を窺いつつ、ポールは他の注意点を説明しだす。
「俺は生憎表に立てない。従って、連絡はノーラを通してくれ。この1週間、頼んだぜ」 そういうとグラスを掲げた。それが、開始の合図だった。

<Search1>
「‥‥久しぶりだな。忘れたとは言わせねぇ」
 面会の部屋に入った時、アスはガラス越しにダンっと軽く拳を打ち込んでいた。この男、第1の事件で捕まえた研究所主任。あの時の、舐めた面を思い出すと、今でも胸糞悪いものだ。
「随分コケにして下さいましたけど‥‥私情は挟みませんわ」
 ロジーも以前に苦い思いがあるのだろう。視線だけが笑っていなかった。

 アスとロジーが調べたのは事件における重要参考人、そしてオカルト関連の雑誌社だった。丹念に、そして細かく調べられるところは調べていく。主に行っていくのは事情聴取‥‥までは行かないにしても、相手の話を聞くことだった。
 雑誌・新聞に関してはその事件当時の物を探した‥‥どれも、中々鋭く突いているところがある。国柄だろうか、この類に対してはかなり辛辣な書き方をしているものがあった。
 先の主任を問い詰めたところ、事実として上がってきたのは仮面の男と常に連絡を取っていたこと。そして、現れたキメラ――蟷螂を模していたのだが――それに関しては、知らされていなかったことがわかった。
 最後の彼の言葉‥‥問い詰めてみたところで返ってきたのは乾いた笑いでしかなかった。2回目の事件について、重要参考人としてアポイントを取った重役は、酷い警備に囲まれ、面会自体は短時間しか許されなかった。
 アスも最初から短時間を予測してはいたものの、それもほんの数刻のみ。それでも、確かな手ごたえがそこには有った。

 ホアキンと立浪は第3の事件の拘束者を訪ねていた。現在拘置所にいるものの、俄然素性がわからないとのことだった。ただわかっていること、それは女だったという事のみ。
「こんにちは、俺の事は覚えているかな?」
 そう切り出すホアキンをガラス越しで見て、女は反応した。思わず、手が足を擦る。
「うん、なら大丈夫そうだね。‥‥そうだな、少し話を聞きたいんだ」
 にっこり笑うと次に見せたのは、鋭い視線だった。
「ここも安全とは言えないからね」

 ホアキンの鋭い指摘を入れつつの詰問に対し、立浪は少し砕けた感じで、少年らしく問い詰めていた。観点はあくまで質問系統で、でも、内容は徐々に深入りするものばかりである。
 女は最初よくわからない話しを始めたものの、その後は2人の問い詰めによって徐々に平時を取り戻してきたのか言動がしっかりしてきたいた。
 ホアキンは彼女を尋ねる前に看守に「薬物検査をしたか」と質問していた。その答えは「NO」。この詰問後、きっと検査が行われるであろう。その結果‥‥もしかしたら。そんなことも視野に入れつつ、彼女が齎してくれたものを増やしながら。
 立浪は軍の方にこっそり話をしていた。「この事件、キメラが関わっているから預かりを変えられないのか」とのことを。
 しかし、どうやらいつもだと預かりの変更は容易であるものの、どうやらこの国ではかなり難しいらしい。何かが、裏でうごめいている‥‥思わぬ情報が、得られたのかもしれなかった。

 白雪はこっそり第1の事件で重要だった施設、研究所へと潜入調査を行っていた。お掃除おばさんとして、堂々と内部に入り情報を収集。塵一つにおいても、鋭い視線が見逃さず、研究員たちの会話にも聞き耳を立てるのを忘れない。同じく清掃員として乗り込むシンも、各場所に様々な仕掛けを施すのを忘れなかった。特に彼が注目したのはトイレである。
「トイレでは皆無防備になりますから‥‥立って催している男性諸君から貴重な情報が入るかもしれませんよ」
 確かにその言葉は一理あるだろう。白雪があくまでもフロアを清掃するのにとどまっている間にも、シンのほうは意欲的に収集活動を行っていた。そして‥‥
 日によっては別の形でも彼は潜入を行っていた。時には電気や水道の整備士として、はたまた機材メーカーとしてである。それによって聞き出した要素はまさに飛んだ代物だったりするものであった。

 周防と零崎は第3の事件、倉庫街の方へと足を伸ばしていた。最初の二日間に当たってはこっそりとポールの状況を確かめつつ、そして倉庫街へと繋がる情報を待って‥‥
 周防は隠密潜行をうまく活用し、警察署へと介入。ポールにすら伝えず、こっそりと周辺の様子を探りいれる。その間に零崎は直接ポール自身へと情報を聞きに現れていた。普段赤く染めている髪を黒くし、なるべく目立つ行動を控えつつ。
 それは一見今までの事件のあらすじをなぞるようで‥‥しかしそれとも少し違った観点が返ってきていた。それを聞いた零崎は‥‥
「なるほど、市民の味方が聞いてあきれるぜ‥‥ひひひ、笑えねえよ」
 ついつい浮かべるニヤケタ表情、目だけが物語る不快感さ‥‥

<Information exchange>
 情報は、一日ごとに纏められていった。お互いに日の終わりでの交換、それが繰り返されるのは、ノーラが待っているナターシャのBAR。一つわかるごとに埋められていく。それはまさしくジグソーパズルのようであり、一枚の絵を完成させるのにどれほどの手腕が必要なのだろうか、それを考えさせられる。
 アスとロジー、ホアキンと立浪によりわかる人物関係、そしてその時にうごめいていた者の影。白雪、シンからは研究所にての研究内容とあの事件以降の研究所の動きが伝えられてくる。周防と零崎からは警察についての情報が、そして‥‥ポールの現状が改めて明らかになりつつあった。
「やはり彼は監視が付けられていましたね」
 周防がそう伝えると、辛そうに顔をしかめる。その付けていた者を調べ上げようにも‥‥どうも足が掴めなかった様だ。どうやら、かなり警察の方も油断できない‥‥それがわかったような気がする。


<Search2>
 捜査は、なお続いていた。
 尋ねる場所を変え、そして人を変え‥‥特に潜入捜査を行った二組はそれが大きく変動していた。
 白雪の研究所においての潜入調査は変わらない。ただ‥‥他のもの達によって寄せられた情報を元に、より詳しく調査をしていく。シンにいたっては姿を変え、この事件でしきりに名前が挙がっているS&G製薬へと潜入を試みていた。
「注意してし過ぎることはないでしょう。敵陣に潜入する依頼は何回かこなしてきましたから‥‥集中しながら周囲に気を配るやり方は身体に染みついています」
 最初は清掃員として‥‥そこを忘れず、そして目を鋭く光らせていた。

 一方警察から倉庫街へと場所を移した周防と零崎は、変装をして調査を開始していた。周防は社員を装い、何食わぬ顔で潜入を、零崎はバイトとしてあくまで雇われた形を取り潜入を果たしていた。事務所での捜査は前回行っていることもあり、周防にとってはスムーズに進んでいた。また、運転手として雇われた零崎は従業員の聞き込みと、現場周辺の調査を何食わぬ顔でこなしていた。

<One Week>

 そして、1週間が過ぎていった。
 長いようで、短い‥‥そんな時間だけが過ぎ行く中、集まった情報はかなりのものとなっている。それをノーラは端的に纏め上げていっていた。皆から持たらされるものを一つずつファイリングしていく。
 その結果浮き上がってきたものは‥‥

「最初に言えること。この事件は‥‥大きな陰謀が渦巻いているとしかいえないわ」
 そう切り出しで始まった報告は各事件について未だ解き明かされていない物事を纏めていた。

<Result>

 第1の事件について改めて調べた結果は、猟奇殺人と見せかけて未だ帰らない子供の誘拐が本線の可能性が浮き彫りになってきていた。研究主任の話を聞いたことによって出てきたのは神への冒涜。「神よ、我を蔑むのか」そういった心境は計り知れないものの、仮面の男を通しての命令は誘拐。その事は警察にも白状したといったが、ポールは知らなかった。つまり、この時点で事件が警察内部によって一部隠匿されていることが見えてきていた。
 キメラについては‥‥彼は知らなかった。そして、研究所の研究内容は、現在は変わっている。それは、先の研究内容を漏らさない処置‥‥そういう風にも捕らえることが出来たのだった。消えていたのはこの事件での欠けた部位と攫われた子供の行方。

 第2の事件は、実に不思議としかいえないだろう。何故ここに来て7つの大罪になぞらえて殺人を犯したのだろうか。それも、皮肉った文章を添えての頭だけを。
 これはオカルト記事が一番に食いついていたことだった。マザー・グースを想像させるあの文章が実に物事を隠しているようであった。そして‥‥最後に現れたキメラ。堂々と現れたのは何故だったのだろう。事件は犯人を見せないままに終わりを告げている。
 狙われたのは頭部。そして第1の事件で得られなかったのも頭部のみ。しかし、最後に残ったはずの重役2人の内1人が行方知れずになっていたことがわかった。それは‥‥果たして偶然なのか、それとも‥‥

 第3の事件においては、女が洗いざらい語りだした。そして、徐々に見えてきた裏の陰謀。タロットカードに準えたのは、それはこれから始まる序奏曲。彼女はただ、従うままあの日に訪れただけ。そして‥‥手に持っていたのは一枚のカード。
 残されたものは何もなく、ひたすら食べられた欠片はそのままキメラの体内から発見されていた。女は言う。自分が生きていること自体が、信じられないと。あの日、自分が指名を受けたときに死を覚悟した。それが組織において決められた運命の日だと。
 組織について問うと、偉大なる蛇によって生まれ変わることを約束された、そう答えてきた。それは、自らの死を持ってのみなのだろうか‥‥不気味さを感じる。

 どの事件においても、ちらちらと名前が出てきた企業、それがS&G製薬だった。大手の薬品会社とあって警備は厳しかった。そして、中々調べるのが込み入っていたのも事実である。調べによると、研究所はこの度の事件の場所だけではないらしく‥‥どうやら、外れの田舎の方に、大きな研究所が存在しているらしい。しかも、そこは精神の研究をメインとしているらしく、つい先日非検体が盗まれたとの報告書が発見された。機密事項と判の押された報告書は、その施設の概要もしたためられていた。

「それじゃ‥‥何が結局?」
 整理して出てきたことを更に整理してみると、一連の事件はどうも愉快犯に見立てた組織人員の整理と、そして何より気にかかったのは。
「最初の事件の‥‥誘拐?」
 組織については、まだわからないことが多々ある。しかし、どうやらS&G製薬という場所は、組織の関係者しか所属できない、そんな会社であることがわかった。そこに入ったこと‥‥それは既に自らを犠牲にすることを意味しているようだった。
『選ばれたこと‥‥それが重要です』
 それは第3の事件での彼女が漏らした言葉。

 この一連の事件が隠れ蓑でことが進んでいるのは確かだといえる‥‥そんな結末だった。


<And Then >

「ニコール‥‥」
 電話を受けてノーラが呟いた。今は遠いイタリアの地にいる幼馴染のもう1人。ニコール・デュポンだ。彼女が向こうに行ったのは、既に昔の話。ここに連絡が来るとは思ってもいなかった。
「悪いな、ノーラ。ポールは‥‥元気なのか?」
「ええ、元気よ」
「ふっ‥‥相変わらずつるんでるんだろうな、君たちは」
「ニコール‥‥」
「おっと、今回連絡取ったのは仕事の話なんだ‥‥いいかい?  w僕のお姫様」
「い、今所長に」
「駄目だ。君が聞くんだノーラ」
「‥‥はい」
「よし、これから言う企業がそっちにあるはずなんだ。調べてくれるかな?」
「‥‥聞くだけ、聞くわ」
「うん、そうだね。企業の名前は‥‥」


 それは、もうひとつの物語。散りばめられた点が、今確かな線となりて紡がれていた。