タイトル:孤高の老人−幻想再降臨マスター:雨龍一

シナリオ形態: イベント
難易度: やや易
参加人数: 21 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/12/22 04:41

●オープニング本文


「マスター、一体何を作られてるんです?」
 ぐるぐる眼鏡をそっと上げ、クロリア・ドーミングはミハイル・セバラブルの手元にある薬品を覗き込んだ。
 色取り取りあるそれは、なんとも綺麗で、透き通っている。
「ふぉっふぉっふぉ。今度考えている新しい薬じゃよ」
「へぇ‥‥飲み薬なんですか?」
「うむ。まぁ、わしの趣味物だから、どんなものが出来上がるかはこれからじゃがな」
 そう言って、次々と試薬を組み合わせていっていた。
「マスター、それよりも今しなければいけないのわ‥‥」
「ん? 今月の酔止めの納品は既に済ました。後依頼されているのは、強力胃薬と、ぐっすり眠りすぎる睡眠薬と‥‥」
「ち、ちがいます! どうして貴方は!!」
「クロリアよ。間違えてはいかん。いつ、いかなるときも遊び心を忘れては駄目なのじゃ」
「マスターは遊び心が強すぎです!!」
「ふぉっふぉっふぉ」


「さて、此度の薬でもデータを取らなきゃのぉ」
 そう言ってミハイルは目の前で出来た薬たちを眺めだした。
 以前データを取ったのは夏の初め。あれから既に半年近くたっている。
「ふぉっふぉっふぉ。さてさて、此度はどういう結果を見せてくれるかのぉ」
 そういうと、いつものように依頼文を書き出す。
 そして、その依頼文が届くと、またしてもUPC本部の一番隅っこに小さく表示されるだろうことは、既に本人も了解済みだったりするのだから。


―――――――――――――――――――――――――

 もうすぐ世間は共に過ごす者とのランデブータイム。
 しかし、意中のあの子は他にフォーインラブ!
 あぁ、なんと無常が青春のブレイクアウト。
 自分の色に染める前に他の色に染め上げられるなんて‥‥そんなの堪えられるのだろうか!?
 確かに。
 冬のこの季節、人肌恋しく繋がるものたちは多いじゃろう。
 だが・・・・だがじゃぞ?
 その想いが相手に届いたものは、何人いたのだろうか! いや、むしろかわされた者の方が多いはずじゃ!
 しかたないのぉ。
 わしがおぬしらの希望の星になってやろうではないか。
 ふふふ・・・・
 任せておれ。
 ここにとっておきの開発薬があるのじゃ。
 まぁ、まだ試作段階だし、人間には投与したことはないがな‥‥
 なぁに、そんなに心配せんでも大丈夫じゃわい。
 此度もあそこに募集を出してやろう。
 あそこのものたちは、いつも血気盛んで楽しいからのぉ。
 ふぉっふぉっふぉ。何が起こるか、今からが楽しみだわい。

●参加者一覧

/ ナレイン・フェルド(ga0506) / 花柳 龍太(ga3540) / 鳥飼夕貴(ga4123) / エレナ・クルック(ga4247) / UNKNOWN(ga4276) / 雨霧 零(ga4508) / オリガ(ga4562) / シャレム・グラン(ga6298) / 秘色(ga8202) / 紅月・焔(gb1386) / 美空(gb1906) / ヨグ=ニグラス(gb1949) / 姫咲 翼(gb2014) / クリス・フレイシア(gb2547) / レヴァン・ギア(gb2553) / 美環 響(gb2863) / 鳳覚羅(gb3095) / 風雪 時雨(gb3678) / 崔 美鈴(gb3983) / 土御門・姫命子(gb4042) / 花柳 茜(gb4069

●リプレイ本文

 それは、ULT本部の片隅に表示された一件の依頼から始まった‥‥
「副作用なしの‥‥人体実験ですか」
 風雪 時雨(gb3678)はその画面を見つめ、暫し考えていた。



「ミハイルさんっ! お久しぶり♪」
 いつものように明るい笑顔で現れたナレイン・フェルド(ga0506)にミハイル・セバラブルは笑みを浮かべた。この美人の彼とは、果たしてどのくらいの付き合いになっているだろうか。そう思うと、知らず知らずと笑みが溢れてくるのだから、仕方ないだろう。

「爺さん、久しぶりだな?」
 そういって黒のフロックコートに帽子といった井出達の男が訪れてきた。UNKNOWN(ga4276)、この御仁はどうも来ると妖しげな空気を出しているようだが‥‥ま、いっか。

 続々と会場に入ってくる人々を見て、今回も変わらずに助手を務めようと参加したシャレム・グラン(ga6298)が、手元にある報告書を見て告げていた。
「マスター、今回はどうやら20名の参加との事ですわ」
「ふむ、前回よりもより多くのサンプルが集まったわけじゃな?」
「はい」
「よしよし、それじゃぁ早速準備に取り掛かるとしようかのぉ」
 そういうと、最後に妹花柳 茜(gb4069)に引きずられるようにして現れた花柳 龍太(ga3540)が会場に入るのを見届け、二人は中へと入っていった。



 会場内は、すでに思い思い座っているものも居れば、壁に寄りかかり悩んでいるものも居る。そうであろう、はっきり言ってこんなに参加するとは思っていなかった。

 何人かは、ミハイルも見知った顔が居るのだが、どうやら今回始めて顔を見るものが大半を占めているようだった。それに伴い、ミハイルに変わってにわか助手が指揮を取る事となった。
「それでは皆さん、以前の実験については聞き及んでいると思います。今回マスターは‥‥それを更なる変化へと進化をさせ、その実験をしたいと‥‥」
 彼女の声に、集まった20名はこれから始まるであろう出来事を想像していた。あるものは絶世の美女になるかもと、またあるものは自らのコンプレックスを拭い去ってくれる魅力的な結果に出るだろう事を夢見て。
「まぁ、実験を始める前に当たりまして、先に皆様の普段を知りたく今回も‥‥」
「すでに、用意させてもらったよ」
 壁に寄りかかっていたUNKNOWNが一言告げる。その言葉に、にっこりと頷く。
「では‥‥皆様ご歓談いたした後に、始めるとしましょう」
 そう告げると、思い思いに座ってる輪へと二人は混ざる事とした。

「ほぉ、まずは自分のことを語れと?」
 雨霧 零(ga4508)はにやりと笑みを浮かべた。すかさず、手元に用意していた青い傘へと手をやる。ざっと周りを見渡すと、勢いをつけ広げ、立ち上がった。
「我が兵舎! レインコートに来るがいいっ!」
 そう叫ぶとふんぞり返るように高笑いを始める。続いて出てくるのはどうやら今までこなした事件について、さも得意げに自分の探偵振りを語っている。
 そんな様子を気にも留めず、ひたすら1人でにこやかな笑みを繰り広げているのはクリス・フレイシア(gb2547)だった。力強く握り締める拳、そして、期待に満ち溢れた瞳がこの実験に対して喜んで参加していることを物語っていた。その様子を横で見ているレヴァン・ギア(gb2553)は、彼女に誘われて参加した。嬉しそうな彼女を見つつ、また、色々な策略を練り固めるものや、ついつい来てしまったことに後悔を始めるもの達の様子を見回すと、1人ゆっくりとお茶をすする。
――なんとも和やかな情景でしょう
 ‥‥この現状で、和んでいるキミはある意味素晴らしいと思うよ。うん。



「ふぉっふぉっふぉ、そろそろいいじゃろうかのぉ」
 ミハイルは熱狂的に自分のことを話す者、はたまた色々と食べ物を出しては食べたりしている様子を見回し、別の部屋へと連絡を入れる。以前と違い人数が増えたためだ。連絡を受けると、すぐさま三色の小瓶、赤・青・黄の薬が入れられた瓶が各自の前に配られた。混ぜて飲み易いように今回はメモリ付きである。また、それを飲みやすいようにグラスも忘れてはいない。
「うむ、今回は混ぜる目安にメモリが付いておる。ふぉっふぉふぉ。まぁ、精々頑張ってくれたまえ」
「おっと、爺さん‥‥それは爺さんも‥‥なんだな」
 突如ミハイルの前に現れた鳳覚羅(gb3095)は、にやりと邪悪な笑みを浮かべ立ちふさがる。少し怪訝に思った時、ミハイルの両脇にて歓談していたナレインと鳥飼夕貴(ga4123)が、がっつりとミハイルの腕を絡め取った。
「ふっふっふっ ごめんね。ミハイルおじいちゃま」
「離さないんだから〜♪」
 じりじりと詰め寄られるも、流石にミハイルも男‥‥。本当は詰め寄られるのが女ならよかったのに、のに。
「ミハイルさんデータ収集は任せて安心してトリップしてくださいね」
 鳳覚羅はにっこりと微笑みつつ、崔 美鈴(gb3983)に合図を送る。しかし、残念な事に美鈴が捕縛しようとしていた助手(?)クロリア・ドーミングの姿は無い。代わりに助手の位置についているのは‥‥、美鈴は対象をどうしようかと考えた挙句、何故か持参した荷造り紐をナレインにと縛りだしたのだ!
「え!? な、なんで私なの?」
 驚愕するナレイン、その様子に鳥飼も思わず手が緩む。隙みたり! その瞬間にミハイルは逃げ出そうとするも、鳳覚羅が見逃すはずも無く、ヨグ=ニグラス(gb1949)と共に、UNKNOWN持参の荒縄を手に持ち、じりじりと詰め寄っていく。
 その姿を見た美空(gb1906)は、慌ててその様子を止めに入ろうと‥‥
「老人は人類の宝なのであります、いじめちゃだめなのでありますよ?」
 と、叫びながら間に入ろうとする。
 にやりと鳳覚羅怪しい笑みを浮かべると、美鈴に合図を送り、美空までも縛り始めた。
「え!? あ、なんで美空まで!?」
 ジタバタもがく美空、そして詰め寄られたはてに捕縛されてしまったミハイル。しかし、ミハイルの目は何故だか笑っていた。
「お、お年寄りは大事にしろよ〜‥‥」
 姫咲 翼(gb2014)は苦笑しながら様子を見ていた。もちろん、助ける気など無いのが中々である。彼にとっては、今現在自分の手の中にある薬の配分が気になっているのだから。綺麗に層になったグラスの中身は、お湯を注ぐと、一気に色の変化をもたらした。
 もしかしたら‥‥お湯を加えたことによって化学変化が進んだのかもしれないのだが‥‥そんな事翼には知る由はない。
「むぅ‥‥ああもう! どうにでもなれ!!」
 グイっと一気に飲み干す。うむ、中々の男前である。カーっと全身が熱く火照って来るのを感じると、翼の身体にある、変化が見られた。
「な、なんだってぇ〜!?」
 それはなんと、獣人化。いや、正しくないな。なんとその姿にはかわいい、かわいい猫耳が現れたのだ。
「ま、まさかこんな事態になるとは思ってなかったぜ!」
 その耳を弄りつつ、翼は少しほんわかになっていたのだった。

 実は、申込書へと一番にサインしていたのはオリガ(ga4562)であった。
「‥‥」
 オリガは手元に配られた三本の薬を見つめていた。少し困惑の表情を浮かべる。ぎゅっと、堅く目を瞑って手を前に差し出すと、触れた瓶を掴み取り、引き寄せた。目を開け、2本の瓶をグラスへと注いでいく。そして一気に呷り見ると‥‥
「うっ!」
――か、身体が熱い!!
 オリガは自身を襲う強烈な熱に苦しげながら足掻いていた。無意識に漏れる吐息が、何故か艶を帯びている。そのオリガが抵抗する様を見ていたのは紅月・焔(gb1386)である。
「くくく‥‥カモ〜ンピンクワ〜ルド‥‥」
 数少ない女性参加者へ、始めから何たるか‥‥妖しい視線を送り続けてきた人物である。その生態系はどうやらエロに包まれており、身体は煩悩で出来ている――そんな事をぬかしているくらいだから、相当ヤバイのだろう。早く、何処かの誰か拘束して!
 そんな焔ももちろん今回は実験体であり、本人はそんなこと気付かずに参加サインをしたようなのだが、もちろん手元には配られた薬瓶があるわけである。妖しい視線を送り続けているのだ、説明など聞いているはずが無い。
「俺は‥‥赤と‥‥赤と‥‥赤で行かせて貰う!」
 あ、ちゃんと一応聞いてたらしい。まぁ‥‥選択についてはスルーとしていこうか。一気に飲む姿は、風呂上りの牛乳よろしくである。腰にぐっと押し当てた手に、何故だか力が入る。
「ぷはーっ! もう一杯!」
 ‥‥牛乳じゃありません。っと、なんとも清々しく、キラキラ笑顔に太陽さん宜しくの笑顔になって、どうもピンクワールドじゃねーよって話になった焔であった。

 そんな、町で二回ほどしかすれ違っていない焔に親友であると言われているクリスなのだが、彼女は大いなる野望を抱えていた。手の中にある、赤と黄色の瓶をグラスに薬品を注ぎ、1:2の割合になるように調整していた。グラスを、ゆっくりと唇へと近付ける。その様を相変わらず見守るレヴァン。
 喉を、スーッと通った後、激しい熱に襲われたが、彼女にとってそれは希望への架け橋。むしろ歓迎して、その感覚を受け入れていた。ここまで来たら、もう変態であろう?
 とろーんとした目つきになり、なにやら、胸元が熱いので、少し肌蹴てみる‥‥
「クリス‥‥覚醒してるのか?」
 冷静に告げるレヴァン。その言葉を聴いた瞬間、クリスは慌てて肌蹴た胸元をかき寄せると、真っ赤に俯いてしまった。その様子に、少し溜息をつきつつ、レヴァンは手元にある薬の調合を行っていた。
「赤、青、黄‥‥これを‥‥あ、こうやって混ぜ‥‥!! う、いやいやこれならいっそ‥‥!! ぜ、全部入れてしまった‥‥」
 なにやらブツブツ呟くように調合をしていたが、どうやら思ったようには出来なかったらしい。ふぅと溜息をつくと仕方ないと諦めたようで、一気に飲み干した。
 ちょっと、喉を一気に通った感触に首を傾げつつ、辺りを見回す。
 ミハイルに、ヨグが丁度薬を飲ませようとしていたところだった。
 何故だろう‥‥可愛いはずのヨグの顔が、悪魔が降臨したかのような不気味な笑みを浮かべているのだ。その様は鳳覚羅の笑みよりも、もっと強靭であり‥‥レヴァンはそそくさと視線を外していた。
「はわわ、大丈夫ですか‥‥?」
 エレナはその様子を見て慌てるものの、どうやらとめる意思は無いらしい。そして、自分用の薬を持つと、壁に凭れ掛かって未だ読書中のUNKNOWNの元へと行く。チラッと目が合うと、とたんに真っ赤に染まるものの、手元でワタワタとグラスに薬を配分して、飲み干す。こくりと飲むと、体内を駆け巡る熱によってボーっと意識が混濁する。そして、ぴたっとUNKNOWNの傍から離れようとしなくなった。
「どうしたんだい?」
 その様子に本から視線を外さずに訊くUNKNOWN。エレナは少しむぅっと膨れつつ、
「このジュース美味しいですよ〜? いかがですか〜?」
 と、すすめてくる。それを少し微笑み、頭を撫でると
「私も貰っているからね。それは、エレナのだよ?」
 そう囁いた。

「ミハイル御爺さんには少し同情しますね。これも日頃の行いのせいでしょうか‥‥巻き込まれる助手さんは気の毒ですね」
 そういいながら涼しげに薬を調合するのは美環 響(gb2863)である。その容貌は中性的であり、長くまっすぐに伸ばされた黒髪は、腰に届くまでである。まだ、子供とも、大人とも取れない、しかしそこが魅力的とも取れる微妙なアンバランスさ。チラッと視線をくばせば、その視線に絡め獲られた者は‥‥どうなるんだか。
 手には既に調合された艶やかな紫色。うっとりと見つめると、
「綺麗な色ですね。飲むのがもったいないくらいです」
 そう言いつつ軽くグラスに口付けをし、じっくりと味わうかのように、飲み下していった。
 とたん、喉元を駆け抜ける熱い感覚。それにぐっと堪えつつ、残りを飲み干す。次第に目元が潤んでくるも、それが余計艶やかさに拍車がかけた。とたん、色々なものが体内を駆け巡る感触が広がり、それを押さえようと響は床にのた打ち回った。
 美少年がのた打ち回る姿は、なんとも美味である。ご馳走様。
 ようやく落ち着くと、何食わぬ顔で身なりを正し、平然としていた。

「うーん、この色は‥‥」
 秘色は今、自分がブレンドを終えたばかりの薬を見つめていた。明るい蒼紫のそれは、光にかざすと透き通っており、大変綺麗である。その色に小さく微笑むと持参したのであろう、裂きイカとチー鱈を取り出し、
「カクテルのようにいかぬじゃろうて、肴とは合わんかのぉ〜」
 結構綺麗な女の人なのに、なぜにこんな言葉を使っているのだろうか。
 そんな事思われてるのは本人はまったく知らずに、先程の肴をツマミに、薬を堪能している様は、なんとも粋である。そんな彼女の視線の先は‥‥


「じゃからて、わしに飲ませても仕方ないのじゃぞ!?」
 ミハイルは、ヨグに縛られ、今まさに薬を口に入れられるところであった。
「ふんふーん。今日はおじさんも飲むのですっ!」
「うがっ!?」
 お年寄りは大切にーっと、傍で半泣きになりながら簀巻きになっている美空を差し置き、ヨグはミハイルに薬を飲ませていく。
 その様子を鳳覚羅はニマニマと見つつ、喉が渇いたといって、手元にあったグラスを呷った。
「げっ! し、しまった。こ、これは‥‥」
 あぁ‥‥ついに本人も飲んでしまいましたね? っと言うことで、鳳覚羅も自らの身体が熱くなるのを感じていく。そして、あまりにもの暑さに、服を脱ぎだしてしまった。
 その様子を見ていたヨグも、これはこれはと思って、黄色い薬へと手を伸ばしていた。
 そんな様子を見つめる美空に、雨霧がやってきて、薬を飲ませようとする。
「な、なんですかぁ!?」
 慌てる美空に雨霧は、
「せっかく面白そうなのに、参加しないとは駄目でないか」
 っと、有無を言わさず口の中に流し込む。そして飲ましきった後、簀巻きにしていたロープを切ってあげた。
 飲まされた美空は、とろーんとした目つきになると、傍で同じように飲み干したばかりのヨグに対し、ふわっとした笑みを浮かべる。
「ふふっ 捕まえたのです」
 にっこりと微笑むと、おもむろにヨグを引き寄せる。わけもわからずにボーっとしていたヨグには、なにやら柔らかい感触が。どうやら美空の方では体型変化が訪れたらしく、たちまちボンキュッボーンのナイスバディ!? っと思いきや、大きくなったのは実は胸だけだったり。それでもそこにヨグの顔を挟み、窒息寸前へと試みる。
 うーん、好いてるんだか、好いてないんだかわからない子である。

「自分はここに来てよかったのでしょうか‥‥。まぁ来てしまったものはしょうがないですよね」
 溜息を吐きつつ、風雪はカチャカチャと薬の調合に勤しんでいた。どんな色が出来るのか、とても楽しみである。早速とばかりに作った色早見表を見つつ、割合を試していく。ようやくできた望みの品は、思い描いた、無色‥‥。良く作ったものである。
 にっこりとその出来に微笑むと、風雪は一気に飲み干す。すると、他のもの同様の熱い衝動が駆けめぐりっ!――

 殆どの者達が飲む様を土御門・姫命子(gb4042)は見つめていた。内心ドキドキしつつ、時には仰天をしたり、中にはその様子から更なる妄想を膨らませたりと、彼女の中の思考は様々な場所へと飛んでいっているようである。こんな風になるのならっ!! そう彼女は感じたのだろう。
「私も飲んで見ましょう!」
 そう告げる彼女を止めるものは、既にいない。ゴクゴクと飲み干す土御門は嬉しそうである。そんな彼女の様子を遠くから見つめていたのは、花柳兄妹であった。
 花柳 茜(gb4069)に無理やり連れてこられた立場の花柳 龍太(ga3540)は、目の前で繰り広げられている展開にもはやついていきたくないと感じていた。薬なぞ、絶対飲まないと。しかし‥‥横に一緒にいる妹の茜はどうやら飲みたそうである。ちらっちらっと兄を横目で確認しつつ、手元にある薬をブレンドしていく。その視線に、思わずごくりと喉がなった。
 兄のかすかな変化を嗅ぎ取った茜は、満面の笑みで出来た薬を差し出した。
 それを断りきれず受け取る龍太。そして、飲むまで反らしませんよとの視線‥‥
 再び喉が鳴る。
 そして覚悟を決めた龍太は‥‥一気にグラスを呷っていた。満足そうに見つめる茜は、自らの薬を飲み干していた。

 ナレインは、ふぅと一息つきつつ自らの薬へと手を伸ばす。少し、ドキドキしながら。前の時は男性に抱きしめられちゃったんだっけ。そんな思いに駆られながら、飲み干していた。とたん、全身を熱が駆け巡る。
「んんっ!? やっぱり‥‥身体があつ‥‥く」
 思わず身体を抱きしめた。以前よりも、熱い高揚感が、強く感じるのだ。それをどうにか押し留めようと、ナレインは自らの身体を強く、より強く抱きしめる。
 その様子を傍で見ながら心配する鳥飼も自ら薬を飲み干していた。
 他のものと違って、前回は一人だけ反応が現れなかった彼であるが、今回こそはそれを経験したく思っていた。以前と違って、少し身体に熱が発生するのを感じる。
――あっ、僕にも変化がっ!!
 そう思い、思わず嬉しさに身体を抱きしめていた。


「さて、適当に混ぜてと」
 皆が充分に飲んで騒いでいる様を一人傍観していたUNKNOWNはようやくといった感じで、グラスに適当に注いだ薬を飲んだ。とたん、身体に熱が走り、ぐぐっと、何か違和感を感じる。暑さに耐え切れずに、身につけているものを、一枚一枚丁寧に脱ぎ去っていく。
 始めにコートを、そしてベストを。装飾品を丁寧に外し、チラッと視線をめぐらせ、スラックスへと手を伸ばす。そこに現れたのは‥‥
 って、あなたどこで脱いでるんですかっ!! ちょ、ちょっと場所を考えてくださいって!

 見事な肢体を披露した、シャツ一枚へと変貌した1人の女性が‥‥って、女性!?
 あ、ありえませんから!! ここで、暗転、暗転!!





 総時間6時間にも及ぶ実験が、終了を告げた。各自に起こった変化をこっそりと別の部屋で見ていたクロリアが記録し、こっそり各自に通知書としてプレゼントしたとのことであるが、果たしてその結果が読める代物であったかどうかはわからない。
 彼は‥‥絶対文字で書いていないだろうから。


 目が覚めた被験者たちは、記憶がやはり残っていなかった。脳内に、何か妖しげな靄がかかった、そんな感じが印象的である。ふと、会場を出て外の空気を吸うと、会場内では何か香がたかれていたようであることがわかった。それは、どこと無く甘く、甘美な香りである。
 別れの際に尋ねてみると、ミハイルは笑みで返すだけであった。
 もしかしたら‥‥
 そんな考えが浮かぶものもいたであろう。それは、ある意味正しいのかもしれない。

 皆、効き目は4時間といったものの、今回はどうやら1時間ほど睡眠作用があることが発覚した。その1時間の間に‥‥参加者によって仕掛けられていた録画機器の類は、中身が消去されていることは当然である。なにしろ、既に録画機器などを仕掛けられた部屋に送り込んでいるのだから、その類はミハイルは抜け目無いのだ。
 また、ミハイルは薬を飲んだ後も平気だったことを伝えておこう。
 何しろ、この薬はエミタに作用する薬である。つまり、一般人の彼には何の変調も見られなく、当然なのだ。
 参加者諸君のありとあらゆるデータを取ったミハイルは、感激していた。
 ここまでデータを取れるとは、正直思っていなかったのだから。
 そして、こっそりと影で密約している者へとデータを送る。それは、これから先に起きる依頼によって、どの人物に送られたかわかることであろう。


――ご協力、誠に感謝である。

     ミハイル・セバラブル拝――