タイトル:捜査官ポールの悩み2マスター:雨龍一

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/09/22 21:00

●オープニング本文


 それは‥‥また不思議な話だった。
 ポールが今回当たった捜査は、また不思議なのである。

 以前の事件に関与して追いかけている研究チーム殺害事件だったが、何が原因で狙われたのかを探るに当たり、ポールは捜査へと動いていた。
 それは、その研究チームが何を研究していたのか‥‥
 なのだが。

「ちょっとぉ、ポール聞いてる?」
 行きつけのBarで飲んでいると、上の事務所にいる幼馴染のノーラがいた。
「あたしさぁ、こないだの依頼で始めてキメラ見ちゃったの‥‥」
「俺もだ。まさか街中まで入ってくるとは思わなかったんだが‥‥」
「でね? いっしょに水泳のコーチしてくれてた子達が、あ、傭兵さんだったんだけどぉ。その人たちがずばっと倒してぇ、たこ焼きにしちゃったの♪」
「な!? ノーラ、君は食べたというのか? あのおぞましい物を」
「え? だってぇ、倒しちゃったら普通のタコさんに戻ったんだよ?」
「な、何を言う! デビルフィッシュなど食べるなんて、君はなんと非常識な!」
「いやねぇ、今時そんなの気にしてる子なんて少ないわよ。だって、東の島国での料理には付き物だよって教えてくれたわよ?」
「ノーラ‥‥」
「ま、ともかくぅー。ポールも物騒だから気をつけてね? それでなくてもあなたはいっつも変な事件に遭って胃を壊すんだから」
「うっ、き、君に言われたくない。依頼のたびにナットー殿にケーキホールを買ってもらい、それを一人で全部食べるなんて‥‥なんていう胃をしているんだ。少しは女らしく‥‥」
「はいはいはい! ストーップ!」
「うっ」
「ポールの説教は聴きたくないわ。おいしいお酒がまずくなっちゃうじゃない」
「‥‥す、すまない」
「んーで? あたしに頼みたいことがあったからここに来たんでしょう?」
「あぁ‥‥どうも上層部のほうでストップがかかってるみたいなんだ。俺にはこれ以上調べれなかった。すまないが頼めるだろうか」
「はいはい、今度発売したマロンケーキ1ホールだからね〜。あ、ナターシャ? あたしの方にも人頼んどいてくれる?」
「ん? 君の方にもって‥‥他に誰か頼む人がいるのかい?」
「なぁにいってるのよ。ポール、あなたも頼むんでしょ? 傭兵さん」
「え? 必要ないはずだが‥‥」
「仮にもあたしは探偵事務所の人間よ。情報には事欠かないわ」
「え?」
「‥‥もうすぐ連絡がくるはずよ。また殺害事件が起こったって。しかも、それはあなたが追っている研究チームと関わりがあるはず」
「このリストを見て‥‥」
「あなたが調べていた通り、この研究チームは薬品会社の持ち物だったわ。だけど、ここ‥‥そう。表立って研究所に出資している子会社のリストがこれなんだけれども‥‥」
「ま、まさか‥‥」
「そう、この出資している子会社の重役が先ほど遺体で発見されたそうよ」
「ど、どんな風に‥‥?」
「こんどはね‥‥」

「全て首だけが発見されてたそうなの」


+++++++++++++++++++

 数時間後、ノーラの言う通り俺は現場へと呼び出されていた。
 同時に発見された遺体はまたしても5つ。
 これは何かの符号なのだろうか。
 どれも死後何日か経っているのだが、全て頭だけなのだ。
 そして、額に刻まれし怪奇な文字。
 鏡文字‥‥たしか、そういうものだった。
 全て驚愕に目が見開かれており、口が半開きの状態である。
 俺は彷彿とする吐瀉感を押さえ込むしかなかった。
 切り口はなんとも言いがたい。
 以前のような鮮やかさではなく、何やら獣に食い引きちぎられたような状態である。
 皮膚が‥‥微かに繋がったまま揺れていた。

「ノーラの資料によると‥‥後2軒関係子会社がありそうだな
 流石は探偵事務所だ。そこの資料にぬかりは無い。
 彼女がいると、情報の提供料金はケーキだから助かる。

「それにしても‥‥」
 ポールは額に書かれていた鏡文字達を書き出してみる。
「これは‥‥もしかして‥‥しかも、まだ関係会社が2件もあるとなると‥‥」

 再び護衛を試みるしかないのだろうか。
 そう考えていると携帯が鳴り響いた。

「はぁい、ポール。ナターシャよ。頼まれていた傭兵の手配がついたのだけれども‥‥」
 グッドタイミング。
 まずは安全の確保を考えねば‥‥
 この調査‥‥きっとこれからだろうな‥‥

●参加者一覧

漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
アンドレアス・ラーセン(ga6523
28歳・♂・ER
周防 誠(ga7131
28歳・♂・JG
立浪 光佑(gb2422
14歳・♂・DF

●リプレイ本文

<Search>

「それでは我は別方面からの調査を行なうことにしよう」
 漸 王零(ga2930)はそういうと、席を立った。
「あぁ、頼んだぜ」
「自分達は‥‥護衛の方に当りますので‥‥」
 アンドレアス・ラーセン(ga6523)と周防 誠(ga7131)がその後姿に声をかける。
 それに対し、漸はすっと手を上げ、その場を後にした。

 一人立ち去る漸の後姿を見て周防は呟く。
「もう少し人手があれば楽なんですがね」
「しかたねぇよ、こんな怪奇調査なんて普通なら傭兵の仕事じゃねーだろうしな」
 それに‥‥あんなに優雅さを感じないやり方だと特になと、アンドレアスは密かに思っていた。
「ええ、ですがそれでも、力を必要とされる方と、それに知恵を必要とされる方がいらっしゃるのです。もし手伝ってくださるものが多ければ‥‥自分はそう思わずにはいられなかったのですよ」
 少々溜め息をつきながら周防は目の前の依頼内容を再び読んでいた。
「ん〜、まぁ、この頃なんかキナ臭い空気も流れているからな‥‥そっち方面に出ているんだろうな、人手」
 そろそろ大きな動きが世界規模でまたやってくる。そんな状況下であるのは事実だ。
「そうなのですよね、ですが今回の危険は‥‥」
 前回の事件の資料を指でなぞる。
「あぁ、バグアの香りがぷんぷん臭ってくる気がするんだよな」
 アンドレアスも渋い顔を見せていた。
「裏が‥‥ありそうですね」
「ああ」
 互いに感じる疑問。そして予感に、この事件、何か背後で動くものがあることを感じずに入られない。


<POLICE>

「あぁ、すまない。突然の呼び出しにもかかわらず応じてくれて感謝するよ」
 ポールは集まった面子を見、一人のところで傍と止まった。
「あ、君は‥‥」
「よっ。今度も宜しくな。いよいよキナ臭くなってきたじゃねぇか」
 ポールの言葉に前回も手伝ったアンドレアスが手を上げ挨拶をする。
「この間は、助かったよ。俺なりにあれから色々と調べてみたのだが、上からストップが掛かってね‥‥どうやら上とコネを持っている奴がいるみたいなんだ」
「そうなのですか、でも、まずは護衛についてお聞きしても良いですか?」
 周防が落ち着いた素振りで現状の把握を求めた。
「そうだったな。すまん。取り合えず現在関わりになっている会社と事件のあらましを説明したいと思う」
そういうと、ポールは簡易的な相関図をホワイトボードに書き出す。
「被害者は現在5人。全て中企業の会社重役であり、この会社の共通点はS&G薬品の子会社であること。また、研究所の代表スポンサーとなっていることだ」

「まずこれを見て欲しい」
 そういうと、現場で撮られた遺体の写真を貼り出していく。
「この額にかかれている文字、まぁ、鏡文字なのだが‥‥これはラテン語に当るとあるものと合致することがわかった」
「七つの大罪ですね」
 周防が答える。
「ご名答。それぞれ1つずつ関わりが無いかを現在調べている」
 写真の横に一つずつ書かれていた言葉を抜き出していった。
「遺体が見つかったのは、昨日なのですか?」
 カルマ・シュタット(ga6302)は何が一番必要なのかを確かめつつ聞いた。
「ああ。一気に見つかった。それまで一帯どこに隠していたのか、なんとも不思議だがな。それも現在調査に当たらせている」
「で、ターゲットは絞れそうなの?」
 立浪 光佑(gb2422)がくるくる表情を変えながら聞いてきた。
「ちょっと難しいな。午後には知らせる事ができると思うのだが‥‥」
「そうか‥‥」
 取り敢えずは被害者の保護、そう考えていただけあって、現状はどうやら少し難しそうであった。
「それって、ノーラさんも手伝ってくれるんですか?」
 手元に配られた関係企業のレポートに書かれた名前を見て、ノーラの名前を発見する。彼女が手伝ってくれるのなら、かなり細かなところがわかるかもしれないと‥‥
「いや、彼女は悪いが当てにしないでくれたまえ」
「え?」
 ポールの言葉に少なからず立浪は気落ちしてしまった。
「彼女は本業の方がどうも忙しいらしくってな。今回は資料を作成してくれたが‥‥」
「そうなのですか、それでは当てにするのは無理ですね」
 やんわりと周防が受け答える。
「ああ、すまない。こちらでも情報が入り次第、伝えていくつもりだ。他に、手を回せそうなところにはこちらから人数を出す」
「了解、それじゃ頼んだぜ」
 これなら、主な標的となる人物だけの護衛に絞れそうだとアンドレアスは感じた。


<Expectation Target1>

「ん、ここか」
 アンドレアスとカルマは程なく護衛対象となる会社へとついた。そんなにも大きくは無いが、中々古くからの会社らしい。
「ポールさんの話ですと、この会社の重役は3名、その方たちを護衛するのですけど‥‥」
 ぐるっと見渡す、狙撃されるような場所は無いようだ。
「とりあえず、ポールか漸の連絡を待つまで、3人一緒に守るしかねえな」
 少し考えつつ、一緒にきた捜査官たちに建物全体の警備をお願いした。借り出せたのは4名。出入り口にそれぞれ2名ずつ取り敢えずの見張りにはなるだろう。
「ですね‥‥最優先されるべきは、まず人命ですし」
 そう、あくまでも依頼は護衛なのだからとカルマは自分にいい含めていた。

<Expectation Target2>

「ふむ‥‥意外と小さなところなのですね」
 周防と立浪が赴いたのはビルの中に入っているワンフロアだけの会社であった。
「資料によりますと‥‥重役って、社長一人みたいなんですけどね」
 会社の概要について拾っていきつつ、立浪は全体図を把握していく。
「ふむ‥‥そんなに小さな会社なのですか」
 前後に入ってる会社を見ても、特に引っかかるところは無い。
「はい、従業員数が10人みたいです」
 入り口だけでも中に居る人数がすべて把握できるほどだ。取り付けられている視界避けもそんなに無い。
「まぁ、守りやすそうといえば、守りやすいのかもしれませんね」
 そういうと、周防は一緒にきた捜査官、2名であるが、彼らにビルの入り口と、フロアの入り口、それぞれついてくれるようお願いをする。
 これで、建物自体に出入りする人物などは警戒することができるだろうと。


<Progress of investigation>

「こちら漸、今判ったことを伝えよう」
 無線機から連絡が入ったのは警備についてから1時間後、早い連絡である。
「おう、アンドレアスだ。どーぞー?」
「立浪です。感度良好ですよ」
 それぞれの声が響き渡る。
「然らば‥‥。昨日発見された遺体についてなのだが‥‥」
 漸は一息つくと、自ら調べたことに報告を始めた。
「額に刻まれし文字についてだが、あれはどうやら焼印とのことだ。誰かが押した可能性が強いとのこと。そして、死後硬直後に行なわれた可能性がある。死因は、いずれも出血多量によるもので、その後に食いちぎられた‥‥そういう見方ができるだろう。遺体発見現場についてなのだが、これはまだ調査中だ。被害者の背後関係も同時に当っているため少々遅くなるかも知れん」
 誰かが文字を書いたのではなく、焼印として‥‥それは、大きな手がかりとも言える内容だった。
「そして、この事件について朝の新聞において報道があった。各自確認して欲しい。マスコミ側も、何やら事件について憶測を多く書いているみたいだぞ」
「ありがとう漸。こっちもできるだけ頑張るわ」
「漸さん、お気をつけて」
「むろん。然るに、お前たちの方が危ない立場にあるだろう。いざとなった時、気をつけろよ」
 漸はそういうと、再び調査へと舞い戻っていった。


<Progress of investigation?>

「悪い、ポールだが」
 再び無線機から声が流れたのは、漸の報告からは1時間が経過していた。
「おう、どうかしたか?」
 少し深刻そうな声が、やけに気になった。
「被害者の特徴がわかった」
「被害者はいずれも会社の重鎮であったのは先に触れている通りだ。そして、額の文字との関係についてなのだが‥‥」
「やっぱり何か係わり合いがあるんですか?」
「ああ、被害者はいずれも額に刻まれた言葉通りの醜態を特徴とした人物だったらしい」
「醜態‥‥ですか?」
「ああ、これは‥‥やはりと言うしかないようだ」
「具体的にいってくれませんか」
「うむ‥‥現場で新たにこのようなものが見つかったんだ」


<Disgraceful behavior>



『ira』

 今日もガミガミの怒りんぼさん
 どうしてそんなに怒っているの?
 ふふふ、そんなに怒ってて、
 いつの間にやら 一人ぼっち
 ぷんぷん彼を そのまま食べちゃった


『acedia』

 今日もフラフラの怠け者
 木の上つたうの お昼寝するの?
 何もせずにいつでもぐぅ。
 そしてそのまま永眠に


『avaritia』

 今日もぶつぶつ欲しがりさん。
 そんなに欲しいの、人のもの
 とうとう欲しがりすぎちゃって
 今日も人の命とる?


『gula』

 今日も一日食べてたよ
 グゥグゥお腹は常にいっぱい
 そして今日は何を食べる?
 そこらの人を食べちゃおか


『luxuria』

 今日もあちこち女漁り
 フラフラいつも声かける
 今日はどの子とランデブー?
 お決まりいつもの朝帰り



「それじゃあ、『7つの大罪説』はあたりですか。これで5つ。もう2つは?」
 辺りを見回しながら、カルマが呟く。
「ああ、それなのだが‥‥まず、『invidia=嫉妬』に関しては周防君の行った会社の社長が当りそうだ。常に他の系統会社と違い、自分の会社の取り分が少ない事に文句を言っていた人物らしいのだ」
「‥‥最期の『superbia』は?」
 俺のところは間違いがなさそうだが‥‥では? と、立浪が疑問をぶつけてきた。
「アンドレアス君の行った会社の‥‥幹部リストの中で見つけたのが‥‥」
 そういうと、ポールはとある名前を告げる。
「! まずい! おい、カルマ! すぐに向かうぞ!!」
「は、はい! ラーセンさん!」
 それは‥‥前の事件で共犯者として捕まった研究主任の名前だった‥‥。


<Hurry up>

「superbia‥‥傲慢。高慢でなくて、傲慢かよ‥‥。まさにあいつの言葉、そのものでないか!!」
 前回の事件も関わっていたアンドレアスは、言葉の読み違いに我を怒っていた。
「だぁぁ! こんなの、錬金術に引っ掛けてるどころでないだろうが!」
「ら、ラーセンさん。お、落ちついて下さい」
「‥‥すまん、カルマ。大丈夫だ‥‥」
「まだ間に合う。だから、きっと大丈夫」
 階段を駆け下りながら、長い髪を後ろへと掻き揚げる。
「あぁ、立浪達にも連絡取ってくれ、俺は漸に連絡する」
「了解です」
 そういうと、カルマは無線機を手に取った。

「漸、わりぃ、至急ポールと会った警察署の方に行ってくれ」
 アンドレアスが息を上げながら連絡を取る。
「構わないが‥‥しかし、その人物はまだ警察署にいるのか?」
「ぐっ、ま、まだ2週間しかたってねぇ。拘束期間内だと思う」
「了解。お前達も来るのか?」
「あぁ、今向かっている」
 ふむ‥‥一言相槌を打ち、漸は急ぐ事にした。


「立浪さん、こちらカルマです」
「はい、さっきの無線だったら、聞いてましたよ?」
「ええ、それでは僕らは向かいますので」
「はい、危険ですから気をつけてくださいね。まだ、候補が数人いますから‥‥」
「はい」

「周防さん。俺らの方はこのまま警護で?」
「ええ、複数犯のときが一番厄介ですから」
「じゃあ、引き続き観察ですね」
「はい、こちらは対象者が一人ですしね」
「やっぱり護衛なんつーのは、めんどくさい任務ですね」
「ふふ、仕方ありませんよ」
 そういうと周防と立浪は再び周囲への警戒を強めていた。


<Wait a second>

「アンドレアス‥‥良いか」
「ん? 漸か」
 もうそろそろ階下に着きそう、そんな時に漸から連絡が入った。
「お前達は、そのままその会社の警備にいてくれ」
「え? なんかあったのか?」
「我の調べた情報であれば、もう一人‥‥」
「え? もう一人?」
「ああ、該当者がいる」
「わ、わかった! そっちはお前とポールに任せる!」
「カルマ!」
「わかってますよ」


<Battle>

「って、本当に間が悪いな‥‥これじゃあ‥‥」
 カルマとアンドレアスが再び戻ろうとすると、そこに裏口で見張っていた捜査官から連絡が入った。
「‥‥前方に目標確認‥‥援護、頼みます」
 非常階段からのドアを開けると、そこにはすでに一匹のキメラが唸り声を出し捜査官へと威嚇を放っている。
「了解!」
 アンドレアスの髪が伸び始める。次第に印象が移り変わり、近付きがたい、しかし見惚れていたい雰囲気が全身を包みだした。
「‥‥先手必勝で失礼致します!」
 カルマの手に幾つかの幾何学模様が紅く光りだすと、その手に握っていた朱鳳をキメラに向けて薙ぎ払った。
「練成強化!」
 そして、同時にアンドレアスから支援が入った。
 そして‥‥深々と刺さった部位から血が流れ落ちる。かっと見開いた目は、何も映さぬガラス玉の様であった。


<Result>

「で、間に合ったのか‥‥」
 出没したキメラを退治した後、皆は再びポールの元へと集まった。目標とされた人物も‥‥連れてである。
「すまなかったね、俺の情報が混乱を起こしたようだな」
 ポールは本当にすまなそうに頭を下げる。
「いや、それでそっちは変わりなかったのか?」
「ああ、一応」
 そういうと、漸は書き込みの入ったレポートを取り出した。
「そういえば‥‥調べてる最中にわかったんだが」
「何がわかったんですか?」
 周防も立浪もそれを覗き込むように席に着く。

「遺体の胴体部だが、ここより先にあった場所で発見された」
「それは本当なのか!」
 漸の言葉にポールが食いつく。
「ああ、それも以前の事件があったというところだったぞ」
「な!?」
 アンドレアスは驚きの声を上げた。
「研究所の裏焼却炉。使われないまま、そこに袋詰めにされてた」
 そういうと、証拠とばかりにその惨状を写した写真をテーブルの上に広げて見せた。


<And Then >


「で、君達に問いたい。首の後ろにつけられているのは何の証しだ?」
 案の定、狙われていた二人にもウロボロスの刺青が存在した。
「証し? そんなもんないさ」
「ああ、これは俺達に対しての烙印だよ」
 笑い続ける二人。ポールは怪訝に思いながらも聞いてみる。
「烙印?」
「ああ、あいつらにとっての、捨て駒って意味のな」
「な!?」
「もう、気付いてるんだろ?」
「これは‥‥とある儀式の前触れだと‥‥」


 そう、それは‥‥
 優雅ではない。だが、確かに進みつつある狂気の前触れであるようだった。