タイトル:捜査官ポールの悩み1マスター:雨龍一

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/09/06 01:07

●オープニング本文


 捜査官ポール・アブディールは苦悩の日々に身を投じていた。
 今回の苦悩の原因、それはなんともおぞましい事件であった。
 連続殺人事件‥‥そう言えば良いのだろうが、少し違ってくる。
 普通の殺人事件であれば連続というのは容姿‥‥で結ばれていったりするものだろうが、このたびの事件は極めて不可解なものであった。


 身体の一部がかけているのだ。


 現在見つかっているだけで5体の遺体がある。
 それら全てに共通することは身体が一部分が欠けていること。
 鋭利な刃物で切断されていること。


「それにしても‥‥気持ち悪すぎる‥‥」

 ポールは腹の底からの反覆衝動に口元を抑えるしかなかった。
 先ほど新たに発見された遺体の生々しさを思い出してしまったのだ。

「う‥‥それにしたって、こんな風に切り取るのは何の目的なんだ?」

 少し事件を思い出してみる‥‥
 最初は左腕だった。肩口から切断されたそれは、現在も行方不明である。
 見事関節部分を狙ったかのような切り口は、迷いが見られなかった。
 傷口から、生きたまま切断したのであろうと検死官は判断している。
 2体目、3体目は足である。大腿部から断絶された有様は、壮絶としか言いようが無かった。それが同日に発見されればなおである。
 よく列車事故で見受けられる、踏み切り遺体…そのような状況なのである。
 4体目は右腕である。これもまた鋭利な刃物で切断されたのだろう。

 切り口が鮮やか過ぎた。

 この時点で切断面、切り取られたものが見つからないとのことより同一犯であるとの見方が強められた。
 そして、被害者の共通点もわかってきたのだ。
 それは、とある企業に勤めている研究チームの一員であること。
 何を研究しているのかはわからない。ただ、そのチームの数は6人。
 もしかしたら後2人殺される危険性があるのだ。


「そうして‥‥」

 先ほど発見されたのが5人目の遺体であった。
 今回失われていたのは胴体であった。

「これは‥‥何を意味しているのだ?」

 頭を掻き毟るも、何も思いつかない。
 予想が出来ていただけに、阻止できなかったことが悔やまれる。
 そして、そのお陰で犯人像の大きな手がかりを見つけたことは救いとなるのだろうか‥‥
 この一連の事件が発覚して今日で6日目、最初の2件は発見自体が遅かったので、死後数日立っていたのが残念である。
「しかし‥‥今回は絶対阻止してやる」
 おそらく犯人は再び研究チームの一員、最後の一人を狙ってくるはずだ。
 そして、今日起きた事件の目撃情報を元に守りきって見せる。

「これは‥‥もしものために強力な助っ人が必要になりそうだな‥‥。普通じゃ守れない‥‥」

 そう判断をしたポールはULTの方へと依頼を頼みにいく決心をしたのだった。

●参加者一覧

水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
ロジー・ビィ(ga1031
24歳・♀・AA
烏莉(ga3160
21歳・♂・JG
辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN
レールズ(ga5293
22歳・♂・AA
鐘依 透(ga6282
22歳・♂・PN
アンドレアス・ラーセン(ga6523
28歳・♂・ER
アズメリア・カンス(ga8233
24歳・♀・AA

●リプレイ本文

< murder case >

「あぁ? 殺人事件だって?」
 新しい依頼を確認しに来たアンドレアス・ラーセン(ga6523)はその内容に驚かずにはいれなかった。
 傭兵を始めてこんなことがあっただろうか。警察ですら解決できない事件があっただなんて。
「ラーセンさん、よく見てください。一応護衛ですよ?」
「んなこたーわかってる。しかしよ、こんな風に警察からの依頼だなんてあったか?」
 一緒にいたレールズ(ga5293)も暫し顔をしかめた。
「確かに‥‥でも、これ‥‥話題になっている事件じゃないかな」
「っと、いうと‥‥ここ最近騒がしているあの‥‥」
「あぁ、あの人体を作成しているんじゃないかといわれている事件だよ」

 その事件は新聞の一面をいつも賑わしていた。
 『連続猟奇殺人事件』
 この事件のことを謳う新聞各社の見出しだ。
 それは日を追うごとに過激に、そして詳細に伝えられていた。

「とりあえず集めれることだけでも集めてみましょうか。それからお会いするのも面白そうですね〜」
 レールズはこっそりと口元に浮かんだ笑みを隠していた。


<newspaper article >

 研究者連続殺人事件

 現在同じ研究所内にて働いているものが連続して殺害されているという。
 犯人は鋭利な刃物により被害者の身体の一部を切り取り、持ち去っていることより猟奇殺人事件の疑いが上げられている。
 その状況からこれを警察は連続殺人事件とし捜査を始めたのだった。

 被害者は平均年齢40歳
 男性で皆中肉中背、特に変わりは無いという。
 ただ、妙な共通点はいくつかあることが発表されている。
 同じ研究施設で働いていたこと。
 そして、子供が同じ学校に通っているとのことだろう。
 これが原因かはわからないが、殺された研究員の子供も、行方不明になっているとの話だ。
 現在すでに4人の遺体が見つかっている。そして今朝、5人目の犠牲者の遺体がみつかった。


<POLIS>

「やぁ、来てくれてありがとう」
 ポールは憔悴しきった表情で集まった者たちを見た。
「突然の依頼ですまない‥‥しかし、普通のものでは手に余る‥‥そんな事件のように思えて仕方ないんだ」
 悔しそうに見つめる先には手に握り締めた珈琲の缶が握りつぶされていた。
「俺は捜査官として、こんなに悔しい思いをしたのは初めてだ。出来れば今度の事件は食い止めたい。俺に出来ることはさせて貰うから、君達‥‥力を貸してくれ」

「ポールさん‥‥お疲れ様です。とりあえず、新しい珈琲でも入れますから詳しい状況を お聞かせ願いますか?」
 鐘依 透(ga6282)がやや興奮気味のポールをなだめるように話し始める。
「‥‥すまない。折角皆さんが来てくれたのにな‥‥それではこれから依頼についての詳細を話させてもらう」


 ポールは依頼を引き受けてもらうときにお願いされていた事柄を含み、調査の状況を説明した。研究チームのこと、今まで殺されたものについて、そして謎に包まれた犯人像について‥‥だ。
「このように、現在まだ不明な箇所が多いんだ‥‥すまない。時間が足りない‥‥そういうしか他にいいようが‥‥」
「いえ、それでしたなら僕らが護衛している間にも調査を引き続けていただけますか?」
「ああ、詳細がわかったら随時連絡っつうのはどうだろう」
「わかった。君達の寛大な心に感謝するよ」


<first−second guard>

「まずは私たちですわね」
 そういって水上・未早(ga0049)はロジー・ビィ(ga1031)と共に警護についた。
 護衛対象者は9時から業務に入るとのこと。それに合わせ対面を果たし、その後任務へと遂行するようになっている。
「どなたなのかしら」
 そういうと、一人の優男がこちらへと向かってくるのが判った。
「おはようございます。可愛いお嬢さん方」
 恭しく礼の体勢をとる。
「あのなぁ‥‥彼女らはお前の警護をしてくれる方々だ。失礼なことをするんじゃないぞ」
「ほう、貴方達が‥‥。では、宜しくお願いいたしましょうか」
 にっこり笑ってくるものの、どことなく雰囲気が怪しく感じるのは、やはり警戒しているからだろうか。
「ええ、よろしく頼みますわ」


 警護は順調に進んでいった。
 ロジーと未早が警護を進める中、他の者たちも各自捜査を行っている。
 まずは周辺捜査とばかりに研究所内で聞き込みを行なう者、そして警察と連絡を取り、今までの事件についての詳細を求めるものだった。
 4組のグループに分けローテーションを組んでいるものの、各組みとも警戒は怠らない。
 集中力の問題や、対象の生活習慣に合わせて行なっているため、交代は2時間おきとなっていた。

「じゃ、今度は俺たちか」
 続いて現れたのは辰巳 空(ga4698)と烏莉(ga3160)である。

 交代も警護対象の前で行なうこと。
 これが彼らの決めたルールだった。
 そのルールにのっとり周辺を警戒する者達の中、交代が行なわれる。
 現状を話しつつ、簡易に何があったかを伝えていく。
 そのまま警護だった組が休憩へと回り、担当してた情報を無線で流した。


「キツキツじゃないか」
 そう言って烏莉と辰巳は一緒に白衣に身を通す。
 実験室に入ると、チーム全員が狙われていることにより人は少なかった。
 そんな中で、『彼』は一人黙々と研究を続ける。
「一人で行って何か意味あるのですか?」
 辰巳が尋ねても答えようとはしない。

「‥‥つまらん爺さんだ‥‥」

 研究の間も付かず離れずの体制を貫いた。
 相変わらず『彼』は研究に没頭している。
 時折訪れる訪問者や助手のものに対しても扱いがぞんざいである。

 その時だった。
 薬品が『彼』の方へと降りかかったのだ。
「あ、あぶない!」
 とっさのことに辰巳は『彼』を抱えこむように地面へと転がる。
「うっ」
「だ、だいじょうぶか!」
 烏莉も慌てて助け起こす。
 そして烏莉の目の前には『彼』のうなじが見えた。

「こ、これは!?」



<Rest1>


「対象はなぜ狙われているか判らないそうですわ」
 交代を終え、未早は疲れた様子で周辺警護についていた。
「そして‥‥盛大に私達をコケにしてくれたんですよ!」
 ロジーは悔しそうに髪をいじりながら、無線へと叫んでいた。

「今のところ進展は無いな‥‥」
 アズメリア・カンス(ga8233)が周囲を警戒しながら呟いた。
「あ、先程ポールさんから連絡が入ったのですが、検死の結果がわかったそうですよ」
 思い出したかのように鐘依が告げる。
「どうだった? DNAとかの疑問については判ったのか?」
 無線から話を聞いていたアンドレアスの声が届いた。
「はい、結果は‥‥他の方々との一致はございませんでした。とのことです」

「ん〜‥‥そしたらクローン説は外れたことになるね〜」
 レールズが少し悔しそうに目元に力が入った。

<Third−For guard>

「さて‥‥きっちりと守らないとね」
 アズメリアと鐘依が交代する。
 丁度お昼の時刻を回っていた。
 護衛対象が食堂で食べるというのを制止し、室内でとることにする。
「そういえば‥‥まだ研究について聞いていませんでしたね。何をなさっていらっしゃるか」
 鐘依が少し考えるように聞くと、『彼』は素早く反応した。
「ん? 興味があるのか?」
「ええ、だって。それが原因なのではないんですか?」
 反対側で警戒に当たっていたアズメリアも食いつくように質問する。
「‥‥私は知らないよ」
「でも、研究についてはお聞きしても大丈夫ですよね?」
「‥‥」
 それっきり、『彼』は食事へと没頭していったのだった。



 警備自体には何も問題が生じない。
  そして調査の進展もまた‥‥


「ここって何やってんの? や、ただ興味あるだけなんだけどさ」
 アンドレアスは『彼』と同じ研究室の助手に声をかけていた。
「ラーセンさん、そろそろ時間ですよ〜?」
 時計を気にしていたレールズが声をかける。
「わりぃー。今行くわ」

「何かわかったのですか〜?」
 自分の横へと辿り着いたアンドレアスを見て、レールズは先程の事を聞いてみた。
「んー。こいつらの研究なんだけどさ、どうやら脳波だかを研究しているらしくって‥‥」
 髪を掻き揚げるついでのように、ポツリと呟く。
「え?」
 思わず目を見開いて振り返っていた。
「そう‥‥もしかしたらすでに‥‥」
 タバコを一本取り出たアンドレアスの眉間には深く縦の筋が刻み込まれていた。



「能力者が張り付いてて、襲ってくるヤツはそうそう居ないと思うぜ?」
 ぽんと肩を叩き、もってきたコーヒーカップを目の前に置く。
「ありがとう‥‥」
 香ばしい香りが鼻腔をくすぐった。
「そんでさぁ、脳波の研究やってるんだって?」
「ああ‥‥誰かから聞いたのか」
「ん。そこら辺にいるヤツに聞いたんだけどよ」
「脳波の‥‥何を研究してらしたのですか〜?」
レールズがにこやかな笑みを絶やさずに聞いていた。

<Rest2>

「どうやら‥‥襲われた対象には研究チームが同じだった事のほかに共通点があるらしいですね」
 入れ替わった辰巳がため息を漏らす。
「組織に入っていた‥‥そう言っていた」
 烏莉がボソッと話し出した。
「組織‥‥ですか?」
 無線で聞いていた未早が反応を返した。
「ああ」
「組織員はみな、身体の一部に刺青を入れているとのことですよ」
 烏莉の補足として、辰巳が無線に告げる。
「ウラボロスの‥‥な」
 脳裏に焼きついた刺青が、どうやっても消えそうに無かった。



「あ、ポールさん。何か進展があったのですか?」
 休憩とばかりに力を抜いたところに無線が鳴った。ポールからだった。
「ええ‥‥、はい。ありがとうございます」
 無線を取った辰巳がポールの話にお礼を言い、通信を切る。
「ん? ポールさんからですの?」
 傍にいたロジーがそんな様子に気をかけた。
「はい、この研究施設の持ち主がわかったそうです」
「それはどこなのでしょうか?」

「S&G薬品会社。イギリスで大手の薬品会社だそうです」
「薬品会社?」
 辰巳の告げた会社に一同は首をかしげた。
「ええ‥‥」
 少し苦笑気味に辰巳は答えた。


<Criminals>

「主任、外線モニターから連絡が入ってますが」
 もうすぐ勤務時刻が終わりを告げようとしたとき、助手の一人がテレビ電話がきたことを告げる。
「あぁ、わかった」
 『彼』は頷くと、そのままモニタールームへと場所を移動する。
 その後にはアンドレアスとレールズが続いていった。


「私だが‥‥」
 モニターのスイッチを入れつつ、『彼』は無愛想に返答する。
「やぁ、私の可愛い共犯者君」
 突如、モニターには仮面の男が浮かび上がる。謎の言葉と共に‥‥
「な!?」
 その謎の言葉にいち早く反応したのはアンドレアスだった。
 思わず画面上の男に視線が食い入ってしまったものの、素早く『彼』を捕まえに入る。

「すでに駒は揃ったのだよ‥‥この美が、もう少しで完成するんだよ」
 仮面の男が声高に告げた内容に二人は驚愕をし、目を見合わせた。

「ちょっとまて! これは何の話だ!?」
 問い詰めるアンドレアス。
「みなさん‥‥警戒してください。1班はこちらに、また外の警戒もお願い致します」
 仲間を呼び寄せるレールズ。
 そして、『彼』に気をとられているうちに、画面は暗幕を張ったように止まってしまった。


「おい‥‥、お前‥‥このことを始めっから‥‥」
「く、苦しい!」
 思わず掴んだ手が首筋に入ってしまう。しかし、それでもアンドレアスは怒りが収まらなかった。
「うるさい! どういう目的なのか、洗い浚い話してもらおうか?」
 そして、駆けつけた一同の中で辰巳が持っていた手錠とワイヤーを使い、厳重にお縄としたのだった。



<FINAL>

「みんなのおかげで真相に近づくことが出来た。ありがとう」
 最初の面持ちとは打って変わり、にこやかな笑みを浮かべたまま、ポールは礼を言う。
「いや‥‥結局は犯人を捕り逃してしまったじゃないか‥‥」
 困ったようにアズメリアはことを伝えた。
「そんな事は無い。先程この研究所からキメラの残骸も発見されている」
「残骸?」
 ポールの言葉に思わず聞き返してしまう。
「あぁ、すでに用済みとなって処分したんだろう。倉庫に眠っていたよ」
 にっこりとしつつ、数枚の写真が渡される。中々はっきり写ってはいないが処分された蟷螂の姿は確認する事ができた。
「そうか」
 思わず皆見入ってしまう。
「ちなみにこれは、どのようなキメラでした?」
 アズメリアが真剣な表情で聞きかえす。

「蟷螂型‥‥だったな」
「あ、あそこにありました?」
 ポールの言葉にロジーは何やら思いついたらしい。
「蟷螂の刃か‥‥」
 確かにそれであれば、容易に鮮やかな切り口が出来たのも当然と思ってしまう。ましてそれはキメラの‥‥

「これでしたのね‥‥」
 写真を見て、ロジーは痛いたしそうに呟いた。


<And Then >

「さて‥‥それでは話してもらおうか」
 ポールは『彼』とテーブルを挟んで向き合っていた。
 『彼』は先程と同様に手錠とワイヤーで捕われたまま。
「お前の知っている情報を教えろよ」
 その台詞に『彼』は笑い始める。
「‥‥おいっ」
 にやりと笑って答えた‥‥


「My God. It is contempt as for me」


本件は研究所チーム主任による同僚殺害事件と発表になった。
しかし、主犯格と思われる人物は逃亡。
凶器であると思われるキメラは回収されている。
事件は無事幕を閉じた。


そして‥‥謎が再び生まれた。